村長の娘 シャーロット 〔二つの声が、共鳴する。〕 「「ハーヴェイさん、ごめんね。」」 | |
2006/04/12 03:03:30 |
書生 ハーヴェイ ―― 二階 部屋 ―― [……遠くで誰かが呼んでいる。誰が呼んでいるんだろう。 気が付くと目の前で笑うシャーロットが随分小さい。その後ろには、あどけない顔をしたメイとラッセルが駆け回っていた。大人たちに混じっていたネリーが何かしたのだろうか、まだしわの少ないヒューバートが苦笑している。デボラは相変わらずだな……久しぶりに帰ってきたナサニエルをこき使って、サボっているノーマンを蹴飛ばしている。そいうえばヘンリエッタは今年も祭りに参加していないようだ。素直ないい子なんだけどな。時折見せる笑顔は、まるで雲の切れ間からのぞく太陽のようなのに。 誰が泣いているんだろう……目を閉じ耳を澄ませてみる。近い。後ろか。 振り返ると折り重なるようにして人々が倒れ、若草の草原が真っ赤に染まっていた。 声も出せずに頭を抱えようとした自分の手まで……。 その場から逃げ出そうとするがピクリとも動けずにいると、湿った風が頬を通り抜けた。] うわぁあああ!!!!!!! | |
(30)2006/04/13 00:40:05 |
村長の娘 シャーロット ……ハーヴェイさん……ごめんなさい…… わたくしは…… 貴方が恐れ、そして毎夜人間の命を奪う 人狼……なのです…… こうして今、貴方に抱かれ、 その罪がはっきりと分かる…… そして、どんなに望んでも、貴方に添い遂げることが 決して、できないということを………! わたくしが今、望むものは、死……… 貴方に穏やかな世界を取り戻すために…… わたくしの命を、消さなくてはならないのです…… ごめんなさい……愛しい貴方…… | |
2006/04/13 15:18:00 |
村長の娘 シャーロット どうしてあの晩、貴方の姿を追ってしまったのかしら… もし貴方の姿を見かけなかったら…… いいえ、もし貴方の姿を見ても、 夜の闇に飛び出すことをしなければ…… 人狼に全てを奪われることは、なかった…… そしてわたくしは……この混乱の中で、 何があっても貴方と共に生きると誓えたでしょう… 貴方は、人間であるわたくしを…必要だとおっしゃった。 でも、人狼に囚われたわたくしは……? 全ての真実が明るみに出たとき、 貴方は同じことをおっしゃってくださるかしら…… そして、貴方はわたくしを、愛してくださる……? | |
2006/04/13 15:26:02 |
見習い看護婦 ニーナ これぐらい大きい声をあげておけば、誰かくるだろう。 | |
2006/04/13 16:21:16 |
見習い看護婦 ニーナ この落書き……。 落書きの内容はそう重要ではないのだ。 問題なのは、この落書きの……位置。高さだ。 人が黒板や壁に何かを書こうとすると、目の高さに書くのが普通なのだ。 これは意識しない限り自然にそうなるし、そんなことを気にする人物もなかなかいない。 | |
2006/04/13 16:32:16 |
見習い看護婦 ニーナ たとえば、私より背の高い、ハーヴェイやラッセルがこの落書きを書けば、自然に私が書くよりも高い位置になる。そういうことだ。 そして、この落書きの位置はかなり低い位置にある。 これを書いたのは私より背の低い…… | |
2006/04/13 16:33:51 |
見習い看護婦 ニーナ いまこの集会所にいる人物の顔を思い浮かべる。 私より背の低い人物……。 ヘンリエッタは私より小さいが、昨夜は怪我を負って意識を失っていたし、第一ラッセルが横にいたはずだ。違う。 あとは、デボラかネリー……。 | |
2006/04/13 16:35:30 |
見習い看護婦 ニーナ ネリーか? 喰われたヒューバートの子であることと、単なる気違いに見えたことが盲点だったか。 人狼がネリーに化けていたとすれば? ヒューバートが喰われたとき、ネリーは側にいたはずだ。ヒューバートが喰われてネリーは無事、というのに違和感は抱いていた。 ネリーが人狼なのか。 | |
2006/04/13 16:37:40 |
村長の娘 シャーロット ロザリーはレウっちが死んだとき、泣いた。 アタシも泣いたけど、ロザリーはもっと泣いた。 とても悲しそうに、泣いた。 涙が枯れるって、こういうコトだって、知った。 ロザリーは、レウっちのことが好きだったの? レウっちは、ロザリーのことが好きだったの? アタシは、ロザリーもレウっちも好き。 でも、多分アタシの「好き」とロザリーの「好き」は、全然違う。 ねえ、なんでカミサマは「人狼」を作ったの? なんで"creature"は、平等じゃないの? なんでアタシたちだけ、孤独なの? なんでアタシは、ひとりぼっちなの? 「好き」という気持ちは、アタシにはわかんない。 ………わかんない……よ………っ! 〔チェルシーは、自分を抱きしめるように両腕を組み、*ひとりで泣いている*〕 | |
