人狼審問

【キャロルは物凄い悲鳴に気づいた】

ヒュー？

【キャロルは枕の下からヒューに貰った銃を手に取ると飛び出した】

あの悲鳴は……。
ヒューバートだ。
呪いに落ちたか……。くっくくく。

……なんでだ？　誰の名も刻まなかったはずなのに。
寝惚けて名前を刻んだのか？　そんなに呑まなかったはずなのに。

……これじゃ、本当に呪い、みたいじゃないか……。

いやぁぁあああ、ヒューなの？　ねぇ、ヒューなの？

【ボロボロになったヒューの服が目に入った。瞳からは涙がボロボロと零れ落ちる】

ああ……。ヒュー、何故こんな事に……。ごめんね、あたしのせい……よね？　ごめんなさい、ヒューバート……。

【シカゴでの思い出が走馬灯のように駆け巡る】

ヒュー……。アナタの悪ぶってる所も、本当は優しい所も、あたし大好きだったのよ。生きているうちに伝えたかった……

あれは……片腕の流れ者？
全身血まみれだ。
何をやっている……？

……ナサニエルさんの名前で間違ってない、と思う。
シャーロットさんは、エレノアさんの死で気が動転してた…。

言ってる事が変だったもの……多分。

……お腹がすいたけど、私…もう眠たくて……。

【逃亡者カミーラは、目を覚ました。】
【気づけば、裸でシーツに包まったまま、眠ってしまっていたようだ。】

【ギルバートが、隣に居ないことに気づいた。】

・・・・・・俺は、一体何をしているんだ？

これは？

なんだ、これは？

一体俺に何があったんだ？

日記は？　あと拳銃は？　銀弾を使ったのか？

流れ者め。何を慌てている……？
誰を殺した？　誰を？

･･･
今日も、まだ霧がかかったままなんですね。
【集会所の石版を見て】
ナサニエルさんが･･･。

【膝を抱えドアに凭れ掛かったまま、暗闇を見据える】
…グレンが…グレンが…人狼…？
そんな…でも、キャロルが嘘をつく娘には見えない…。

分からない…私は何を信じたら…良いの…。
【グレンを一瞬見つめ、悲しげに目を伏せると眠りに落ちた】

・・・・・・　まさか。





俺　だったのか？

は、ははは・・・・・・

そういうことか。ようやく分かった。


おれは、こうやって人を殺し、その度に記憶を奪われていたのか。

・・・・・・何のために生きているんだ、俺は？

ヤツめ。どうした？
死んだのか？

……だが、好機だ。

……と。生きていたか。
どうやら、完全に記憶喪失か。

……ふ。使えるよ、おまえ。

……ギル？　ギル？　どこに居るの？

まさか……人狼にやられ……？
まさか……まさか！！

なるほど・・・・・・な。

よく見たら、この日記は修正ばかりじゃないか。
記憶も無いのに、なんで修正できるんだ。
誤字脱字だけじゃない。文章単位で書き直されている。
破られているページまである。

いいように・・・・・・　操られていたのか。

なら、いっそ死んだほうがましだな。へっ。

すまない、カミーラ。

ギル……ギル……！！

生きていたのね、良かっ……

ギル……？

これ、あなたの血……じゃないわね？
この量……持ち主は、死んでいる、わね？

ねえ、ギル……どうしたの？

カミーラ・・・・・・

だめだ、来るな！！　俺は、お前まで喰ってしまう！！

……ギル？

……どうしたって言うの？　どうしたって言うのよ。何が、あったの？

分からない。　記憶が無い。

だが・・・・・・これだ。
以前、今の俺のように気がついたんだ。
メモが残っていた。多分、俺だ。いつか気が付くと思い、銃に隠してあった。

(ギルバートのメモを見て)

