人狼審問

[マンジローはトビーを真っ直ぐ見つめて答えた。]

彼は過去に、自らの欲望の為に人を殺め、その事を恥じてもいないと聞いた。
そして俺自身も、彼と言葉を交わして同じ印象を受けた。

…人として許せぬ者を切った。それだけだ。

[ウェンディはリックとメイにそっとささやいた]

……時間になったら、すぐに此処を離れよう。
此処に残るより、外の方が安全じゃないかと思うんだ……。
村の方に行けば、隠れる場所もいっぱいあると思うし……。

「人として、許せぬ」？

僕たちは、「人狼」を殺さなきゃいけないんじゃ、ないの？

[ステラは、ふと自分の名前が書かれた箱を見つけ、それに中をあけた。ルーサーに教えられたとおり、支給された食料を入れ、リュックを手に持った。]

……マンジローさんが、「人狼」。

そうなんだね？

[マンジローの言葉に、ギクリとした]

…人…として斬ったのか？！

人である「俺」が、許せぬ「人では無い者」を切った。

…こう言わねば分からんか？

証拠にはならない。だが俺にとってはこれで十分だ。

どんな言い訳をされても聞かないつもりだったが、まさか開き直るとは…。

ああ、ある程度はこうなる覚悟もしていたからね…
[クインジーにささやくと音も立てずに立ち上がる。
そしてクインジーと共にカミーラとマンジローに歩み寄った]

……だから言わんこっちゃない。

[ヴィンセントは、マンジローの放った言葉によって、広がった動揺を見て、大きくため息をついた。]

……サテンは、滑りやすい生地ですわ。

[そう言った後で、ギルバートの顔をじっと見つめた。]

ギルバートさんは、リボンがもし私のものだったとしたら、同じ事を私に言うのですか？

[メイはウェンディにうなづいた]
ここをすぐに離れよう。でも、森の方に身を隠してもいいと思うよ･･･。誰が人狼かわからないから、身を守るために戦うしかない｡森なら罠を仕掛けれると思うんだ。
[メイは小声でウェンディとリック、ラッセルに話し掛けた。]

[ステラはリュックの中にキラっと光るアイスピックが入っているのを確認した後、ヘンリエッタをかばうように、ギルバートの前に立ちはだかり、無言でギルバートを半ばにらむように見つめた。]

許す、許さないの問題なの？

じゃあ、昨日マンジローさんがしたことは、正しいことなの？
それって、誰が決めるの？

……「人狼だから」じゃない。

「殺す理由をつけやすかった」ハーヴェイさんを殺した。そうなんだよね？

愚か者はほうっておけ、シャーロット。
愛する者を見捨てて逃げたような──おまけに次の日には新しい女をつかまえてくるような男だ。性根が腐っているんだよ。

俺は、自らが正しいと思うからこそ斬った。

その俺を「お前が」正しいと思うかどうかは、お前が決めろ。

メイは人間だとわかっていたのに殺す気では･･･なかったよ。
[メイはトビーとハーヴェイに申し訳無さそうにうなだれた。]

シャーロットの物ではなければいいと思っていた…

君が…、人狼とは思えない。
人狼とは邪悪な獣。君とは正反対だ。

トビー…待てよ。
マンジローさんだけが、ハーヴェイを殺したわけじゃない…。オレ達…全員で…やったこと、だ…。
[口調が震える。]

時間だ･･･。

[ミッキーはそう呟いて立ち上がり、口論をする者を尻目に一番最初に外へ出て行った。]

ギルバートさんが人間ならば、セシリアさんを守ってあげて欲しかった……。それに、ミッキーさんとあなたが同じ人間である事が明らかなら、自分が人狼に狙われる可能性もあったのに…。

[シャーロットは、気弱なステラがアイスピックを構えている事に気がついて、驚いた。]

[マンジローはトビーの目をじっと見つめて言った。]

…信じるかどうかはお前次第だ。

俺はハーヴェイを「人では無い者」…人狼と信じて斬った。
その事に、迷いや後悔は無い。

……分かった。マンジローさん。

僕のことは、僕が決めるよ？

[カミーラはマンジローに小声で答えた。]

