人狼審問

[ヴィンセントは、島の役場の中をうろうろして、何かを探している。]

ふむ……。これといって、目に付くものは無し……。
むしろ、教会に村の記録でも残っていれば、そっちの方が何かの役にはたつかな？
……いいだろ。書類は山ほどある。調べましょ。

[ヴィンセントは、本格的に役場の中に残された書類をひっくり返し始めた。]

[既に起きていたクインジーは、ラッセルやマンジローが寝ている集会所で、一人椅子に座って煙草を吸っていた]
また、あの夢か。爬虫類のような冷たい目をした母さんにこの顔の傷を作られる夢……。
俺は、人狼なんかじゃない。それなのに……。

やあ、おはようクインジー。

だいぶ疲れた表情をしているな。
まさか真に受けているのか？人狼とやらを。

[露骨に嫌悪感を込めた表情で答える]
てめえみたいなヤク中ばかりじゃねえんだ！
人狼のいるいないは関係ねぇ。こんな場所に閉じ込められて、まともな神経してる奴が冷静でいられるかっての。

[セシリアは早朝にベッドを抜け出し、集会所北側の森をランニングしながら、昨日下調べした地形のおさらいをしていた。

集会所近くまで戻ってくると、深く生い茂った茂みの奥に見つけておいた溜池のような小さな池で、周囲を見回してから素早く服を脱ぎ、持参したタオルで汗を拭いた。]

シャーロットさんの話では、突然身体に変化が起きて一気に人狼化するという印象だった…。
誰にその変化が現れるのか、全然見当もつかない今は、自分の身を護るためにも他の人に気取られないように、何をするにも用心するに越した事はない…。

まずはこんな状況下でも自分の体調を万全にしておく…スカウトで教わった基本に忠実に…。野生の動物のように…。

野生の動物にとって、怪我や病は死に直結する…。
ただ、この島でこれから起きる事を想像すると、生き延びる事がかえって苦痛になるかもしれない。
……常に最悪の状況を想定しておかないと。

[手際よく服を身につける頃には、呼吸の乱れも戻り、セシリアは人目につかないように気を配りながら、ゆっくりと藪を抜け出して集会所へと戻った。]

ふっ、これはひどい言われ様だな。
だが、今の君では生き残れないぞ。

少なくとも、誰かが処刑される。その事実は変わらない。
そして、その人狼とやらを殺すまで、このルールは変わらないみたいだな。

冷静でいられるかどうか、それは最終的に問題ではない。
どんな状況であれ、自分にとって正しい選択肢を選ぶことが出来るか。そこが生死を分ける。

君の言い分はもっともだが、少し頭を冷やしたほうがいいな。
少なくとも君は人狼じゃない気がするしな。仲良くやろうじゃないか。
仲間は一人でも多いほうが有利だ。違うか？

はぁ？ 結局てめぇも人狼の存在ってのを認めてるわけか？ わけのわかんねぇこと言う奴だな。昔からそうだったが。

何で俺が人狼じゃない気がするってのかね。自分で言うのもなんだが、この中じゃ一番それっぽい顔してんぜ。もしかしたら人狼かもな。はっはっは。
[クインジーは、自嘲気味に笑った]

ともかく、てめえなんかと仲良くしてられっか。人を利用することしか考えないてめぇなんかとはな。

[カミーラは集会場に入ると、マンジローの近くに腰を下ろした。]

…まったく、クインジーもハーヴェイも相変わらずだね。朝っぱらから賑やかなこった。

[カミーラは苦笑いを浮かべると、ポケットから両切り煙草を取り出した。そしてマンジローの方をちらりと見やる。]

マンジロー、だったっけ。あんた、火ぃ持ってない？

はっきり言おう。私は不愉快だ。
大体何だ、その人狼とかいうのは？三流オカルト小説の見すぎだろうが。
そんなとんでもない言いがかりで私達はこんな所に集められている。こんな馬鹿馬鹿しい事があるか。

悪いが私はそんなもの信じていない。だからこそどうやったら一刻も早くこの事件が終わるか、その条件を調べようと考えている。
それすら手を貸さないというなら勝手にしたらいい。生き残ろうと言う意思のない奴は無残に死ぬだけだ。


真実にたどり着くまで、お互い生きていたいものだな。

[マンジローはゆっくりと目を開けるとカミーラに首を振った]

悪いが、俺は煙草は吸わん。厨房へ行けばマッチぐらいならありそうだが。

…ところであの、ハーヴェイという男…麻薬を常用しているのか？

ここには人狼なんてものはいない。私はそう断言する。

あるのは「人狼がいるかもしれない」などという誰かが作り出した幻想、もしくは疑心暗鬼だ。

目を覚ませ。


僕は少し島を探索してくるよ。きっと何か方法がある筈だ。

[カミーラは、煙を堪能するとマンジローに目をやった。]

