人狼審問

[出てくる皆の気配に滝のように汗を掻きながら。
　だがそのまま硬直しているわけにも行かず。
　頭の中は完全に真っ白な状態のまま]

……行きましょう！

[半ばパニック状態でヘレナを横抱きに抱えると
　脱兎のごとくパーティー会場から飛び出していった]

(苦笑)

若いって、いいわねえ！！

──ヘレナを抱きかかえてパーティ会場から姿を消したアルベルトの姿を横目でチラリと見て。
カメラが群がる方向に背を向けてポージング。
そちら側には誰も居ない事を確認した後で。

…ま、ピエロにはこんなのがお似合いか。
…お幸せにな。お2人さん。

──そう、こっそりと呟いた。
──その表情にはほんの少しだけ寂しさの色。

…どうすっかな？どうせだし最後の一枚もいっちまおうかな？

──そんなことをチャックが考えている時に、ふいに背後から悲鳴が聞こえる。

なんだ？どした？

──悲鳴の聞こえた先から、一人のスタッフが恐怖に引きつった顔でよろけながら走ってくる。よくよく見れば、その姿は、ところどころ血のりがついていて。

『…フレディさんが！フレディさんがっ！』

フレディが、どうしたって？
だって、彼ならさっきまで、楽屋裏に…！


[ウェンディたちが楽屋裏に急ぎ駆け寄ると、果たしてそこに、ぐったりと倒れたフレディが横たわっていた。]

フレディ、しっかりして！フレディ！！


[ウェンディが男を抱き起こすと、ぬるりとその生温かい血が、彼女の服を濡らした。
身体の前面は無残にも引き裂かれ、血に染まったその死体の腹腔は、獣に食われたかのようにぽっかりと抉れていた。
その顔には醜い十文字傷が刻まれている]


[その様を見たウェンディは不意に、つっ、と血の涙を流した。]

…来る…


来た…！来たわ…！
助けて、あなた…！坊やたち…！

あいつらが来た、あいつらが来たのよ…！
村が…又、村が死ぬわ…！！


[ぞっ、とするような絶叫を上げた彼女の、その肌は透き通るように白く、眼は炎の狂気の様に、朱く輝いていた。]

[ウェンディは喚きながら、唖然とする全員を尻目に楽屋を走り去り、やがて舞台裏に一人立つと、そこに灯油を撒き散らし、ライターで火をつけた。

そして、めらめらと燃え広がる小道具と舞台を見ながら、狂ったように笑い、その場を後にした]

惨劇は、オワラナイ。


【―そして、人狼審問の幕が開く―】