残念だけど、ナイフ一本だけさ。まずいね、これは。

やれやれ。ギルバートは根拠もなくシャーロットを信じるのか。
女を口説く腕だけは一人前だな。

リック。
僕はマンジローさんの言っている意味がわからないだけなんだ。

「人狼」なら……とにかく理由をつけて「殺し易い人間」を殺すと思った。それだけだよ。

……私は、ギルバートさんも、おそれなく意見を言うヘンリエッタさんも人狼とは思えないのです……。
[周囲の動きを気にしつつも、シャーロットはこれだけはと、言葉を続けた。]

[カミーラに小声で囁く]

…母の形見だ。必ず生き残って返せ。

どうしてハーヴェイさんを人狼だと思ったの？

……麻薬を使ってたら人狼なの？
むしろ僕には「人らしい」行為に見える。

だって人狼になると、運動能力があがるんでしょ？　シャーロットさんが言ってた。

[カミーラは、トビーを憐れみの目で見た。]

…昨日、誰を選んで殺しても、そいつを信用するヤツは殺したヤツをなじっただろうよ。自分で手を汚さずに生き残ったヤツが、その役目を背負った人間に悪態をついてるってわけさ。

下らないね、まったく。

[マンジローに小声で声をかける]
昨日、カミーラとちょっとした約束をしましてね。
助勢させてもらいますよ…？

[そう言うとマンジローをフォローする形で横に並び、クインジーとカミーラを後ろにかばうように立つ。
そしてカミーラにささやきかける]
現段階で昨日の話は有効、ということでいいですね？

[トビーはハーヴェイの言葉を聞いている。]

[『さあトビー、生き残る方法を教えてやろう』]

[ハーヴェイの冷ややかで魅力的な笑みが、鮮やかに目に浮かぶ。]

トビー。メイもハーヴェイさんに入れた。こんな異常な状況で妙に余裕を感じていたように感じたから。
[小声でトビーに続けた]
トビーを死なせたくなかったからだよ。ハーヴェイさん、最後はトビーを庇っていた･･･。ハーヴェイさんも同じ気持ちだったとしたら、人間だったと思う･･･。ごめん、ごめんね。でも、今はハーヴェイさんのためにもトビーは生き残らないと･･･駄目だと思うよ。

けっ、都合のいい野郎だぜ、ギルバート。
女だったら誰でもいいみたいだな。
ま、どっちにしろ馬鹿は早死にするだろ。
疑って損したな。

[ウェンディはトビーから視線をそらしつつ言った]

トビー、こんな事は言いたくないんだけど……トビーは昨日、誰も選んでなかったよね。

選ぶのが正しいのかどうかはともかく、選べなかったトビーが、マンジローさんを責めるのは……何か、違うと思うよ……。

メイさん……ありがとう。
メイさんがハーヴェイさんに投票した理由は、分かるんだ。

時間か。

ステラ、ついてこい。
あんな男といても、ろくな結果にならんぞ。

[またしても唐突に、テレビから場にそぐわぬ優雅な調子で葬送行進曲が流れだし、女性によるアナウンスがはじまった。]

『では、皆さんお時間でーす。
今から、好きな場所に移動して、殺し合いをはじめてくださーい。
前述のルールの通り、最初の１人が殺されたなら、合図に花火があがりますので、それ以上は殺し合いはルール違反です。死にたくなかったら気をつけてね？

では、楽しい素敵な殺しあいを！
』

[アナウンスは相も変わらず、理不尽にプツリと切れた。]

そろそろ時間か…

僕はマンジローさんを責めてるんじゃないよ。
マンジローさんが人狼じゃないかと思ってるだけだ。

確かに僕は昨日、誰も選べなかった。どうしたら良いか分からなかった。
でも、今は、どうすれば良いか分かってる。

人狼を、殺すんだ。

生き残るために。家に帰るために。

はじまったね…

[カミーラはぽつりと言った。]

きたか。

俺は生き残ってやる！！

……、時間ですね……。

お供させていただきます。

[自分の無意識の行動を悔いるようにギルバートとシャーロットに軽く会釈をして、ヘンリエッタの後についていった。]

くっ！
すまない、メイ。僕はトビーを守る。

殺して、やる･･･ッ。

…相変わらず悪趣味なアナウンスですね…

協力しよう。ついて来てくれ。

[流れ者 ギルバートは、シャーロットの手を取った。]

トビー、どこに行くんだ！

[カミーラは、おもむろに小太刀をリュックから出した。そして刀身を抜こうとしたが… どうしても抜けなかった。]

…こ、これ、どうなってるんだい?

