自警団長 アーヴァイン
あー、諸君、聞いてくれ。もう噂になっているようだが、まずいことになった。 この間の旅人が殺された件、やはり人狼の仕業のようだ。 当日、現場に出入り出来たのは今ここにいる者で全部だ。 とにかく十分に注意してくれ。 |
農夫 グレン 「清き魂を持つもの達は力を合わせ我とともに鬼の魂を封印して欲しい。 鬼の魂は………ふむ… 3つほどか。 さすれば、この…桃の若枝と人型で………。」 「また鬼の魂に呼応して、対抗する力を持つ者も蘇っているはずじゃ。 隠された真実を探り鬼と人間を判別できる力”天眼能”を持つ者。 他人の過去世の状態を知ることができる力”宿命能”を持つ者。 鬼を退ける力を持つ”守護者”。 また対となる人物が人であることを知る力”他心能”を持つ者。 ただし、この力は鬼にとっても脅威のはず。 鬼は巧妙に人に化けこの地に潜んでおる。自らを守るためならなんでもしてくるであろう。 努々、油断することなきように。」 | |
(4)2005/09/21 09:17:11 |
流れ者 ギルバート [ 半刻程も歩いたであろうか。 村の周囲を囲むような深い森に辿り着き、森沿いに歩く。 途中、木々の切れ目に踏み入ろうと試みる。だがしかし、不可解な何かに阻まれるように森に踏み入る事は出来なかった。 やはり、尋常ならざるものの働きがあるのであろうと威日呼には思えた。だが、なればこそ……此処には真に鬼は居るのやも知れぬとも。 そう、彼の仇たる者が此処に居るやも知れなかった。 そのような思いを抱きながら、散策を続けていると……何やら、辺りを包む気配が変わった。辺りを包む空気の温度が下がり、そこに淀みが混じり込んだような、何とも云えぬ違和感を感じる。 ――何かが動き始めていた。] | |
(8)2005/09/21 10:32:42 |
修道女 ステラ 【橋の袂・幽界(かくりょ)側】 [橋を渡り始めた中程で僅かに感じた、とろりとした薄い膜のような違和感は、 渡り終える頃には薄くなり、陽は何事もなかったかのように降り注いでいた。 彼女は辺りを見遣りながら、少しづつ歩みを進めた] 幽冥界と申せども…かように陽は差すもの… この場は、幽界(かくりょ)のうち、現界(うつしよ)に最も近き場所… [歩みを止めて目を閉じる] そして、すでに…縁(えにし)と宿世(すくせ)に導かれ、 この場に選ばれし方々の気配が… …お懐かしや…清明さまに縁(ゆかり)のある気も… …ございますな…… [そして、彼女は気配を辿るように、再びゆるりと*歩を進め始めた*] | |
(10)2005/09/21 11:17:57 |
双子 リック 【一条戻り橋】 ―――何か…ある。何かを感じる。これは何だろう。 理性がこの橋を渡ってはいけないと漣に告げる。しかし漣の血がその橋を渡る事を望む。 一歩足を踏み出すと、一陣の風が起こり巻き上げられた砂が漣を叩いた。 今度は一歩左足を踏み出してみた。 胸騒ぎがし、鼓動が早くなる。 もう一歩進めてみる。 鳥肌が立ち、全身総毛立つ。 …そして、橋を渡りきった。 疲労感からか、橋を渡ったところで木に寄りかかるとすぐに眠気に襲われた。 ―――こんなところで寝ると怒られてしまうかなぁ…。 両親の顔を―父親の顔はすぐに消えてしまったが―思い浮かべつつ*漣は眠りについた*。 | |
(14)2005/09/21 14:00:52 |
流れ者 ギルバート [ 威日呼は、再び一条戻り橋へと足を運んだ。 確かめるようにゆっくりと、歩を踏み出す。 奇妙な感覚が威日呼を襲う。幾ら進めど、橋の頂点は近付くことも無い。振り返れば……橋の袂はすぐ後ろであった。 踏み入る事の出来なかった森といい、間違いなく、何らかの働きにおいて此処は閉じられているのであろう。 ひとつ息を吐くと、威日呼は踵を返し堂へと戻ろうとした。だがその時、傍らの木の向こうで布ずれのような音が微かに聞こえる。 そちらを覗き込む。 其処には、木に背を預け眠る童の姿が在った。 童は上質の絹の召し物を纏っていた。身なりからすれば貴族の子であろうか。 一瞬、この童が唄う童ではあるまいかとの思いがよぎる。僅かな逡巡の後、威日呼は童の方に手を掛け、揺り起こそうと試みた。 この童が歌う童であったとして――鬼の童であったとして――それならばそれで、この童から聞き出せることもあるやも知れぬ。 しかし、幾ら揺らせど目覚める気配は無く、童は寝息を立てていた。 威日呼は、束の間思いを巡らし……その童を背負うと堂へと向かって歩き出した。] | |
