人狼審問

アーヴァイン、ご苦労さん。

（旅人の殺害か。あれはクインジーの仕業だ。だが『容疑者』を集めるのに口実が必要だったんでね、人狼と結びつけてデマを流させてもらったよ。済まないな）

夜が明けたな……。

ふぅ。どうやら私には何の異常もないらしい。自分が化け物になる夢……あれは只の夢であったのか。故モーガンの遺言も、デボラ婆さんの話も、本当に只の御伽噺なのかもしれんな……。

ふはははは。馬鹿馬鹿しい！

いったい何をやってるんだ、私は。人狼など本当にいるのだろうか。

……本当に只の御伽噺なら良いのだが、まだ安心するのは早かろう。さて、朝酒でもあおって『いつもの』私に戻るとするか。

今日一日、なに事も無く終わる事を祈ろう。

　……

【キャロルは、早朝ベッドから抜け出したアーノルドを不審に思い後をつけてきて、すべてを聞いてしまった。
　許さない……！
　別にアーノルドに惚れていた訳でもないが、自分でも判らない涙が自然にこぼれ出ていた。
　そして、アーノルドに気付かれないうちに足早に屋敷へと戻った】

エレノア、そこに居たのか。気分はどうだ？

人狼、ねえ……俺はむしろそんなものを持ち出すアーヴァインと村長が怖いね。人間が一番の敵だ。アレくらい好きに作らせろってんだ。なあ？

おはよう、グレン。本音と建前の区別くらいつけて欲しいものだな。ふはははは。アレか……村長としては好きに作れとは言えないが、私も世話になってるんだ。察して欲しいものだな。

ふん。しかし本当に人狼なんていたらどうするのかね？　村長？　あんたらお偉いさんが気分でぶち殺していくのか、それとも集団自殺でもするのかい？

そんなことにはつきあってられないね。まあ、お互い隠れて村内で小さな戦争でもするか、いっそのこと投票か何かでもやってみるかい？

ふう、今日は体調が優れているみたいだ。

・・・・・・自警団から正式に「人狼」という単語が出たか。ここからは忙しくなるぞ。

っと、人の事は言えないがこんな朝から誰かいるみたいだな。
片方は確か昨日見たな。酒を抱えていた記憶がある。
もう１人は・・・

すまない、最近この村に来たばかりなんだ。
俺はギルバートって言う。
すまないが、名前を教えてくれないか？

グレン、今日一日、何事も無ければそれでいい。この騒ぎも終わりだ。『馬鹿げた御伽噺に付き合せて済まなかった』と皆に詫びて解散することになる。

まあ今日一日の辛抱だ。皆でジュースを呑んで、楽しいひと時を過ごせる。そう考えれば、この騒動も悪くなかろう？

ふははははは。

ギルバートか。私の名はアーノルドだ。騒ぎに巻き込んでしまったようだが、これも何かの縁だ。よろしく頼むよ。

アーノルド・・・？

あれ？
そりゃ死んだ村長さんの名前じゃなかったのかい？

ギルバート……妻の話を聞いたんだな。私はこうして生きている。妻の言う事は話半分に聞いて欲しい。妻は少し……心を病んでいるのだ。

くっ、ふふ……。
アーヴァイン。死相が出ているよ。
棺桶のサイズはいくつだったか？
足を折り曲げて埋葬されるのはイヤだろう……？

あっ、そういう事か。これはすまない。
事情がわからなかったもんでね。

・・・・・・っていうかあんたが村長さんか。
こいつあすまない。よろしく頼みます。

だが、旅人が殺されたとなると……。
どうやら、牧師の密儀は達成されてしまったのか？

あの、忌まわしい先住民族の呪具が、人狼を……。

エレノア……さっきこちらに気付いたようなそぶりを見せていたのだが。まだ眠っているのか。それとも寝たふりをして私をやり過ごそうとしているのか……。

「１２月２０日　まあ晴れといえば晴れ。
　とうとう人狼の存在を自警団が認めた。
　俺達への規制や調査が始まると思うが、特によそ者の
　俺は一苦労しそうだ。
　正直この村は怪しい奴がかなり多いが、必ず尻尾を
　つかんでみせる」

じゃあ、俺はちょっと村を一回りしてくるんで。
また後で。

ギルバート、またここへ戻ってくるのだぞ。……もっとも、村の外へ出たくても出られないだろうがな。

真実の前に、私の行為はかくも無力だったか。
信じがたい作り話だと思っていたが、まさか、真実だったとは……。
つまり、あの話も本当だったということ……。
神よ！あまりに恐ろしすぎる……。

（……もし、あの御伽噺が真実であるならば、この村でケリを付けなければなるまい。被害を隣村まで拡大するわけにはいかぬ）

さて、私はアーヴァインに用事があるので、これにて失礼する。電話線が切られているらしいが、誰の仕業なのか調査しなければならんしな。

ふふふふふ。

真実……。近づいたとしてもそこに待つのは絶望かもしれん。とはいえ、このまま手をこまねいて見ているわけにもいかん……。いや、私も巻き込まれてしまったわけだな……。
アーヴァインが何をほざこうと、たいした問題ではない。むしろ、古くからこの村に住む一族が、何を知っていて、この事態をどう考えるか……。
戦争や不景気ならまだしも、人狼だと？今が100年前でも、普通ならば子供だましのばか話だろうに……。

