人狼審問

――ラッセルから飴を一つ貰って頬張りながら――
退ける人のお話はセシリアお姉ちゃんによく聞いたの。かっこいいの。いつも人を守って、自分の事は後回しで襲われちゃうの。切ないの。

リックお兄ちゃんはじいちゃの話をいっぱい覚えてるの。すごいの。
リックお兄ちゃんが考え事をしてるときは、ウェンディ邪魔しないの。ウェンディ良い子なの。えっへん。

――本から目を離し――

ん、ラッセル起きたのか。
これはご先祖様の落書きノートだ。
見せてあげるよ。
大事に扱ってよね。

――本をラッセルに投げた――

―――あわてて受け取る―――

「大事に扱え」と言って「投げて寄越す」ってのは、どうかと思うんだ。
学校に最近顔出してないからね、どうも生活が不規則で行けないな。
ヘンリエッタとも近頃すれ違いばかりで寂しい限りだよ。

結局、「誰を」って話は皆、はっきりとはしていないのかな。

それじゃ、僕の意見だけでも言っておこうか。最初の判定はシャーロットでどうかな？
皆とそれぞれちょっとずつ付き合いがあって、えこひいきする事もなさそうだ。落ち着いてるし、まぁ、あんまり関係ないが、美人だしね。

――デボラの方を振り向いて――
どっちつかずの人はどっちでも、やっぱり、だと思うの。
それがホントでもウソでも、やっぱり、なの。
なんだか、ウェンディ、言ってる事がシリメツレツなの。
でも、やっぱりはやっぱりなの。

私は、まとめ役になって欲しいから、ヒューバートさんを判定して欲しいと思ってるの

おや失礼、聞き逃してたね。

そういやノーマンは、デボラの婆様をとか言ってたな。しかも僕、その場にいた気がするぞ。
われながらボケるにはちょっと早いと思うんだが。

みんなはどう考えてるのかしら？

――ふいに顔を上げて――
ハーヴェイお兄ちゃん…。今日もバイトが有るなら、行く前にちゃんとお話しておいた方が良いと思うよ。
なんか……凄く無口になった気がするんだ…

――ラッセルとシャーロットに頷いて――
ウェンディも、村を引っ張っていってくれる人がいると安心なの。引っ張ってくれる人が狼にとり憑かれていたら怖いの。だから、今日、そんな人を見てもらうのに賛成なの。

――きょろきょろ回りを見渡して――
みんなのお話をもっと聞きたいの。
狼にとり憑かれると急に性格が変わっておしゃべりしなくなることもあるって、じいちゃが言ってたの。でも、ウェンディ、それが狼の話だったか、狐の話だったか、他の魔物の話だったか、よく覚えてないの。

――欠伸をしながら――

あふ、そうだね。
今を見る者も惰眠を貪るだけじゃなくて能力を発揮してもらわないとね。なんて。
半日地下の書庫を冒険していたから疲れた……。
とりあえずそろそろ寝たい。
夢を見ながら「誰にするか」考えておく事にするよ。

――ラッセルを見て――

虫食いだらけだからね、中々読み難いよ。
スケッチの方は結構生き残ってるのが救いだね。
別に役に立たないけど。

それじゃ、おやすみー。

おやすみ、エッタ…

――眠気眼で･･･――

･･････私はラッセル君を占って欲しいな。
君はなかなか筋のある所もあるからまとめ役も向いていそうだ。
それに、シャーロット君をそこまで押すのに裏の理由が無いかも不安だ。

あとはレベッカさんやハーヴェイさんかね。彼らはあの話の後全くをもって姿を見せてないのも気にかかる。
あと個人的にはケネスが気にかかるな......一体どこから酒代は出てるのやら......

――ラッセルの姿を見止めて――

…ああ、ラス。ちょうど良かった。
お前の話で、聞きたいことがあるんだよ。ニーに関するね。

ニーに疑惑があるのならば、逆に「判定」して確かめるべきなのではないかい？
今日「判定」しなくても、というのはどういう意味なのだろう。
したとしても、ならわかるんだけどね。
婆には、よくわからなかったのさ。

>>339

･･････まぁ、いずれにしても誰を占った所で、結果は２通りだ。それを信じるか信じないかも２通りだな･･･

狼を割り出すにはあまりにも情報が足りなすぎる......

ごめんなさいね、今日も遅くなっちゃったわ。
誰か、話の顛末教えていただけないかしら？

――ウェンディの話を、再び聞いて――

そうだね、ウェン。言いたいことはわかるよ。
どっちつかずならば、人間と出ても人狼と出てもおかしくない。
だから、もし その者が人間だとしても、魔の者に嘘の「判定」を下されやすい。
そういうことだね。

婆は、人間かもしれないと強く感じ、同時に頼りになりそうだと思う者は、見ては貰いたくない、と思ったんだ。
その者が人間だと「判定」されれば、人狼はここぞとばかりに、夢を喰らおうとするだろうからね。
それは、とても拙い事だ。
それよりは、よくわからない者を見て貰いたいと思った。

けれど、リクの希望もあったし、ウェンの言い分もわかる。
少し、考え直してみるとするよ。

バカバカしいって笑い飛ばしたいところだけど、どうやら本当みたいね。頭痛いわ。ただでさえ注文立て込んでるって言うのに・・・

――レベッカにぺこりと頭をさげて――
レベッカおばちゃん、こんばんはなの。
ウェンディ、チョコが食べたいの。
注文立て込んでるときにごめんなさいなの。
今度持ってきて欲しいの。お小遣いはちゃんとあるの。

