流れ者 ギルバート [重い体を引きずって営業を終えて自宅に戻った自分を待っていたのは、広くもない庭に広がる、赤いペンキをぶちまけたようなそんな光景だった。 中心には、まるで壊れたマネキンを廃棄するかのように、引きちぎられた【何か】が無造作に積み上げられている。 まだ、そこには鉄の匂いが眩暈がするほどに充ち、わけのわからないまま青年は一番上にまるでショートケーキの飾りの苺のように置かれたそれを、両手が赤い滴りで濡れることなど考慮に入れずに持ち上げる。 それは、微かに。本当に、微かにまだ蠢いていた。 そして壊れたマネキンの残骸が、自分が義父と呼ぶ男の四肢が引きちぎられた残骸であり、自分が持ち上げたそれが、彼から強引に摘出された心臓であることに気付いたとき。 青年が紡いだのは 言葉にもならない 悲鳴──────] | |
(635)2006/05/20 14:26:54 |