やれやれ、今度は大人もいっしょに人狼騒ぎですか。こんなに騒然としているようでは考えものですね。
ですが・・・。たまにするどい視線を感じます。まるで理性を持った野獣のような。
ふう。しばらく様子見といたしますか。

長い夜が明け、朝が来た…。
じゃが、小鳥の囀りすら聞こえぬこの静寂…。

あの時と一緒じゃ…人狼が目覚めた、あの惨劇と朝と…。

……本当に人狼の仕業だったとはね。
アーヴァインが言うなら間違いないだろうな。
やれやれ。面倒なことになったな。
……ま、暇潰しにはちょうどいいけどね。

（人狼、人狼、人狼！
　ちくしょう！もう、うんざりだ！
　そんな馬鹿げた事が、現実におきてたまるか！

　くそっ…アーノルドの奴は、一体何を企んでいるんだ？
　まさかＦＢＩに寝返ろうっていうんじゃなかろうな…）

……こうしちゃいられないか。
電話線が駄目じゃ……指示は……期待できないし……。

…くだらん。全くもってくだらんよ。

私には、そんな迷信に付き合っている暇は無いんだ。
また暫くは買い付けで村を留守にするが…君たちもいい加減、目を覚ましたまえ。

…失礼する！

（まずは早急にファミリーと連絡を取らねばな…
　例の取引の期限も近いし、アーノルドの不可解な言動の件も
　報告しなければなるまい。
　
　全く…どいつもこいつも面倒事ばかり増やしやがって…！）

人狼… そんなものが本当に存在するなんて、私にはとても信じられませんわ。ここにいる人達は、みんな人間そのものではありませんか。狼が、そんなに上手く人間になりおおせるなんて考えられない…

…それとも、人が狼に変わるのでしょうか。ただの人間が、人狼という魔物に。

……おはよう。

昨夜、トビーと別れた後、気になって一度お屋敷に戻ったの。

お父様は戻られていたけど、お母様はまだだった……。

こんな時にフラフラ出歩くなんてって、お父様に大目玉をくらってしまったわ。……鞭で叩かれるのは、とても嫌なの。
でも、お父様も真っ青だった……。

こんにちは。
昨日はヘンリエッタさんを迎えに来たお付の人に任せて家に帰りました。心配をかけてごめんなさい。
赤い光が少し不気味だったけれど･･･ヘンリエッタさんといたおかげかそれほど怖いと感じませんでした。

お屋敷の電話線は、物理的には修理が出来たみたいなの。……物理的には。でも、なぜか繋がらない。

村長さんの集合だと言ったら、お父様は渋々外出の許可を出してくださったけど、すぐ戻らなくちゃいけない。

……お説教が終わってないからって。

また、お部屋に鍵をかけられて、閉じ込められてしまったらどうしよう…。

トビー！　集会所に居たのね。
……お屋敷に戻る前に、会えてよかった！

昨日は、一緒にいれて楽しかったわ……。
あの…、光はなんだったんだろうって、ちょっと思ったけど。

きゃ！　シャーロットさん。

でも、あの遠吠えは気になります･･･。
とても力強く、不気味で、恐ろしい響きを持っていました。外に出ると余計はっきりしていました。

また牛たちの世話をしてきます。

ヘンリエッタさんこんにちは。
うん。月の光が赤かったからだけじゃないと思うんだ。なんだったんだろうね？あれは。

っと・・・。ごめんね。いってきます。

ああ、トビーにもシャーロットさんにも、泣き顔を見られちゃった……。

……シャーロットさんもなんだか、顔色が悪いわ？

でも、私も戻らなきゃ。
トビーは、トビーは……、また会えるよね？

なぜだ…なぜ、村から出られない…
こんな事があるわけがないんだ…こんな事が…

……信じる、信じないも、おぬしらの勝手じゃ。
じゃが、ババの記憶が正しければ、これは人狼が現れる前触れ。

村長よ、おぬしもこの村の長なら聞いたことがあろう。30年前に起きたあの惨劇を…。

デボラ婆さん…
婆さんなら、何か知ってるんじゃないか？

あの霧…この村を覆っている、あの怪しい霧は何なんだ！？

言ったじゃろ、これは人狼が現れる前触れであると。

こうなってしまっては、もはや逃げ場はない。
時が来るのを、待つしかあるまい。

…人狼と共に現れる、救世主が目覚めるのを。

気だるそうにベッドから起き上がり髪をかきあげキッチンへと向かい、冷蔵庫をあけて冷たいミルクを取り出しグラスに注ぐ。
いつも通りの行動をただ無意識に繰り返す。

昨日は部屋に戻った後も、遅くまで飲みすぎて頭が痛い。
それは、日常の一部といっても過言ではない。

ミルクの入ったグラスを片手に、窓辺に立ちいつも通り窓を開け村を眺める。
妙に静かな朝だ。音が…無い。風も吹かない。
寝ぼけた頭では、その違和感すら感じる事も無く静かにミルクを口に運ぶ。

