文学少女 セシリア [そして礼拝堂の中、祈る姿がそこにあった。今日も溢れるような満月の光。その中で、ただ静かに。 護布を頭に巻いて――。左腕は最早、首元まで黒く染まっていて、その身体に刻限が迫っているのを感じさせながら、祈りを捧げる] (――みんな……ごめんなさいね。) [それぞれの居場所に、遺書を配り終えて、やって来た場所がここだった。懐かしい、想い出の場所。修道女さんにパイプオルガンの使い方を教えてもらって、オルガン音楽を奏でていた時に、ナサニエルとギルバートが来たのだった。たしか、ナサお兄ちゃんが、目を輝かせて声をかけてきた筈だった。最初はびっくりしたけれど、やがてそんなにしない内に、二人を兄同様に親しむ事が出来た] | |
(200)2006/05/29 11:49:03 |
文学少女 セシリア Gloria Patri, et Filio, et Spiritui Sancto.Sicut erat in principio, et nunc et semper, [祈りながらパイプオルガンに思いを馳せる。後で一曲弾こうかとも思ったが、音を立てるのも皆に悪いと、思いとどまる。ただ、静かに祈り――] et in secula seculorum. Amen. [祈りを終えて、そっと立ち上がる。そして――] 【……ザザ、ザー……】 [ノイズの走る視界に立ちくらみながら、礼拝堂の中を歩み、祭壇の前に跪く。護布のおかげで、理性だけは辛うじて、まだ残すことは出来た。ただし身体はもう、殆ど手遅れに近いだろう。早くしなきゃ――そう思った] っ……っく……。 [自分の意思で動かしているはずの身体が、重い。内側から湧き上がる衝動が、恐い。外から次第に剥がれていくような精神が、辛い。この心身を支配しようとしている妖魔が、憎い] | |
(201)2006/05/29 11:51:35 |
流れ者 ギルバート [少女から零れた願いは、女の子なら誰もがいつか夢見るささやかな願い。 自分も女の子だったら、そんな夢を描いたのかもしれない。 そう思えば、余計に涙がこぼれた] …ごめん。ありがとう。 [それ以上は言葉にならないとばかりに、セシリアに拒否されて尚、少女の体をそっと抱きしめただろう。 そして瞳を伏せた少女の額にそっと唇を寄せた後、ほっそりとした首筋に指を滑らせる。 再び零れ落ちた謝罪の言葉と共に、徐々に指に力を加える] …ごめん、こんなことしか、してあげられない。 [ごめんね、と。そう小さく唇を動かせばややしないうちに【ごとりと】静かなお御堂に鈍い音が響く。 自分にできるのは、赤紫の雫に濡れながら少女の首を*抱きしめてやることだけだった*] | |
(218)2006/05/29 13:13:14 |
冒険家 ナサニエル [エッタを送り届ければ集会所にも顔を見せて居ないのが気にかかり再びヒューの屋敷へ足を運ぶ。 呼び鈴を散々に鳴らすも相変わらず沈黙を護ったままに。 ぐるりと屋敷を見渡し息を吐く] 何処行ったんだよ… [胸騒ぎ。 疑念云々以前に安否が気になり、屋敷を後にすれば見回り中の自警団を捉まえ、事情を説明しヒューの捜索を願う。 いくら占われて人と言われようと容疑者なのだから要らぬ疑いを抱かせぬようこんな時間に歩き回るなと釘を刺され、自宅に戻ればポストに手紙を見つけ首を傾げながら居間へ入り、手探りで壁際の電気のスイッチを入れ封筒に視線を落として、消印の無い封筒の見覚えある筆跡に眉根を寄せる] セシィ? [最後にポストを確認してからいつセシィが手紙を投函したのか、厭な予感がして慌てて封を切れば、便箋に並ぶ文字を追いながら其の表情は徐々に険しくなり、顔をあげれば便箋を握り締めて家を飛び出した] | |
(250)2006/05/29 23:43:54 |
冒険家 ナサニエル [息を切らして教会へ向かう途中、先ほどの自警団と出会い引き止められ、穏やかに説明する余裕などもう微塵もなくて、自警団を力づくで引っ張って、教会へとひた走る。 ――ギィィ 静かな聖堂に扉の開く音が響き渡る。 其処にセシィは居た。 否。セシィだった者が転がって居た。 ステンドグラス越しに差し込む柔らかな月明かりに照らされ、ねじ切られた血塗れの首と少し離れた所に横たわる身体に、ただ呆然と扉の前に立ち尽くせば、後ろから覗き込んだ自警団が小さく悲鳴をあげる。 我に返り駆け寄り其の首をそっと抱き上げ覗き込む] …セシィ… [ごめんねと小さく呟けば、白い頬を汚す赤紫の雫を洗い流すかのように、はらはらと温かい透明な雫が降り注いだ] | |
(251)2006/05/29 23:45:20 |
冒険家 ナサニエル [駆けつけて来た自警団が教会の裏手の森を捜索中に、ヒューの遺体を発見すれば教会内に居た自警団員たちはざわめき、数名が慌てて其方へと向かう。 遺体回収の者が抱き締めたままのセシィの首を引き渡せと言うのに、抵抗する気力もなく項垂れたままに首を奪われて、ただ一言だけヴィンスに検死を依頼するのは夜が明けてからにして欲しいと伝え、頷いた自警団が立ち去っても暫くは其の場に立ち尽くし] ……、……。 [顔をあげ聖堂をぐるりと見渡す。 ギルと二人で初めて此処を訪れた日の事を思い出す。 温かな光の降り注ぐ明るい聖堂で笑いあって過ごした幸せな時。 今はもう其の幸せが壊れてしまったのを、所々にべったりと張り付いた赤紫の血が誇示しているかのようで、愁いを帯びた瞳は其の傷痕を見つめ、ゆっくりと瞬けば力ない足取りで教会を*後にした*] | |
(252)2006/05/29 23:46:56 |