ラッセル！トビーをお願い！
[メイはそう叫ぶと咳き込みながら二人を連れて森の方へ向かった。]

始まったな。
本格的な殺し合いが……。

[シャーロットは、残された片手で、クロスボウを安定した角度に持ち直した後、ギルバートに訪ねた。]

どこへ？

ラッセルさんっ！！

[ウェンディは、ラッセルがついてこない事に気がつくと声を上げた]

マンジロー、改めて意思を確認したい。
私はカミーラとクインジーに協力すると約束を交わしました。
あなたがカミーラを守るというのであれば私と貴方は協力できると思いますが、どうですか？

[マンジローは、側にいるカミーラ・クインジー・ルーサーに声を掛けた。]

…俺から離れていろ。
俺は…トビーを待つ。

俺は剣、君は弓。どこでも戦える。

[シャーロットに囁いた。]

森で少し作戦を練ろう。

窓から出よう。
正面から出ていっていきなり狙撃でもされたら冗談じゃない。

[カミーラは小太刀の鍔を鞘を持って引っ張りながら叫んだ。]

マンジロー、あんた、まさか…!!

[走り去るトビーの背中を思い出し、「生き残る」「家に帰る」という言葉を反芻した。トビーが、まぶしく見えた。同時に、マンジローを思い出し、胸が痛んだ。]

[ギルバートへ]
森ならば、裏のゴミ捨て場からまわった方がよいでしょう。

[ふたりは、森へ向かった。]

トビー･･･ラッセル･･･。死なないで･･･！
[メイは二人を引っ張りながら祈った。]

[マンジローはカミーラに被りをふった。]

…殺しはしない。
だが、あの子は今、俺を憎む事で生きようと考えている。
あのこの為にも…俺が逃げるわけには行かない。

皆、よく動くことだな……。
ステラ、その辺りの物陰に隠れてろ。

[トビーはハーヴェイの部屋で、リュックから手斧を取り出した。]

マンジローさんの刃物……とても長い。

あれに正面からこんな斧で立ち向かって、勝てるはずが無い。

……みんな、本当にやる気なのでしょうか……？
だとしたら……凄く、凄く、恐ろしいことですわ……。

[ヘンリエッタの言葉に従い、物陰にそっと身を隠した。]

[カミーラは、小太刀の鞘をリュックに突っ込むと、刀の造りを慎重に見定めた。]

意外と長いね。そして重い…

[トビーはハーヴェイの声を聞いている。]

『騙されるなトビー。奴は俺を人だと思って斬った。俺には分かる』

『あいつは自分の弱さで俺を斬ったのだ。誰かを斬る事で自分が斬られない事を選んだ』

『生き残れ、賢いトビー。たった一日だったが、俺は君に全てをくれてやったつもりだ』

[メイはウェンディが疲れているのに気付くといきなり背負って走り出した。]
はぁ・・・はぁ･･･。
森に行ったら、こちらからだけ見通しのいい場所があるから･･･はぁ・・・はぁ・・・。そこに隠れていて。
メイは罠を作るよ。

[走りながら、シャーロットに話し掛ける。]

皆で自由に殺し合うなら、隠れてやり過ごすのが一番堅実だ。

今日の昼間に森に行って、地形はあらかた覚えた。
しかもこの雨だ。足跡も洗い流してくれる。

[トビーは、ハーヴェイの自信に満ちた表情を浮かべる。]

[昔からトビーが望んで望んでしかし手に入れられなかったものを、ハーヴェイは全て持っているように見えた。]

…場所はどこにしますか？
マンジロー、貴方のスタイルに合わせましょう。
集会場でやるわけには行きませんし、すでにほとんどの人が移動しています。
出たところで奇襲をかけられかねません。
あと、私の武器は銃ですから、そのつもりでお願いします。
[そういうと周囲を警戒し始めた]

【ヘンリエッタは集会所の影に立ち、隼マルケスを見張り番として集会所の風見鶏に止まらせた。抜き放たれた蛇腹剣は鞭のように垂れて、金属色の暗雲を照り返している。】

ト、トビー…今夜だけでもいいから、僕を信じてくれ。
一人では無理だ。一緒に行こう。
[両手をトビーの前に差し出す]

さて、誰か私を殺そうという者がいるか？

[マンジローは暫し考えを巡らせると、ルーサーに言った。]

