人狼審問

ふむ……記憶とはそちらの――切鳩の話なのだな。

――して、そなた、紗都と言ったな。ひとつ尋ねたい。此処に近い里の者達が何処へ行ったのか知らぬか？

斬鳩……

宿に戻る時、声掛けてくれる…？
調子悪そうだし、宿まで送るわ。

大福のお礼…もあるわね。

[紗都は斬鳩に微笑みながら伝えた。]

ふふ…斬鳩さま、面白い方ね。

そう…晴暗さま。そうよね。
それで、あちこち渡り歩いているのね。

陰陽寮の方が…こんな所までくるはずないもの。

里……随分昔に鬼に滅ぼされたと聞いてるわ。

生き残った者は殆ど居ないみたい……

[生き残った者―――白の斬鳩、蒼の紗都、黒の弦琉丸…他数名……]

そう……か。
[弦琉丸は紗都の言葉を聞き――ふと目を瞑り天を仰いだ。]

まぁ…生き残った人間は、棲家を変えてると思うわ。

[紗都は俯きながら呟いた。]

里の話は終わりにしよう。
私も…よく知らないし……

紗都、教えてくれた事に感謝する。
[そう言って、弦琉丸は紗都に頭を下げた。]

晴暗さん…何かわかった？

[めいは、我慢できなくなって晴暗の袖を引っ張りながら尋ねた]

[弦琉丸は紗都の言葉に頷いた。紗都の戸惑いや心の揺れに気付いてはいたが、あえてそれを尋ねる事はせずに。]

もう……済んだ話なのだろうな。滅びたならばそれはそれで仕方があるまい。

[そう言った弦琉丸の目には、しかし、悲しむような、悼むような色が浮かんでいた。]

いや…今はなぜかわからないが…妙に静かなんだ。
全てが黙して、何も語りかけてこない。
嵐の前の静けさなのか…？

……………。
駄目だ…思い出せない…

どうしても思い出したことがあるはずなのに…

[斬鳩はぶつぶつ言いながら一人でどこかに歩き出していった]

そ、そうかぁ…
嵐の前の静けさ…　さっきから風か止んで凪いでいるね…
これも何かの予兆なのかな。

あっ！待って、斬鳩！！

心配だから、斬鳩を送ってくるわ。

[紗都はその場に居る人にお辞儀をした後、斬鳩の後を追っていった。]

斬鳩、気をつけてな。過去にこだわるもよいが、今の生をつかむ事が大切だ。

しかし…鬼を解放したのは人間なのか？護符の効力はは消えてはいなかったように見えるが…

斬鳩さん、紗都さん、気をつけてね。

めいは、本殿によってお祈りをしてくるね。
ええと、晴暗さんと弦琉丸さんはどうするのかな？

[切鳩と紗都の背を見送った後、砕けた鬼魂岩を見詰めながら弦琉丸は思いに耽っていた。
――遠い日。そう、やはり鬼を巡る騒動に揺れていた里。両親は幼い弦琉丸を巻き込むまいと、一人彼を里から逃がした。
以来、幾年月。再び里に戻った彼を迎えたのは、ただ、沈黙のみであった。
解ってはいたのだ。
――里が滅びたであろう事などは。
空洞と化したかのような胸のうちを面には出さず、弦琉丸は静かに佇んでいた。]

ふむ。私はめいを残しては行けない。
危険もあるし、案内もしてもらわないといけないしな。
俺はとりあえずはめいに付き合うことにする。

[弦琉丸は、めいの言葉にも気付かぬままに鬼魂岩を見詰めていた。]

あかん。寝過ぎたかもしれへんな。

…ん？なんだ。
霊力を持った人間が…いる？

[鈴也は3人に歩み寄った]

そこにおるのは…めいと…旅の方か？
こんな時期にこの場所に訪れるとは…

[紗都は悩んでいた。過去を取り戻したいと言う斬鳩に本当の事を伝えるか―――しかし、其れを伝える事は自分の血筋がバレる可能性もある…私は……復讐する為だけに生きてきた。此処で、自分の身が危険に晒されるような事はしたくない。でも……]