………ウェン、それ
僕のお財布……

私はウェンディに賛成よ。
今はみんな不安になってると思うの、そういう時には頼れる確かな柱が一本必要だわ。
デボラおばぁちゃんは、そんな人が襲われるの怖がってるみたいだけど、狼を夢の中から退けて護ってくれる人がいるのでしょ？
私は、性格的に何もかもが信用ならないって状況が嫌いなの。この中でみんなをひっぱっていく力と知識のある人を一人あげて、人か夢魔か見極めるべきだわ。

――暫く考え込んでいたが、ふと顔を上げて――

婆は、クーの坊やを見て貰いたい。
全体に、皆の意見を良く聞いているように感じるんだ。
皆を導く役としては、適当じゃないかと思うよ。
もう少し、自身の意見を聞きたいところではあるがねえ。

…それに、ああ見えて、心の優しい子だからね。
ほ、ほ。

あら、ウェンディ。いつもはお兄ちゃんに買い物任せてるのにえらいわね。
わかった。飛び切りい美味しい板チョコ、今お店にあるから明日もってきてあげるわ。

ああ、そうだ、レベや。
お前のところで、毛糸何かは扱っているかい？

最近、どうにも手持ち無沙汰でね。
久しぶりに、編み物でもしようかと思っているんだよ。

私も編み物はまだ苦手だから気になってたとこなの。
お代は、編み物を教えてくれるってことでいかがかしら？

あ、私も一緒に教えてもらおうかなぁ・・・

婆様、言葉足らずだったね。
僕がニーナをあげない方がいいと言った主な理由は一つ目と二つ目。>>338
最後の理由は、補足的なもので「今日は後回しにしても、いずれ疑念は検証されるだろう」と言う意味のつもりだったんだけど。どうかな。

ほほ。ああ、もちろん、構わないよ。
ロッテも、一緒にやるといい。
婆も暫くやっていないからね、腕が鈍ってなければいいんだが。

何を作るとしようかねえ…。

ウェンディも編み物覚えたいの。
すごく難しそうだけど頑張るの。
毛糸…………お小遣いで買えるのがあると良いの。

ラス、わざわざありがとうよ。
婆が少し聞き違いをしていたようだね、それなら理解出来る。
ラスは、これからのニー自身の行動から、その真偽を確かめたいと思っている、ということだね。

確かに、何もわからない今のうちに「判定」してしまうのは、ある意味危険かもしれない。
その血筋故に、もし人間なのに人狼だと「判定」を下されたとしても、納得してしまうだろうからね。

今を見て貰う者か…。参ったな。
信じる者か、疑う者かどちらを見て貰うか。
まあそりゃ人狼が見つけられれば問題ねえが…。

どちらにせよ人間の証明が立てられた奴が増える事は隠れる場所を奪うことにはなるだろうしよ。深く考えず勘…なんて言ったらレベッカ当たりに蹴っ飛ばされるのか？

――編み物の話を余所にブツブツと呟いている――

ウェン、覚える気持ちがあるなら、婆が買ってあげようとも。
なぁに、ウェンならすぐ出来るようになるさ。
ほほ。

―――ピアノを弾きながらデボラに笑って―――

どんなに大きな女の子でも、おしゃべりの邪魔をする気はないよ。話の腰を折ってごめんね。

編物か、今度教えてもらおうかな。。飽きっぽいんで、人形サイズあたりで。

判定された者の判定結果によって、今を見る者の真偽を計るんですね？
それは、理解できるけど・・・ニーナを特別に考えるなんて・・・・

――ラッセルに笑い返して――

いいや、先に聞いたのは婆だからね。
ラスが気にすることはないさ。

ラスも編み物を習うのかい。
いいとも、いいとも。
いつでも教えてあげようよ。

そうよ、ラッセルは器用だからすぐ上達するわ。
インスピレーションなにか得られるかもね。

別に僕の提案にしたがう必要はないよ、シャーロット。勝手に言ってるだけなんだから。
これは君を推した理由でもあるけれど、なんと言うのかな、公平であろうとするあたりは、ロッテの美徳だと思うね。

