お嬢様 ヘンリエッタ さっさと行きましょう?もたもたして行くと置いていくわよ! [ヘンリエッタはその場に楽しそうに笑って立ち上がったが、足が震え体に力が入らずその場にばたんと倒れた。] 【馬鹿馬鹿しい。】 【分かっているんでしょう、ヘンリエッタ。】 【そんな事で逃げていても仕方がないと】 【ユージーンはもう、死んだのだと。】 【二度と目を覚まさないと。】 【あの温かい手で貴方を包む事も】 【あの暖かな目で貴方を見つめる事も】 【もう、二度と無いと――】 ユージーンが、死んだ…。 いや、いや………いや、いやああ――ッッ!!!! [初めてヘンリエッタの人みから涙が零れ落ちた。其れは途切れることなく、次から次へと落ちた。] [雨が二人に降り注ぐ。ヘンリエッタの涙を洗いながら――] | |
(8)2005/08/31 17:08:33 |
お嬢様 ヘンリエッタ ――屋上―― [ローズマリーの顔をじっと見つめ、ローズマリーを振り払うように体を起こし、立ち上がった。その足はふらふらとしていて、けれどその顔は真剣そのものだった。] 今わかったわ。昨日ユージーンにハーヴェイとユージーンは似てるといったけど、どちらかというとハーヴェイと貴方の方が似ているのね。性格が悪い所がそっくりよ。 【ユージーン。】 【私、頑張るよ】 【せめてユージーンの仇を取れるぐらい】 貴方…、貴方が、吸血鬼なのね? [ヘンリエッタは疑問符をつけたが、確信していた。] オードリー。私は冒険には行けないわ。御免なさい。だけど…、貴方が冒険に行くにしても此処で如何にかしなくてはならない人がいるみたいだわ。 | |
(38)2005/09/01 00:05:54 |
酒場の看板娘 ローズマリー ――屋上―― [深い悲しみがインクのように心に満ちた。ローズマリーは笑顔を崩し、憂いを帯びた横顔が雨に濡れた。] くすくす……。ふふふ、あははははは。 [ローズマリーは声高く笑った。その声は決して楽しそうでなく、どんよりとした悲しみを背負って響いた。脇腹からナイフを抜き、その場に投げ捨てた。金属の音が耳に届いた。激動――それは"怒り"にも似た物――に駆られたローズマリーの手の狂気がさらに鋭く尖った。] ヘンリエッタ、今の私はあなたと同じ気持ちだわ。 けれど……、いかなくてはならない場所が出来たようだわ。 お遊びは終わりよ、ヘンリエッタ!! [吸血鬼の身体能力をフルに発揮し、ヘンリエッタの傍まで行くと、右肩から切り裂くように腕を振り下ろした。] | |
(82)2005/09/01 01:30:50 |
酒場の看板娘 ローズマリー [けれど涙に濡れた頬をあげても、そこには誰も寝ていなかったし、長い間使われた気配も無い、過酷な現実があるだけだった。そして、当然、傍には誰も居ない。サイドボードが目に入った。きらりと光る指輪がそこには置いてあって、ローズマリーは自分がそこに置いたことを思い出した。] 【ラッセルくんが居なくなった今……、あれを捨てたら……、そして、この胸に下がるロケットペンダントを失ったら、私はもう戻れなくなってしまう。】 ["人間"でありたい心、"人間"のままの心の象徴であり、それを捨てた時、自分を確実においていってしまう人を好きになることはないだろうと、ローズマリーはずっと思っていた。] 【けれど、このままで居たいのかも、引き返したいのかも、どうしたいのかも、私にはわからない――。】 | |
(105)2005/09/01 03:03:32 |