今日もまた、いつもの日常が始まると信じていた。

あの人が消えてから、何度こうした朝を迎えただろうか。
酔いが冷めると、見えてくる現実。顔を歪め、自分を嘲笑する。

「今日の気分も、最悪だわ…」

誰に言うわけでもなく、一人そう呟くとベッドに倒れこみそのまま瞳を閉じた。

【外から口論の声が聞こえてくる】

『…ともかく、充分に注意してくれ』

充分に注意って、あたくしたちにどうしろって仰るの？
現場に出入りできた者って、子供たちもいるのよ。
村長の妻であるあたくしや、子供たちにまで人狼の嫌疑をかけるなんて…
アーヴァインさん、この村の自警団は気でも違ったの？

おお…恐ろしいこと。

嗚呼、なんということだ！
デボラ婆さんの言い伝えどおり、村が霧で覆われているではないか！
これは、我々が３０年前の戦いに敗北していたという証……。

やはり只の御伽噺ではなかった……ということか。ユージーンに電話線を切らせて外部との連絡を絶ったのは正解だったな。この状況で村に部外者を呼ばれては話が面倒になるだけだ。しかし、野犬に噛み切られたような跡と聞いたが……ユージーンは一体どんな切り方をしたのだ？　真面目に仕事をしてくれるのはいいが、やはり気味の悪い奴だ。

ハワード卿は……皆に気付かれないよう、上手く他の村人達を霧の外へ避難させてくれたのだろうか。エッタと別れるのは辛かろうが、これも運命だ。

今、この霧の中には満月の夜に生まれた者しか居ないはずだ。呪われた運命に目覚めた人狼と、その人狼を倒せる強さをもつ人間しか居ない。この霧が晴れたとき、我々は、この呪われた血を浄化することに成功しているのだろうか。

それとも、再び失敗しているのだろうか……。

…どうやら自警団は、あたくしたちに人狼の嫌疑を
掛けているようね。
電話が繋がらないのも、既に交換手に根回しされている、と見るのが
自然ではないかしら。
まったく、そんな権限が誰にあると言うの？

人狼があたくしたちの中にいなければ、外界から途絶されていることは
即ち外界からはある程度守られていると考えることもできます。
けれど…

【エレノアの胸中を余所者の存在が掠め、
失礼なことを連想してしまったと恥じて頭を振った】

ああ、考えることが多くて大変だわ。

くそっ！

ふう…

（真実は、どこに在るの？）
（アーノルド、あたくしたちを守って…）

【キャロルはアーノルドの屋敷で目を覚ました。アーノルドはやはり戻って来なかった。
　これからどうすれば良いのか……。】

【アーノルドを愛した事なんてない。けれど、この村に来てアーノルドから離れたら、あたしは……。
　キャロルは自分が孤独な事に気付いて愕然とする。今までの自分の地位も権力も、すべては相手の男によってもたらされた物だった。女の出世は男次第――。それを理解し、自分は上手にそれを手に入れる事が幸せなんだと思っていたからこそ、孤独も平気だった。
　だが、今は、こんな辺鄙な村――。
　どうにかしなくては……！】

【それに人狼？　アーヴィンが村人が殺されたとか言っていたわね……。一応集会場に出向いた方がいいのかしら。
　それでも、まだ今は皆のいる所に行きたくない。

　キャロルは寝室の金庫を開け、バーボンを取り出すと瓶から直接飲み始めた。】

【街には誰も歩いていない。】
【通りには犬や猫すら姿を見せない。】
【息をひそめ耳を澄ましても物音ひとつ聞こえない。】

【シャーロットは目を伏せた。】
【人気のない街に、獣の遠吠えが響く。】

【今日も赤い月が昇る。】
【街を包む霧を、暗い緋色に染めながら。】

ふぅ…大分マシにはなったが…まだまだ精度が悪いな。
まさか本気でこんな事をする羽目になるとは…。
だが…確かに異様な事が起こっているのは間違いないらしい…。

…何とか身を守らなければ…今までの全てが台無しだ！

…くっくっく。
誰が何を企んでいるのかは知らんが…

…最後に笑うのは、この俺だ！

こうなってしまっては、どうしようもないってことだな……。
信じようが信じまいが、事態は進行していくのか。

「村は静まり返っている。気持ち悪いくらいに。
　平和であるからこそのそれではなく、まるで何か・・・
　知られてはいけない何かを必死で隠そうとしている
　ような。まるでそんな印象だ」

人気が無いな・・・
それに静か過ぎる。

「村全体を見回した印象だが、電話線以外に異変はまだ
　無さそうだ。
　墓地とその傍の牧師館も少し見てきたが、昨日と特に
　印象は変っていない。
　ユージーンが知っている牧師の秘密がどうも気になる。
　昨日会ったナッシュ、どこかで聞いた名前なのだが
　どうも思い出せない。だが俺が知っているのだから人狼
　と係わり合いがある可能性が高い。どこかで数年前の
　文献でも調べられればいいんだが。
　あとあのカミーラという女性。以前この村に住んでいた
　らしいが・・・・・・
　赤い雀か。今日は必ずその意味を聞かせてもらう」