ニーナの事だが…。特別に今日はと制約をかけなくても良いと思うがな。希望はそれぞれの心から出せばいいと思うぜ。ルールをつけることは無いように思うがなぁ。

それに、その提案をニーナはどう思うかね？俺は喜びそうには思えないんだがな。まあ、ラッセルも喜ばせようとは思ってねえか。

それにしたって、今日見て貰う者はどうやって決めるんだ？多数決が妥当か？

そうやって、ニーに拘る必要はないさ。
その者自身の行動から考えるのが一番だ。血筋など、関係なく。
思い込みは危険だから…、ね。

――自分に言い聞かせるかのように、呟く――

…ラスの事だ。
そう言って、他の者がどう反応するかも、見たかったんじゃないかい？

―――ぎょっとして振り向く。が、にっと笑った―――

ばあ様には敵わないね。お手柔らかにお願いしたいな。

ウェンディ、靴下が良いの。おっきな靴下を編んで、サンタさんにいっぱいお菓子をもらうの。
――身長ほどの靴下一杯のお菓子を空想して目を輝かせている――

――皆の希望を思い出し、反芻しながら――

魔の者が希望を合わせているんじゃないか、という不安もあるが…、そう解り易いこともしないだろう。
多数決で構わないと、婆は思う。
が、見事に、ばらばらだね。

…ああ、そうだ。
今を見る者に隠れていて欲しいと思うなら、皆の希望が今を見る者自身になってしまうときのことを考えて、もう１人も決める必要があるね。

ほ、ほ。
伊達に、年は食っちゃいないよ。

――ウェンディとシャーロットの方を向いて――

それじゃあ、靴下を編むとしようか。
どんな色がいいかも、考えておくんだよ。

…さて、婆は少し休むとしようか。

おばぁちゃんおつかれさま。明日がたのしみだわ。

ふぁ、よく寝た・・・寝すぎたくらいだ・・・

顔出すのが遅くなった。

僕、もう一度じいちゃんの所へ行ってお話聞いてくるね。
ウェン、僕帰るけどどうする？おばあちゃんやお姉ちゃん達と一緒に居る？

デボラ婆。お疲れだ。

で、誰を見るか、どうやって選ぶのか、という話か？

ウェンディ、もう少し残ってるの。みんなのお話聞きたいの。

ノーマンさんこんばんはっ

じゃぁ、ウェン、みんなにあんまり無茶言ったら駄目だよ？
じいちゃんにはちゃんといい子にしてたって言って置くからね。

――そう言い残すと、ドアを勢いよく開けて外に飛び出していった――

私も家に帰りますね。
私の考えは、まとめ役としてヒューバートさんを今日は判断していただきたいと思ってます。
決定は多数決でもいいと考えてます。ただばらばらですよね・・・
おやすみなさい

あー、大部分とはすれ違いになりやがったな。
まあいい、俺の考えは変わってねぇよ、年寄りだからとか、子供だからとか、女だからとか関係ないね。

はっきり人間だってわからねーと、その話を信用する気にはなれねぇんだよ。だからそこのバー・・・デボラだな。

決定は多数決？敵あーなんだっけ、夢食い？もこの中にいるんだろ、それでいいのか？

かといって他になんかあんのかよって言われても、無いがな。

それぞれの意見はいいとして、決定方法は考えどころかな。
こうバラバラだと、一票上乗せするだけで結果を左右できそうだしね。んー……。

なら、一通り希望が出た奴で多い奴の中から、再度希望を取り直すのはどうだ？

結局バラけちまってるような気がするが、俺はセシリアを希望するよ。まだ若いが、芯の通った子だからな。人間の証明が立てばしっかりしてくれそうだなと思ってるぜ。

――ノーマンの方を向いて――
ウェンディ、今日は頼りになる人がホントに人間だって確かめたい気持が強いの。ノーマンお兄ちゃんと同じなの。
だから、もし夢食い狼がこっそり意見をあわせていてもきっと大丈夫なの。

そうね。私もそろそろ寝たいわ。
私はまとめ役としてシャーロットを押すわ。
アイデアメーカーのヘンリエッタとラッセルも慕ってるし、私達大人が助けることもできる。
みんなの中心にいるのが彼女だと思うの。
でも、方針は一人に絞るべきね。明日決めることになるのかしら。

なんつーかその…すげえな、ラッセル。天才だ。

ラッセルのピアノは超芸術的だわ・・・

くそう、お褒めに預かって光栄だね。

ショパンって、子守唄を弾くかしら・・・
こんな時間にしかも偉く上手に、嫌味だわ。
ほんと眠くなってきちゃったわね。

別に他意はないんだけど。眠いなら休んだほうがいいと思うよ。
どうせ今ここですぐ何か決まるわけではなさそうだしね。

色んな意味ですげえのは即興曲だけなのな。
ピアノの音はなんだか、少し恐ろしいと俺は思うけどな。

――言いつつ欠伸を噛み殺す――

わたしそろそろ休ませて貰うわね。それじゃ。
――レベッカは大あくびを一つして、店へ引き上げていった――

ん。じゃあ俺も少し休むとするかな。
何かあれば出て来るぜ。それじゃ。

―――ラッセルは独り言のように言った―――
ノーマン、鳥は何か言ってたかい？

――ソファから身を起こして目をこすりながら――
あれ？　みんな寝ちゃったの？

――ヒューバートが持ってきた本をパラパラとめくりはじめた――

――ゆっくりと身を起こし――

な、何か素晴らしく前衛的かつ破壊的な音声がしたのだが。
……ま、まさか、夢喰らいが……！？

――慌てたように辺りを見回す――

――蓋をされたピアノを撫で――

まさか、これの音なのか……？

――自らの考えを振り払うように、頭を振って――

……とにかく、私は店に戻るよ。皆、お疲様。

――ん・・・っと、身じろぎをして、頭を起こす――

ぁ・・・また、眠っちゃった・・・

――ウェンディの肩をそっと揺らす――

ウェンディちゃん、ごめんね。
昨日の夜の事なんだけど・・・。

そう、ありがとう。わかったわ。
起こしちゃってごめんね、おやすみなさい。


――ウェンディの頭を撫でて、額にキスをする――

――ホットケーキを作りながら、思案――

（まとめ役・・・私としては先輩にやってもらいたい・・・
　でも・・・）

（狼と「判定」されても、人間だったら審問の部屋で何も取られずに帰れるんだよね・・・？
　狼だったら、人間に戻れる・・・んだよね・・・？
　狼の魂を置くって事は・・・）


――セシリアは、都合の良い様に解釈を始める――

――多少焦げた臭いに気づく――

ぁ、やっちゃった・・・

――こげを落とし、何とか食べられそうなのを確認すると、双子用のホットケーキも作り始める――

（うん、やっぱり先輩がいい）

――走って来た息をドアの前で落ち着かせて――
ただいまっ！
………みんな普通に寝てるだけだよね？

――そう言うと、無造作に並んだ死体のようにバラバラに寝ている一人一人に毛布をかけ直して――

エッタ……みんなにお部屋用意してあげてね……

――ホットケーキの横のメモを見つけて――

セシルありがとう、いただきまーす

――まだ寝ているウェンディの横でホットケーキを食べながら――

じいちゃんに、色々相談してきた、デボラおばあちゃんが来てる事を言ったら、じいちゃんここに来たがってたよ。
……審問の部屋の作り方も聞いてきた、ウェン今はゆっくり眠って…ウェンがいっぱい元気じゃないと難しいから

