書生 ハーヴェイ ……そして、幾星霜。 当て所なく、ただ、求め続け、探し続けた。 果てし無き放浪の中、時は彼の心を磨り減らしていった。 そう、彼は終わらぬ生の意味を、正しく身を持って知って行った。 そして――巡り会ったのだった。 果てしなく捜し求めた、その真っ直ぐな瞳の娘に。 ――女神フレイアは言った。 お前に黄金の林檎を与えましょう。娘を探し出し、それを与えた時にこそ、お前の罪を許しましょう、と。 再び巡り会った娘は、しかし、林檎を口にする事を選ばなかった。 彼は、しかし、それでも良かった。 とうに息絶えていたと思えていた彼の心に、年経た亡霊であっただけの彼に息吹を吹き込んだのは、遠い思い出ではなく、ここにこうしてあるこの娘だたのだから。 | |
(1798)2005/05/21 22:56:46 |
吟遊詩人 コーネリアス [コーネリアスは、目を細め、総員が談笑するさまを眺めている。 そうして、いつのまにかこの別れを惜しむという気持ちすらわき上がっていることを、ふと自覚する。] ………ん、 [マッハが、きゅいーと鳴いた。…そうか、そろそろか。口の端をあげて苦笑する。 す、と皆の目から逃れるように、甲板の反対方向へと歩いていく。] ……じゃあ、な。幸せに暮らせよ。 オレはお迎えが来たみてーだ。 [ぽつりとつぶやくと、両手を拡げて空を仰いだ。 一瞬の後、コーネリアスとマッハの姿を、円筒形の光が隠すように包む。 そうして数秒の後、光が消えた後にはコーネリアスの姿はどこにもなかった。] | |
(1815)2005/05/21 22:59:06 |