自警団長 アーヴァイン
ふむ……まだ集まっていないようだな。 今のうちに、もう一度見回りに行ってくるとしよう。
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酒場の看板娘 ローズマリー [――廃村。一人の女が足を踏み入れた。否、正確には二人だった] 此処ってどこなのよぉ……。 [女の掠れた声。静寂に包まれた、人の気配すらない村では、聲の残響すら掻き消える。女の整った容姿や、それなりに清潔感のある服装と、廃頽した村の雰囲気とは、余りにも相反したものだった。ブーツで荒れた土を踏み、鈍足な歩みを進めて行く] ……どうして、こんなことになるのよぅ。 [その表情は今にも泣きそうだった。時折、誰かを探すように辺りを見回すも、人の気配は全く、無い。困ったようにくしゃりと前髪を梳きながら、きゅっと唇を噛んだ] ソフィー、何処に行っちゃったの……? [この村に足を踏み入れた時には確かに、二人だった筈だ。] [女は少し離れた町で酒場の接客業をしている。健全で賑やかな酒場だ。 其処で数年前に出逢ったのは、ソフィーという名の若手の新聞記者。彼女は様々なスクープを日夜模索し、口を開けば面白い話がないか、或いはこんな面白い話がある、そんなことばかり。けれど女も、好奇心旺盛なソフィーが好きだった。最初は客と従業員、けれど酒場で会話を重ね、そして二人はいつしか親友になっていた。 そんなソフィーがある日切り出したのだ。 「ねぇ、ローズ!例の廃村に行ってみない?」 町から近いという理由もあり、廃村の噂は、少しくらいは聞いたことがあったけれど、女は別段心霊スポット云々に興味を抱かなかった。けれどソフィーは嬉々として話すのだ。 「きっとあの村には何かあるの!記者の勘がギュンギュン電波を受信しちゃうわけ!」 女は苦笑を浮かべつつも、ソフィーの話に頷いた。ソフィーの記者の勘なんてたかが知れていて、いつもそれはガセばかりだから。だから了承した。 ソフィーと一緒に、とうの昔に廃村になったあの地へ行って、人気の無いホラースポット的な雰囲気に恐怖しながらも結局は何にも遭遇せずに帰路に着く、そんなつもりで。 そうしてソフィーと共に、この廃村へ訪れた――その、筈、なのに] [……「ねぇ、ろそろ帰らない?何もないみたいだし、――ソフィー?」 ふっと女が振り向く先、其処には金髪を後ろに一つに結いた女が居る筈だったのに。 空気が凪いだ。 ソフィーが居ない。 たった今まで隣に居た筈のソフィーが、忽然と姿を消した。 磁石を持っていたのもソフィーだったから。 女は狼狽の中に突き落とされる。 ソフィーを探して彷徨い歩く。――見つからない。 村の出口に居るかもしれない。出口を探す。――見つからない。] どうしてこんなことになるの、ねぇソフィー、どこなのよぉ……。 [半ば涙声で呟いていた女。曇った視界は暫し周りの景色すら見ていなかった] ――……え?何、此処? [足を止めた、女の眼前には、――古びた集会場があった。] | |
(0)2006/06/25 00:12:46 |
酒場の看板娘 ローズマリー [一つ。神が知る、その女の素性について] ■名前:ローズマリー・ライト(Rosemary=Wright) ■年齢:26歳 ■備考: 廃村から程近い、それなりに栄えた町の酒場で働く女。 出生。父は知らないけれど、同じグリーンの髪を持つ母は、女を心から慈しんでくれた。遠い過去には祖母も居た。よくは知らないけれど、優しい人だった。とても幸福な家庭だった。 二十の時に実家を出て、今は一人暮らしの身。家族も恋人も居ないけれど、友達は多い。多くの友達に囲まれ、遣り甲斐のある仕事をし、そう、女はとてもとても、“今”が“幸福”だと感じていた。 唯、自身が気づかぬ欠点も当然に存在する。「自律」が出来ていない。精神年齢が、低い。人に甘え、人に依存し、人を信じる。闇なんて――知らない。 友人の記者であるソフィーの誘いで、遊び感覚で廃村に訪れる。 [斯くして神は緞帳を引き、幕が開かれる] | |
