医師 ヴィンセント ふむ…風が強い。 | |
2005/07/03 20:56:26 |
医師 ヴィンセント [ヴィンセントはゆっくりとレストランの扉をくぐった。あまり人気は感じない。誰もいないのだろうか] 失礼、今はここは時間外だったろうか? | |
(2005/07/03 21:17:56、医師 ヴィンセントにより削除) |
医師 ヴィンセント これは…! どういうこと? | |
2005/07/03 21:37:41 |
医師 ヴィンセント この表情ととめどなく流れる冷や汗…彼女は少なくとも普通の状態ではないな。 じっくり聞きたいのだが…緊急なものなら素早く聞かなければならないし… | |
2005/07/03 21:44:17 |
医師 ヴィンセント ……待て! このにおいは!? | |
2005/07/03 22:02:18 |
医師 ヴィンセント くそっ、なんだよこりゃあ!? 何があったんだ! What the hell`s going on!? I mean, what the hell's going on!? | |
2005/07/03 22:20:38 |
医師 ヴィンセント くそっ、こんな状態じゃ診察や蘇生法などといった段階じゃないぞ!? | |
2005/07/03 22:27:53 |
医師 ヴィンセント (この傷あと…一度や二度、短剣で斬りかかったものではないな…いや、少し違和感がある。 短剣…いや、鉤爪のような…しかし僕は今日までこの船で長旅をしているがそんなものを持ち込むような者は見かけなかったし雰囲気もなかった。 そして、衣服などもお構いなし、若い女性であるにも関わらず、その顔にもお構いなし。 ただ手をかけるだけなら胸や首を突けばいい。しかし…これはそこからが問題だ。 手をかけた者はそこから確実にこの身体のひとつひとつを使い捨ての玩具のように遊んでいる。 わざわざ臓物を紐を引っ張るかのように引き出していたり、骨の硬さをを確かめるように無造作に砕いた部分もあるのだから。) | |
(311)2005/07/03 22:47:37 |
医師 ヴィンセント ほら見なさい、遺体は大切に扱ったほうがいい、学生さん。 | |
2005/07/03 23:17:50 |
医師 ヴィンセント あれは、あの本だけは何としても…! | |
2005/07/03 23:31:08 |
逃亡者 カミーラ キャロル、ごめんよ…。 | |
2005/07/03 23:35:39 |
医師 ヴィンセント 水練は得意なほうではあるが…さてどうする!? | |
2005/07/03 23:54:06 |
医師 ヴィンセント ぷっはあ! 冷たい! | |
2005/07/04 00:04:25 |
書生 ハーヴェイ ――ひとつの船室の中。 そこには二人の男の姿があった。 四十を過ぎ、五十は越えぬと見える男と、二十代の半ば辺りと見える男。 年かさの男の方はペンを生業とする者であった。もっとも、そうは言ってもそれで生活を賄っているわけではなく、むしろ、ペンで稼ぐ金など彼の生活から見れば雀の涙といった程度だ。しかし、先祖代々の家柄と土地があり、食うに困るなどという事とはまるで縁は無い。屋敷や事業の切り盛りは長年仕える執事に任せ、好きな文を書き気のままに旅歩いてと、悠々自適を絵に描いたような暮らしぶりであった。性格は奔放であり、言ってしまえば、良くも悪くも子供っぽいと言えるだろう。だが、それ故に鼻につくようなところは無く、人からは愛される男であった。 ハーヴェイが彼の元に弟子入りしたのは、父の蔵書の中にあった彼の作品を読み感じるところがあったからだった。 今回の旅行は、旧知の友人で船乗りであるアーヴァインから聞いた話に興味をそそられての事であった。南の島、呪術師、そして人狼……荒唐無稽な、正しく御伽噺と言って良いであろう話。だが、そこに何を感じ取ったのか、その話を聞くなり、彼は子供のように目を輝かせ今回の旅行を決めたのだった。その様子に、話をしたアーヴァイン自身が戸惑うような苦笑を見せたものだった。あなたらしい、と納得した風でもあったのだが。 そして、彼は弟子であるハーヴェイと、メイドの一人のネリーを連れて、この「danse de lune」に乗船したのだった。 航海が始まり、既に二月を越えた。 彼――小説家は、その船旅を大いに楽しんでいたものであったが、しかし、航海が進むにつれ彼は変調をきたし始めた。彼は時折、熱に浮かされたうわ言のような言葉を口走るようになった。そして、その頻度は日々増すばかりであった。そして、彼自身はそれを覚えておらず、うわ言のようなものを口走る時以外は至って普段と変わらなかった。 そして、今日。 彼は眠り続けていた。そして、時折目を覚ましては、目をぎらつかせ、ハーヴェイに解らぬ言葉で何事かをわめき散らした。ハーヴェイは訳の解らぬまま、エレノラも部屋に入れずに彼の世話をしていた。 甲板で耳にした話が、背中を伝うような厭な感覚と共に思い出される。 ――揺れが大きくなる。 そう言えば、嵐が来そうだと誰かが言っていた気がした。揺れの中、悲鳴らしき声が聞こえた。そして、暫らくして喧騒が始まる。 (なんだって言うんだ……) ハーヴェイは思わず、一人ごちる。小説家の世話だけで手一杯だと言うのに、船の揺れも、聞こえてくる騒ぎもハーヴェイの心をかき乱すばかりだった。 ――その時。 それまでとは比べものとならぬ揺れが船を襲った。船室は揺れながら、少しずつ、明らかに傾いて行く。 背筋を冷たいものが走る。 額に汗が浮かんだ。 ただの揺れや傾きでは無い。明らかに……船は沈もうとしていた。 この大きさの船であれば、すぐに沈むような事はあるまい。だが、のんびりしていられる訳も無い。ハーヴェイは、手荷物の鞄を肩に引っ掛けると、眠り続ける小説家を背負って船室を飛び出した。 通路は逃げ惑う人々でごった返した。小説家を背負ったハーヴェイは自由に動けず、人の流れを避けてゆっくりと進んだ。水が後を追うようにかさを増す。それに追われるようにハーヴェイは歩を進めた。 そうして辿り着いた甲板は――狂騒の只中にあった。既に全てのボートは降ろされ、僅かに残った救命具を奪い合う者、泣き叫ぶもの、恐怖に震える者たちが溢れていた。 ――最早、このまま船上にいても、いずれ船と共に海に飲まれるだけであろう。 ハーヴェイは意を決し、手近の、軋み、剥がれかかった板を引き剥がすと、それを手に小説家を抱え直し沈み行く船から暗い海へと身を躍らせた。 そして、その後「danse de lune」の船尾は大きく海に飲まれ、直立し――投げ出される人々諸共、暗い海の中へと飲み込まれて行った―― | |
(396)2005/07/04 00:26:18 |