ああ、ヤツは外ヅラはいいけどね、裏ではヤクの元締めまでやってるよ。血統書付きの狂犬ってやつさ。

ええと、確かマンジローとか言ったね。よろしく。
睡眠を妨げて申し訳なかった。

[カミーラから煙草を一本取り上げる]
あまり聞かれたくは無かったが、確かに私は若干ながら利用している。
だが聞きたい。酒、煙草、そして麻薬。どれも精神安定の為の趣好品でしかない。モラルと言うが、そんな多数決で決められた物に意味は無い。

少なくとも、私はアル中よりはまともだと考えている。
まあ軽蔑してもらって構わない。


ここ数日、災難だったね。お互いに頑張ろう。

[ハーヴェイの目はキョロキョロと落ち着きがなく、真っ赤に充血していた。]

嗜好品か…。

[傍らのカミーラに向き直る]

…君は、彼の友人なのだろう？
すこし気をつけてやったほうが良いと思うが。

薬のせいもあるだろうが…恐らく自分で自覚している以上に、不安定な状態になっている。かなり良くない状態だ…

…どう見ても、害がないのは酔いどれの方さ。

[カミーラはそう言うと、深く息を吐いた。]

[カミーラは口の端を上げて笑った。]

友人、だって？ あんたにゃそう見えるのかい？

さて、昨日の話を真実だと仮定すると、のんびりしてられませんか…。
[身支度を整えると集会所にやってきた]

おはよう、ではなくこんにちは、ですね。
マンジロー、カミーラ。

[マンジローはルーサーに目礼した］

おはようございます。
よく寝られましたか？

ええ、眠れるときに眠るための訓練をしたことがありましてね。
短い時間でも熟睡できますよ。
そちらもしっかりと休息なされたようですね。

[カミーラは、ふぅと煙を吐き出した。]

…あたしがまだハイスクールにいた頃、クラスメートのコが教室の窓から飛び降りて自殺してね。入学したての頃は可愛かったそのコが、まるで骸骨みたいな顔になっちまって… ヤク中だったのさ、そのコは。

穏やかではない話ですね。
私も聞かせていただいてよろしいですかね。
まずいのでしたら聞いていなかった振りをさせていただきますよ。
[そう言うと傍らにライターと煙草を置き、カミーラに視線を送る]
途中で一息つきたければ使ってください。

そのコをジャンキーにしたヤツをぶちのめしてやろうと探し回って、やっと見つけたのが同じハイスクールのハーヴェイだったんだ。

[カミーラはいまいましげに言うと、ルーサーの煙草を手にとって眺めた。]

[集会所玄関の扉を開けると、中は煙草の煙が層になっているのが見え、空気が澱んでいるのが一目瞭然だった。
ホールの顔ぶれを見たセシリアは、彼らに会釈して、まっすぐ自分の部屋へと向かった。]

後はお決まりの物語さ。私はハイスクールを放校処分になって、ヤツは今も優等生。これ以上ないってくらいつまらない結末だよ。

[カミーラは、ルーサーの煙草を咥えると、ライターで火を点けた。]

まあ、結局あたしがバカだったんだろうさ。でもね、そのコは…


[カミーラは目の前の二人から目を逸らすと、煙草の煙を思い切り吸い込んだ。]

…そのコは、ほんとにいいコだったんだ。

[部屋に戻り後ろ手に扉を閉め、そのまま扉に寄りかかって溜息をついた。

ベッドではギルバートがまだ眠っている。
セシリアは彼を起こさないように、そっとベッド脇に近寄り、椅子の背に濡れたタオルをかけ、空気を入れ替えようと窓を開いた。]

そうか…嫌な事を思い出させてしまったな…すまん。
だが、それでも…

[…言いかけたマンジローは、外に風を切るような音が近づいて来る事に気付いた]

…あれは何の音だ？

[上空を見上げると、軍のものらしきヘリコプターが旋回している。中から次々と箱のようなものが投下され、パラシュートを広げると、ゆっくりと集会所に近い丘の上へと落下してくる。]

…なんだ？なにを落とした…？

[上空のヘリコプターからは、野戦服に見を包んだ男が体を乗り出し、拡声器で何かを言っている…。聞き取りにくいが、どうやら「ホールのテレビをつけろ」と言っているようだ。]

…テレビ？
テレビに何があるんだ！お前達は何者だ！
俺達を…どうするつもりなんだっ！！

[声を張り上げたが返事はなく、暫く旋回を繰り返した後、ヘリコプターは高度を上げると北の方角へと飛び去った…]

テレビだ！テレビをつけてくれ！

それから…何か荷物らしきものが投下された！
確認しにいくから、誰か来てくれ！

[それだけを一気に言うと、慌てて集会所を飛び出した。]

ん・・・？
どうしたの？

[ウェンディは、同じように起き出してるメイに、不安そうに声をかけた]

今の声、マンジローさんだよね？
何か、あったのかな……？

ありゃ、軍のヘリじゃねえか？
爆撃機、ヘリと来ましたか。
ただ事じゃないことは確かみてぇだな。

テレビをつけるようにって言ってたけど･･･。
[メイは集会所の隅にあるテレビのスイッチを入れた。]

[カミーラは丘の上に駆け上がった。目の前には厳重に梱包されたカーキ色の木箱と、しなびたパラシュート。]

