自警団長 アーヴァイン
ふむ……まだ集まっていないようだな。 今のうちに、もう一度見回りに行ってくるとしよう。
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雑貨屋 レベッカ [テーブルには、山のように盛られたご馳走。 レベッカは、椅子に腰掛ける藁人形に向って、ひっきりなしに喋っている。] --どうしたの、ジョン、育ち盛りなんだから、たくさん食べなきゃ駄目でしょう? お兄ちゃんを見習いなさい。もっとも、お兄ちゃんは、もっとしっかり勉強しなきゃ駄目よ? ねえ、あなた。あなたったら、食事しながら本読むの、やめて下さらない! そうそう、今度、ジョンに机を買ってあげたいんだけど…-- [誰もいないダイニングで、空しく喋り続けるレベッカ。 彼女は、10年前、事故で夫と二人の息子を喪って以来、気が触れてしまったのだった。 現実を認識できない彼女は、10年前から時が止まり、昼は雑貨屋を営みながら、夜は無人の我が家で妄想の家族と生活を続けていた。] | |
(4)2006/09/13 01:02:52 |
医師 ヴィンセント −診療所− [読んでいた書物から目を上げて、ずれた眼鏡を指先で直した。 来患も居ない、静かな昼。 医者と葬儀屋と警察は、暇な方が良いのだろう。 珈琲でも淹れようかと、席を立つ。 僅かに片足を引きずって、ゆっくりとキッチンへ。 食卓に突っ伏したまま、幸せな夢を見ているらしい同居人の姿が目に入る。 既に少女という言葉が相応しい年齢ではないはずなのに、彼女を評するには少女と言う言葉しか浮かばない。] …おや、こんなところで寝ていては風邪を引きますよ? [仕方の無い子だ、と微笑ましく思いつつも、タオルケットをかけてやる。 いつもと同じ、そんな日常。] 「先生!いらっしゃいますか!?」 [そんな穏やかな時間を破るように、聞こえてきたのは若い自警団員の慌てた声だった。] | |
(15)2006/09/13 10:35:21 |
医師 ヴィンセント …森で、死体が? [団員から手短に事情を聞かされ、彼は眼鏡の奥の目を見開いた。 白衣を羽織り、往診かばんを手に取る。 既に遺体は自警団詰め所へと運ばれており、検視をお願いしたいとのこと。] ボクはそういうのは専門じゃあないんですけどねぇ…。 [それでもこの小さな村では、医者と呼べるのは彼一人しかおらず。 自然、専門外だろうが何でも診ることになってしまっているのだが。 片足を引きずったゆっくりとした歩みで、詰め所へと向かうと、浮き足立つ若い団員達が集まりこそこそと話しているのが見えた。 こんな事件はめったにない事で、血の匂いにも、命の尽きた肉体にも、慣れていないものが多いのだろう。] | |
(16)2006/09/13 10:43:54 |
医師 ヴィンセント [遺体にかけられたシートをめくると、その酷さに小さく声を漏らした。 血に染まった草色の外套。それを染める深紅。 ぐちゃぐちゃに食い荒らされた胴。] …コレはひどい。 [血を拭き取り傷口を調べながらも、こみ上げてくる嫌悪感に眉を寄せた。 この傷口…残っているのは噛み痕だろうか?] そうですね…大きな獣に襲われた形跡があります。 どれが致命傷だったかは、はっきりとはわからないですがねぇ。 [『人狼』。 忘れようとしていたその単語が脳裏をよぎった。 まさか、こんな小さく平和な村に。 同じ事を考えていたらしい自警団長の呟きに頷く。] その可能性は…高いと思いますな。 | |
(17)2006/09/13 10:54:18 |
逃亡者 カミーラ っぃた! [故人に思いをはせ、辺りを見るともなく歩いていた女は折れたまま突き出すように生えていた枝に手を刺してしまった。痛みに眉をしかめゆっくりと手を引く。] どうせなら…痛みも無ければよかったのに。 [手の平には確かに枝に穿たれた痕があった。 しかし、そこから流れるべき血は流れていない。 虚ろな肉のうちは。水が土にしみこむように。 気がつけば何事も無かったかのように塞がっている。] お兄様…会いたいのに…私は… そちらにゆくこともできない… [雨足は変わらぬまま雨粒が細かくなってきた。空気はいよいよまとわりつくように重くべたつきはじめている。 雨に打たれるままの衣服も髪も空気同様重く彼女の肌に張り付いて彼女の心に圧し掛かる。己の手をじっと見つめたまま、彼女はただ*立ち尽くしていた*] | |