「あと気になったのだが、さっき村はずれからかすかに
　銃声が聞こえた気がする。
　自警団の演習とは思えない。
　とすると銃声の犯人は一体誰なのだろうか？
　もし人狼が拳銃で武装していたら、さらに厄介な事に
　なる。人間の護衛手段だならば心強いのだが、
　要注意だ」

ようラッセル。元気か？

やあギルバート。静かな夜だね。
……裏で誰かが囁いているような気がして仕方ないけどね。

正直、あまり元気じゃないな。
さすがに気分が急いてしまってね。

……それよりカミーラの姿をみかけないんだ。
何処へ行ったんだろう。

カミーラか・・・・・・
正直気になるがな。だがこの村にはカミーラと同じくらい
怪しい人物がゴロゴロしているからな。へへっ。

まあ、ゆっくり見定めさせてもらうぜ。

元気じゃないか・・・寂しいもんだな。

しゃあねえ、内緒だぞ。

俺は甘くていけないな。ラッセルの親に説教されそうだぜ。

君達だけか…他の者は？

さあ？まだ来ていないみたいだな。
あれだけショッキングな発表があったにも関わらず、みんな随分静かだな。気味が悪い。

ただいま戻りました。
･･･村の様子がおかしいです。
動物の声も聞こえないんですが、何人も連絡の取れない人がいるみたいなんです。僕のお祖父さんも今日仕事が終わって家に戻ったら居なくなっているんです。
･･･一体何が起こってるんでしょうか？

皆、様子を窺っているんじゃないか？
何が起きているのかさっぱり分からんからな…

まぁ…俺はもう腹を据えたよ。
一体誰が何をやらかそうとしているのか、じっくりと拝見させてもらおうじゃないか…くっくっく…。

あたくしも居てよ。

人が… いませんわ。商店街に並ぶ店はみんな閉まっていて、近所の家ももぬけの空です。一体、この街はどうなってしまったんでしょうか…

…コーヒーでも入れるか。

誰か他に欲しい人はいるかね？

・・・・・・　ちょっと待ってくれヒューバートさん。
あんた、最近拳銃を扱わなかったか？

美術商は銃の練習もするのかい？

…うちでは装飾品としての古式拳銃ぐらいしか扱っていないよ。
「使える」銃が欲しければ、隣町のガンショップにでも行くといい。

まぁ…辿り着ければの話だがね。

デボラさん、落ち着いて。
カミーラさんはしっかりした娘さんに見えたわ。
きっと無事に戻って来るわ。

でも、どなたか迎えに行ってあげて下さらない？

なるほど、だったら納得したよ。
なんか変な事いっちまって悪かったなヒューバート。

おう、キャロか！
今日も相変わらず素敵だねえ。

こんばんは、みなさん。

あら……、また母娘揃ってるのね。

【エレノアに冷たい視線を投げ、近くにあった椅子に座った】

……。

ハァイ、ギル。
今日も相変わらずお上手ね。

ところで、村人が殺されたとアーヴィンが言ってたけど本当なの？
それから、霧が凄くて前も見えない状態だったんだけど……。この村では良くこんな事があるのかしら？
デボラ、何か詳しい事知ってる？

…酒の方が良かったかな？

まぁ…神経が高ぶっているようだから、こちらの方がいいと思ってね。

【キャロルはスイカのような乳房を揺らし、膝を高く上げ足を組み替えた】

へっ、確かにそのとおりだ。
まあ気楽にいこうぜ。

カミーラがの姿が見えぬ。

一体どこへいったのじゃ…カミーラや、カミーラや…。

ふぅん、デボラ。
聞いていない時には勝手にベラベラ話して、聞くと答えないって訳ね。
本当に気味の悪いおばあさんだこと。

ま、所詮あなたたちにとっては、あたしは余所者ですもんね。田舎の村は内向的。そのまんまの村だこと。ふふふ。

キャロ、今日の気分はどうだい？
昨日よりもさらに綺麗な格好をしているから、見違えたよ。

（小声で…）

なぁ…アーノルドに、何か変わった様子は無かったか？
何でもいい…気が付いたことがあったら教えてくれ…。

どうしたの？　ギル。
ヒューバートと何かやりあったみたいね。ヒューバートもいつになく真剣な顔しちゃって。
取引の時以外見ない表情よね。うふふ。

いや、なんでもないさ。ちょっとした俺の勘違いってやつ。

あたしの気分を心配してくれるの……。

【少し戸惑いながら】

あたしはいつも通りよ。どうもありがとう、ギル。

キャロルさん、お年寄りを苛めないであげて。
デボラさんはカミーラさんが心配なのよ。
貴女が村の人間でないからといって、
それだけで排斥するのは人道に悖る行為だわ。
アーノルドなら、そう言うわ。