斬鳩……
そんなに…過去が気になる…？
私の顔を見て、何か思い出すことはない…？

[斬鳩に追いついた紗都は静かに口を開いた。]

[人の多さに首を傾けるが、壊れた岩の前で立ち止まり、驚きの表情を見せ]

・・・誰が壊したんや、これ。
災いだか呪いだかがあるっちゅー言い伝えあったんちゃうんか。

鈴也さんか、びっくりした。
鈴也さんも岩のことでここへ？

[めいは鈴也に話しかけ…、岩の前に佇む男に気がついた]

[晴暗は鈴也に向き直った]
おや、あなたはたいした霊力をお持ちのようだ。
私の名は羽部晴暗。
[続けて自己紹介をした]

そちらの方は…？

[弦琉丸は初めて聞く声に振り向いた。]

…そりゃね　気になるさ…
毎日毎日　何故記憶が無いのか悩んでたんだら

……顔？　……
[斬鳩は紗都をまじまじと見つめ]
……………思い出すって…俺がここに住んでいたって言ってたのは紗都かぃ？

[岩から顔を上げて、人々の方へと視線を向ける。]

旅の方？・・・俺のことか。
生まれはこの村で、久し振りに戻ってきたんやけどな。菜叉言うんや。
俺のこと知っとるヤツおらんかなぁ。

先程この岩を見たいと申す娘御(むすめご)がおってな。
音麗殿を社まで送るつもりであったのでな、供を仕った。

その後は雫殿、片李殿が屋敷に着くまで、
私はこの辺りで鬼を抑えられれば良いと思い、
この通り今まで楽を奏でておったということよ…

[紗都は再び口を開いた。]

…そうよ。私は昔の貴方を知ってる……

貴方は…この村に住んでたのよ。
村の中心に在る池…見覚えないかしら…？

[斬鳩はそうかと頷くとぼんやりと池を見つめた]

…わからねぇ。………ただ…
池は大切な場所だってのは　覚えて…

って！。いけねぇや　こんな夜に二人っきりだなんて
紗都に悪い噂がたっちまう！
人のいるところで離そう！
[斬鳩はあわてて紗都の手をつかみ　神社に向かって走り出した]

[弦琉丸は菜叉と鈴也に軽く会釈すると、己の名を名乗った。]

[鈴也はめいの隣にいた晴暗に気づいて僅かに微笑んだ]

ふむ…その姿してを察するに…
晴暗殿は私と同じ道を歩んでおられるようだな。

──私の名は高禰鈴也。
天と地の理を知り、陰陽の道を歩むもの。
野辺に伏す酔狂者…と洛中の者どもは噂しているようだが。

そうだったんですね、お疲れさまです。
鈴也さんの楽の音…どことなく寂しげで…
でもとっても好きです。

[めいは、鈴也に微笑みかけた]

……！！

。oO（悪い噂が立つのは…貴方の方なのに…）

[紗都は言葉を失い、斬鳩に引かれていった。]

菜叉さんは、この村の人だったの？
めいがここに移る前に住んでいたのかなぁ。
小さい頃の記憶はあんまりないんだけど…めいのこと知ってる？

そちらの方は…菜叉とおっしゃるのか。

そして鈴也殿は私と同じ、か。
ただ…そのいでたちから察するに陰陽寮の手か？
ならば何ゆえこの地に？鬼の封印のためか…？

鬼は解放され、村を出たものも戻ってきている。
これは偶然か？
何か大きな力が働いているのかもしれん。
村を出たものを再びこの村に呼び寄せる力。
誰かが呪術を用いたのかもしれんな。

それとも何か大きな念、か。例え霊力に乏しいものでも、長年にわたって念じ続ければいづれ大きな力へとなろう。
それにこの土地は…鬼の執念のなすことか、負の力が働きやすいようだしな。

