流れ者 ギルバート [ナサニエルの言葉に思わずすい、と瞳が細まる] …わかってる。甘えてることも。逃げたことも。 だって本当だもの、否定だってしない。 ……ごめんね。俺は、いつだってひとりだけ逃げてる。 [最低だよね、と小さく呟いた] …俺は、ナサ兄が聖痕者じゃないって、知ってた。 知ってて、言わなかった。何も。 …皆には悪いけど、ナサ兄と兄さんさえ生きててくれれば、俺は誰に嫌われてもよかったんだ。 自分が死んでも。誰が死んでも。 …それくらい、ね。二人が大事だったの。 だから、辛いとも、申し訳ないと思うけど。 俺は、今の状況が幸せだって、ほんの少しだけ思えるよ。 …ごめんね。手間のかかる弟で。 [そう告げて、いつもどおりの寂しそうな憂いを含んだ笑みを静かに湛えれば一度目を伏せ、それから瞳を開いてじっとナサを見詰めた後、何か言いたげに唇を揺らすも、それは音にすらならず] | |
(24)2006/05/31 04:40:44 |
冒険家 ナサニエル 【回想】 [血塗れのまま自宅へ戻ればギルを居間に残してシャワーを浴びる。 両手を壁につき項垂れたまま流れ落ちていく紅い湯をぼんやりと眺め、ちらりと自分の手に視線を移して、薄い唇を引き結びゆっくりと瞬く。] ……、……。 [半裸のまま頭からタオルをかぶり居間へ戻れば、駆け寄ってくるギルに風呂を勧めるも、先に傷の手当てをすると言って聞かないので、大人しくソファに身を沈め、腕と胸元の傷が手当てされていくのを眺め] サンキュ。 [いつものあどけない笑みを向け浴室へ向かうギルを見送ればキッチンへ向かい、グラスに氷を放り込んで酒瓶と共にソファに戻り酒を注いで、パキ、と氷の割れる音に目を細める。 一杯目を一気に煽り再び琥珀色の液体でグラスを満たし手の中で弄べば、浴室から聞こえる微かな水音に重なり、カラン、と乾いた音が響く。 居間に戻ったギルを客間に案内し寝付いたのを確認すれば墓地へと向かった] | |
(39)2006/05/31 16:00:14 |