自警団長 アーヴァイン
ふむ……まだ集まっていないようだな。 今のうちに、もう一度見回りに行ってくるとしよう。
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村長の娘 シャーロット 叔母様…?聞きたい事があるのですが… 嘗て父と母が殺された時、鬼以外にも「鬼隻」という者も居たんでしたよね?それはどういう…… 「鬼隻か。鬼に自らの心を捧げた狂えし者だ。鬼に憧れるながらも自分を呪っていると言われている。」 あの鬼魂岩に封印されていたのは、鬼と鬼隻だけですか? 「他にも居る。神子…鬼を封印した高名な能力者の家系に生まれ、鬼の呪いにかからない者。告鬼…鬼の魂を宿す者を見極める力を持つ者。見鬼…死者の魂を見極める力を持つ者。退鬼…鬼を撃退する能力を受け継ぐ者。昔、鬼退治をした際に全ての力をあの岩に封印したんだ。鬼や鬼隻と共に……。」 では…あの岩が壊されたという事は、鬼や鬼隻以外の力も封を解されたって事ですね。 お話聞かせて頂いて有難うございます。 [紗都は小さな蒼の巻物に叔母から聞いた話を書き留めた。] | |
(102)2005/06/19 19:05:14 |
のんだくれ ケネス [深く木々の生い茂る山間の道を一人の男が歩いていた。年の頃は自立(三十歳)を迎えるかどうかという所だろう。ざんばらの髪、いくらか髭を蓄えている。黒く染め上げられた着物を纏い、暗がりの中に溶け込むかのうような風貌であった。 木々に遮られ僅かな月明かりのみが照らす夜道を、しかし、男は確かな足取りで歩を進める。 ――村に近づく度、緩やかに吹く風の中にえもいわれぬ濁りのようなものが濃くなって行く。道行の中、ある時を堺に風に混ざり始めたそれは彼岸から運ばれてくる匂いであるように男には思えた。幾重にも幾重にも塗り重ねられたような……連綿と途切れる事無く繰り返された、暗く重い情念の輪廻がもたらす、ちりちりと首筋を冷たく焦がすような気配が風に乗って漂っていた。 男はそれを肌で感じながら、しかし、何事でもないかのように、山道を村へと向かって行った。] | |
(151)2005/06/19 21:34:35 |