この村は、健全な村よ。
霧や人狼の噂なんて、あたくし聞いたことがなくてよ。

そうか、それは良かった。
何か元気がなさそうだったからな。せっかくの美貌が台無しだと思ったんだが。
へっ、やっぱり俺は心配性みたいだな。

カミーラや、カミーラや……。
こんなに探しても見つからぬ。

…まさか、人狼に食われてしもうたのか。

娘のみならず、孫娘まで失ったら、ババはどうして生きようぞ…。

【アーノルドにも聞こえるように、ヒューバートに話しかけた】

アーノルド、血相変えていたわ。
それから大きなスコップ持っていたわね……。殺されたとかいう村人を埋葬するなら、あの隻眼が毎晩穴を掘っているっていうのに…。

（・・・・・・　どうやらあの村長も
　　　　　　　　　　　怪しい行動をしているようだな）

エレノアって言ったかしら？
アーノルドならそう言うって言ってるけど、そのアーノルドがあたしをこの村に連れてきたのよ？
分ってるの？

えっ・・・
それは本当なのかキャロ！？

…スコップ？

（分からんな…あいつ…何をするつもりなんだ？）

心配もいいですけれど、誰もカミーラさんを探しに行って下さらないのね。
それとも此処に集まっているのは、
いきがってばかりの腑抜けた男性だけなのかしら。

【ギルバート、ヒューバート、ルーサー、ラッセルを毅然と一瞥した】

結構よ。
あたくし、様子を見て参ります。

【エレノアは娘に小さく耳打ちした】
シャーロットはあんな殿方に騙されちゃ駄目よ。
近寄らないようになさい。
…ええ、あたくし一人でも大丈夫。
明かりを持って街道そばまで様子を見に行くだけよ。
危険な事はしないわ。

ええ……。
今朝、日の出近くにこの目で見たわ。
気をつけた方が良いって事と、「人狼」の仕業だと確信した様子だったわね。

さすがにあたしも少し気味が悪いわ。

カミーラが本当に来ないか……。
僕は彼女は、犠牲者よりも加害者の方だと思っているんだがね……。

お母さま、どうかお気を付けて…

【どうして誰も探しに行ってくれないのかしら…】

まいったなあ、エレノアさんが一人で行っちまったよ。
ほうっては置けないけど・・・　しゃあねえなあ。

ちょっと後を追いかけてくる。キャロ、すぐ戻ってくるよ。

（…安物の香水臭い。）

（あんな中にもう一時間でもいたら、頭がどうかしてしまうわ。）

（夜風に当たっていた方がまし。）

（美貌の踊り子。男たちはすっかり腑抜けにされてしまったわ）

（…怖くなんかないわ。あの人がきっと護ってくれる。）

彼女の素性を知っていたら、とてもじゃないけど探しに行く気になんてなれないと思うけどね……。

ええ、気をつけてね、ギル…。

人狼…か。（なにかの符丁なのか…それとも…）

分かった、ありがとうキャロル。
また何か気が付いた事があったら教えてくれ。

ああ、それから…（懐から手の平大の小箱を取り出して）
こいつは、この間手に入れたアクセサリーなんだが、ボスからお前さんに渡してくれと頼まれていたのを、この騒ぎですっかり忘れていたよ…。
ほら、大事にするんだな。

（小声で）デリンジャーだ…用心の為にも持っておけ…

く、ふふふ。
大騒ぎだな……。

しかし、牧師は何を考えているんだ……？

ありがとう、ヒューバート。
あら！　あたしが欲しがっていたサファイアだわ！
ボスも憎い事するのね。

【小声で】
本当にありがとう。アナタも気をつけて。ここの村人は揃っておかしいわ。

村長の考えていることも、よくわからない……。

電話線を切るように頼まれたが、切ったのは僕じゃない。……あぁ。僕が切ろうとしたときには、もう切られていたのさ。

さて…と。
この間仕入れた物の整理でもしておくかな…。

じゃあ、皆さんごきげんよう。素敵な夜を。

村長さん一家も･･･どこか不穏ですね･･･。
僕は今まで何も気づかなかった･･･。
やっぱり、僕が子供だからなんでしょうね。
ヘンリエッタさんは大丈夫だろうか？

…おいおい、気をつけろよユージーン。

くっくっく…

は、はい。すみません。
ヒューバート様……。

……くそ。
ヒューバート。
絶対に、殺す。

……

…カ、カミーラや…！

一体今まで何処にいたのじゃ…。
ババは心配したぞ。さあ、こっちにきなされ。

……なんてこった。
何でもない。何も無かった。

少し休んでくる。

カミーラさん、こんばんは。
顔色が真っ青ですよ？
大丈夫ですか？

……。

何て村なのかしら……。
最初は一番おかしいと思ってたユージーンが普通に見えてきたわね。

あたしもそろそろ屋敷に戻るわ…。

！！
そういえば、ギルが探しに行ったのは今の女じゃなかった？
大丈夫なのかしら…。

【アーノルドの屋敷に戻ると、明かりの落ちた寝室へ足を運んだ。

　アーノルドはあたしをこの村に呼ぶ為に、この屋敷の所有権をあたしにくれると言っていた。そこまでして、何故あたしを……。
　一体何を考えてるの？
　あたしはあたしで、柄にもなく落ち着きを求めてここに来てしまった。金も宝石も腐るほど手に入れた。安定を今更求めるなんて間違えていたのね。