(2)2006/06/25 00:24:15 |
書生 ハーヴェイ [夕昏。――逢魔が刻。 一人の陰気な青年が鬱蒼とした森を抜けて、顔を出した。] ……。漸く抜けたか。 夜が来る前に辿り着けて良かった。 [篭もったバリトン。ぼそぼそと呟くように独り言を囀り、男は一つ息を吐いた。森を抜けた先、眼下には暗い廃村が見渡せた] ……。 [高級そうなハンカチで汗を拭く。強行軍だった為か旅慣れしていない為か…聊か疲れが酷いようだ。汗を拭く佇まいは作法を知る其れであった。多少薄汚れてはいるが、外套も高級品であろう事は知れた。] …何処か、休めるところを探さなくては、な。 [男は醜く唇を歪め、くく、と喉を鳴らし。そうして、廃村への道を歩き始めた―――] | |
(7)2006/06/25 01:39:32 |
見習いメイド ネリー ―――ッ……!!! [ざわり。 冷たい風が木々を薙いだ。 碧色の豊かな髪がふわりと揺れる。 大きく広がる黒いエプロンドレスを片手で押さえた。 もう片方には、黒い皮のトランク。 肩を竦めたまま、不安げに大きな眼で辺りを見まわす。] ……ど、どうしよう…… [おろおろと首を巡らせている少女は10代半ばか、それよりもう少し幼いか。] だ、誰か居ませんかー……!? [涙目で恐る恐る誰かを呼ぶ。 夜色は深く迫り、 呑み込まれるようで。 逃げ出したいのを堪えて小さな手を握り締める。] 旦那様…… 旦那様が探してたもの、ここに…… しっかり。 しっかりしなきゃ。 [握り締めた手には エーデルシュタイン家の家紋を描いた、小さなメダルが。 こくり。 少女は小さく頷くと、 枯れ草を踏みしめて 廃村へ 闇色の夜へ 足を踏み入れた。] | |
(8)2006/06/25 01:46:34 |
のんだくれ ケネス 此処に人が住まなくなってから、何年が経つのだろう。 粗末な丸太と申し訳程度の煉瓦を組み合わせた家々には、既に生活の気配など無く、ただ埃と虫と、何かの骨が散らばっているだけだ。 元は実りに彩られる畑だったであろう荒れ地には、何処から転がってきたかも解らない岩が突き刺さっている。 井戸の底には恐らく水が貯まってはいるのだろうが、それを汲む為の釣瓶にすら、鼠や鳥の屍骸が詰まっている。 ―――何も無い街。 生命の気配は、この街を取り囲む暗い森を過ぎれば、驚くほどに絶えてしまっていた。 別に、一切の生物が無いわけではない。 だが、この光景が連想させるものは……「死」でしかない。 そして、そんな村に残る廃屋の中に、一人の男が襤褸雑巾の様に横たわっている。 傍らにはスコッチの瓶が散乱し、何やら白い粉のような物の包みも置かれている。 その瞳に生気は無く、無精髭の下の頬は赤黒くくすんでいた。 まるでこの村の風景に溶け込んでしまったかのように、荒れ果てた人間が其処に居た。 | |
(15)2006/06/25 02:24:31 |
酒場の看板娘 ローズマリー [青い髪の少女にチラリと目を向けた後、一体の死体の前に佇み黙した。その死体だけは、そう、骨だけになっても、古びた椅子に綺麗に座っている。そっと手を伸ばす、微かな衝撃でカツンと――死体の手から落ちた、錆びた金属。其れは、十字架のネックレス。拾い上げ、そっと握ってから、ぽつりと零した] ……此処で、一体何が、あったの……? ソフィーが言ってたのって……本当だったの……? ――ッ、人が本当に死んだ場所なんて! [ふと我に返るように声を大きくし、青い髪の少女に向き直る] ねぇ、この村の出口の方向はどこか知らない? こんなお化け屋敷みたいなところ、もう厭よ、帰りたい…… [大人である女、けれどその表情は、子供のよう。恐怖に怯え曇った表情] | |
(18)2006/06/25 02:32:07 |