(22)2006/09/13 15:26:47 |
書生 ハーヴェイ [...は上着の水を軽く払ってから、カウンターへと足を向けた] すみません、こちらで部屋を取る事は出来ますか? …あぁ、よかった。この雨の中で野宿は少々辛いですから。 [...は苦笑しながら差し出された宿帳を受け取った。 『Harvey=Douglas』 流暢なサインを入れ、ふと少し上に綴られた文字に気がついた。 『Quincy=Badluck』 直接の知り合いではない、だが聞いたことのある名前] …まさか、ね。 別にそこまで珍しい名前でもないはずだ…。 [...は首を振ってその考えを否定した。 そして鍵を受け取ると、そのまま部屋へと向かった] | |
(25)2006/09/13 17:11:09 |
見習いメイド ネリー [ふかふかのベッド。 真っ白のシーツ。 ふわふわの枕に顔を埋めて、少女は寝返りを打った。 隣にあるはずのぬくもりを抱きしめようとして、ふと、それが無いことに気がつく。 まだまどろみの中にあった意識を浮上させ、気だるげに上半身を起こして部屋を見回した] ……クイン? [目をごしごしと擦りながら、相方の名前を口にする。 窓を見やると、すでに辺りは闇に包まれていた。] やだ、こんな時間まで寝ちゃった。 またクインに呆れられちゃう。 [あわててベッドから這い出し、着替えを済ませて。 腰まで伸びた髪に乱暴にクシを通すと、手馴れた手つきで三つ編みにまとめる。 簡単に用意を済ませると、おさげを揺らしながらトントンと軽快な音を立てて、宿の階段を降りていった。] | |
(31)2006/09/13 21:40:18 |
お尋ね者 クインジー おう。サンキューな。 [クインジーは水を受け取ると、それを一息に飲み干した] ふぅ。人心地ついたぜ。 後は、適当に汗でも流してくることにするか。 後な、ネリー。 別に俺に付き合えってわけじゃねえんだ。自分の出来る範囲で、軽くでも何でもいいから運動しとけってこった。 ま、ブクブクに太っても俺は知らねえけどな。 [笑いながらクインジーはそこまでネリーに話しかけると、顔を酒場の主人であり、宿屋の主人でもあるフレディに向けて、言った] よう。フレディ。 いつも通り、水浴び場のほう使うぜ。 誰も今は使ってねえよな? [「ああ」という短い言葉を受け取ると、クインジーはネリーに空になったグラスを渡して、鼻歌交じりに水浴び場へと入っていった] | |
(38)2006/09/13 22:20:14 |
医師 ヴィンセント [口へと運んだフォークを咥えたまま、ニーナの声に目を上げる。] あぁ、それなんですけどね…。 自警団の方達が、森で旅人の死体を見つけたというので…。 あなたも気をつけて下さいよ?夜道をふらふらして迷子になったりとかはしないように…。 [注意するようにと念を押しながら、ふと検視したその遺体のことを思い出す。 只の食われた痕だけであれば、獣の仕業と言い切れただろう。 だが…] まさか…ね。 [ぽつりと小さく呟く。 あの旅人の背中に刻まれていた、十字の形の新しい傷。 出血の状況から見て、事切れた後につけられたものに違いない。 それはつまり、知性あるなんらかが、その遺体に手を加えたことであり…] | |
(43)2006/09/13 22:41:43 |