…とりあえずは、厨房にでも隠れていてください。
あそこなら窓も無いし、外から狙われる事は無いでしょう。

…その後の方針は、また落ち着いてからで。

……ラッセルさん。僕は……僕は、マンジローさんを殺すよ。

ラッセルさんは、メイさんや皆を、護ってあげて。

メイさん……ごめんなさい……。

[少し考えながら、ギルバートに向かって、]
私は、ルーサーさんか、ヴィンセントさんを見つけて、早期に狙撃するつもりでした。理由は、おそらくどちらかが政府の関係者だと思われるから。

クロスボウなら、距離があっても的確に急所を狙えますし、狩猟は子供の頃からやっていましたので。

[突然現れたミッキーの巨体に怯むが、構わず体当たりを仕掛ける。]

…！！　どけよ！

ソコを、どけ・・。
僕は、ソイツを、その双子の兄のほうを、殺しにきた。
僕は今日、ずっと全員の行動を見ていたんだ・・・。
誰かが、人狼なんだ・・。僕は、ソイツが一番人狼だ、と思った。
だからソイツを殺す・・・。

邪魔を、するな・・。

[ミッキーはナイフを右手に、左手にフォークを持ち、三人の前で仁王立ちをしている。]

…ここでやる気ですか、いいでしょう。
見届けさせていただきますよ。
[マンジローにそう声をかけると少し後ろに下がる]

[メイは森にたどり着くと中央の泉のやや北西の木に向かっった。]
はぁ・・・はぁ・・・。あの木ね、ここから見た目以上に大きくて、幹に人が2〜3人隠れられる穴が２つあるんだ。はぁ・・・はぁ。ここに来た次の日に食料を置いておいたから･･･そこに、隠れてて・・・ね。はしごはあるけど、登ったら引き上げて。
はぁはぁ・・・。

[クインジーは自分の武器を改めて確認した]
とにかく、もっとマシな武器を奪わなきゃならねえ。
これじゃ、単独行動は危険ぎるわ。

[マンジローとルーサーのやり取りを見終え]
よし、厨房だな。
早いとこ隠れようぜ。

……唐突にこんなことを言っても意味がわかりませんね。

[シャーロットは口唇を引きつらせて苦笑すると、説明のために再び口を開いた。]

[カミーラは、トビーが武装しているのを見て沈痛な面持ちになった。]

マンジロー… 気は緩めるなよ。

って！？
どいて、ミッキー！
[メイはミッキーを振り切ろうとしたが疲れていて振り切れない。]

クソ･･･やっぱりお前が、人狼かぁ！

[ミッキーは立ち上がるとナイフを振り上げ、逃げる三人を追いかけた。]

…クインジー、大丈夫ですよ。
マンジローが負けることは無いでしょう。
おそらくここにいたほうが安全です。
[声のトーンを落としクインジーに言葉を続ける]
最悪な場合、私がトビーを射殺しますから…

メイさんっ！もう走れるから私を降ろしてっ！

駄目だよ、ミッキー。
お願い,そこを通して。

[カミーラはクインジーに耳打ちした。]

クインジー、あのさ… ルーサーには気を付けた方がいいよ。なにか妙な感じがするからね。

[ウェンディは倒れるリックに気がついた]

お兄ちゃんっ、メイさん、お兄ちゃんがっ！

[がらんとしてしまった集会室で、覚悟に満ちた表情で仁王立ちになっているマンジローに、ヴィンセントは静かに問いかけた。]

いいのかい？マンジロー君。
トビーが来たら、君はどうするつもりだ？
君が彼をあやして、時間を時間を稼いでいられれば、ひょっとしたら何処かで殺人が行われるかもしれない。

アンタはなんでそう、人を信用出来るんだ？
僕は誰も信用しない・・。そう、全員が人狼かもしれないんだ。・・・バカじゃないか？

ギルバートさんが人間で、ここが集音の可能性が集会所内よりも低い森の中だから言えることですが……、

[シャーロットの声もそこで囁きにかわった。]

昨日思い出した事です。
人狼プロジェクトには、最終的には驚異的な身体能力を持つ人狼の遺伝子を利用して、兵士の開発を目指す目的がありました。
私が、前回病院で意識を失いかけた時に、そういった会話が聞こえてきましたので。