のんだくれ ケネス [過去も現在も、彼には何の価値も持たないのだが] ■名前:ケネス・ロバート・マクレガー(Kenneth Robert=McGregor) ■年齢:35歳 ■備考:若い頃に舞台俳優を目指して田舎から出てきたが役者として芽が出ず、 その頃知り合った仲間とつるむうちに麻薬や博打を覚えて自堕落な生活を送る。 一度は妻子を持ってある程度更正したものの、 ある事件をきっかけに妻子を失い、再び酒と薬に溺れて若い頃以上に荒んだ生活を送るようになってしまう。 この村にやってきたのは、半分死に場所を探すように放浪している途中にたまたま屋根のある場所を見つけただけのこと。 極度のアル中で、アヘン中毒。 | |
(19)2006/06/25 02:33:57 |
書生 ハーヴェイ [神は己が内に。我が生は己が為。 ―――男の生き様は訥々と紙片に刻まれる] ■姓名:ハーヴェイ=カーネイジ(Herwei=Carneige) ■年齢:21歳 ■備考: ・デュライア子爵の三男。 何においても無感動で中途半端な自分に哂い、自分を震わせるものを探して家を出た。 ・姓は、自分で付けた。行きずりの者にハーヴェイと呼ばれることを嫌う。 何れハーヴェイと言う名すら捨てる…つもりらしい。 ・思索の過程、経過を紙に残す癖がある。 ・立場上作法の一通りは取得しているものの、彼は身体に染み付いたこれを嫌っている。 ・「一夜にして滅んだ村がある」との噂を聞きつけ、廃村へやってきた。 | |
(20)2006/06/25 02:34:20 |
のんだくれ ケネス [安いスコッチを瓶から直接呷る。 明らかに残りは僅かしかない。] ちっ、あと残り何本だぁ? ……けっ、三本ぽっちか。 ったく、これじゃあとせいぜいもって二晩ってとこか、オイ? クスリは……こっちも、ボチボチか。 [座り込んだまま、酒瓶を蹴り飛ばして周囲を見渡す] ったく、辛気臭い村じゃねえか。 いや、辛気臭ぇも何も人っ子一人いやしねえがよ! あーー、なんだこりゃ。 ケッ、どいつもこいつも呑気に死んでやがるしよ。 ったく、どんな馬鹿面して天国でのうのうとしてやがんだぁ? ―――ま、俺にゃこういうボロクソな場所がお似合いってか? ハハハ…… [乾いた笑いを響かせながら、白骨化した死体と肩を組んで屋根を見上げた。] | |
(21)2006/06/25 02:41:15 |
雑貨屋 レベッカ [女は、鞄を降ろし廃村の光景を眺めている。この地へ導いたのは神か、それとも…] ■名前:レベッカ・ブルーベリー(Rebecca=Blueberry) ■年齢:24歳 ■備考: 物資の流通が盛んな都市の雑貨屋の娘として、幼少時代から成人するまで不自由なく育った。 2年前、自分の店を持つために独立。 祖父の話に興味を持ち、この地へとやってきた。 その話とは、祖父が酒場の見習いとして働いていた時代。素性を隠した領主の血縁者の女と酒場で同僚として働いていた時に、この地方の話と忘れられない恋をしたと言う話を女から聞いたらしい。 未開拓の地に興味を持ったレベッカは足を運んでみようと思い、旅へと出た。 ちなみに祖父はその女の名前を頂いたと自慢していた。 | |
(23)2006/06/25 02:44:22 |
のんだくれ ケネス [屋根の梁には鼠の死体と思しき骨がちらちらと覗き、破れた天井の隙間から、鴉がこちらを覗いている。 背中を預けている壁はギシギシと音を立てており、今にも崩れそうに思えた。] ……はぁ、俺は此処で死ぬのかなぁ…… ったく、独りで死んだ方がせいせいするとは思ったんだがよ、そうでもないみてぇだなぁ…… [傍らの骨と顔を合わせて] ま、お前さんらも此処で死んだんだから、俺がぶーぶー文句言うのも失礼ってやつか?ん? ―――はぁ、死ぬまでによ……大劇場で喝采浴びたいとは言わねぇけどよ、 ……もう一度でいいから綺麗なお姉ちゃんの一人も抱いて死にたいもんだなぁ。 なぁ、兄ちゃんもそう思うだろ?やっぱチャンネーのパイオツの一つも揉みてぇよな?ギャッハッハッハッハ…… [高笑いするものの、目には淋しそうな光が浮かんでいる] | |