　キャロルは、独り暗闇の中で涙を流した。

シャーロットさんこんばんは。
村が大変なことになってますね。
これから僕たちはどうなるんでしょうか？

トビー… 私には、まだなにが起こっているのかも分からないの。でも、私達はなにかと闘わなければならない… それだけは確かね。

………。

エンリエッタちゃん、どうしたの？ 顔色が悪いわ…

……シャーロットさん。

誰もいなくなっちゃったよ。

ヘンリエッタさん、どうしたんですか？
顔色が･･･。

ヘンリエッタちゃん… まさか、あなたの家の人までいなくなったの？

「困った。エレノアさんを完全に見失ったようだ。
　この状況で女性を一人歩きさせてしまった事を反省
　している。せめて無事でいて欲しい。

　同じ事がカミーラにも言えるが、彼女は逞しそうだ
　からな。だが今日は話を聞く予定だった筈。
　集会場に戻っる頃には、彼女も居ればいいのだが」

ﾉﾉお昼は、お父様にしかられるのが怖くて、内心ビクビクしながらお屋敷に戻ったの。「帰ったらお説教だぞ」ってお父様もおっしゃっていたし……。

でも、お屋敷に戻ったらお父様は私をめずらしく、抱きしめてくださったの。それも大事そうに……。

お母様は私が集会所に出かけた後、隣町から戻られて、それからお庭で倒れられたとかで、ひどく青ざめたお顔だったわ。でも、いつものようにお部屋に引きこもってしまわずに、お父様と一緒に私を待っていらした……。おかえりなさい、と言って優しく微笑んでくださった。

……いつも夢みてたみたいな風景に似てる、でもなんだか、怖い。そんな気がしたの。

……それから、三人で食事を取ったわ。
私の好きなものばかりで、最後の晩餐という言葉が頭に浮かんだの。
でも、楽しかった……。

最後にお母様が、私に良い匂いのする紅茶を入れてくださって「今日はもうおやすみなさい」と言ったの。……私はその言葉で、急に眠くなって、いつもより随分はやくベットに入ったわ。

……何時間眠ったのかしら。

ふと目覚めると、お屋敷の中は静まり返っていて……。
ひどい胸騒ぎがしたの。

ふとみると、枕元には小さな青い綺麗な箱と「集会所へ行きなさい」という短い手紙が……。あれはお父様の筆跡。

はっとして、お屋敷中を探しまわったわ。
でも、お父様とお母様はおろか……、執事も女中達も、誰もいなかったの……。

それで、ようやくここに戻って来たの。

これは……、一体どういうことなの……？

私はもう、お父様にもお母様にも会えないのかしら……。

シャーロットさん、トビー……。

トビーのおじいさんも居なくなってしまったのね？

大丈夫よ、ヘンリエッタちゃん… あなたのご両親は、お二人ともあなたの身を強く案じてらっしゃったわ。それなのにヘンリエッタちゃんがここに一人残されたのは、きっとこの人狼騒ぎのせいだと思うの。だから、この騒ぎさえ収まれば、きっとまた会えるはずよ。

ヘンリエッタちゃん… もう泣かないで…

ひ、ひ、ひ……。

ナマイキなガキどもには、ちょうどいい薬だな。

ええ。僕のお祖父さんも居なくなってしまいました。
ただ、僕のお祖父さんは書置きの１つも残さず居なくなる人じゃないんですが、何も･･･。
この村に何かが起こっているのは確実なんですが、それが何なのか･･･わかりません。

あぁ。シャーロット……今日も僕のことを見てくれたね……。うふふ……。うひひひ……。

おかしい…やはり無くなっている…
なにかの役に立つかと思って仕入れはしたが、すっかり忘れていたというのに…

誰だ…誰が持っていった？アーノルドか？
こいつの存在を知っているのは奴ぐらいだが…

…やはり、今回の件に関係があるのか？

シャーロットさん、ありがとう。
でも、……また、すぐに……会えるよね、きっと。
トビーのおじいさんも、多分。

私はまだ、人狼なんて信じてないわ。

遅くなっちゃってごめんね。
村の中がずいぶん静かだけど…。

アーヴァインが青白い顔で私の部屋に来たわ。

旅人が殺された…とか。早く集会場にいけってね。
本当の話なの？あまり詳しくは話してくれなかったけどさ。
私をここまで送ると、すぐに慌ててどこか消えちゃったし。

全く、何がどうなってるって言うのよ…。

…何にしても、迂闊に他人の差し出す物は口にしないほうが賢明だな。

まったく…次から次へと、こうも厄介事が続くとは…
きっと偶然では無い筈だ…くそっ…

ふう・・・
なあ、エレノアさんは戻ってきたか？　あとカミーラは？

ええ、ええ。
ヘンリエッタさん。僕もそう思います。
人狼は居るかどうかはわからないけれど、お祖父さんが居なくなったこととは関係がないと思うんです。そう言えば･･･今日はあの遠吠えが聞こえてきませんね。