知ってる。知ってるよ。あんたは、時々記憶を無くす。
でも、それだけだ。それだけだろう？

いくら、記憶を無くしたって、あんたがあんたである限り、何の、問題も、無いはずだ。

いつもどおりに流れる毎日の記憶を、時々なくしてしまう。あたしだって、記憶をなくしながら生きてる。本質的には、同じだ。

ねえ、同じだろう？　同じだと、言ってくれないか。

頼むよ。

・・・・・・　殺してくれ。

このまま生きていたら、俺はお前も喰ってしまう。
だが、何故か俺には引き金が引けない。

今なら銀弾が打ち出される。

頼む。おまえの手で。

そこの二人……。
僕の話を聞く気はあるか？

おまえは・・・・・・ユージーン！？

こんな所で何をしているんだ！？

ずっと、お前を見ていたよ。流れ者。
安心しろ。お前は人狼じゃないさ。

ユージーン……
あたしに……あたしたちに、教えられることがあるなら、教えてくれないか。

……これは、何だ？
何が、起こってる？

なあ、ギル。なあ、ユージーン。

信じたくないよ。何も、聞きたくなど無いよ。どうして？　どうしてなんだよ。な　ん　な　ん　だ　よ、一体！！

・・・・・・なんだと！？

それは本当か？じゃあ、この返り血はなんなんだ？
教えてくれ！

お前の体に付いた血は、人狼に殺されたヤツの血だ。
お前は、その返り血を浴びただけだよ。

どうしてお前が殺されなかったのか知らんが……。
その銀弾のせいかもな。

なんだって？

……ユージーン、本当か？　
本当なのか？

ははっ。

あぁ。僕は嘘を言わない。
この目で、人狼の姿を見たからね……。

この銀弾の・・・・・・

しかし、いや誰が殺されたんだ！？

お前、記憶をなくす前に人と会っていただろう？
そいつだよ……。

ヒューバート・・・・・・さんか？

なんだ？しかし、引っかかる。なぜ俺は生き残ってヒューバートさんは？
俺が銀弾を持っていて、ヒューバートさんは・・・・・・

そう。ヒューバートさ。
あいつは死んだよ。ボロクズみたいに引き裂かれてね……。

お前は、人狼の姿を見た瞬間に気を失ったぞ。

・・・・・・そう、だったのか。

じゃあ、こんな格好していたら勘違いされるなあ。
とりあえず、どこか目立たないところで着替えたいんだ。

ユージーン、ちょっと肩を貸してくれ。力が入らないんだ。

これでいいか……？

あぁ。もっと重要なことを教えてやる。
僕は、人狼を見た。

人狼は二匹だった。
一匹は髪の長い女。……キャロルだな、あれは。
もう一匹はガキだったぞ。たぶん、トビー。

僕を信じるなら、流れ者。お前の過去は清算できるよ。……くふふ。

『ナカナカ　ミドコロガ　アルジャナイカ。
　オレノナハ　ファング　ダ。
　ギルバート　トハ　ベツジント　オモッテクレ

　オマエハ　クワナイ　ヤクソク　シヨウ
　オンハカエス　ネガイガ　アルナラ　イツデモイエ』

ううっ、くそ、頭が痛い・・・・・・

キャ、キャロルとトビーなのか！？
そんな、馬鹿な・・・・・・

…………。

あ、あぁ。そうだ。
キャロルとトビーだ。

……どうしてだ？
人狼は、何故、ギルを殺さなかったんだ？

人狼は、その姿を見た瞬間に気を失ったギルを放置して、ヒューバートだけを、襲った。

そして、人狼は、キャロルと……トビー、だと？

……そんなことが、ありえるのか？

今度こそ、敵を討てるんだな・・・・・・

有難う、ユージーン。お前のお陰で、俺の旅は終わりそうだ。

あぁ。お前の旅はここで終わるよ。
石板の呪いにかからないよう祈るんだな。

そうだ、問題は石版だ。
あれは人狼が全て死んだら、呪いは解除されるのか？

……ギル。

とにかく、生きていてくれて良かった。今は、それだけを考えよう。全ては、今日の夜に。

さっき、血まみれで一人ぽつんと佇むあんたを見つけたときは……自分が、どうにかなってしまいそうだった。

孤独なギル。あたしの分身。あんたは、あたし自身。あたしの、大事な大事な、……可哀相な、ギル。

呪いを解くには魔導書が必要だ。
しかし、それはヒューバートが焼き捨ててしまったよ……。

カミーラ・・・・・・もう大丈夫だ。

この悪夢は終わる。間違いない。
そして、一緒に未来を過ごそう。

……どうして、あたしたちは、こんなにも、弱いんだろう。

どうして、こんなにも、無力なんだろう。

……ギル。あんたと、ずっと、一緒に居たかった。

焼き捨てた？
おかしいぞ。日記には「まだ隠し持っている」と書かれている。そんな事はない。

……そうね、ギル。

ずっと、一緒に過ごしましょう。

ああ、ずうっと一緒だ。カミーラ。

昨日、ヤツは僕の目の前で魔導書を焼き捨てたよ。

……いや、あの男なら贋作を作るぐらいのことは……。

……ふぅ。
この辺りでいいか？
お互い、一緒にいる所を見られるのは面白くないだろう？

ああ、ユージーン助かったよ。

・・・・・・実は、一時お前を疑っていたんだ。
悪かったな。

ここからは、その・・・・・・カミーラと、帰るよ。
ありがとう。

それじゃな……。

あぁ。さっきの「約束」は確かに覚えたよ。
よろしくな……。

約束？　何かしたか？

ふふ、ふ……。

何でもない。
お前は忘れていい。

じゃあ、そろそろ行こうか。カミーラ。

……ギル。一緒に、部屋に帰ろう。世界の一番端っこのあの部屋で、抱き合って、誰にも見られないで泥のように眠ろう。

さっきは、目が覚めるとあんたが居なくて、あたし一人だった。
息が、止まるかと思った。

もう、一人は嫌なんだ。
もう、あたしを、置いていかないで。お願い。

もう大丈夫だよカミーラ。
俺たちは、永遠に一緒だ。寂しい事なんか無い。

ふん……。
石板の力に落ちたのは羽帽子の男だったか……。

そして、やはりトビー……。
お前は殺す。

……さて、キャロルの言っていた通り、死体を調べてみることにするか。
アーヴァイン、デボラ、ルーサー……。グレンの死体はここにはないのか。今日の犠牲者は誰だったんだろう。