酒場の看板娘 ローズマリー [―――……パリン。 軽快な音がバーに響く。 軽く洗いものをしていた最中。するりと手のなかから滑り落ち、グラスは割れた。 ……昨日はよく眠れなかった。今日少しぼんやりしてしまっているのは、その所為かも。 フレディさんは丁度、倉庫のほうへ道具を取りに行ったところ。先ほど、居なくて良かったなぁ……けど後できちんと謝っておかないと。 そんなことを考えながら。 バーのフロアにはこの時間になっているのにも関わらず、誰も居ない。 先ほどまでクインジーとネリーと名乗る、旅の二人連れが居たけれども。すぐに出かけて行ってしまい、擦れ違ってしまったらしい。 フレディさんも丁度良く席を外している。ここに居るのは私一人。 さっさと食器を片付けないとね。フロアのほうを振り返り、そう思い返す。余計な思考を振り払う。] さて、と。 [誰にも聞こえないような声で、独り言。 ぼんやりしてちゃ駄目。気入れなおして、頑張らないと。 そんなことを考えながら。 一人静かに、先ほどネリーから手渡された空のグラスの残骸を片付けている。] | |
(54)2006/09/13 23:09:11 |
ごくつぶし ミッキー [牧場主は首を傾げ。得心したように頷いた] 「そうか。いや、実はこっちの方も(と、牛の方に顎をしゃくってみせ)様子がおかしくてな。いつものんびり構えてるバターカップの奥方が今日は頻りに鳴いてて…… まるで何かに怯えてるみたいな、なぁ」 [ミッキーと呼ばれた男は黙って――どこか不安げに、彼の話に聞き入っている。その様子に気づいた牧場主は、ちょっと笑った] 「何、たぶん気のせいさ。それよりお前、今日は酒場のほうには顔出さないのか?」 [悪戯っぽいその口調に、ミッキーは不意を突かれて小さな目をぱちぱちとさせ。一瞬の後、慌てて口を開く] [しかし時既に遅し] [ミッキーの反応に何かを確信した牧場主は満面の笑みを浮かべてぽむぽむと彼の肩を叩き。 「まぁ頑張れよ。あんまりしつこくしすぎないようにな」と声をかけ、牛舎から出て行った。 「お疲れさーん!」と手をひらひら振りながら] | |
(72)2006/09/13 23:48:36 |
酒場の看板娘 ローズマリー [くす、とクインジーの言葉にもう一度苦笑を漏らしながら。] まだうちのメニューの三分の一位しか食べてないのに、そんな風に云い切っちゃって良いの? 時々フレディさんの新作メニュー、酷い味のも混ざるんだから。 [喋りながらボトルを探す。 ……白ワインが切れてるわね。今度買いに行かないと。] 赤ワインしかないからこれでお願いね。 [慣れた手つきでクインジーの前にボトルとグラスを置く。 そこでふと、グラスを割ったことを思い出して。] ……あ、そうだ。 何時も使ってたグラス、さっき割っちゃって。これは一応、同じグラスなんだけど。 ごめんなさいね。 [そう云って、クインジーに軽く頭を下げる。] | |
(74)2006/09/13 23:53:11 |
書生 ハーヴェイ [ネリーが入りやすいように扉を開けて先に通す。 「またね」と言って小さく手を振ると、先程言っていた連れらしき人物の元へパタパタと駆けてゆくネリー。 そのようすを小さく微笑んだまま見送り、人物を確認。] 『やはり――殿、か?』 [目に映ったのは鮮やかな朱色の髪の男。 ネリーを迎え入れる様子は優しげだが、周囲にそれとなく配る気配は冷たく鋭いそれ。 なによりも、その顔の左半面に走る大きな傷。 宿帳で見た名前といい、まず間違いないだろう。 直接の面識があるわけではないのだが、彼は有名だ。 ...は無意識のうちに首のチョーカーにそっと触れた] 「参ったな。…『仕事』なのか?」 [その声は酒場の喧騒に紛れるほど小さかったが。 こちら鋭く見た男に軽く会釈して、...はカウンターの端へと移動して座った] | |
(83)2006/09/14 00:23:17 |
酒場の看板娘 ローズマリー [目の前では、軽やかな手つきでクインジーがワインのコルクをナイフで開けた。 少しその動作に見とれていたが、すぐに言葉を探し、続ける。] ……人間の作った調味料の味もあんまり良くないときもあるけどね。 今度、フレディさんの失敗作食べさせてあげるから。タダで良いわ。いつも私一人で処理することになってるしねー……。 [溜息を吐きながら振り返り、厨房へと向かおうとしたとき。 重い音を立て、扉から一人、見えたのは女性の姿。 全身濡れ鼠になっている彼女の姿に一瞬びくついたが、すぐに思考を取り戻し。] ……はい。 部屋、まだ空いていますよ。宿泊されるのであったら、先ずはこの宿帳にサインをお願いしますわ。 [レジの机から仕舞ってあった一冊のノートを取り出し、彼女に最も近いテーブルの上にペンとともに置いた。 椅子を引き、まだ少しだけぎこちなさを残したままの顔で笑顔を作り。彼女に投げ掛ける。] お疲れの様子ですし、一先ず座って下さい。 水かなにか、お持ちしましょうか? | |