おそらく、モーガン博士を詳しく知っている様子から、ヴィンセントさんは、かつて（もしくは今も）その生体実験に関わっていた医師ということになります。

誰が人狼でもおかしくないけど、メイは自分で信じたんだから自分で責任を持つんだよ！
[メイはウェンディをおろすと手近にあった棒を手に持った。]
ごめん、ミッキー！
[メイはウサギを狩った要領でミッキーに棒をぶつけた。ミッキーの顔に当たってミッキーは伸びた。]
･･･ウェンディ,リック、行こう、早く、隠れないと。

くそっ！武器が無いっ。
マンジローの刀に、トビーがあの手斧で勝てると思えない。
何か、何か…。

クソ･･･僕は、絶対に、殺して、やる・・。

[ミッキーは気絶した。]

[カミーラに答えて耳打ちする]
あたりめーだ。俺にも銃火器があるんなら、何者かもわからん他人を頼りはしねぇが、今はこんな武器しかねえんだ。手榴弾の威力なんてよくわからねえしよ。

とりあえず生き延びなきゃならん。だから、ルーサーと協力するんだよ。

[トビーは廊下で、リュックから、薬の入った小瓶を取り出した]

ハーヴェイさん……僕は、あなたみたいになりたかった。ずっと。

[トビーは震える手で注射器に薬をとると、腕に針を突き刺し、一気に押し込んだ]

な、何だと…

[はっとして、慌てて声を潜める。]

人狼の遺伝子…
その話が本当なら、ヴィンセントさんはこのプロジェクトの意味も目的も、何もかも知った上で参加している事になるな。
全くフェアな戦いじゃないぜ。

[ウェンディは目を細めて呟いた]

ミッキーさん、お兄ちゃんを殺そうと思ってるんだ……。

[ミッキーの投げたフォークはリックの頬を削り、回転しながらリックの足元に落ちた。]

…誰も信用できなくなるのが、一番怖いって、解んないのかよ！！

[リックは、意識を失ったミッキーに悲しげに叫んだ。]

まだ中に人が残っているようだな……。

……今は、何も無い人間かもしれませんが、他に犠牲者を出すくらいならば、私は彼を殺そうと……。

ルーサーさんはまだわかりませんが、あの場で一番信用の出来ない人間だと思いました。彼は利害のために他を利用し、最後には見捨てるでしょう。

[シャーロットは、そこまで一気に話すと口を閉じた。]

[トビーは注射器と薬を大事そうにリュックに仕舞った]

[直ぐに、トビーを飲み込む大きな波が来る]

[自分の体が、自分のものではないような不思議な感覚に襲われる]

[意識的に大きく息を吸い、吐き出す]

中に人が……？
……中ではやっぱり……。
[嫌な想像を振り払うように、言いかけて首を横に２,３度振った]

[……いつのまにか、手の震えが収まっている]

[メイは木の根元までたどり着いて二人に言った]
上の方の穴に隠れてて。
メイはこの辺りに近づけないように罠を張っとく。死なないけど,動けなくなるようなのをね。
[メイは罠をしかけに移動した。]

[流れ者 ギルバートは、立ち止まった。]

どうやら誰も追って来ないようだ。集会所で戦っているのかもしれない。

そのクロスボウの射程距離ギリギリまで集会所に近付き、出て来た物を狙撃するという案はどうかな？

どんな理由であれ、殺しあう事を簡単に覚悟できるというのは、恐ろしいことだ……。
人というのは、そんな愚かな生物ではないと、私は思っていたんだが……。

[ヴィンセントは、誰かの気配を感じた窓めがけて、キャンディーの缶を投げ付けた]

うん、解ったよ。
お兄ちゃん、先に上って。私は周りを見てるから。

[ウェンディはリックを促した]

……ヴィンセントさんが出てくればよいのですが。

ラッセルさん。

……メイさんを、護ってあげてね？

よし、じゃあ少し戻ろう。

[ガシャン！窓ガラスの割れる音が、集会室の中に響くいた。ヴィンセントは、身じろぎもせずに立つマンジローに、もの言いたげな視線を向けるが、マンジローは彫像の様に、微塵も揺るがずにその場所に立っている。]

[マンジローは、素早く位置関係を確認した。寝室に続くドアまで5m、傍らで悠然と眺めているヴィンセントまで…3m！]

無理矢理つき合わせてしまって、ごめんなさい。
私はもう、無くす物はなにもないから、気がつかなくて……。

[シャーロットはギルバートに向かってそういうと、立ち止まったまま、睫毛を伏せた。]

[ヴィンセントは、あきらめ顔でタバコに火をつけた。]

