人狼審問

[アジトの一室で耳を済ませる。
　かすかにだが、階下の会話が聞こえてくる。]

――――あの声は、ティターン？


……例の毒の話をしてるのね。
ギムレットの時も思ったけど、こうも簡単に話が伝わってしまうなんて。
さすがcasale（カサーレ）の面子――ってところか。

ティターンを襲ったのは…外からの援護かしら。
―――余計な事をしてくれるわね。皆に与える情報が増えるじゃない。


―――でも、ティターンか。
……彼も早めに始末しておきたい人物には違いないわ。

[小さくぽつりと、呟く。]

[だが相手は接近戦のエキスパート。
　まともにやりあって確実に勝てるという確証は、ない。

　寧ろ彼相手に接近戦を持ち込む事は愚の骨頂とも思えた。
　何か作戦を。―――確実にしとめられる、作戦を。]

―――――セイレーン…。


[今此処に居ない彼女の名を、ぽつりと呼ぶ。]

…下に降りたほうが良いかしら。
ここで怪しまれるのは得策じゃないし。

―――…。

[少し考えた後、とある場所に電話をかける。
　短い会話を終えると、それを、閉じた。

　会話の内容は。]


――――合図があり次第、ティターンを呼び出して。場所は――――

セイレーン、聞こえる？

[通信機越しに、「はぁい、どうしたの？」と言うからりとした声が聞こえてくる。]

ティターンを―――――殺るわ。貴女の手が必要なの。

[階下へ降りる前に手はずは全てセイレーンへと伝えた。
　薬で操られている一般人―――彼らを、使うと。

　セイレーンには時間になれば指定の場所で狙撃をしてもらう。
　単純だが、足がつかない。そして確実な方法だった。

　欲を言えば狙撃手もセイレーンではなければアリバイも作れるのだが、
　―――腕が、信用できない。]

まさかこんな報告書を作るなんて。


―――――フォルティノ。


貴方って人は。

[カルーアは―――来た。と思った。合図だ。
　電話の内容はこう伝えるように言ってある。

　「今から1人で廃公園へ。
　　1人でなかった場合は――――――」

　それを真に受けティターンは1人で行った。
　―――1人で。

　胸中でそっと笑い、駄目ね、と思う。
　少しだけ――――笑みを浮かべそうになった。]

[そろそろティターンは公園に着いたころだろうか。
　カルーアは静かに通信を聴いている。勿論周りの会話も聞いているが。
　暫くして――――――発砲音が聞こえてくる。何度も、何度も。

　――そう。セイレーンの仕業だと解らないように。
　わざと、何度も。何度も―――撃った。]

「やったわよ、カルーア」

[セイレーンの楽しげな笑い声が聞こえてくる。
　何時ものように興奮しているのだろうか。

　その声を聞くと思わず笑みを浮かべそうになる。]

―――お疲れ様、セイレーン。