踊り子 キャロル [少し前から目は覚めていたけれど体力は未だ回復しておらず殆ど動けない。 昨夜は血と硝煙の匂いを纏ったままシャワーも浴びれず、ベットに引き摺り込まれた。 部屋に持ち込まれる其れ等に柳眉を寄せ文句を言おうかとも思ったが、そうする前の彼を想えば開きかけた口を噤む。 それに血と硝煙に混じって漂う彼の纏った甘いチョコレートの香りに、すぐに不快感は薄らいでただ愛しいと想った。 既に身体は解かれ馴染み始めて、覚えられてしまった弱点を溶かされれば堪え切れずに声を漏らし、其の様子を見て彼は嬉しそうに益々攻め立てる。 もっと声を聴かせろと、楽器を奏でるように…… 彼は其れに飽きる事もなく最後には意識まで削り取られいつ眠ったのか記憶に残っていない。 漸く重い瞼を持ち上げれば、いつからそうしていたのか。 顔を覗くアンダルシアと目が合った。] | |
(26)2006/04/12 14:34:04 |
踊り子 キャロル [尋常ではない罠の量と其の殺意。 異変に気付かない筈がなかった。 足音を消してアンダルシアの通った後を追う。 アジトの奥へと足を向け目指す部屋に踏み入れば、アンダルシアのいきなりの発砲に、咄嗟にスリットに手を忍ばせ抜き出した細身ナイフをアンダルシアの銃身に向かってひゅうと投げた。 ―――カチン。 其れはただ銃身に触れる程度。 ただし銃口を微かに逸らすのには充分な威力で。 次いで室内に居る周囲の者たちに向かっても抜き出した2本のナイフを同時に投げる。 サーカスの曲芸のように優雅に手馴れた手つき。 勢いは殺さない。 狙うは……心臓。眉間。 二人が倒れれば部屋の反対、一人が銃を構え引き金を引く前に投げたナイフはその指をバラバラと切り落とした。] | |
(73)2006/04/13 01:04:42 |