……そういえば顔見知りの死体を切るのは初めてだな。

[ラッセルは手術用手袋を嵌めると、メスを取った]

……匂いは感じられない。死斑の色も正常。溢血点なし。血中青酸化合物濃度も微々たるもんだ。
青酸でないとすれば、他に……。
いや、検出できないものということもある。元々体内に存在するもの……カリウムを迅速に大量静脈注射で……いや、注射痕がない。

……やっぱり、デボラは単なる心臓発作、なのか。グレンや、今日死んでいるだろう奴を調べてみないと、わからないな……。

くそ。

今日は、ナサニエルか。
この三日、「呪い」で死んだ者すべてに投票している者は、これでアーノルドとヘンリエッタだけ。
……どういうことなんだ。殺しをしているとするなら、いくらなんでも不確実にすぎる。無差別、なのか？

本当に、呪い……。今日の結果如何によっては、それも考えなけりゃならないのか？　くそ、どんどん誰かの策に嵌っていってる気がする。

ともかく、アーノルド、ヘンリエッタは要注意だな。

ヒュー……。
こんな遺体、見られたくないよね……。

【そっと天使の涙に指を触れると、空を見上げて微笑んだ。寝室に戻りシーツをはがすと、それをヒューにかけた】

アーノルドに手伝ってもらって埋めるわね……。

【血が滲み始めたシーツを見下ろし、キャロルはそっと涙を拭いて立ち去った】

【村長の娘 シャーロットは、ようやく目を覚ました。】

見慣れた天井、見慣れた調度… シャーロットは、そこが父親の屋敷だということを思い出した。

シャーロットの脳裏に母親の最後の姿がフラッシュバックする。母親の死に伴い、彼女は父親が住む、そして父親の愛人が住む屋敷に戻ったのだ。

「お母さま…」

ベッドの隅に座り、唇を噛む。もう帰ってこない。母親の笑顔も、両親と過ごした幸せな時間も…

頬に伝う涙を拭いもせず、シャーロットは写真立てを見つめた。幸せそうに微笑む家族3人の姿。窓際に置かれた小さな写真立てに写るそれを、彼女はただ見つめるしかなかった。

身支度を整えたシャーロットは、父親の寝室に向かった。そして音を立てないように寝室のドアを開く。寝台の上に父親の寝顔を見つけて、彼女は安堵の溜め息をもらした。

「お父さま… よかった…」

辺りを見回したが、寝室には父親の他誰もいない。シャーロットは父親の頬に軽くキスすると、寝室を後にした。

「着替え、取りに帰らなきゃ…」

【主寝室の窓からシャーロットを見下ろす】

あの小娘、何故この屋敷に……？
まさか、アーノルドを殺しに来たのでは？！

【キャロルは急いでアーノルドの寝室に向かった】

【キャロルは寝ているアーノルドを見てほっとした。そしてメモを書く】

良かったわ、アーノルド……。
あたし、あなたにまで死なれたら……。

【キャロルは薄っすらと涙を浮かべると、服をゆっくりと脱いだ。一糸纏わぬ姿になり、シルクのシーツに足から滑り込む。
　寝ているアーノルドにぴったりと抱きつくと、足を絡めた。そして昨日の疲れのせいで、そのまま深い眠りに落ちていった】

