文学少女 セシリア [セシリアは目覚めるといつものように侍女に朝食を部屋まで運んでもらった] ねえ、あなたは侯爵様をご存知なの?答えなくてもいいわ。見初めて頂くとかそういうことより、侯爵様にお会いしてみたい……。 あっ、ひょっとしてそう思わせるのが、侯爵様の「手口」なのかしら? ところで、ちょっとあなたにお願いがあるの。そのメイド服貸していただけないかしら。だって、眼鏡を外して仮面をつけたら、自由に歩き回ることも出来ないのよ。図書室にも行ってみたいし。温室でお花を愛でてもみたいわ。ダメ? あなたに付いて見習い中ということで、いろいろ案内してもらえないかしら? [セシリアは侍女にジト目をしてみた] | |
(7)2005/12/12 10:43:27 |
吟遊詩人 コーネリアス そろそろニーナを迎えに上がりましょう。きっとお腹を空かせているでしょうし。 あぁ、窓の傍の花に水をあげて頂けますか。あまり元気が―― [コーネリアスは訝しんだ顔をすると、置いてあった植木鉢を覗き込んだ] これは……造花ですか? でもまるで生きているかのようだ。すっかり騙されました。人の手は、生命無き物にも生命を吹き込むのですね。 ……もしかして、これも侯爵流の悪戯ですか? [侍女がにこにこしているのを見て、コーネリアスは少し恥ずかしそうに笑った] 素晴らしい物を目にしました。伝承にある「幻花」を見たかと思いましたよ。造花でありながら咲いたり枯れたりするそうです。 では、今日もお掃除お願いします。 [コーネリアスは侍女に軽く手を挙げてみせると、ニーナのいる客室へと向かった] | |
(11)2005/12/12 11:10:41 |
見習いメイド ネリー [ ネリーは、ベッドの脇に置かれた小さな古いトランクを開けた。 中にあるのは質素な服と旅に必要な最低限の道具のみ。 彼女は荷物の一番下に入れていたぬいぐるみをそっと 取り出した。 ] ねぇお父さん……私、どうしたらいいの……? [ 足の端がほつれた少しいびつなその牛のぬいぐるみは、 顔も名前も、今生きているかさえ知らない父を恋しがる ネリーの為に、亡き母が手ずから縫ってくれた肩身の品だ。 どこへ仕事に行く時にも必ず持ち歩き、今ではすっかり 薄汚れてしまっているが、今も変わらずネリーの宝物である。 ] 私、分からないの。 こんな気持ち初めてなの。 こんなにドキドキするのは、私が憧れてながら働いていた きらきらした世界にいるからなのかな。 それとも……。 | |
(45)2005/12/12 13:02:25 |
文学少女 セシリア [長い沈黙の後、セシリアは意を決したように口を開いた] そうね。あなたにだけ、わたしの素性を明かすわ。もちろん、他言無用よ。 侍女のおしゃべりで広まったりしたら、きっと大騒ぎになるわ。いい? [侍女はいつものセシリアとは違う口調に、ただ事ではないのを感じ頷いた] わたしの名前は、セシリア・エル・サンジェルマン。そう、あのサンジェルマン伯爵の娘よ。 そして、あの侯爵家の歴史書にはこう記してあったの。 「各時代の節目には、サンジェルマンの娘現る」と。 サンジェルマンが何者かはあなたもご存知よね?そう。時の旅人。 わたしにも得体の知れない人だわ。間違いなくわたしの父ですけれども。 [侍女は驚いて櫛を入れる手を止めた] ごめんなさい。驚くわよね。でも、本当のことよ。 確かに、わたしが今ここにいるのかは説明が付くかもしれないけど、どうなるかは何も分からないわ。「現る」とは書いてあったけど、「結ばれる」とは書いてませんでしたから。 [そういって、セシリアは侍女に微笑みかけると、また鏡に向かった] | |
(97)2005/12/12 18:25:41 |