双子 ウェンディ [上下左右の区別のない空間でぼんやり漂っているような、そんな感覚だった。 バランスが取れない。立っていられない。 倒れこむようにベッドに横たわった。 眠ることなど出来るはずもなかったが。 そしてやがて部屋に戻ったラッセルの気配。 ―――少女は、何も起こらなかったふりをした。 ただ、彼が動いた気配に偶然眼を覚ましたようなふりをして――― そしていつもと変わらない優しい笑みを浮かべながら自分の手の甲を取るとそこに口付けた彼に、微笑んだ。 いっそ、嫌悪や怒りを感じられれば、良かったのに。 ―――馬鹿馬鹿しくなる程、自分はラッセルのことが好きで。 声にならない声で、少女は呟いた。 ”ごめんなさい、リック” 少女の中には、自分でも驚くほど頑なな意志があった。 自分に…こんな強さがあったのだと思う程、*強い意志が*] | |
(11)2006/02/26 09:22:17 |
双子 ウェンディ [三人を見渡して、もう一度くすりと笑った。 いや、その笑みはむしろ嘲笑にすら近いものだった。] …だって、ずるいじゃない。 ねぇ、シャーロットさん。ギルバートさん。 私、本当は14歳なの。リックとは兄妹なんかじゃなくて、双子なの。 …見えないでしょう? 私の病気は、身体の時間が逆行する奇病。 どんどん時間が巻き戻って、いつか赤ちゃんになって卵になって、消えてしまうの。 私は、あと三年で消えるってお医者さまから言われているわ。 …ねぇ、どうして私だけが消えなくちゃいけないの。 リックだけが生き残って、ラッセルおにいちゃんと長い時間を過ごすだなんて、赦せない。 …だから、殺したの。 それだけよ。 | |
(51)2006/02/26 15:11:33 |
村長の娘 シャーロット >>51 ―――逆行症候群… [ぽつり、と呟く。 知識の上では知っていたけれど。 まさか、そんな。] …ウェンディちゃん… でも。 そんな。 リックは貴方を――ー 貴方は、リック、を…… [最早其れは願いでしかなかったのかもしれないが。 茫然自失の体でゆるゆると首を振る。 蒼い髪が微かに揺れた。] | |
(53)2006/02/26 15:17:35 |
双子 ウェンディ [ギルバートに氷のような視線を向ける。] >>52 だってあの人、自警団の人に変なことを言ったんだもの。 皆だって噂で聞いたでしょ? ネリーさんが…先生の記憶から最後の狼を辿るって。 だから喉笛を噛み切って、ずたずたに切り裂いた。 …でもね。 失敗したわ。ラッセルおにいちゃんに、見られちゃったの。 | |
(54)2006/02/26 15:23:26 |
双子 ウェンディ >>53 …この病気のことは、戒厳令が敷かれている筈なのに。 やっぱり村長さんの娘ともなるとそんな情報も入ってくるものなのね。 ねぇ、シャーロットさん。 双子だからこそ強い繋がりがある。 だからこそ、沸き起こる憎悪というのもあるのよ。 殺しても殺しても殺し足りない憎悪がね。 | |
(56)2006/02/26 15:29:12 |
流れ者 ギルバート >>54 なぁ……ウェン…ネリーが引き裂かれていた事 ―――どうして…知っているんだよ… あの姿を知っているのは…… ネリーを最初に見つけたオレと…… ―――狼だけのはずなのに… そうなのか?…そうなのかよ!!ウェンディ!!!!!! [叫ぶ…―そして…ウェンディを…『見た』―――] | |
(57)2006/02/26 15:31:22 |
双子 ウェンディ [ラッセルを黙らせるかのように彼に身体を摺り寄せたところで、シャーロットの声が届いた。 ラッセルの背に回した腕が、微かに震えている。 …恐いのか。 自ら死ぬ運命を選択したくせに、情けない。 あと少しなのだから、しっかりしなければ。] >>64 …それでいいの、シャーロットさん。 けれど、最後に…お願いがあるの。 ラッセルおにいちゃんと…少しだけでいいから、二人だけで話をさせて…。 …私は絶対に逃げないけど、信じられないのなら部屋の前や集会場の出入り口、窓の下まで警備を固めてくれて構わない。 だから…少しだけ、時間が欲しいの。 | |
(66)2006/02/26 15:57:39 |
双子 ウェンディ [唄いながら少女は階下へと降りる。 口ずさんでいるのは、少女たちが初めてこの集会場に訪れた時に唄った歌。 この世のものとは思えない美しき歌声で、魅了された船人を沈没させた黄金の髪の乙女の歌。 まさに今の自分に相応しい歌だと思った。 全てを破滅へと導こうとしている自分に。 少女はただ真っ直ぐに、集会場を出る最後の扉へと向かう。] Den Schiffer im kleinen Schiffe Ergreift es mit wildem Weh; [自分の歌声に合わせてリックも共に唄ってくれているような気がした。 それは本当に気のせいだったのかもしれないけれど。] | |
(101)2006/02/27 00:33:08 |