(26)2006/06/25 02:48:50 |
酒場の看板娘 ローズマリー [道なりに、という言葉に一瞬表情を明るくするも、続く言葉を聞けば、既に硝子が砕け散って其の侭に外に通じる窓を見て、嘆息を零す] そうよね……今から此処を出て、夜になって道に迷ったりなんかしたら私耐えられない……。で、でも此処で夜を、過ごす……? [白骨死体を見ては、ぞく、と身体を震わせ、青い髪の少女だけを視界に入れるように意識した] 私ね、ローズマリーって言うの。ローズマリー・ライト。 ねぇ、夜が明けるまで一緒に居てくれない? [潤んだ瞳で青い髪の少女に訴える。そしてぽつり、零す独白] ソフィーもその内、此処に辿り着いてくれると、良いんだけど……。 | |
(27)2006/06/25 02:49:19 |
酒場の看板娘 ローズマリー [シャーロットと名乗る少女、彼女を前に僅かに相好を崩す。つい先程――数時間前までは、親友と行動を共にしていたけれど、たった数時間の間で、孤独の底に突き落とされた気すらしていたから。] 有り難う……シャーロットって呼んでいい? [名前。彼女が小声で続ける言葉に不思議そうに瞬くも、何処かで思う――どうせ一夜を共にするだけの関係なのだから――。] ……怖い、わよね、そうよね? 本当に幽霊でも出そ――……きゃぁ!? [告げていた所で、扉が開く音に驚いたように悲鳴を上げて一歩後退る。けれど其処に居たのは幽霊でも何でもない、泣き黒子を持った、一人の女性だった] | |
(33)2006/06/25 03:06:46 |
酒場の看板娘 ローズマリー [先客、という言葉には複雑そうな表情を浮かべた――好きで此処に居るわけではないのだから。けれど続く言葉を聞くと、不思議そうな表情の侭に、そう。と一つ相槌を打つ] レベッカ……旅人…… そっか、初めましてよね……そうよね。 [初めて聞く名だ。旅人というからには会ったことなどないだろう。自らに言い聞かせるように紡ぐ。そんな自分が挙動不審であろうと自覚したか、弱く笑んで、レベッカと名乗った女性に言葉を続けた] ごめんなさい、妙な既視感《デジャヴュ》を感じて―― ともあれ、人が多い方が気は紛れるわ。明日……朝になったら、ソフィー探して、こんな所出て行くけどね。 [ふっと親友のことを想い、嘆息を零す。無意識に、先程の死体が握っていた十字架のネックレスを、握り締めていた] | |
(44)2006/06/25 03:28:37 |
酒場の看板娘 ローズマリー [レベッカの言葉を聞けば尚更、彼女とは初対面だと確信する。――けれど既視感だけは消えなくて、不思議そうに、一つだけ瞬いた。すぐに、彼女が告げる現状、過去形であるその言葉に、表情を曇らせ] そう、早く帰りたい…… あ、ソフィーは私の親友で、ね。 ソフィーと一緒に、……心霊スポットとでも言うの?あの子、そういうのに目がないから、遊びに来た、だけだった。 なのにはぐれて、更にはこの状況…… 泣きたくなるわよぅ…… [そう言いながらも、へらりと笑った。現実から逃げるような笑みだった。崩れ落ちたシャーロットに、曇った表情の侭、歩み寄り、視線を合わせるように傍に座り込む。握っていた錆びたネックレスをポケットに仕舞ってから、シャーロットの肩を撫ぜた] 怖いわよね、早く朝になればいいのに…… | |
(49)2006/06/25 03:50:03 |