ねぇ、ウェン…じいちゃんに言われたんだ。「今、人としての証が立っているのはお前とウェンディだけだろう？子供だから大人だからって事以上に、お前には過去の狼との戦いの話は全部伝えたはずだ、人としての能力しかないのなら、それを『今は』最大限に使うのがお前の役目じゃないのか？」って……

「吉兆や凶兆は、一人に能力が目覚めなかったからではなく、それを卑下して捻くれるから駄目なんだっつさ…」
……でも、じいちゃん荷が重いよ…。
――ホットケーキをつつき回しているが、なかなか口に運ばない――

――ピアノの横で突っ伏しているラッセルに近寄り――
ねーねーラッセルお兄ちゃん、寝ぼけてても良いから僕が帰ってからのお話聞かせて
-----
ん、解った。バラバラなんだね…
でも、誰かが纏めるとその「誰か」を疑う事もあり得る状態なのかぁ……

僕、今日はサイモン神父の所にちょっとお話を聞きに行こうと思ってるんだけど、その後「今日だけは」僕が纏めても良いのかな？僕なら人としての証たってるからみんなも納得してくれるよね？
でも、子供だから駄目かなぁ？

ウェン、僕神父様の所に行ってくるから、みんなに伝えて置いて欲しいんだ。
――壁の大きな時計を指さして――
いいかい？７時までにここに来た人は、必ず「今を見る人」に今日は誰を見て欲しいか、その理由を聞いて置いて欲しいんだ、それまでにこれなかった人は遅くても９時までにはお話して欲しいって思ってるって伝えて置いて。

じゃっ　行ってくるね
――ホットケーキを口にほおばりながら駆けだして行った――

――リックに頷いて――
わかったの。ウェンディ、みんなに聞いておくの。
ウェンディもがんばるの。

――駆け出して行ったリックに手を振った――

やれやれ…こっちはこんな状況だってのに、街の奴らも結構無情だな…。
まあ、状況を話した処で莫迦にされるだけか…難儀なモンだぜ。

――溜息を吐いて手紙をポケットに押し込み、代わりに煙草を取り出す――

さて、と…なんか決めなきゃならん事が在った気がするん、だが…
…あんだったっけな。

ん？ウェンディか。いつも悪ぃな。
もう少しこっちに顔を出せるよう努力するぜ。

――身振り手振りを交えながら――
……ということなの。大変なの。だから、ケネスおじちゃんにも力を貸して欲しいの。誰を見てもらうのが良いか考えて欲しいの。

それから、ハーヴお兄ちゃんを見かけなかったかも教えて欲しいの。なんだかあんまり見かけないの。

ああ、そうだったな…先を見る者って奴に誰を見て貰うか決めるんだっけか…
…つってもなんか、実感沸かねぇよなぁ……
ホントにこの中にそんな奴が居るってのがまず不思議だぜ…

ハーヴェイか…昨日はあっちに行かなかったからな…見てねぇんだ。まあ、あいつに限ってポカやらかすなんて事はねぇだろうし、気長に待とうぜ。学業に仕事にてんてこまいだろうからよ。

――少しだけしょんぼりして――
ウェンディには、みんなに力がある事しかわからないの。
ウェンディ、頭も良くないし、お話も上手くないの。
だから力を貸して欲しいの。

ハーヴお兄ちゃんの事はわかったの。ありがとなの。
ウェンディもそう思うの。

力を貸さない、って訳じゃない…そう落ち込むなよ。
おれだって村のみんながああなっちまうのは厭だし…
大人としてガキ共を守ってやらないと、な。

協力すんぜ、そいつらの退治って奴によ。

（とは言うものの、どーしたもんか……）

――窓から顔を出して、煙草に火をつけた――

よ。ウェンディにケネス。

今日は良い天気だ。
ウェンディ、喉が渇いただろ？

――アイスミルクティを用意するとウェンディに手渡す――

おう、クインジー。
おれにもアイスコーヒー出してくれよ。

間違ってもガムシロとか入れんなよ？

――表情が明るくなって――
ウェンディ嬉しいの。
退治する前に見つけないとなの。
見つけるより先に、みんなをまとめてくれる人がいると嬉しいの。

――クインジーの方を見て――
ありがとなの。ホントに喉が渇いてたの。ミルクティ美味しいの。

ん？ああ、仕方ねえな。
（こりゃ、すっかり給仕のおっさんだな…。）

――アイスコーヒーをケネスに渡したが、子供達のミルクに入れるのと同じ量の砂糖を入れてしまっていた。気付いていない――

お、さーんきゅー。今日はあっちーからなぁ…

――アイスコーヒーを口に含んだ途端、窓から勢いよく吹きだした――

ぶあ…ッ！おいクインジー、何だこれ…！？
こんなに甘いコーヒーが在るかっ！

…………なにやってんだ？
何にも入れてねえはずだが……。

――少し考え込み――

ああ。砂糖入れちまったか？
はははは。悪い、悪い。
ちゃんとブラックを持ってくるから勘弁してくれや。な。

――笑いを堪えるのに必死になりながら新しいアイスコーヒーを手渡す――

……ったくよぉ…ガキの世話すんのは良いこったが、これは流石にどうかと思うぞ…？

――溜息と煙を吐いて、新しいカップを受け取った――

――ケネスを不思議そうに見て――
コーヒーも紅茶も甘い方がおいしいの。
お砂糖入ってないと苦いの。
ウェンディには分からない味なの。
きっと大人の味なの。

そうだよなあ？ウェンディ？
苦い酒は好きだが…俺は甘いコーヒーも紅茶も好きだぜ。

――言い終わるとケネスが飲み残した甘いコーヒーを一気に飲んで、噎せた――

…ちょっとこりゃ甘過ぎだな。

――噎せるクインジーを見て――

…限度を考えろ、限度を。

俺はコーヒーはブラックなんだ。
出来れば、ホットの方が良いんだが…流石に暑いと飲む気になれん…。

ま、そう怒りなさんなって。
お前さんも少し煙草の限度を考えてみたらどうだ？
若いと思ってるとあっという間に爺さんになるぜ。

――ニヤニヤしながらケネスの方を見ている――

――両手でミルクティのグラスを持ちながら――
誰を見て欲しいか、みんな意見がまちまちなの。
ウェンディ、いろんな意見があるのは良いことだと思うの。
でも、バラバラすぎると、きっと見る人が困るの。