【村長の娘 シャーロットは、庭に充満するむせ返るような血の臭いに総毛立った。】

庭の隅にある赤黒い布の塊に、シャーロットの目は釘付けになる。

「また…誰か殺されたの…？」

恐怖を無理矢理抑え込んで、シャーロットはその塊に近付いた。そして、まだ白い布の端を掴み、布をほんの少しだけ持ち上げてみる。

「……！」

布が手から滑り落ちる。昨日までヒューバートだったそれは、もう人の形をしていなかった。

鼻につくアルコールの匂い。
自分のいる場所を把握するのに、時間はかからなかった。
頭を抑え立ち上がる。
奥に横たわる人影を視界の端に捕らえ、現実を思い出す。

「グレン…が、人狼…？」

フラフラとした足取りでグレンにそっと近づく。
悲哀に満ちた瞳でその顔を覗き込む。

「…あんたも、私を…騙してたの？」

無意識に口から出てきた言葉。
それに違和感を覚える事もなく、ただじっと顔を覗き込んだ。

あんたが…人狼でも、私はあんたを好きだった。
今言えるのは、それだけだ。

だから、あんたを殺した奴を許さない。…絶対に。

…ナッシュ…。
私は昨日あいつの名前を石に刻んだ。自分の意志で…。
あいつはどうなったんだ…？

あの流れ者……。あいつが人狼だ。
ヒューバートを殺したのは間違いない。

死体はどこだ？　どこだ？

ヒューバート。
哀れな姿になったものだな……。
お前に似合いの姿だよ。

ひひひひひ。
ははははははは。

どうだ？　ヒューバート。言ったとおりに切り刻んでやったよ。くふはははは。

ん？
これは……ヤツのギャラリーの鍵か。
魔導書が残っているとすれば……。

キタブ・アル・アジフ……。

あの書の在り処は、匂いでわかる。
どこだ？　どこだ？

（一部始終を見て、悲鳴をあげないのがやっとの状態で）
ユージーン･･･彼は狂ってる。
そして、あの無残な死体はヒューバートさんなのか･･･。
酷すぎる･･･。
彼は･･･ヒューバートさんを殺す動機があるんですね・・・。

こいつだ。こいつ。
この金庫の中から、お前の匂いがするよ。

さぁ、僕の手に戻れ。

ようトビー。何してるんだ？

……おまえ、一体何を……。

これで、石板の力は僕が握った。
エン・イーの呪いを治めるのは僕だ……。

違います！
ラッセルさん。
これをやったのはユージーンさんです。
ナイフでずたずたに･･･。
彼はこの死体をヒューバートさんだと言っていました。
彼が殺したかどうかはわからないけれど、今ナイフでずたずたにしていたのは紛れもなく彼です。

ユージーン。僕は見なかったが、あいつならやりかねないな……。
で、これがヒューバートだって？
そういえば、キャロルの警護をするって言ってたもんな。キャロルは、無事なのか？　アーノルドは？

ヒューバート、銃を持っていたんだ。警護って言ってたくらいだから、警戒してたはずだ。無抵抗で殺られるなんて思えない。
悲鳴や、争い音があったはずだ。キャロルやアーノルドは何をしてたんだ？

……いや、ヒューバートが相手に警戒をしていなかったとしたら。

ともかくトビー、出歩くときは気をつけろよ。
ユージーンは勿論、ヒューバートと親しかったキャロルは危険だ。村長親子は信用できないし、カミーラも、彼女を庇うギルバートも怖い。
ローズもここのところ様子がおかしいし……ヘンリエッタは一見まともだが、彼女が票を投じた人間が三日連続死んでいることを考えると、用心しておいた方がいい。
……僕は、おまえだけは信用できると思っている。
だから、気をつけろ。

…名前が刻まれたのは…ナッシュ…？
…呪いがあるかどうかは分からない…。
だけど、今までの事を考えたら…ナッシュは死んだ…？

【気付くと顔が緩み、笑い出しそうになる頬を押さえつける】
…だめ、だめよ…！
…私のせいで人が死んだかもしれないのに…。
…狂ってしまう…。いや…怖い…。

…ナッシュは…本当に死んだの…？
…死体は…？死体は誰か確認したのかしら…？

本当は、まだ生きてるんじゃ…？

……あ。
怖い夢……見ちゃった。

（無意識にオルゴールの蓋を開け、ヒューバートが教えてくれた隠し底を開く。）

私は、はじめて、意識的にナサニエルさんの名前を石盤に書いた。皆が彼の名前を書いていたなら、彼が死んだのかもしれない……。
本当なら、まず集会所にそれを確かめに行くべき。
それが、呪いを信じて加担したことへの義務だと思う。

でも、今。
さっきのリアルな夢に出て来た…ヒューバートさんの顔が脳裏に浮かんで仕方がないわ……。

ヒューバートさんは、幽霊が見えるキャロルを守るって言って集会所をでたはずだわ……。

２人は村長さんのお家に……？

【ホットミルクとお湯割を持ち、トビーに近づく】

…トビー？！どうしたの…？大丈夫？

【慌ててテーブルにグラスを置くと、トビーの顔を覗き込んだ】

…酷い顔色…少し横になりなさい…ね？
【優しく微笑み、髪を撫でた】

…痛っ。
こんな靴で走ったから、足がマメだらけになっちゃったわ。

随分静かだけど、ヒューバートさんとキャロルはお家の中かしら……？

ユージーン、犬のように鼻をヒクヒクさせながら庭に現れたが、死臭をかぎつけて来たのか？　とにかく、奴は狂っている。間違いないな。死体を滅多刺しするとは常軌を逸している。ヒューバートの遺体から何かを持ち出したようだが、一体何を……。