(84)2006/09/14 00:23:22 |
お尋ね者 クインジー [適当に酒を楽しんでいると、またも、扉が開いた。 最初の一人は、よく知っている顔だったが、その後に一緒に来た人物の顔も、知っている顔だった] (へえ……?) [思わず、ニヤリと笑い出してしまった。 直接会ったことはないが、その顔と、その名前、何よりその腕をよく知っていた] (こんなところで会えるなんて、奇遇っちゃぁ奇遇か。 奴も俺も、指令を受けなくても適当に動く根無し草に近いからな) [―――それにしても、二人で一緒に帰ってくるとは一体何があったのか? 小さく鼻息をもらし、まあいい、と結論づける。 奴が人狼ではないのは知っているから、危険なことはなかっただろう。その他に何があったのかを根掘り葉掘り聞くような自分でもない。 一先ずそのことはおいといて、ネリーに片手を上げて答えた] おう。ネリー。先にやっているぜ。 お前も、何か食いたいのがあるなら、ローズマリー嬢ちゃんに言っておけ。手伝うのは、その後でも構わんだろうよ。 | |
(90)2006/09/14 00:36:00 |
お尋ね者 クインジー (しっかし……) [先ほどから扉を開くたびに、奴も一緒にソチラに目を向けているのが、感じ取れる。 カウンター席だと、顔ごと動かさなければいけないので、人物を確認する場所には向いていない] (腕利きの割にはそこらへんが抜けていやがるんだからなぁ……) [ネリーの食事がやっと終わったようで、これでゆっくりとタバコが吸えると思い、クインジーが懐に手を伸ばそうとすると、先手必勝とばかりに、ネリーにタバコを箱ごと取られた。 唖然とするクインジーにネリーが笑いながらこう告げた。 「たまには禁煙。そのほうが体にいいしね?」 そう言って、ネリーがパタパタとマリーの手伝いに行く。 残されたまま、呆気に取られているクインジー。 気を取り直すように酒をもう一煽りする] | |
(121)2006/09/14 01:44:20 |
酒場の看板娘 ローズマリー [注文をてきぱきと受け、答え、ネリーに手伝って貰いながら調理を進める。 注文数が多かったが、ローズマリーのほうは特に酷く慌てた様子もなく、何時も通りさくさくと仕事をしている。 途中でフレディが戻って来、客が減ったこともあって仕事が少なくなり。 ふと、さっき店に来、何時も通り一人で食事をしているミッキーに目が行く。] ……フレディさん、ミッキーさんからの食後酒の注文は? [何時も通りなら食後酒を頼む筈。そう思って、フレディに尋ねる。 「ああ、そういえば。そうだね……コアントローを作っておいてくれ、マリー。」 そう頼まれ、何時も彼が使っているグラスを棚から取り出す。 手早くカクテルを作り終えると、のんびりと食事を続けているミッキーの元へと。] | |
(141)2006/09/14 03:22:31 |
酒場の看板娘 ローズマリー [……正直に云って、お世辞にも彼の見た目は素敵だとは云えない。 ぶくぶくに太った身体、潰れた鼻、うっすらとしか開かれていない目。 何処を取っても、てんで駄目。 なのに、他人がよく云っているように、そんなに酷く苛立った印象は彼からは感じない。 ―――まあ確かに、おどおどしたところはどうも苦手だけど。 そんな風に考え事をしながら、彼のテーブルへと。] はい、今日の食後酒。コアントローよ。 割と甘めだけど、ちょっと重いから飲み過ぎないように。ね。 ……で、ミッキーさん。 注文されてから結構経ってるのに、まだ食べ終わってないの? のんびりよねー……。 [そう、失笑とともに言葉を吐いた。] | |