(15)2005/09/21 18:03:22 |
流れ者 ギルバート [(……その鬼を討つ。) 漣にそう告げた後、威日呼は堂を見回した。 堂の中に紅姫の姿は見当たらぬ。 頭を下げた漣に頷き返し、堂を出た漣の背を見送ると威日呼は表に歩み出る。 朝、紅姫が座り込んで池の畔にも、やはりその姿はない。 裏手へと回る。堂の裏手にはいくつかの灯篭が立っていた。そういえば、桃の若木や石畳で目立たぬが、表にも同じように灯篭があったな、などと威日呼は思う。 ――裏手にもやはり紅姫の姿はない。 陽は既に西へと傾き、空は茜の色に染まり行きつつある。] ……待っていろと云ったろうに。 [ 見れば、漣の姿も近くにはない。 威日呼は頭を振ると、堂を背にして早足で歩き出した。] | |
(31)2005/09/21 21:02:06 |
双子 リック [当ても無く歩いていると、どこからかともなく女の子の歌声が聞こえてきた。その方向に歩みを進めると…] 丁度曲がり角で漣の目に飛び込んできたのは歳も同じくらいの少女…漣もよく知っている少女だった。 。oO(紅姫!?) 二人は物心着いた頃から両家の親の取り決めにより許婚の間柄であった。そのせいか何度か会って会話を交わしたことはあった。彼にとって彼女は、自分が選んだ相手ではなく、決められていた存在だった。家のしがらみから開放されたい彼にとってはまた、紅姫もまた彼を縛るしがらみの象徴の一つとも言えた。そんな訳で漣は紅姫が好きではなかった。よくしたもので、紅姫の方も漣を嫌っているらしかった。 こんなところで出逢ってお互いの存在に気付いた今、丸っきり無視ともいかなかったし、内心の動揺を見せたくはなかった。そして同時に「なぜここに?」という疑問も浮かんだので内心の感情を押し殺して声を掛けてみた 「紅姫…こんなところで会うとは奇遇だね。どうしてここに?」 | |
(32)2005/09/21 21:11:44 |
流れ者 ギルバート [ 陽もすっかりと落ち。 月の照らす夜道を、紅姫、漣、二人の姿を探し、威日呼は早足で進んだ。 ――何故、己はこの様な事をしているのであろうか。 威日呼の胸に、そのような思いが浮ぶ。 家族の仇たる鬼を討つべく為のみに生きて来た己が、見知ったばかりの童を気に掛ける事に、己自身で戸惑いを覚えていた。 あの娘に会ったからであろうか。 顔立ちが似ている訳でもないのに、何処か妹を思い出させる紅姫という娘に。 ――否、ただの行き掛かりだ。こんな事も鬼を見付けるまでの事だ。 その時、思いに耽りながら歩く威日呼の耳に、聞き覚えのある声が聞こえた。それは漣の声であった。威日呼が伝えた、亞磨韻から聞いた事を早口に喋っているようであった。そして、走り行く足音が響く。 歩を進め見遣ると、其処には地に座り込み俯く紅姫の姿が在った。] | |
(39)2005/09/21 21:58:30 |
お嬢様 ヘンリエッタ [紅姫は歩き去る漣の背を呆然と見つめていた。 そして、猫の鳴き声で我に返る。 手から離れた毬を拾うと、紅姫は其れに付いた砂を手で取り払った。] 漣様、嫌いです。 私が何をしたと言うのです…? [紅姫はそう呟いた後、地に座り込み、漣が口にした威日呼の言葉を思い出していた。その時、声をかけてくる姿に気がついた。] 威日呼様。 池の畔でお待ちした居ましたが、なかなか戻ってこられないので、忘れられたかと思いました。 漣様からお話は聞きましたわ。私、少々混乱していますの。一人にして下さいませんか…? [そう威日呼に伝えると、お辞儀をしてその場から立ち去った。] | |
(46)2005/09/21 22:35:53 |