トビーはユージーンの後をつけていたようだな。無理もない。見るからに挙動不審だったからな、あの墓守は。

そしてラッセル、奴は何をしに私の屋敷に来たのだ？　何の用事があって我が屋敷に来たのだ？　トビーと話して去って行ったようだが……分らんな。

【アーノルドは、エッタが来たことに気付いて、窓越しに叫んだ】

おお、エッタ！　それを見てはいけない！　そこで待っていなさい！

な、なにこれ………！

誰か！誰か！
このお屋敷には、誰も居ないの？！

よしよし……もう大丈夫だよ、エッタ。さあ、こっちで少し休みなさい。

そ、村長さん。

お庭の……あれは、あれは一体！
あ、あの、キャロルとヒューバートさんは……。

……無事、でいるの？

キャロルは寝室で寝ているよ。ヒューバートは……。

エッタ、ヒューバートのことは、集会場で皆に報告するから、そのときまで待っていなさい。

ところで、今日はどうしたのかな？　私に何か用事があったのではないか？

……わ、分かったわ。

あ、シャーロットさんは、無事…なのかな。

ロッテ……ロッテの姿は見ていないが……。

おお、こうしては居られないな。ロッテの無事が心配だ。集会場で石板を確認しなくては！

昨日のシャーロットさんは、変だったと思うの……。
エレノアさんが亡くなって……、ショックであんな風に、ペンダントで生きている人が、人狼かどうかがわかる…なんて言いだしたんじゃないかと思って。

……私、心配になったの。

エッタ、一緒に集会場へ行こうか。みんな集まっているだろう。ロッテもきっと、集会場に居る。

さあ、行こう。

ふむ……。確かに昨夜のロッテは少し変な事を言っていたな……。

ここに来れば、シャーロットさんも居るかなと思って……。
ヒューバートさんも……どうしてるかなと思って……。

あ、集会所に行った方がいい…よね。

エッタ……エッタは私の事が怖くないのか？

【トビーの髪を撫でながら、言葉に出さずに考え込んだ】

…たくさんの人が、死んだ。人狼という獣に、喰われて…。
ううん、違う…。踊らされて…。人狼なんて居る筈がない…。

だけど、グレンが人狼だとキャロルは言った…。
霊が見える…？そんな事素直には信じ辛い。
恐怖から、幻覚を見たんじゃないかな…。
…でも…もしそれが真実なら、グレンは人間に殺された…？

…私達、人間に。
…グレンが人狼なら、私達は殺す対象で…。

…何故、私に優しくしたりしたんだろう…。
…分からない…考えたくない…。

このまま見えない狂気に囚われそう…。
グレンの敵は、必ず取ると誓った…。
そして、グレンを殺しただろうナッシュの名前を刻んだ。

…ナッシュは、死んだのだろうか…。
表はどうなってるんだろう…？

分からない事が…多すぎて、今はただグレンの敵をとる事だけを考えていたい…。

【両目をきゅっと瞑り、テーブルの上のお湯割に手を伸ばした】

えっ。村長さんのこと？

……最初、石盤を割って配りだした時は、おかしくなっちゃったんじゃないかと思ったけど……。

キャロルが本当に幽霊を見れる人なら、……あの人を連れてきた村長さん本人が、村の封鎖に尽力した村長さんが、狼ってことはないかなって。

後、人狼だったら……。
あんな石盤なんて皆にわざわざ配らないんじゃない？

エッタは私を信じてくれているんだね。私もエッタを信じているよ……。

……村長さん、そんな顔をしたらなんだかお父様みたい。

お父様に……会いたいな。
はやく、この騒ぎが終わるといいのに……。

【トビーの髪を撫でたまま、顔を上げ恥ずかしそうに微笑む】
おはよう、ロッテ。

…昨日は失態を見せたわね。
途中から何がなんだかわからなくなっちゃって…。

…あれ？そういえばロッテ昨日…なんだか不思議な事を言ってなかった…？

エッタ、ハワードもここに残ると言い張っていたのだが、村人達を率いる事が出来るのはハワードしかいなくてな……私がエッタの面倒を見ると約束してエッタを残させたのだ。

すまないね、エッタ。

ローズマリーさん… あの、まだお湯割りはありますか?

【村長の娘 シャーロットは、青白い顔のまま微笑んだ。】

…ト、トビー?!
大丈夫…？どうしたの…？

……村長さんに謝ってもらうことじゃ…。

あ、村長さん見て！
あそこの川に、なにか青いものが……。
ナサニエルさんの着てた、お洋服みたいな色だわ……。

まさか！

エッタ！　君は先に集会場へ行きなさい。ラッセルが居たらここへ呼んでくれ。ナサニエルの死体を発見したと伝えて欲しい。

私はコイツを引き上げておこう。さあ、急いで行ってくれ。

アーノルド……？

【ベッドの中には独りきりで、辺りが暗くなってる事がキャロルを寂しく不安にさせた】

わ、分かったわ！

ああ･･･。
ヒューバートさんが･･･。
ユージーンが･･･ユージーンが･･・。
【集会所の皆にヒューバートが襲われたらしいこと、ユージーンが死体を切り刻んでいたことを震えながら説明した。】

（アーノルド？　あの走っていくのは、ヘンリエッタ？）

【尋常ではない光景に少し言葉をかけるのを躊躇してしまった】

アーノルド……？

【思い切って声をかける】

あぁ、なんてこと… 死体を、穢すなんて…

ユージーンさんが人狼なの? それとも… 狂ってしまったの?