【ヒューバートは、手にしていた空の小箱を放り投げた…床に転がった箱の表には「青酸化合物」の文字が見える…】

……遠吠え。

そういえば、トビーはなにか獣のような遠吠えが聞こえる気がするって言ってたね。

なんだろう……。

私、少し座るね。

・・・まさか、戻ってきていないのか？

ギルバートさん… 私のお母さまとご一緒ではなかったのですか？

・・・もうこの村で俺が行ける場所には全て行ったぞ。
シャーロット、どこかに心当たりは無いか？

そんな・・・　一体何処へ行ったんだ・・・？

（カミーラの姿が見えない……。
　アーヴァインの姿も……。
　……イヤな予感がする……）

…出かけたまま、帰ってきてない人がいるわけ？
アーヴァインが村を回ってるみたいだから、きっと大丈夫さ…

[自室の椅子に腰掛けるとポケットからバーボンの小瓶を取り出し、いとおしむ様に少しずつ流し込む。］

さて・・・、と。
今夜もあの場所に行くべきか。
・・・ふぅ。
信じられないが、たわいもない会話をしながら過ごすひと時を私は愉しみにしているようですね。

…皆まともに話せる状態じゃない…って感じだね。
何がどうなってるのさ…いったい。

ギル、あんた何か知ってる？

ローズ・・・・・・

エレノアさんが集会場から出て行ったっきり帰ってこないんだ。

お母さま、もしかしたら家に帰ってしまったのかも…

【シャーロットはカタン、と椅子から立ち上がった。】

私、家を見てきますわ！

ちょっとめて、俺も行くよシャーロット。
一人じゃ危険だ。

ふん……。
シャーロットはいつでも僕が守っているよ。
あぁ。いつでもね……。

やはり邪魔だ、あの男。

[温まったミルクをいくつかのカップに注ぎ、トレーに乗せテーブルに運ぶ]

…とりあえず、温かい物でも飲んで落ち着きなよ。
いつものジュースもあるけどさ。皆はそんな気分じゃないだろ？

私は、いつも通り『オレンジジュース』にするけどね…。

［ナサニエルはポケットから細身の銀笛を取り出し、流行に合わないスローテンポの曲を奏でた。遠い故郷のことを思いながら。

しばらく目を閉じ考えた後、外套を身につけ、夜の街へ出かけた。］

こんばんは。皆さんお集まりですか。

ええと・・・、いかがなされましたか。
どことなく表情が重いようですが・・・。

シャーロットさん？
……あの、エレノアさんまでいないの……？

ローズ、ミルクいただくよ……。
なんだか、寒くもないのに寒気がするんでね。

みんな。
アーヴァインが戻ってきたら、ちょっと話がある。
大事な話だから、あんまり飲み過ぎないようにしてくれ。

さすがに『容疑者達』も村の異変に気付いてきたか。しかし、なんと説明すればよいのだろう。私はハワード卿のように口達者ではないのだ。上手く説明できるだろうか、気が変になったと思われないだろうか……。

ええい、まだ霧が出ただけだ！
被害者が出るまでは無駄に恐怖をあおることも有るまい。

それよりも、キャロル……。
キャロルはどこだ？　キャロル！

もうすぐ二時になる。この村の人間の霊力が最も高まる時間だ。私の調査に狂いが無ければ、キャロルは人狼と人間を見極める目を持っているはずなのだが……。呪われたジプシーの血を受け継ぐ踊り子キャロル……。

今日から、お前の、本当の仕事が始まるのだ。
嗚呼、キャロル、どこに行ったのだ、キャロル！

あぁ、ナッシュおはよう。
私も今着いたばかりで、良く分からないんだけどね…

何だか皆酷く疲れた顔をしてるのさ…。
そんなに不安なら、明日村を出て町に行けばいいだけじゃない？

[疲れきっているヘンリエッタの横に腰掛け静かに髪を撫でた]

大事な話か…。
ラッセルの表情からするとあまり楽しい話じゃなさそうね…。

ふうん。人為的に閉ざされた村、か。ヘンリエッタを置いていくハワード家の行動も解せないな。普通に考えると村ごと焼かれそうな雰囲気だが。それにしては村長一家が残っているのが不自然だな。