へっ、そりゃどーも。あいにくこれだけは止められそうにねーよ。
爺さんになる前にくたばっちまうかもしれんな…

んで誰を見て貰う、か…。
引っ張る奴は決めたのか？そいつを見て貰うか…
ま、ヤマ勘で決めちまうのもアリか。

引っ張る人も決まってないの。それもいろんな意見が出てるの。だから、ケネスおじちゃんの考えも聞きたいの。
ウェンディには難しいの。ウェンディから見たら、みんな頼りになるの。

…ただいま…

ふぅ、先生の所、資料が多すぎて思わず徹夜しちゃったよ。

でも、昨日言った以上に参考になるような資料は全くなかったんだよね…それこそ意図的に隠されてるかのように。

えっと、結局今どうなったのかなぁ…

解ったよ。おれも少し考えてみる。
ちっと家に戻って整理でもしてくるわ。

クインジー、コーヒーごちそうさんよ。

…クインジーさん…ありがとうございます…

そう…ラッセル君がそんな事を…

んー、あたしにも１つ提案があるんだけど…

その前に１つ確認してもいいかな、ウェンディ。

えっと、良くわからないんだけど、今を見る能力を持った人って言うのは、もう、自分がその能力を持ってるって事に気がついているんだよね？

昨日までは夢を食う狼がでてくるなんて、それこそ夢にも思っていなかったわけじゃない、みんな。あたしもまだ信じたくないし受け入れられていないもん。だけど、急にその能力に目覚めて、尚かつその能力に気がついてるって事なんだよね？

こんな事ウェンディに聞いても仕方ないかも知れないけど、想像で良いから答えて欲しいな。よければクインジーさんも。

急に目覚めたのか、前から気付いていた力なのかは分からないの。

もっともっと力が弱くて小さな魔物が人に憑いて、些細な悪さ……転ばせたり、咳が止まらなくなったり……をすることもあるってじいちゃ言ってたの。だから、そんなのを見分けられたかも知れないの。

どっちにせよ、きっとその人自身は分かってると思うの。

ありがとう、ウェンディ。

つまり、自分が今を見る者だって知ってるのは現時点では今を見る者だけなのね。

これは、あくまでも１つのアイディアとして聞いて欲しい話なんだけどね。

みんなの意見がバラバラで纏められなくて困ってるなら、今を見る者に誰を見るのか今日の所はまかせてしまってもいいと思うの。

みんなの意見がバラバラという事は、裏返せば、誰を見ても大差ないという事にはならないかな？

この村の人間なら何があっても驚かねえんだが…、わかってるはずだろうよ。急に目覚めたとしたら戸惑ってるだろうな。だが、前からあった可能性もあると思うぜ？

お前さんがカップを間違えて持ってきた時、偶然デボラ婆が来た。お前さん、そういうことよくあるだろ？アレと同じようにな。能力なんて言うと大袈裟だが、今を見る者だって、そういうのと同じじゃねえかなと俺は思ってるよ。こう言う時に役立つ物だっただったんだ、と納得してるかもしれねえしな。

今を見る者が誰を見たか解らないと、人間の証明はどうなる？
その場合、今を見る者は沈黙することが出来なくなるんじゃねえか？

もし、今回の旅人の事件と、あたしの家に伝わる話の狼が同じ存在だとしたら、きっと、今を見る者とその能力には十分に警戒すると思うの。

そこで、誰を見るかをみんなの意見を纏めた上で、公にするのは、狼達に無用な情報を与えることになりかねないの。

見られるか見られないかわからないと言う心理的な重圧は、狼達にとってきっと精神的な重圧になると思うし、ボロも出して来るんじゃないかしら？

そして何より…狼の存在がまだ不明なのに…たとえそれが前向きな理由でも…名指しで狼じゃないか見られるのって……とてもつらいことなんじゃないかなって思う…

うん、クインジーさんの言う通りだよ。

この方法だと、人間だと証明される人があたしたちにはわからない。

でも、少なくとも双子は確実に人間だと思う。狼がわざわざ狼の再来を私たちにつげるようなマネはしないだろうし。

だからしばらくは双子に意見をまとめてもらいつつすすめれば問題ないんじゃないかな？

本当に狼がいると確認されるのなら、今を見る者には、誰かが悪夢に捕らわれる前に名乗り出てもらうべきだと思うのがあたしの意見だし、そうすれば、その時に誰が見られたかわかるよね。

だれかが悪夢に捕らわれた後だと、狼達が今を見る者の偽物を出してこなくても、常に、眠っているやつこそ本物の今を見る者なんじゃないかという疑惑は消えないと思うんだよね。

でも、そんな狼がいる事が前提の話を続けても意味がないか。あたしもまだ半信半疑なのは変わりないし。

とりあえず、クインジーさんの言うようにあたしの意見は穴もあればデメリットもある。それはあたしも認める。だから、意見の叩き台としてくらいに考えてくれるといいな。

ふうむ…、ニーナの意見は今を見る者に任せ、更に狼を見るまでは沈黙するってことだな？そりゃ確かに脅威だとは思うがな…。誰を見たか俺達にもわからないって事は、明日俺たちから見る状況も変わらないわけだ。明日は一体、どうなるんだろうな。