選択肢はある。それだけのことだ。

……マンジローさん。

人狼なんでしょ？

あぁ。勿論だ。
[トビーの目に狂気が宿っているのが見えるが、気にせずに続けた]

これを、渡しておく。

いいんだよ。君のその気持ちだけで十分さ。

[流れ者 ギルバートは、シャーロットを抱きしめようとしたが、思いとどまった。]

[息を呑んで対峙する2人を見ていたが、ふとトビーの異変に気付いた]
あの目は……ハーヴェイと同じ目だ。
あのガキ、やりやがったな……。

トビー……。
サムライに挑むつもりか……？

無理だ。

ありがとう。
シャーロット、君と出会えてよかったよ。

[ギルバートは微笑んだ。]

[トビーに続いてホールに入り、周りを見渡す。マンジローと退治するトビー。そして…箱を開けるときに使った鉄パイプを見つけ、周囲を伺う。しかし迂闊に動けない]

[ラッセルの視線の動きから鉄パイプに気がつく]
…クインジー、ラッセルの動きに気を配って置いてください…

始まったか……。
私の目には、どちらも人間に見えるが……。

[ヴィンセントの叫びに相前後して、トビーがマンジローに躍りかかる]

マンジロー！
君が手を下すまでもない。彼は、彼は！

[マンジローはラッセルに向かって呟いた…]

…峯で打った。
骨が折れているかもしれん…連れて行って手当てしてやってくれ。

てめえ、何をしようとしている！

トビーーー！！

マンジロー！許さん！！
[のそりと立ち上がり、鉄パイプを握りなおす]

殺さなかったか。
甘いな、サムライ……。

ラッセル、トビーは死んじゃいないよ!

…早く手当してやらないと。

[ヴィンセントは、マンジローの打ったという言葉を聞いて、トビーに駆け寄り、そっと仰向けにして脈を取った。]

[トビーは目を開けた]

[薬のお陰で、痛みを感じない]

[ヴィンセントの手を振り払って起き上がり、ラッセルに気をとられているマンジローの頭めがけて、斧を一思いに振り下ろした]

[マンジローの言葉に、ハッとする。確かに血は流れていない]

…どういうことだ？

このガキ……薬をやってたな。大丈夫か？お医者さんよぉ。
ハーヴェイに何を教え込まれたんだか。
ちょっとかわいそうに思えてくるな……。

[トビーの手から落ちた斧を、遠くへと蹴りやる]

…もう止めろ、トビー！
勝負はついた！

マンジロー!!

[カミーラはトビーから斧を奪い取った。]

[ヴィンセントは、反射的にトビーの腕にすがりついた。トビーの鼻から血が流れていることに気覚く。]
トビー！トビー！動くな！
君の体はもう薬に耐えられなくなっているんだ！
やめるんだ！もう動いてはいけない！

…あんた、ヤクをやってんのかい…

[カミーラは哀し気に呟いた。]

シャーロット、ここにいると殺し合いなんて嘘のようだね。こんなに静かだ。

全てが夢だったらいいのにな…

[カミーラに組み敷かれて天井を見上げながら、トビーの頭の中にはずっと、ハーヴェイの声が響いている]

『大丈夫、お前ならやれる』

『勝負は運でも実力でもない、執念で決まる』

[マンジローは、ヴィンセントの言葉に目を大きく開いた。]

…ハーヴェイの…薬か…？
なんて事を…！

……ギルバートさん。
私もなにもかもが嘘であればと思います。
森の中に居ると…まったく違った森ですが、ふるさとのイングランドの森を思い出します。あの頃は……。

……でも、集会所にもどらなくては。

[流れ者 ギルバートは、シャーロットの手の温もりを感じた。]

イングランドか…。あの頃？

[少し引っ掛かるものを感じたが、口には出さないでおいた]

戻るか。

駄目だ……。脈が乱れてきた。

[ヴィンセントは、いまいましげに拳を握りしめた。]

[トビーは、残る全ての力を振り絞ってカミーラを突き飛ばした]

[同時に、リュックから注射器を取り出す]

[さっき使用した残り、原液のPCPが充填された注射器を持ち、マンジローに近寄りその背中に打ち込んだ]

ハーヴェイさん……。

[トビーは、その場に崩れ落ちた]

結局、誰も死なずじまいか。
全員「処理」されるのは願い下げだな……。

[心がほどけそうになった事に、少しの罪悪感をおぼえながら、シャーロットはギルバートと共に集会所に戻った。]

[崩れ落ちたトビーを見つめ]
こいつは、もう殺してやったほうがいいかもしれねぇな……。

…静か過ぎて、逆に不気味だな…。

[葉ずれの音が不気味に鳴り続けている。]

…ヴィンセント、容態は…？
[そう話かけるとトビーの近くまでやってきた]

マンジロー! あんた大丈夫? 気分は? 気分はどう?