…あら、いけない…
かすかに笛の音が聞こえたから、
風の中に音色を探していましたわ…

あなたの笛でしたの？鈴也さま…

そちらの方も、旅の方ですのね。
菜叉…さま。

[昔…斬鳩と二人であの里からこの村に逃げてきた。今と同じ、斬鳩が私の手を引いて……

紗都が昔を懐かしんでるうちに、二人は神社まで戻ってきた。]

負の思念…
確か父の論文にもそんな記述があった…
祓われても尚残り、闇を招き寄せる負の思念…

[めいは、晴暗の言葉に瞳を曇らせた]

[見た顔を順番に指差し]

.弦琉丸にめいに・・・えーと、名前は明日までにはしっかり覚える予定やから、堪忍な？

昔、俺は此処に住んどったんやけど。
10年くらい前に逃亡・・・やない、旅に出たんや。
めいンことは・・・どうやったやろなぁ。女の子は変るから分らへんし。

親友いたはずなんやけど、名前なんやったかなぁ。

菜叉じゃない！戻ってきたのね。
憶えてる…？

もう一人は…誰……？

［禊の後らしく、白装束はずぶ濡れだった］

…ふぇっくしゅ！
……む、このような夜分に人が揃って…ずっと人の声が聞こえていたと思ったが、そのせいか。

[弦琉丸と菜叉にも微笑み、同様に自己紹介をする]

oO(菜叉殿はこの村の出身か…
そして弦琉丸殿も何か深い縁(えにし)を持っている様子…)

音麗……眠れないの…？
凄い、びしょ濡れよ。風邪引かないようにね。

[紗都はもう一人の村人（鈴也）に自己紹介した。]

［九韻示は、追い迫る検非違使を夜の闇を纏いてなんとか巻いた］

ったく、俺が殺ったんじゃなく、鬼の仕業だって言うのに、聞く耳も持たないのかよ、彼奴らは…。

しっかし拙ったな。あの岩が割れるのを防げなかったとは…。

踊り子はん？・・・さま付けは堪忍な。
俺にはそれは、似合わへんよ。
呼び捨てでえぇから。

[笑って返した]

[弦琉丸は旬霊春麗に目を遣り、軽く会釈をした。]

む、神道の娘さんか…。
あなたもこの村の住人で、この神社を守りしものだな。

[晴暗は自己紹介をした]

紗都様…こんな姿で失礼致しました。
雑念を払おうと禊をしておりました…。

初めてお目にかかる方もおられますね。
すぐに着替えて参ります。

10年位前だと…めいはちょうど移ってきた頃かな。
その頃のことよく覚えてないんだ、ごめんなさい。

[めいは、菜又に明るく微笑みかけた]

ん？・・・あーっ！
紗都やろ。鬼っ子言われとった。
懐かしいなぁ。元気しとったか？大きなったなぁ。

[相手を見て微笑を浮かべ]

鈴也やな。すずなりすずなり・・・、よし覚えた。
[頷き]

菜叉…でよろしいの？

殿方に呼び捨ては…
なかなか慣れないものですわね…

でも、よろしく…菜叉。

誰か居るのかい？
こんな夜更けに…。

［九韻示は、検非違使を巻く為に一度村を遠く離れ、再び戻って来た…鬼の封印された岩の在った村に…］

憶えてたんだ……
もう…あんな小さい頃の話でしょ。鬼っ子だなんて酷い話よね。

[紗都は笑って話を誤魔化した。そして、背後から聞こえてきた男の声に振り返った。]

構わへんよ。俺もガキん頃のことは頭ん中に霧が掛かったみたいにあんま覚えてへんし。
これから、仲良くしたってな？

[つられたように、めいに笑いかけた]

晴暗殿…
確かに、陰陽寮に出仕していたこともあったが…
あの場に渦巻く人の業…思念…
私はかようなものに縛られるのは嫌いでな。

──げに恐ろしきは…人よ。
鬼や物の怪共よりも恐ろしく、おぞましきもの…

この地に参ったはその業より逃れるため。
だが…私の縁(えにし)からは逃れられぬということよ

[増えてきた人々にも同様に自己紹介をした>>230]