キャロル、こっちへ来ては行けない！

……いや、そうか、やはり来てくれ！　ナッシュの死体がここにあるんだ！

…嫌なもの見ちゃったわね…。
大丈夫…もう大丈夫だよ…。

…ユージーンね…。どうなんだろう…。
あいつの考えてる事は、昔から良く分からないから…。

ナサニエルが……？

【キャロルは震えながら近づいた。そっと天使の涙に手を触れる。
　しばらく宙を見ていたが、その表情は穏やかだ】

可哀想だけど……。普通の人間だったみたい……。

ユージーンは、彼は･･･狂ってる。
奇声を上げて死体を切り刻んだ後･･･何かを漁って走っていったんだ･･･。
その後ラッセルさんと会ったけど、後になって気味が悪くなって･･･。
ローズマリーさん、ご迷惑をおかけしてごめんなさい。

そうか、キャロル……。私は昨夜、ナサニエルの名を刻んだ。きっとこれは呪いによる死であろうな。

無実の人間を呪い殺してしまうとは……。くそっ！

いいのよ、アーノルド……。
あなたは良くやってるわ。

【キャロルはアーノルドを慰めた】

ありがとう、キャロル……。

いまエッタにラッセルを呼ぶよう頼んでいるところだ。ラッセルが来るまでここで待つとしよう。あいつも死体を調査したいだろうからな。

ありがとう、ロッテ。
私はお湯割にしておくわ…。

…あ、そういえば…誰かナッシュは…見たの？

ラッセル！ラッセル！

集会所の左手にある、川の方へ急いで行って！
ナサニエルさんが、弁護士さんの死体が見つかったの……。

村長さんが、今、引き上げの作業をしてくれてるわ……。
……ラッセルにも来て欲しいって。

ヘンリエッタちゃん… 一体どうしたの?

判ったわ。

そう言えば、屋敷にシャーロットがいたわよ。アーノルドが呼んだの？
ヒューの遺体を覗き込んでたわ。ヒューを……。ヒューを墓所に埋めてくれた……？

キャロル、ロッテは私の娘だ。屋敷の出入りは自由に決まっているだろう。

ヒューの遺体はそのままにして来てしまった。エッタが訊ねてきていたのでね……すまない。

ナサニエルさんは･･･やはり亡くなっていたんですね。
あの石版が発する呪いからは･･･逃れられないようです。

……シャーロットさん。

呪いなんだと思う。

【少し恨めしそうにアーノルドを見上げながら】

そう……。
あたしはあの子を信用していないわ。それに……。あの屋敷は法律上はあたしの物よ。

でも、もうどうだっていいわ……。

【キャロルは遠くを見つめながらつぶやくように言った】

ナサニエルさんが…

【村長の娘 シャーロットは石板に刻まれた名前を見た。】

やっぱり、石板の通りなのね… 彼は… 人間なのに…

……なんだか騒がしいな。

【少し冷めたお湯で酒を割り、震える手でグラスを握り締める】

…ナッシュが…死んだ…。
呪い…？…違う、この手で、この意思で…名前を刻んだ…。
それは…確実な殺意…だわ…。

【誰にも聞かれないような小声で呟き、グラスの酒を飲み干した】

……そうか、ナサニエルが死んだのか。
はは、不思議だな。なんだかもう、驚く気にもならないや。
呪いか殺しかはともかくとして、あの石版に一番名前を集めた者は死ぬと、それは間違いないみたいだね。

ちょっと行ってくるよ。

…は…はは…。私は望んでたじゃない…ナッシュの死を…。

なのにどうしてかしら…震えが止まらない…。
だめよ…、しっかりしないと…。
…怖い…。怖いわ…。

【強く目を瞑ると、グラスに酒を注ぎそのまま飲み干した】

…そうよ…、私の意思で…殺した。
…それで、良いのよ…。何も間違ってないわ…。

【言い聞かせるように呟くと、冷静な顔でお湯を温めなおした。】

……村長がいるって言ってたけど、何処だろうな。

おっとトビー。集会場に戻っていた方が良くないか？　また死体だぞ？

ラッセル！　ここだ！

･･･多分大丈夫です。
ヒューバートさんの死体は酷すぎでしたから。
正直なところ、思い出したくないので何か手伝わせて欲しいんです。
・・・忘れたい。

（シャ−ロットの方を向いて）
……あの、ヒューバートさんが…。
村長さんの家のお庭で……酷い姿で……。

えっ、トビーがそんな話を？
……死体が牧師さまの時より、めちゃくちゃだったのはユージーンの仕業だなんて……。ユージーンは、一体…。

ラッセル……どうかね、この死体を調査して欲しいんだが。

……これ、か。ナサニエル……。
水死体というのも、また嫌なものだな。発見が早かったから、酷いことにはなっていないようだけど。

どう……？　ラッセル。

外傷のようなものは見当たらないし、解剖するまでもなく水死に間違いないみたいだよ。
水の含み具合と、体内のガスの発生具合からいって、死んだのは昨日の夜中から今朝にかけて。毒物などの痕跡はない。