それに俺は、ちっこいあいつらに負担はあんまり掛けたくねえなあ。

子供がにこにこ笑わないなんて悲しみ以外の何物でもねえ。見ろ、ここんとこの双子。あいつら、気丈に振る舞ってるだけでちっとも落ち着けねえでいるじゃねえか。まあ、お前さんだって辛いとこだろうけどよ。

それはそうとして、今日見られる者の候補に…デボラさんをあげようかなぁ…もちろん確固たる理由なんて無いんだけど、もしデボラさんが言ったことに嘘があったら大変だからね。

クインジーさんの言う通りだね。あたしもできれば双子だけに負担がかかる形は避けたいよ…

だけど、双子に負担がかけないようにしちゃうと、狼は優先的に人間と証明された人を悪夢に引きずり込むと思うよ。隠れ蓑にならない人間は彼らにとって用無しだからね。だから、あたしたちは双子もまとめる可能性がある事をキチンと認めるべきだと思う。それが結果的に二人の為にもなると信じてる。

あと、あたしは、明日も同じとは思わないよ。このあたしの意見に対するみんなの反応は十分明日の印象を変えるに値すると思うよ。同じ日なんて二度とこないんだもん、そう、二度とは来ない。毎日は必ず移り変わる。

あと、誰が人間かわからない状態で、明日も議論する事で、実際に今を見る者が誰を見たかをみんなに教えた時に、それまでの議論から得られる情報は飛躍的に増えると思う。それは、誰かが人間だとわかっている前提で議論した場合よりは…きっと多いと思うよ。

んー、なんかしゃべりすぎちゃった…まだ興奮してるのかなぁ…頭いたいし…

ごめんなさい、クインジーさん、なんか、すごくクインジーさんに反抗したみたいになっちゃった。

言ったように、あたしも自分の意見が不十分だし、採用した時に危険性がある事もわかってるんだけど、お互いで意見をぶつけてみないと新しい意見はでてこないと思って…

もう少し自分でも検討してみるね。

ちょっと、散歩して頭冷やしてきます……頭いたい…

…ニーナ。お前賢いな。俺はどうも頭が凝り固まっちまってよくねえ。
歳の食ってきたのかね。まあとにかく話が聞けてよかったぜ。
俺もなんだかんだ言って悪かったな。

きっとその案も一理あると思うさ。

――ニーナに手を振り、見送った――

――サイモンの所から十字架を一つ貰ってきてそれを首から提げている――
ウェン、寝たふりしてないで今まであったことを僕に教えて。

あれ？もしかしてニーナさんが居たの？残念だなぁお話したいことが有ったのに……
ただいま、クインジーお兄ちゃん

――ちょっとウトウトしていたのをごまかす様に――
あ、リックお兄ちゃん、おかえりなの。

えっと……
――話のあらましをがんばって説明した――
……ということなの。難しいの。
一つ言えるのは、
コーヒーは甘い方が美味しいってことなの。

よお、リック。お帰り。
疲れただろう。なにか菓子でも出してくるか。

んとね、神父様の所で聞いた話だと「夢を喰う狼」って言うのは、別に病気でも遺伝でもないらしいんだぁ
どっちかって言うと「霊」とかそう言うのに近いものだから、親が狼に憑依されたとしても、その子供が必ずしも憑依される訳では無いって。
だから、どんな昔話が有るにしてもニーナお姉ちゃんは安心して良いと思うんだ、条件はみんなと一緒だよ。

――ウェンディを静かに見つめて――
………ありがとう、ウェンコーヒーは甘い方が良いんだね、よく解ったよ……
――クインジーの方を向いて――
お菓子は要らない、ありがとう
それより、コーヒー以外のお話教えて。

…そうか？じゃあウェン、食べていいぞ。
リックも気が向いたら食べたらいい。

――持ってきたチョコパイをテーブルに置き、リックに話のあらましを詳しく伝えた――

うーん……
色々と考えたんだけど、僕は今を見る者には名乗りを上げて貰っても良いような気がするんだよね…
勿論、隠れていたい、狙われるのが怖いって言うので有れば、無理強いはしないけど。
退ける者が居るんだから、護って貰えるだろうし
もし、染まる者が嘘を吐いて今を見る者になりすましたとしても、狼にはどっちが本物なのか解らないらしいって神父様仰ってたんだ。

――にっこり微笑んで――
わぁい、チョコチョコ。ウェンディ、チョコ好きなの。

――　一口食べてから　――
あ、クインジーおじちゃん、ありがとなの。
いただきますなの。

それとね、やっぱり僕やウェンじゃみんなを引っ張っていく力なんて無いから、せめて後ろ盾って言うか後見人として一人誰かに付いて欲しいって思うんだぁ
だから、今日見て貰う先はやっぱり一人決めて欲しいなって思う……

ただ……その人がもしかすると狙われちゃうかもしれないのが不安なんだけど……

――喜ぶウェンディに笑いかけたあと、リックの頭をぽん、と撫で――

まあ、名乗りについても結局一長一短だな…。退ける者ってやつも万能じゃねえだろう？それについてもみんなの意見を聞いた方がよさそうだな。

どちらにせよ名乗らないまま眠られちゃ堪らねえや。

うん、見る先も伏せて、自分も隠れてて、いつの間にか知らない内に悪夢の世界に入って行ってしまったら……それが僕一番怖いんだ。

そうだな。そいつは俺も嫌だぜ、リック。

――少し考えてから――

確か夜明けの一瞬で「今を見る」んだよな？見る先は伏せて、明日の夜明けに結果と共に名乗るっていう手もあるのか。この辺がニーナ案との妥協点か？

それに……偽物も出るってサイモン神父もユージーンさんもおばあちゃんも言ってたでしょ？
本物の今を見る者が眠ってて、偽物だけが名乗り出たらって考えたら……嘘の情報しか得られないことに成るし。