デボラといい、腹に一物を抱えている奴が多すぎるな。――まあ、俺にも秘密はあるけどな。
赤い、雀、ねえ。

ふーむ・・・。

あっ、ローズくん、オレンジジュースありがとう。
もう『いつものやつ』で解ってくれるなんて、嬉しいですね。ふふ。

先ほどカミーラさんもいらっしゃたんですけれど･･･
ヘンリエッタさんが来たときと同じように真っ青な顔をして、何かつぶやいてそのまま出て行ってしまいました。

【数分前──ヒューバートは、集会所へ向かおうと上着を羽織ったが、ふとギャラリーの外から誰かの視線を感じたような気がして手を止めた】

…誰だ！？

【ドアを開けて辺りを見回すと、角を曲がって走り去る人影が目に付いた…】

あれは…ラッセル？

トビーくん、そうなのですか・・・。カミーラくんまで意気消沈、だなんて想像しかねますね。

あ、そこに生けているお花、綺麗ですね。
紅が濃すぎるようですが、この店によく馴染んでいます。

……キャロル。私の寝室ではなく、娘の寝室で寝ていたのか。

…随分と騒がしいようだが、何かあったのかね？

【ヒューバートは、その場にいる皆を見回し…視線の先をラッセルに固定した。】

あぁ、ヒューおはよう。
エレノアやまだ来てない他の皆を見なかったかい？

僕に何か用かな？　ヒューバート。

キャロル、この時間にぐっすり眠っているとは……私の見込み違いだったのかもしれない。嗚呼、なんということだ！

それとも、私に素性を隠すための演技なのか……。

さてね…鼠なら一匹見かけたが…

【ヒューバートは、ラッセルに視線を据えたままローズマリーに返事を返した。】

明日の夜、集会所で村の異変について説明せねばなるまい。今は休もう。

……ギャラリーのことかなぁ。
まずったね。気配を殺すのがまだ下手で。

……ち。アーヴァインがまだ戻ってこないけど、仕方ない。釈明するには事情を説明するしかなさそうだ。

僕は「赤い雀」の一員だ。アーヴァインもね。

…赤い雀？

皆も色々聞いているかもしれないけど、赤い雀はナサニエルが言っていたような、シーフグループってわけじゃない。それは活動しやすいように、上が流したプロパガンダだよ。
上層部が政治に携わっているってのは、ある意味当たっているんだけどね。赤い雀の中枢部は、ホワイトハウスにあるらしいから。まあそれも、僕ら末端には、明示されているわけではないけども。
不透明なところが多い組織だよ。中にいてもね。

ともかく。各州の警察と独立して動く捜査組織……それが赤い雀だ。
特にある種の事件に対して、特別な権限を委ねられている。
……人狼関連の事件にね。

【シャーロットは自宅に帰り着いた。】
母親を探して家の中を巡るうち、自室の前を通りかかる。部屋のドアが半開きになっているのをいぶかしんだ彼女は、そっと部屋を覗いてみた。

部屋には、彼女の父が静かにたたずんでいた。そして、その視線の先には、自分のベッドに横たわる女性の姿があった。

シャーロットは、なにも言わず、家を出た。

……といっても、アーヴァインはともかく、僕がこの村に滞在していたのは、そっち関連の任務のためじゃない。まだ新米だからね、小悪党の調査を任されてただけさ。
天使の涙っていう、60カラットのダイアモンドが盗まれる事件があったんだが……それの被害者が組織と繋がりのある人物で、どうやら上が揉めたらしくてね。駆り出されたってわけだ。
捜査線上に浮上してきたのが、ヒューバートだった。
ギャラリーを漁ってみたりしたんだけど見つからなくて、別件で引っ張ろうかと思っていたところだったよ。まさかキャロルの首にかかってるなんてさ。盲点だった。ていうか反則だよ。

……あ、ヒューバート。
これで引っ張ろうかと思ってたんだけど、もういいや。返す。

……ちなみに、青酸化合物については僕じゃないけどね。

この村にいる赤い雀のメンバーは、僕とアーヴァイン……それから、あともう一人いる。
……特別権限を発動させてもらおうかな。

成る程ね。
やばい品に手を出していた…って事か。
で？政府のお役人様は俺をどうするつもりかね？
ＦＢＩにでも突き出すか？

……いや、こんな状況になった以上、正直そんなことはどうでもいいよ。
この村は危険区域として隔離されたと思って間違いない。
一時休戦して、人狼を滅ぼすべきだと思うね。

……まぁ、ヒューバートが人狼じゃないとして、だけどさ。

（【ギルバートはシャーロットの家までたどり着いた】
　【ギルバートは家から出てきたシャーロットと
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　出くわした】

うわっ・・・どうしたシャーロット。そんな真っ青な
　　　　　　　　　　　　顔をして。エレノアさんは？）
　

…隔離されたってどう言う事よ？
もう村から、出てはいけないって事？

やれやれ・・・。ここは無法地帯ですか。

ヒューバートさんも芸術品を扱う方なら、少し落ち着かれて窓辺の花でも観賞すればよろしいのに。

・・・カウンター越しの花も、ね。

出てはいけないというか……もう出られなくなっているはずだけどな。

やれやれだ…俺もヤキがまわったな。
分かった。見逃してくれるって言うんなら協力しよう。
ただ…一つだけ聞かせてくれ。

…お前さん達が追っている人狼ってのは、そもそも何なんだ？

【シャーロットは、潤んだ目でギルバートを見つめ、首を横に振った。そして顔を背けると、静かに集会場の方に歩き始めた。】

…出られない？どう言う事？
…あぁ…、それで皆慌ててたってわけか…。