(*49)2006/04/13 17:06:44 |
修道女 ステラ ─2階・自室─ [部屋に戻ったロザリーに、唐突に衣服が重く感じられた。顔をしかめて、衣服を脱げば、ロザリーの白い肌にこびり付いたメイの血が、皮膚の内側に吸収されるようにみるみる消えて行く。室内にしつらえられた簡素な鏡をのぞくと、ロザリーの背中にはいつの間にか、ステラの背中にしかないはずの白百合の入れ墨が定着していた。] ……ステラの記憶が定着して来た。 その代償か。 [体を乗り換えることが出来るかわりに、対象の記憶と共に対象の体に残された傷が、ロザリーの体に降り積もっていっていた。記憶を忘れる事があれば、傷は消えるのかもしれないが。それ故に、ロザリーの体には幾つもの傷があった。今回のステラからは入れ墨が移ったようだった。] | |
(*50)2006/04/13 20:13:57 |
修道女 ステラ [メイの最新日記の後半部分。それを読んでステラは何とも言い難い気持ちになり、日記帳を机の上に戻した。] 『……このままだと皆お互いに殺しあう。 私は誰も殺せない。だから最初にコロサレル。 最近、よく夢を見るようになった。 顔の無い人たちに連れられて、私が首吊りの台上に上げられる。 首にかかる縄の感触を思い出すとぞっとする・・・ そして吊り上げられたときに初めて気づく。 下から見上げている顔の無い人たちが、私のよく知っている人たちだと。 そのときに気がつく。私は所詮余所者なんだと 皆がそれに気がつくと、きっと私が最初に皆の手で殺される。 だから私は小賢しくも生き残るための努力をしよう。』 | |
(68)2006/04/13 22:19:24 |
語り部 デボラ [両手からは鈍い痛みが伝わってくる。昨日、何もできなかったその証として、手が腫れていた。しかし、痛覚があるということは、生きていることそのものだった。] あんた、墓参りには今日も行けそうもない。そうだね、この悪夢から救われれば、もしかしたら行けるのかもしれないのじゃがな。天は、わしに全てを見届けよと言っているのじゃろうか? [亡き夫の元に行けるのかもしれない。そんな淡い期待は裏切られた。居たたまれない現実が目の前に続いていた。] それとも… [誰も聞いていないのに、自然とそこで言葉に詰まる。対決しなければならないのは確かだ。だが…。] 【処刑、か】 [ヒューバートの苦しみぬいた表情が思い出された。だが、そのヒューバートはもういない。可哀想な娘が両親を共に殺され、ひとりぼっちに置き去りにされた。] | |
(78)2006/04/13 22:56:11 |
修道女 ステラ [ステラは自分がハーヴェイにナイフを突きつけて脅した事を思い出し、どう話し掛けていいのかわからなかった。] ……あの、私……えっと。 【ギルバートさんを殺しました。】 [そうハーヴェイに告げれば、今この場で工具で殴り殺されるかもしれない。ステラは迷った末に、] 昨夜、地下室でギルバートさんが死にました。ナサニエルさんに化けた人狼が負わせた傷と、刺し傷が原因で。ヘンリエッタさんを人質に立て篭っていたのです。……ギルバートさんの遺体を見て、私にもナサニエルさんが人狼だった事が、認めたく無くても、よくやく理解できました。 現実を受け入れる為に、人狼に殺されであろう本物の見分ける力のあったヒューバートさんの死亡現場を確認していました。 | |
(86)2006/04/13 23:07:43 |
修道女 ステラ [ステラは質問をしておきながら、改めてニーナに向かって口を開いた。] ニーナさんも遺体を確認されたかもしれませんが、ギルバートさんは人間でした。私が彼を刺す以前にあった傷口が、ナイフ以上に大きく鋭利な物を使った深い傷で……。おそらく、それで随分弱っていたのです。 ヒューバートさんが人狼に殺された事と、今考えれば、ナサニエルさんの遺体の傍から続いた血痕と合わせても。人間……なのですね。とっくに皆さんはそうおっしゃっていた様な気もしますが、頭に血が上っていたので、恐ろしく、そして恥ずかしい事ですが、あまり憶えてはいません。 私は、最初はギルバートさんに「何故ナサニエルさんを殺したか」を聞きたかった。ナサニエルさんが人狼であっては欲しく無かったから。話を聞く事が出来なくて、苛立ちと、彼を失った苦痛が堪え難くて、何も考えたくなくて、ギルバートさんを刺した。 ……嗚呼。 [ステラは苦悩するように右手を強く握りしめた。] | |
(155)2006/04/14 01:01:04 |
村長の娘 シャーロット なんで、って……… それは……ハーヴェイさんの姿が…… 見えなかったからで…… もしあの時ハーヴェイさんを見つけなかったら、 ひとりで居たハーヴェイさんは確実に疑われたわ。 そして、もし見つけなければ…… ………あんなことは、起こらなかった。 | |
2006/04/14 01:58:13 |