逆に、何日かして本物が名乗り出ても、その人が本物かどうかって……
――少し言いよどみ、自分が言わなければと決意して――
その人が本物かどうかって証拠は無くなってしまってる可能性が大きいと思うんだ……

………生意気な事を言ってもいい？

ん。いいさ。何だ？

あのね、もし今日一人と決めないで見て貰って
翌日の朝、何人かの「今を見る者」が結果を持って名乗り上げて、見て貰った人がバラバラだった場合…
本当にその人が人間って信じられる？

ああ……そうか。そうなる可能性が高いな…。
偽者が出た時に好き勝手言われちまうよなあ。
考えが浅くて嫌になる。ごめんな。

信じることは、出来ねえだろうな。

――口の回りをチョコでベトベトにしながら、二人の話に聞き入り、
　　　時折相づちを打っている――

一つずつ、小さな希望を作って行きたいなって、神父様のお話聞いてて思ったんだ。
今が絶望って事でもないんだけど、希望を求めて行くのがきっと良いんだと思う、疑うよりも信じる事を強くしていける様にしたいなって

――リックの言葉に頷き――

そうだな。リック。大人よりしっかりしてるんじゃねえか？
恐れるだけじゃ何も生まれねえ。解決もしねえよな。

僕は……僕だけ、本当に何にも能力を持ってないから…
じいちゃんや神父様の言葉を一生懸命聞いてきただけだよ…

なあに言ってんだリック。
そんなこと気にしなくたっていい。

お前は言葉で皆を助けてるじゃねえか。
それは大事な、大事なお前の力だぞ。

な。俺が保証する。自信持て。

ウェンをさぁ、僕はまだ力で護れない、だから
ウェンを助ける事って言ったら、こんな事しか無いんだ……

ごめん、僕なんかちょっと眠たく成っちゃった…
少しだけ、眠っても良いかな？

おやすみ、リック。良い夢を。

――リックの頭を撫で毛布を掛けた――

――セシリアはふらふらになりながら集会所にやってきた――

た・・・ただいま・・・

えっと、見てもらいたい人なんだけど・・・
私、先輩を見てもらいたいの。

もし狼って判定が出されても、審問の場へ行けば、狼の魂抜けるし・・・
判定出した人が嘘ついても、人間なら何もないし・・・

何より、先輩ってすごいの。
私の学校では、伝説になってるくらいの元生徒会長なんだから！！

――そこまで話すと、いなかったときのことを聞いていなかったのを思い出した――

ぁ・・・ウェンディちゃん。
お昼とか、何かお話進んだ？？

――しかし、ウェンディから話を聞いている最中に、意識が飛びかける――

ぁ・・・ごめん、ウェンディちゃん。
また・・・後ででいいかな・・・。

疲れちゃった・・・みたい・・・で・・・

――目覚めた――
思ったより寝ちゃった気がする…
ウェンねぇ、誰か来た？
セシルちゃんだけかぁ…

……こんばんは、リック君、皆様。

――掴んだ布の塊を、テーブルの上に置き――

孔雀石の彫り物だよ。……孔雀石は、悪夢を祓うそうだ。
役に立つかはわからないが、気休めにと思ってね……

――恭しく布を払い――
……ああ、しかし。この深い翠。美しいと思わないかね？

――うっとりと目を細める――

ヒューのおじさんこんばんはっ
あのね、僕ね夜が明けたら今を見る者に出てきて欲しいなって思ってるんだけど、おかしいかな？

……ふむ？
いや、可笑しいとは思わないよ。
名乗りでようが名乗り出まいが、
危険があるのはかわりないだろうからね。

ただ、名乗り出たほうが、些か夢喰いされる危険は高いのではないかなとも思っているよ。

伝え聞く話によると、夢喰いは今を見る者を極端に恐れているそうだからね……

あふぅ。

――眠そうに目を擦る――

リックおはよー。

ヘンリおはよう

でもね、ヒューのおじさん退ける者も居るし、もし偽物が出れば逆に襲われにくくならないかなぁ？

こんばんは、ヘンリエッタお嬢様。
――ヘンリエッタに軽く会釈し――

私が「今をみる者」にみてもらいたい者の方針は、
昨日あげたものでかわりはない。

リックやウェンディを信じていない訳ではないよ。
しかし、せめて彼らを補佐し、導く者は必要だと思っている。

もしかしたら、本物は今眠っているあの人じゃないか？それともこっちのあの人か？って
限りなく広く疑念を持つよりは、解って居た方が楽なんじゃ無いかな？って思ったの

――ふらふらとしながら椅子にしなだれかかり――

ヒューバートおじさんもおはよー。
さっきから二人して僕の事を喋ってるけどどうかしたの？

そうかな。
夢喰らいは、もしどちらが本物かがわからなくても、
兎に角どちらかの夢を喰らい、全て有耶無耶にしてしまおうと目論むかもしれない。

……勿論、そう考えない可能性も十分にあるが。

――ヘンリエッタを見返して――

え？エッタの話？え？？えぇぇぇ？

――リックに頷き――
それはわかるよ。だから、私も悩んで――

ヘンリエッタお嬢様……？

――ヘンリエッタをじっとみつめ――

ヘンリエッタお嬢様……まさか、そんな。
どういうことなのですか、お嬢様……？

――きょとんとして――

あれ、僕言わなかったっけ？
僕のご先祖様が「今を見る者」だって。

――大きく欠伸をする――

あふ、これでも一応英雄の直系だよ。
血の力は偉大だね、リックが僕らを集めた位の時から毎晩のように夢に狼が出てくるんだ。
それで誰かの声が聞こえるの。「地下室の隠し扉を開け」ってね。
それで見つけたのがあのノート……。

――机の上に置いてある古びたノートを指差す――

そっかぁ……エッタは直系なんだね。

――少し自嘲気味に笑ったのを隠して――

エッタ勇気有るなぁ、もしかすると襲われる可能性も有るのに…

――笑いながら言葉を続ける――

僕もこんな能力に目覚めなかったら半信半疑だったんだけどね。
変な夢を見るのは昔からだったんだけど、この村に来てからはずっと狼の夢だよ。
リックが話をしてくれた時も、ああやっぱりとしか思わなかったな。

……そんな、そんなわけはない。

私が、今を見る者なんだ。

お嬢様は、染まっておしまいに？
……それとも、お嬢様が夢喰らいだと？

･･････こんばんわ。

ん？どうしたんです？何か口論しているようですが......

