牧師 ルーサー [ルーサーは庭園を歩きながら、庭師の仕事ぶりに感心していた。そこに侍従が歩いてくる] どうしました? 急ぎの用事でも? [侍従の口から、今日鏡の間に連れて行かれたのがネリーとハーヴェイの二人だという事を聞かされると、ルーサーは屋敷の方を見た] そうですか。二人一緒ということですし問題はないでしょう。 どちらか片方だけですと困ったことになった気がしますからね。 彼はどこか危険な目をしておりましたから……ネリーがそれを和らげてくれると良いのですが。 そろそろお腹が空いてきました。硝子の間で昼食をいただくことにしましょうか。 [ルーサーは侍従と共に屋敷へと歩き出した] | |
(18)2005/12/15 12:24:32 |
文学少女 セシリア 庭園は穏やかな日の光に照らされ、庭園全体が輝いているかのようだった。コーネリアスに寄り添いながら、ゆっくりと歩いていく。この幸福感は今までに味わったことのないもの。とても心地よいもの。 [コーネリアスは詩を紡ぎ、折に触れ愛の言葉でセシリアの心をくすぐる。] 「コーネリアス様…。そんなに言われては、わたし恥ずかしくて。」 「おやめください。そのようなこと…。嗚呼、まるで麻薬のよう。」 「うふっ。どうしてそんなに…。セシル、溶けてしまいます。」 [繰り出されるコーネリアスの言葉にセシリアは頬を染め、上気していた。] 「コーネリアス様、わたしなんだかフワフワします。」 『ならば、すぐそこの東屋でひとやすみを。丁度食事もありますしね。』 「はい。」 | |
(25)2005/12/15 19:28:55 |
文学少女 セシリア [適当なところに腰を下ろし、一息つく。侍女は持ってきたバスケットを置くと、すぐに「避難」した。] コーネリアスは、セシリアを胸に受け止め、左手で抱きかかえている。右手が何杯目かのワインを空けたとき、不意にセシリアの唇がふさがれた。 赤い液体がセシリアの小さな口に注がれ、そのまま離れることなく唇を重ね合わせた。 その細い腕を彼の背中に回し、しっかりとしがみつき、そして、セシリアは満たされていった。 (…まだ、その感触が温もりが、ここに残っているよう。) [セシリアはクッションをぎゅっと抱きしめ、コーネリアスを想った。] コーネリアス様…。 | |
(26)2005/12/15 19:29:21 |
流れ者 ギルバート 〜〜黒豹の夢〜〜 [身体中が、痺れるように痛い。僕は僕のままで、そして同時に黒豹でもあった。僕にとっては夢の中で、黒豹にとっては避けることのできない現実だった。] [今となっては、僕は黒豹の全てを理解していた。彼の孤独を・・・。] [激情はハンター達に向けられている。彼らは仲間達を卑怯な罠にかけ、毛皮を売っては遊んで暮らしている。憎い奴らだ。] [だが、この状況は黒豹自身が招いたものにも気付いていた。慢心だったに違いない。恐れるものなど何もないと、自由に荒ぶれて生きていた。油断こそ恥じている。] [もうほとんど見えなくなった目をあてにせず、砂利を踏む音の方に力いっぱい突進する。] [ガシャン。額と肩に激しい痛み。檻は大きく揺れるが、まだ壊れない。] [無謀な突進をこれまでに何十回と繰り返し、阻まれた。いい加減、諦めるべきなのかもしれない。鉛の弾丸を何発も叩き込まれ、目が塞がった。] | |
(33)2005/12/15 21:03:34 |
流れ者 ギルバート 【僕は、何に抗っているんだろう?】 【僕は、何に怒っているんだろう?】 【僕は、何に悲しんでいるんだろう?】 【僕は、何を望んでいるんだろう?】 【だが、僕は、何がなんでも、こいつの・・・黒豹の願いを叶えてやりたかったんだ。】 【誇り高く、自由に闊歩した高貴なる魂が、仮面に作り替えられるという皮肉が苦しかった。】 【こいつは僕を巻き込もうとした。いや、今も巻き込んでいる。】 【僕らの間に、どんな因縁があるというのか?はははは。わからないが、今や僕も黒豹だ。だから力を貸すよ。】 【檻さえ破れば、自由だ。帰るんだ、お前の生きるべき場所へ。】 [ガシィン。渾身の力を込めた激突が、遂に檻の錠前を破壊した。] [キィィ。ゆっくりと、自由への扉が開く。] | |
(34)2005/12/15 21:07:53 |
流れ者 ギルバート ――部屋―― [目覚めると、黒豹の面は縦に真っ二つに裂けて、顔から剥がれ落ちていた。] 【眩しい。】 [大切な人がいる。守ってくれた。その優しい表情に、幸せな心地になる。] [身体の痛みも寒気も消え去り、キャロルの柔らかさを背中に感じた。] [起き上がると、素顔で、キャロルの頬にくちづけて、言った。] ただいま、キャロル。 全てが終わったよ。 【黒豹は、最後の最後で僕を裏切った。僕を道連れにすることを拒んだ。こいつは、寂しかったんだ。だから、もしキャロルが呼び戻してくれなかったら、僕は一緒に連れていかれてしまったことだろう。こいつが幸福に満たされたからこそ、こいつは僕に後を託して、滅んでいった。】 まったく、ばかやろーだよ。 [嬉しさと悲しさが混じって複雑な表情をして、割れた面を手に取り、割れ目を合わせてその表情を見つめた。] [黒豹の面は、愉快そうに笑っていた。] | |
(48)2005/12/15 22:08:11 |
牧師 ルーサー [数冊の本を手に取り、図書室を出る。そして硝子の間へと向かった。既に仮面ははずしたままで、被っていた帽子も手に持っている] 【それにしても。侯爵も変わりませんが、この屋敷も昔のままです。庭園や温室は季節のものなので変わってはおりましたが。 侯爵から招待状をいただいたときは驚きましたよ。 しかも兄上を通して送ってくるとはね。 おかげで締め付けがよりいっそう厳しくなってしまいました。 次男とはいえ、公爵家の息子がこの歳まで独りでいるのも世間体がうるさいのでしょう。ほっといてくれといいたいところですが。 侯爵もシャーロットも見かけは大人になっていましたが、昔のままです。私には気付かないようでしたがね。 ネリーのことは残念でしたが、ここに来て良かったと思います】 [ルーサーは昔を思い出しながら硝子の間へと歩いていった] | |
(85)2005/12/15 23:27:01 |