[ヴィンセントは、崩れおちたトビーの脈を見る。トビーはまだ、小さく痙攣しているが呼吸は不規則になり、脈も不確かなものになっている。]

……もう駄目だろう。
これも殺しあいにカウントされるなら、そうこうしているうちに花火があがるんじゃないか？

[ヴィンセントの声は、聞こえよがしに大きく、まるで誰かに聞かせている様な皮肉な調子で、周囲の人間を少なからず戸惑わせた。]

････。

僕は、絶対に、殺す･･･。

[ミッキーは罠らしき丸太が飛んできたが無視して歩き、リックの血の跡をたどって歩いている。]

･･･自分が信じたことに責任を持つというなら僕は、アイツを殺すんだ・・。

もう駄目ですか…
せめて苦しむ時間は短いほうがいいでしょう。
[そうつぶやくとコートの内側から銃を取り出す。
そして倒れているトビーの頭部に向かって射撃した]

[マンジローは呆然として、トビーを見下ろしていたが、ルーサーが銃を取り出したのを見て叫んだ。]

…止めろーーーーーーっ！！

どうやら、ケリがついたようだ。
ステラ、出てきてもいいぞ。

[クインジーは、ホールで共鳴し、鳴り響く銃声を聞き、今日が終わったことを理解した]
最後は、ヤク中か……。
おめぇもハーヴェイみたいに可哀そうなやつだったよ……。

牧師が撃ってから、二分たらずで花火か。
主催者の連中も、痺れを切らしていたと見える。

！

[ヴィンセントは息を飲んで立ち上がり、ルーサーを睨む。しかし、ため息をひとつついて肩を落とし、ソファーに向かった。]

[花火が上がったのを確認する]
このままだと殺した、と判定されなくて全滅する可能性があります。
ゆえにこうさせていただきました。
確実に明日を迎えるためです。
誰かがやらねばならない事をしたまでですよ…。

[血だまりができ、どんどん広がっていく。]

トビー…。どうしてこんな事に…
もっと死んでいい人間はいたはずだ。

ルーサー、あんた… なんてことを…

[カミーラは握った斧を床に突き立てると、肩を落とした。]

[ウェンディは、花火が上がった事を確認した]

……誰か、死んじゃったんだ。

[カミーラは目を伏せて呟いた。]

ハーヴェイ、あんたは死んでからも人を殺すんだね…

誰か、死んだか･･･ッ。

チッ･･･。

[ミッキーは、フォークとナイフをリュックに入れ、大木に崩れ落ちるように座った。]

誰かが、死んだの･･･？
[メイは木の上に向かって聞いた]
集会所に戻る？メイはしばらくここに居たほうがいいと思うんだけど･･･。食料はどうにかなるよ。
でも、ラッセルが心配なので、どっちにしても様子を見てくるよ！
どうするー？

トビー、……間に合わなくてごめんなさい。

[シャーロットは、ヴィンセントから視線をはずさないまま、呟くとまだ暖かいトビーの体にそっと触れた。]

確かに、あのままでは、殺しあいにカウントされなかったかもしれない……。
牧師さん。決断ついでだ。責任をもって埋葬してやってくれ。襲われた彼女もね。

[ヴィンセントは、煙草に火をつけ、消えて行く煙を追って虚ろな視線を遊ばせた。]

[ギルバートのほうに視線を向ける]
ならば問いましょう。
死ぬべき人間、とは誰ですか？
人は神の元に平等です。ギルバート、君はどうやって命の価値を決めるつもりですか？
つまりはそういうことですよ。

[ステラはそっと物陰から出てきた。]
聞かない方がいいのかもしれませんが……、誰が……？

[無言でトビーの亡骸を見下ろしていたマンジローの頬に、涙が伝った…]

トビー…

ハーヴェイの隣に…せめて…

牧師がトビーを殺した。

[ウェンディはメイに向かって答えた]