様付けされるのは慣れへんし。
呼び捨ての方が親しみやすくてえぇやろ？
こっちこそ、よろしゅうな。

で、踊り子さんは名前なんて言うん。

[弦琉丸は話に興ずる者達の輪を離れ、鬼魂岩の傍によりそれに触れる。
だがそれは、辺りの風に澱みを醸し出すものの、既に間違いなくもぬけの殻となっていた。]

俺は鬼ッ子なんて言うてへんよ。
あの言い方、好きやなかったからなぁ。

［細く息を吐くと、同じように赤い髪の男へと視線を向ける］

先ほどは大変失礼致しました…。
雑念も穢れもろくに祓えぬ未熟者ゆえ、どうかご容赦の程を…。

この神社の巫女をしております、音麗と申します。
霊的なお力をお持ちの方が、多数おられるとお見受けいたしますが…やはり、これは岩が割れた影響です…ね。

陰陽師に、鬼子に…奇妙な集まりだな。
まぁ、俺も人の事は言えないがね。

［腰に下げた普通の刀より遙かに幅広の野太刀の柄にてを掛け、やや遠巻きに皆を値踏みするような目で見据える］

音麗、お帰りなさい。
だいぶ…揃ってるみたいよ。

[紗都は九韻示に自己紹介した。]

[燃えるような赤毛の男の姿を認めて鈴也は目を僅かに細めた]

…ほう、この村の縁(えにし)に結ばれたものがまだおったとは。
察するに盗人…いや、違うか。

[鈴也は九韻示の気を探っている]

九韻示……
鬼子って私の事…？

私には「紗都」とい名が在るわ。
これからはそう呼んでね。

[紗都は九韻示にやや鋭い視線を送った。]

ん…？

［皆の視線を感じ、口を開く］

そうだな、九韻示と名乗っておくか。
一応、此奴で飯を食っている。

［と、用心棒とでも言いたいのだろうか、腰に挿した野太刀を左手で軽く叩いた］

呼ばれた……のだな。

[弦琉丸は跪き岩に触れたまま、静かにそう呟いた。]

紗都…だな。縁があるかどうかは、知らないが宜しくな。

[めいは、九韻示の髪をじっとみている]
私はめい。
あなたも…旅の方…？

ふ…縛られるのは辛いものだな。
宮廷に渦巻く業。彼らが穢れを生んでいるといっても過言ではない。
自然な死ではなく、策による謀殺…
それがなければ鬼も生まれることはなかったろう。

[晴暗は(私もそれに手を貸したことになるのだがな…)と心のうちに思いつつ、ふと一瞬鈴也から目線をそらした]

誰もが天命を持つと言う。
鈴也がこの地に隠居していることも…
何かの因果かもしれん。

九韻示、と言うのか。ふむ…この辺りにいるものは一通り吸い込まれるように集まっているようだな…。

私は…伽羅。

私を育ててくれた、旦那様につけられた名よ…
踊りが得意なの。

菜叉さ…菜叉は、何か楽器はできる？

さっきは聞きそびれたが…神道のお嬢さん、名前はなんとおっしゃるのかな？

旅というか…まぁ、そんなもんだ。本当は目的が在ったんだが、それをちょっと無くしてしまってね。

ん？この髪が気になるか？
血で染まってるだけだ、気にするな。

[紗都の心は更に濃い霧で覆われた―――「鬼子」…蘇る、憎しみ…先程まで斬鳩に触れていた時は、一瞬其の霧も晴れた筈だった。

―――私は…この輪に居てはいけない。そう心に誓うと……]

屋敷に戻るわ……

［九韻示と音麗に自己紹介をした。］

・・・ん？九韻示はどっかで見たことある顔やなぁ。
どこやったかな。

[首を傾げた]

［九韻示の言葉を聞き、吸い込まれるように髪に手を伸ばした］

………血？

冗談だ…ちょいと訳ありでな。
返り血を浴びて紅い訳じゃないぜ。

[闇の中松明を片手に馬に乗って村へ入ってきた]

吾馬殷殿！
大変でござる！