酒場の看板娘 ローズマリー [レベッカの言葉に微苦笑を浮かべて返す。否、彼女が納得した意味で過去形を使ったのは理解していても、思わず否定せずには居られなかっただけだ] “だった”じゃないわ、今でも親友よ。 ――……こんな所に連れてくる、バカな、ソフィー。 [ぽつり、その名を呼んで、レベッカの言葉に頷く。早くソフィーと合流して、早く、一刻も早く此処を出よう。そう決意して。] 勿論歓迎よ。 此処、確かにリアル過ぎるけど……ね。 一晩を明かしてさっさと出ちゃおう?ね? [そうレベッカに笑みかけつつも、先程から聞こえる足音を気にしていた。――男の、姿。先程のレベッカの件もあり、驚くことはなかった。唯、何故、こんな閑散とした場所に、偶然にしては出来すぎている程、人が集まるのだろうと――不思議そうに、黙って男の姿を見上げていた] | |
(53)2006/06/25 04:06:37 |
文学少女 セシリア [神は少女にどこまで残酷な試練を与え給うか] ■名前:セシリア・ワーズワース(Cecilia=Wordsworth) ■年齢:17歳 ■備考: 廃村から歩いていける程度の距離にある町に住む少女。 ごく普通の両親と、家庭に生まれる。一人っ子。 小さい頃から本が好きで内向的な性格のため、虐めに会う。 虐めにより額に傷跡が残りそれを気にして前髪を伸ばしているが、それによって見た目が根暗になり、余計虐めがエスカレートしていることに、本人は気付いていない。 耐え切れなくなってここのところ学校を休みがちであり、そのことで両親と揉める。 自殺、までは考えていないが、現実逃避に家にあった古い地図を持ち出し、 家出してこの村を訪れた。 | |
(74)2006/06/25 07:56:19 |
双子 ウェンディ かつん。ころころ。 けとばした小石が瓦礫にぶつかって止まる。建物の残骸が残る、静かな、寂れた廃村。 ちいさな子供には不釣り合いなごついブーツで地面を踏みしめ、一歩一歩、踏みしめるように歩く。 ひゅうと吹き抜けた風に浚われないように、しっかりと掌に握った首飾りは華やかな薄紅色の模様を咲かせて。 帽子を押さえる道連れに顔を向けると、不安げな瞳。道は、合っているだろうか? 「うわっ…。リック、トビー、平気だった? だいたいこのへんだと思うんだけれど…。じゃあ、地図見てみようよ。」 握り込んでいた薄紅色のビードロと、リックの空色のビードロの天辺を揃えて、双眼鏡みたいに覗き込む。 視界いっぱいに万華鏡の幻想が拡がって、すこし指を動かして調整すると… 「うん、そこの大きなもみの木から、丘を越えたところ…。もう、すぐみたいだけれど。」 地図を確認して顔をあげ、見渡した丘の上には、道標に棒が立て掛けられて、長いながい影を行く手に落としていた。止まり木にきめこんだ鴉がカアと鳴いて静寂を破る、その声の大きさが寂しさを誘う。 持っていた棒きれで草をはらって遊んでいたトビーに、出発を呼びかける。揺れる草陰から、バッタが一匹ぴょんと逃げ出して消えていった。 「はあ、はあ…。けっこう、坂、きっつい。」 先行したトビーが見えなくなって、後を追うように辿り着いた丘の上。鴉が飛び立ち、のこされた道標はまっしろくつきたって、力を失った指先が舘を指している。 足下には、なかば崩れた髑髏の眼窩が、じっと旅人達を見張っていた。すべて見透かすような虚ろな目線。 すぐ背後からはリックの悲鳴が聞こえて、ベッドの下の怪物が見せる悪夢なんかじゃないとはっきりわかる。 竦んだ足を止めていると、冷え込んできた北風が丘の上を吹き抜けて、服をはためかせた。 「……。行こう、よ。リック。そこの建物に泊めて貰おう? こんなに寒くちゃ風邪引いちゃうし…、トビーもそこまでは聞いていたから。」 掌をつないでくだる坂道はごつごつして、何度か転びそうになりながらも建物にたどり着いた。 震えるリックのちいさな掌を自分の頼りない掌でぎゅっと握りかえして、勇気を分かち合う。 先行したトビーは、もうこの建物にお世話になっているのかも。すこし年少の、鼻のたれた笑顔を思い浮かべてから、そんな期待を胸に。 空いた手をめいっぱいに伸ばして、ノッカーをがんがん叩いた。 | |
(81)2006/06/25 16:46:06 |