(143)2006/09/14 03:43:22 |
農夫 グレン [グレンは農夫として働く傍ら、自警団の手伝いもして居る。 最も彼は未成年の為、正式な団員では無いのだが・・・] [詰所に戻る前に、グレンは公園へ足を運んだ。 一人で考え事をする時、彼はこの場所を選ぶ事が多い様だ。] [公園の隅に座りこみ、グレンはボソッと呟く] ・・・アーヴァインさん・・・ ・・・・・・本気で皆を疑うつもりなのかな・・・ [先程渡した村人達のリスト・・・ それは、旅人の殺害時刻にアリバイの無かった村人達・・・] [つまり、殺人容疑のリストだったのだ。] ・・・・・・僕は、考えたく無い・・・ ・・・あの人達の中に・・・・・・ 化け物が・・・・・、人狼が居るかもしれないなんて・・・ | |
(151)2006/09/14 09:52:41 |
逃亡者 カミーラ [荷車に載っているのは数羽の絞めた兎、そして立派な角を持った牡鹿が一匹。それをよろよろと引きながら酒場の裏口まで引っ張ってきたのは驚くべきことに細身の女性であった。] …店主殿 [抑揚の無い声で女性がつぶやくと、なにごとだろうという表情でフレディが裏口までやってきて、驚いたようにカミーラと荷車を見比べた。] 「これ、お前さんが?」 [店主の声はかなりいぶかしげ。だが女性は首を縦に振った。 男がもう一度荷車の上の動物を見る。どれも矢傷や罠にかかったような傷は無い。全部の動物が首筋に深い刺傷があるだけである。] 路銀の足しにしたいから…買ってはくださいませんか? [と、ぼそりぼそりとつぶやく。フレディは「ああ、買わせて貰うよ」と返事を返すと帳場のほうに戻ってゆくと何枚かの銀貨を持ってきてカミーラに「こんなもんでどうかね?」と提示する。] | |
(159)2006/09/14 15:07:43 |
逃亡者 カミーラ …こんなに。ありがとう…。 あと、これ…明日の、朝にここを発つつもりだから、燻製にして…くれませんか? [貨幣を受け取ると、荷車にあったのとは別に下げていた一羽の兎を店主に見せる。「ああ、燻製にするのはかまわないが…聞いてないのかい?」と言葉が返ってくるとカミーラは首を横にかしげた。] …何をでしょう。 「ああ、なんでも人狼が出たとかでね。旅人の方には悪いけど、その…しばらく…うん、しばらくの間村を出ないで欲しいと言うことらしい。」 人狼…ですか… [人狼。そう口にしながらブレスレットを抑え、表情にかげりができる。] (厄介ね…ほんと、ついてないわ…。 この身体では疑われるだろうし…それに、人狼がでたってことは人間にも人狼にも…死人が出るでしょうね…) 「ああ、いや。人狼と言ってもきっと噂だよ、きっと正体は熊かなんかではないかとみんな言ってるさ。」 [女の表情の変化が不安から来るものだと勘違いをした店主が慌てて言葉を足すが、むろん女の表情は晴れたりはしない。] | |
(160)2006/09/14 15:15:43 |
冒険家 ナサニエル ──背の高い木々に囲まれた薄ら暗い道。 先ほど見えた立て札が間違いでなければ後数分で村に着くであろう場所。 暗い道であるのに、はっきりと識別できるほど派手な緑色の衣服。 服と同じ緑色の帽子には、やはり派手な羽飾りが付けられている。 辺りの薄暗い景色とは完全に浮いた姿の男は、やはりそれらの浮ついた姿には不釣合いの無表情のまま、暗く足元すら危うい道をよろけることもなく足早に歩を進めている。 ──やがて木々が途切れ男の眼前に、小さな村が姿を現した。 ・・・・あの時と変わらぬな。 ──そうとだけ呟いた男の口元が一瞬だけ笑みを作る。 もし、その笑みを見たものが居たとしたら、そこには恐らく30代前後であろう男とは不釣合いな「無邪気さ」か、もしくは人そのものとして有り得ぬ程の禍々しい「邪気」か。 一見相反する感情のいずれかを、もしくはその両方を感じ取った事だろう。 そして男はやはりまた先ほどまでと同じ無表情に戻るとゆっくりと村の中へ。 | |
(165)2006/09/14 18:33:42 |