――ヒューバートを凝視して――

う〜ん、やっぱじいちゃんが言ったとおりだ
どっちが本物かなんて解らないけど、複数人出るって
じいちゃん昨日言ってたんだ。
「３人くらいは出てくるぞ」って笑ってたんだよね…

――一瞬逡巡した後――
――ヒューバートに嘲笑ともとれる笑顔を浮かべる――

……よろしく、私の敵。

やっぱりこうでなくちゃ。

……お嬢様……

――小さく呟き、目を伏せる――

――首を振っているウェンディを見て――

どっちが赤い星でどっちが白い星かまでは、ウェンにも解らないみたいだね。

･･････さっぱり状況がつかめないのですが、何が起こったんですか？誰か説明して頂けませんか？

･･･ふむ。話の当事者の片方の説明ではなんとも信用性がありませんが、リック君が反論しないということは本当のようですね......

――大きく伸びをする――

んー、とてもショッキングな出来事があったからばっちり目が覚めた。
そろそろ本調子が戻ってきたよ。

――ユージーンの方を向き皮肉な笑みを浮かべる――
何、問題は何もない。
ただ、本物と偽物がお互いの存在を認識しただけだよ。

リック、一応確認するけど「染まる者」ってのは1人だよね。
広間に居たのは僕とリックとヒューバートだけ。
――ヒューバートを片目で確認し――
運命と言えば聞こえが良いけど、まさかそんな偶然があるものなのかなー？

･･････いくつかのパターンが考えられますね。

まぁ、まず考えられるのは
片方が本当の今を見る者で、片方が偽者でしょう。

次に、両方が偽者ということも考えられます。
その場合、両方が互いに分かっていて
演技をしているのか、
それとも両方とも互いに分からずに偽者同士が
口論をしているのかということですね。

いずれにせよどちらかは赤い星であることは間違いなさそうですね......

――申し訳なさそうな顔をして入ってきた――
昨日はどうもすいません、どうも最近疲れが取れなくて…
誰か何があったか教えてくれませんか？

なんか、命令みたいに成っちゃっうかも知れないけどごめん、僕はどういう風にこの場を捌いて良いか解らないから、こんな言い方しか出来ないけど
もし、他にも我こそはって思ってる人が居たら言って、みんなひっくるめて「今日は」信じる。

で、ごめん　これも僕の独断に成るから
嫌なら言ってね、今日はロッテを見て欲しいと思ってるんだ、お姉ちゃんが僕たちの面倒を見てくれれば安心だからね。

――ハーヴェイに気が付き――
こんばんはっ、月がとっても綺麗な夜だよ

――ヘンリエッタに少し笑い――

人生は偶然の連続です、お嬢様。

……こんばんは、ハーヴェイ君。

･･････そうですね。
もしお二方以外に本物の方がいるのなら
今日中に教えて頂きたいですね。

そうでなくては余計に話が混乱します。

――ユージーンに――

ごめん、ちょっとウェンをお願いします。
僕、ちょっとだけじいちゃんの所に行ってくる。

･･････えぇ、分かりました。お気をつけて。あと、野犬にも気をつけてください。

――去り行くリックの話を聞き――
話の方は解りました、ありがとうございます、ずいぶんと進展があったようですね
それでヘンリ嬢とヒューバートさんが、今を見る者だとそう仰るのですね

――フリーセルの方から目をそらさずに――

･･････えぇ、そのようです。

――ユージーンのフリーセルが手詰まりになるのを見て――
そうですか…

――何かの毛まみれで現れた――

・・・ガムテープを、取ってくれ。

――ガムテープを投げ渡しながら――

･･････ノーマン。入る前にその毛を払いたまえ......

――ガムテープを受け取って――

外、すげぇ犬毛まみれなんだが誰か連れてきてるのか？

――ぺたぺたと毛を取っている――

･･････犬毛？ヘンリエッタ君の飼い犬でもいるんですかね？それとも野犬でも出ましたかね？

――ユージーンを見て――
野犬ですか、物騒ですね、僕がちょっと見てきますね

――犬と戯れてきたことを思い出したが言い出せず――

犬は見なかったんだがな。

――毛を取りながら窓の外を気にしている――

･･････それよりか少々難儀なことになりましたよ......

――デボラは、薄らと目を開けた――

…なんだい、何やら騒がしいね。

――出て行くハーヴェイとすれ違う――

あぁ？どうした？
ちょっと出て戻ってみりゃだいぶお集まりじゃねえか。
しかし騒がしいな。何があったんだ？

――肩にかけられたショールに気づき――

ああ、誰かかけてくれたんだね。

――ショールを撫でながら――

…ふむ、これは、ロッテかね。
後で礼を言わなければいけないね。

エッタちゃんに、ヒューおじちゃんも…
ウェンディにはどちらが「今を見る」事ができるのか分からないの。ウェンディが分かるのは、力の大きさだけなの。

――走り込んできて――
ただいま！！あれ？ハーヴェイさんは？