……呪いというのは、水死に追い込んだりまでするものなんですか？　村長。

ラッセル、あの本には体内の血が蒸発すると書いてあったな。比喩なのか、事実なのかは知らんが。

ヘンリエッタちゃん… 私、ユージーンさんのこと、見た目より優しい人かも知れないって思ってたの。それなのに…

ううん、おかしいのは彼だけじゃないのかも知れない。私も、今日ヒューバートさんの亡骸を見たのだけれど… もう、涙も出なかったわ…

ナサニエルさん･･･。
ヒューバートさんよりマシですが･･･やっぱり酷いですね。

ナサニエルの死体、あとデボラの死体も、血液は残っていましたが……。

【カミーラは、締め切った部屋の中で、目を覚ました。】

【隣では、ギルバートが、静かな寝息をたてながら眠っている。】

【カミーラは、ギルバートがそこにいることに安心し、その髪を軽く撫でた。】

ラッセルさん、あの死体を見た後なら･･･。
僕の感情、少し麻痺しちゃってるんでしょうね。

ラッセル、そうだったのか？　だとしたら、何らかの比喩なのかもしれん。

トビー、トビーは我々を怖れては居ないのかね？　こんな夜中に、川辺の水死体を見に来るなんて……。

我々の中に人狼がいるのでは……なんて、考えたりはしないのかい？

あのガキ、やはり邪魔だ。
早いところ始末してやろう……。

僕も似たようなものだよトビー。もう自分が怖がってるのかどうかもわからなくなってきてる。

ねえシャーロットさん。ユージーンは、今日集会所には来るのかな……。いつもみたいに窓からのぞきに…だけど。

ナサニエルさんが死んだからには、きっと呪いは本物だと思う…。石盤について、ユージーンは何かを知ってるみたいな事を、以前牧師さまに向かって言ってたじゃない？

もし、シャーロットさんになら、ユージーンもしゃべってくれるんじゃないかなって思ったけど、ナイフで死体を滅多刺しにするような人と会話するのって、……怖いよね。

……やっぱり人狼が…殺人鬼が、この中に混じってるって考えると…すごく怖い……。

村長。僕は呪いが本物なのかどうかも、まだ確信が持ててはいません。
……何者かが票数を一番多く集めた者を、殺してまわっているのではないかと疑っています。

シャーロットさんの話を聞くまでは･･･
僕もナサニエルさんの名前を刻もうとしてたんです。
それで、少し申し訳なくて、ナサニエルさんに謝ろうと思って。

……そうだ。
ヒューバートは、どうなったんだろうか？

今日の犠牲者は……誰だ？

ふん。ならば、その犯人はどうやって最多得票者を知ることが出来るのかね？　この石板にもなんらかのトリックがあるとでも言うのかね？

ラッセル、きちんと説明してもらおうか。

知るのではありません。捏造するんです。
「誰か影響力のある人物」が、取り巻きや家族に示し合わせて特定の人物の名前を書くように仕向ける。
もともと僕らはたいした人数がいなかったし、ここ数日でさらに減ってきている。数人も集めることができれば、相手を投票一位にすることなど造作もないことだ。
……そして一位となった者を、「呪い」と称して殺害する。

現実主義な身ですので。そんなシナリオが思い浮かんだだけです。

我々は一人のときに石板の欠片に名を刻んでいるのだ。大石板に浮かび上がる文字……それを確認してから殺しにいくのかね？

誰がどこに居るのかなんて分らないのにな。このナサニエルだって、どこに居たのか、誰も知らなかったんだぞ。

どう説明するのかね。

ヘンリエッタちゃん… ううん、怖くはないわ。もし今晩、彼がここに来たら… 私、話してみるわね。もし彼が私達の知らないなにかを知ってるなら… 私だって、それを知りたいから。それに…

【村長の娘 シャーロットは、少し目を伏せた。】

(一昨日の晩、なにがあったのかも訊いておかないと…)

……集会所に行かなければ。


【カミーラは、シーツの上からギルバートをもう一度抱きしめ、髪にキスしてから、身支度を整えて集会所に向かった】

……特定の人物を刻むように示し合わせることが出来たとして、グレンは誰も知らない秘密の倉庫で死んでいた。ナサニエルだってどこに居たのか不明だった。

人の手で殺すのは不可能だ。

一人のときに石版に名を刻む……それが呪いの条件だとおっしゃっていましたよね。それを聞いたとき、なんだかわざとらしいなと思ったんです。
もしかしたらそれは疑いを回避するための方便かもしれない。一人でいようと、家に盗聴器の類が仕掛けられていれば、誰が誰の名を刻んだか、犯人にはよくわかるはずだ。