双子 リック ねぇ、トビー、ウェンディ… 本当に、こんな所に宝物なんてあるのかなぁ。 [空色のビードロをぎゅっと握り締め、きょろきょろと周囲を見渡す 薄暗い廃村の中に風が吹けば、ふわりと飛びそうになる帽子を慌てて手で押さえる] わっ…と。あ、あぶな…。 [横を歩くウェンディの方を不安そうにちらりと見る ウェンディは少し自分よりも大人びたような表情で安心させるように微笑む] ね、ねぇ…お姉ちゃん…。 僕たち、ちゃんと地図の通りに歩いてきてるよね…? [地図を頼りに暫く歩いてから、ウェンディに向かって尋ねる ウェンディは双眼鏡のように二つのビードロを覗き込む] ここ、ちょっと怖いね…。 [ウェンディの服の袖をぎゅっと握り締め もみの木の先の丘の上にある道標を見つける。 道標の上には漆黒の鴉の姿があった。 ――ギャァ… と鴉が鳴く声が聞こえると、思わずびくりと身体を震わせる。 その間に、前にいた2人が走り出す] あー!トビー!ウェンディ!待ってよ〜! [胸に手を当てて荒くなる息を整えながら、丘の上へたどり着く その標の指す方を見ると、そこには館が見える] あそこ…に宝物が? [かつんと足に何かが当たる音がした。 すっと目線を落とすと、そこにあった骸骨と目が合う] ――きゃ……。 [思わず、声を上げる。 吹き抜ける風に、再び帽子を押さえながら] そうだね…あそこの建物に行ってみよう。 トビーも…いるよね。 [不安を和らげるように手を繋ぎ、ごつごつとした坂道を下り建物へとたどり着く ウェンディのノッカーを叩く音が耳に響いた] | |
(82)2006/06/25 16:47:18 |
酒場の看板娘 ローズマリー [少年の疑心に慌てつつも、少女の言葉に耳を傾け] そ、そう、危なくも怪しくもないの! ウェンディ、と、リックね?えと、宜しく…… 旅……?私は、旅、というか、遊びというか…… 此処からそんなに遠くない町、知ってる?オーウェルズ。あそこから来たの。 余所者なのは同――きゃわ!? [後ろ、と指差されて慌てて振り向く。ガタガタと音がするのは確かに、自身が背を向けていた扉、だった。どうしよう、と助けを求めるような視線を三人に向けたが、閉ざした扉の向こうから聞こえるのは――少女の、声?此方側からはドアノブもあった。そっと手を掛け、ガタ、と音を立てて扉を引いた] | |
(130)2006/06/25 21:39:27 |
のんだくれ ケネス [集会所「だった」建物の中を彷徨い歩くうちに、皆の話し声がする場所に辿り着く。] ぁんだぁ?こんな所にガキと姉ちゃん方がお揃いたぁ、どういうこった? ちっ、酒が切れたか?ピンクの象やら何やらは見たことあるけどよ、こんなんは初めてだぜ。 [皆の輪の中にふらふらと雪崩れ込む] おいおい、なんだお前ら? こんなクソみてぇなとこになんだってアンタらみてぇのがうじゃうじゃ集まってんだ? ヒック うぃ〜……ったくなんだってだよぉ? 特にそこのガキども、てめぇらは帰って飯食ってクソして寝る時間だろぉがよぉ? [酒をグビグビと呷りながら、ウダウダとがなりつづける] | |
(158)2006/06/25 22:10:22 |
酒場の看板娘 ローズマリー [落ち着いた様子のシャーロットに微笑んだ。あぁ、けれどこの笑みも彼女には見えていないのか――どこか寂しくも感じるけれど。代わりに、彼女の手を握り返し] ええ、行きましょう。 なるべく、私、シャーロットの目になるからね。 ―――世界は綺麗だから。 [ぽつり、零して、シャーロットの手を取って集会場の方へ歩んでいく。途中、レベッカの背が見えたけれど、声を掛けられる距離ではなく、遠かった。後で戻ってくるだろうかと危惧しつつ、集会場の扉の前に立ち] えと、感じる? 此処が集会場の扉。 [シャーロットに告げて、握った手を取り、彼女の手を老朽化した木の扉に触れさせた] | |
(200)2006/06/25 23:01:08 |