私も行きます。ラッセルさんが心配だし。
[言いにくそうな顔をして続ける]
……誰が死んじゃったか、確認しないと。

…ヴィンセント、ひょっとしてセシリアの遺体を埋葬していなかったのか…？
さすがに私一人の手には余る。
トビーのほうは私が責任を持って埋葬しておくがそちらは任せる。

[そういうとトビーの亡骸を抱え、集会所の外へと向かった]

オレはここで待ってるよ。今夜はもう…動きたくない…。

死ぬべき人間は、、、

[小さな声で呟く。]

俺以外の全員だ…

ミッキー。集会所へ･･･戻ろう。
誰が死んだのか確認しないと･･･。

……！！
牧師様が、トビーさんを……？
そんな……っ。

次に死ぬべき人間は誰か。明日の朝になれば分かるだろう。

今日誰と共に寝るか、または一人で寝るか、それが生き死にに直結する。

メイさん、その……誰が死んじゃったの、かな？

クソ･･･僕は、アンタらの事を信用してないからな。

[メイを後ろから睨みながらボソボソと独り言を言いながら歩いている。]

とにかくも、ゲームは続くようだ。
良くも悪くもな……。

クインジー… もう落ちついたよ、大丈夫。

[カミーラは、ふらつきながら立ち上がった。]

ウェンディ、わからない･･･。
ラッセルやトビーじゃないといいんだけど･･･。
･･･他の人の死んでいるのを期待するなんて。

[トビーの遺体をハーヴェイを埋めた所から少し離れたところに置く。
近くに放置してあったスコップを使い、小さな穴を掘ると遺体を横たえ、手を組ませて目を閉じさせた]

[小さく祈りの言葉をつぶやくと墓穴を埋め、近くにスコップを突き刺すと集会所への帰路についた]

牧師さま……が……。
……こんな最悪なゲーム、他に存在し得ないですわ。

それより、ヘンリエッタさん、お怪我はありませんか……？

あぁ？
私は平気だ。何もしていないからな……。
トビーが死ななければ、カミーラを殺すつもりだったが。

大体、アンタは何でその双子を庇っている？どこを信用しているんだ？何故、信用しているんだ？
僕はアンタが人を信用する理由が、分からない。

・・・それに、アンタは誰を殺そうとしていたんだ？

[メイを睨んで枝を踏んで折り、ウェンディのほうを振り向いた。]

おい、お前も何で自分の兄が人狼でないと言い切れるんだ？自分の兄だから絶対に信用出来ると思っているのか？

･･･僕は、誰も信用していない。
信用する理由が、無いからだ。

[ウェンディを一瞥した後、集会場の扉を乱暴に開けて中に入っていった。]

それなら……良かったですわ。
[ステラはとても安心ようにほっとため息をついた。]

カミーラさん……？
カミーラさんは……、人狼、なのでしょうか？

ハーヴェイか……。
あんな野郎につけ込まれるたぁ、トビーも可哀そうだねぇ。
[いい終えると、カミーラの側の斧を取り上げた]

[そして、頭の中でつぶやいた]
大丈夫だ、今日も死んではいない。
必ず生き延びてみせる。他を殺してでも、

[ヴィンセントは、無言でセシリアの部屋に向かった。かつてセシリアだった遺物は、まとめると非常に小さくなる。ヴィンセントは、衣類とメガネも一緒にシーツに包んで、厨房の勝手口から集会場の外へ出た。]

私はカミーラとクインジー、それに牧師が人狼だと思っているよ。あの三人はどこかで繋がっているフシがある。

ステラは気付かないのか？

[ウェンディは誰にも聞こえないように呟いた]

……私が信用してるのはお兄ちゃんだけ。
後の人は、どうだっていいよ。

[ミッキーの後姿を見つめ]

あなたはお兄ちゃんを殺そうとした……だから、私が殺してあげる。

[メイは悲しそうに呟いた]
自分の基準で誰かを信じないと、メイだってつらいんだよ･･･。でも、メイなりの理由があるし、多分正しいと信じないと、動けないじゃないか。
メイは･･･できれば誰も殺したくない。誰かを殺すのにためらいのない人間に･･･あの化け物が居る気がするから、メイは自分から殺すのはいやだよ･･･。
[ウェンディにも聞こえない大きさで呟くと集会所に入った。]

[集会所の扉を開けると中に入ってきた]
終わりましたよ…。
カミーラ、クインジー、大丈夫ですか？
あと、トビーの使っていた斧を回収して置いてください。
必要になるはずです。