家だけじゃない。村中の要所要所に、何か監視カメラの類が仕掛けられているとしたら……。誰が何処にいても、その居場所を監視できるとしたら……。
穿ちすぎですか？　赤い雀になんかいると、発想がどんどん突飛になっていくものでしてね。

そして村の中に、死角がないよう監視装置を張り巡らせることができる人物といったら……。

と、考えていくと行き着く人物は一人しかいなくなってしまう。妄想ですが。

盗聴器？　監視カメラ？

なんだねそれは。

何もかもが、嘘みたいよね…本当に…。
全部夢なんじゃないかと思ってしまうわ…。
…とびきりの、悪夢だけど…。

あぁ、ヘンリエッタ、さっきロッテがいれてくれた紅茶がそこにあるから頂きなよ。
ホットミルクがよければ、温めてくるけどね。
何か口に入れたほうが良い、温まるよ…。ね。

…所で…、皆遅いわね…。何かあったのかしら…？

（赤い雀とは……一体どういった組織なのだ？）

デボラさんとナサニエルさんはともかく･･･グレンさんはそういうことが可能なんですか？
それなら、グレンさんだけ、集会所で誰かが毒を盛ったと考えたほうがいいんですが。
でも、この石版は2年前にも使われていました。
多分･･･本当に人を殺す力があるんじゃないかと思ってるんですが。どういう理屈かは全然わからないです。

赤い雀で近年開発されていた監視用の情報電子機器です。
アーヴァインやルーサーがいくつか持っていたもので。

ひょっとして……。
自分でボロを出しちゃったの？　ラッセル……。
アンタが人狼だったなんて。
あはははは。
だとしたら、だいぶお粗末な結果だわね。

ならば、赤い雀が犯人なのではないか？

だって、それは何に使うの？　何かを遠隔で知れるような物の言い方だけど。
そんな物の使い方を知ってるのは、アンタと牧師とヘルメットぐらいなんでしょ？

僕は、アーヴァインやルーサーが、僕に隠して犯人と結託していたのではないかとも考えていました。
犯人は、彼らと結託し、その上で裏切ったのではないか、と。

ここで襲おうとしたら今過ぐ撃ち殺すわよ。
石版と、弾丸。どっちを選ぶの？

それとも、まだ言い訳がある？

ほほう。ラッセル、ハッキリといいたまえ。誰が犯人だと思っているのだ？

【村長の娘 シャーロットは、お湯割りを飲みながら思索に耽っている。】

ヒューバートさんとナサニエルさんが人間なら… 人狼はいったい…

なんのために？　私の殺人の動機はなんだね？

アーノルド、あなた、確かラジオもマトモに使えてなかったわよね？

アーヴァイン、ルーサーは口封じ。他の面々に関しては、それぞれになんらかの事情があったのかと。
ナサニエルは村長の弁護を担当していたと言っていました。何か知られたくない秘密を握られていたりして、ね。推測です。

僕の考えを述べます。
アーヴァインは赤い雀の任務として、なんらかの実験を行うため、人狼騒動の伝説を持ち出した。僕は新米の部下だから、真の情報は伝えられなかった。
僕ら以外の村人を追い出し、監視装置をとりつけ、村を孤立させる。ここまでが彼の任務であり、後はつつがなくその実験が行われる予定だった。

ところが、ここで誰かが、この「人狼騒動」を利用しようと考えた。人狼の仕業に見せかけ、アーヴァインを抹殺した……。

ふ、ふ……。

赤い雀が本当に赤く染まりそうだな。

村人達はどうなる？　人狼の仕業だと思い、混乱する。その中で「呪い」の提案をし、無法状態で人間を殺していく。それが犯人の計略……。
……いや、初めに私刑の提案を出したのは僕だ。その尻馬に乗るように、「呪い」の提案が提出された。
僕がその提案を言い出すのは偶然……。
いや違う、赤い雀のマニュアル通りの行動だった。

とすると、その「尻馬に乗る」準備ができていた人間が一人だけいる。
……ルーサーだ。

なるほど……確かに私にとって都合の悪い人間ばかり死んでいるように見えるな……。

ルーサーは「呪い」の存在を信じるような発言をしていた。牧師たる彼がそんなことを言えば、皆も信じやすくなることは明白だ。
……ということは、「呪い」を使って公開殺人を実行しようとしていたのは、ルーサーなのか？　そのためにアーヴァインを抹殺した。
……ところが次の日には、自分もまた、誰かに抹殺された。アーヴァインを利用していたルーサーもまた、誰かに利用されていた……。