酒場の看板娘 ローズマリー 【回想/或る邸】 豪奢な造りの貴族の邸を時折訪れるようになったのは何時の頃からだろうか。 生きるための手段をして、自らの力を鍛えんが為に、荒事を引き受けて生活を営むあたしにとっては、金に糸目をつけぬ貴族衆からの依頼は渡りに船だった。 はじまりは只それだけのことだったように思う。 首尾よく「仕事」を片付けるうちにさる名家の仕事を特に請け負うようになったのも偶然だったのだと思う。 一条戻り橋に現れたという鬼の童子の調査はふたつ返事で引き受けた。 うまくすれば今度こそ、あいつを見つけられるかもしれない―― 妙に確信めいたことを思いながら、私はその足で橋へと向い、童が現れるのを待つことにした。 | |
(87)2005/09/22 01:22:17 |
流れ者 ギルバート [ 堂に入ると、威日呼は畳の上に男を降ろす。 左の腕に痛みが走る。 ……威日呼の服の左の腕を見遣れば、其処には赤いものが滲んでいた。 だが、痛みに顔を顰めたの束の間で、その表は直ぐに平静を取り戻す。 堂を見回す。 堂には、見知らぬ者達が集まって来ている様であった。その中に、紅姫と漣の姿を見て取り、思わず安堵に息を吐く。] 皆寝静まって居るようだな。 だが……鬼は間違いなくこの村に居る。皆が眠る訳にも行くまい。 俺は夜の番を務めよう。白比丘尼殿、そなたは休まれるが良かろう。 [ 威日呼はそう云うと、扉を出でて直ぐ脇の壁に背を預け*座り込んだ。*] | |
(125)2005/09/22 04:02:42 |
お嬢様 ヘンリエッタ 惹きつけられた… そうですか。私が此処から出る為に橋を渡ろうとした時、何かに引き戻されるような…あの力によるものなのでしょうか。 [紅姫は不機嫌そうに其の場を立ち去る消人に気づくと、自分を見つめる漣に首を小さく傾げた。] 今宵は休む事に致しますわ。 [そう呟くと、紅姫は其の場に居た者にお辞儀をして堂の隅で横になった。] [―――そして、今日も陽は昇る。 陽に照らされ目を覚ました紅姫は、堂の中に居る者の数が増えてる事に気がついた。] 此処には、私の知らない人がまだ居られるようですね。 後でご挨拶をしなければ。 [紅姫はゆっくりと立ち上がると、堂の外へと向かった。] | |
(136)2005/09/22 07:43:10 |
流れ者 ギルバート 【堂の外】 [ まんじりともせず、威日呼は陽が昇る様を見詰めていた。じきに、誰かしかが起き出してくるであろう。 昨晩。 一人になりたいという紅姫を見送り、堂へと戻ろうとした時。 背中から見詰めるような気配を感じ、威日呼は振り向いた。ちりちりとした感覚が背筋に走る。 ――あの時に感じたもの。 血の海と化した床に立つ姿、煌々と灯るような赤き瞳……それが脳裏に甦る。 大太刀を抜き放つ。 そして、一歩踏み出した時―― 微かな嘲笑のような響き残し、気配が遠ざかる。 ひとつ舌打ちをすると、威日呼は気配の後を追う。 どれ程そうして走ったであろうか、威日呼は追い続けたがしかし気配を見失った。 走り疲れから、威日呼が僅かに大太刀を降ろしたその時――闇から影が踊り出る。 威日呼は身を捻るが、しかし躱し切れずに左の腕を鋭い爪が引き裂いて行った。それに構わず影に向き直り大太刀を振り下ろす。 しかし。 瞬く間にして、影はその姿を消していた。 ……遠く何処からか、呵々とした哄笑が響いていた。] | |
(138)2005/09/22 09:43:18 |
流れ者 ギルバート [ 左の腕に巻かれた布を見遣る。手当てをしてくれた白比丘尼なる者――果たして、あのような方が如何なる縁にて此処に来たのであろうか。 紅姫、漣、そして、まだ名を知らぬ者達。 皆、如何なる縁にて此処へ来たのであろうか。 威日呼が思いに耽っていると、堂の中から紅姫が歩み出て来た。真っ直ぐと池に向い、壁に凭れる威日呼の姿に気付かず通り過ぎて行く。 日姫は池に向かい呟き、近付いた鳩に気付くとそれを追った。威日呼はそれを何とも微笑ましく思いながら、紅姫のを呼ぶ。 はっとした様に紅姫は振り向き、威日呼に頭を下げる。 「おはようございます…」 どこかばつが悪そうに、紅姫はそう云った。 威日呼は頷き挨拶を返す。] | |
(140)2005/09/22 10:12:43 |