なんだいこれは…

[蓋を開けてみようとしたが、釘で打ちつけてありすぐには外れそうにない。]

クインジー、マンジロー、とにかくこの箱を集会場まで持っていくよ！ 手伝って！

[窓からヘリコプターが何かを投下しているのが見え、搭乗している兵が叫んでいるのが聞こえた。
玄関からマンジローやカミーラが駆け出して行くのを目にして、セシリアは自分の鼓動が早まるのを感じた。
ホールからは喧騒が伝わってくる。]

テレビ…？

[ギルバートを起こそうか逡巡して、そのまま独りでホールへ向かった。]

[テレビはチャンネルの１つだけしか映像が映っていない。その映像もまだ軍事放送のテロップが流れているだけ。]
何を･･･放送するんだろう？

[カミーラは、3人で木箱を持ち上げてみた。木箱は思ったより軽く、3人でも十分運べそうだ。]

よし、このまま集会場まで運ぶよ。足元に気をつけて！

[三人は木箱を両手で支えると、集会場に向かって歩きはじめた。]

[遠くの方で誰かが僕に呼びかけているのが聴こえる。何と言っているのかを聞き取るために、一歩一歩足を進めるが声の方向がわからない。どこからなんだ？一瞬、上空を何かが横切り影が動く。静かに地面に降り立ったのは・・・鳩？ゆっくりとそれは起き上がり輪郭を結ぶ。] ・・・メイ？

[ホールの喧騒に気が付き、毛布をはねのけ飛び起きる] どうしたんだ？

あ、ラッセル･･･。
さっきマンジローさんがテレビをつけるように言ってどこかに飛び出して行っちゃった。
テレビをつけたけど、
このチャンネルしか映ってないよ。何を放送する気なんだろう？

[カミーラ、クインジー、マンジローの三人は、集会場の扉を勢いよく開けると、中に荷物を運び込んだ。荷物を床に置いて、カミーラが叫ぶ。]

誰か、長い棒のようなものを持ってないか？

[ミッキーはホールのほうからする喧騒でノソノソと起きだしてきた。]

一体、何が･･･？

[ミッキーは、状況がよく分からないので、とりあえず椅子に座ってキョロキョロと慌ただしい周りを見渡している。]

[メイは聞かれてきょとんとしている。]
その箱は･･･何？
棒？メイは持ってないよ。ラッセルは？

[ミッキーの腹部を蹴込んだ]
何ぼけっとしてんだよ！
てめえは残りの箱取ってきやがれ！

台所を見てくる。[と言って駆け出す]

[ミッキーは、クインジーに蹴飛ばされて逃げるように外へ出ていった。]

ク、クソ・・い、一体、なにがおきてるんだ・・。

その箱、なに？それに棒……？

棒じゃないけど、スコップだったら、昨日村の方で見たよ。
それで良いなら私、取ってくるよっ。

これでいいのかな？[30センチ程の長さの鉄の棒を持ってきた。片側は、折り曲げた跡が見える] ま、まぁ、細かい事は抜きで。

[カミーラは、礼を言うとラッセルから棒を受け取った。彼女は棒の断端を見て少し眉をひそめたが、やがて気を取り直すと、木箱と蓋の隙間にその棒を突き入れた。]

うん、何かわからないけど、つけろって言うからメイはつけたんだけど･･･。
[突然画面が切り替わると、とんでもない映像が現れた。
首の無い、腹を引き裂かれた死体が映っている。]
えっ････！？
[今朝、アーヴァインが殺されたこと、この死体がアーヴァインであることを、死体を映したまま説明しているがメイの耳には聞こえていない。]

まだ箱があるのか？わかった。取りに行ってくる。[ホールを飛び出そうとして、慌てて振り返る] どこに行けばいいんだ？

っ！？

[カミーラは無理矢理に木箱の蓋を引き剥がすと、中から黒い袋状のものを引きずり出した。]

なんだいこりゃ… リュックサック…？

ラッセル･･･ラッセル･･･。
し,死体が･･･。
[メイはガタガタと震えている。]

ああ、あそこの丘の上だ。
[言うと同時にクインジーはテレビの画面をちらっとみると、目を瞠った]
な、なんだこりゃ。
[と非個性的なセリフを発した]

[テレビからは、陰惨な画像と共に無機質な音声が出力されている。]

「今朝6時ごろ、村外れの農家の納屋で自警団長のアーヴァインが死体で発見された。死因は外傷による失血死。複数の人狼に襲撃されたと思われる。繰り返す、今朝6時頃…」

[沈黙に耐えきれずにうめく] ・・・人狼・・・なのか！？

メ、メイ。落ち着け。[と言って手を握るが、どちらの手が震えているのか分からない]

あの女の言った通りになっちまった…

[破壊された頭部、飛び出した脳漿、腹部から引き抜かれた腸、胴体から少し離れた場所に転がっている手と手首、食べ残しのリンゴを赤く染めたように変形した大腿部。それは正に、無残としか形容のできないものだった]
認めたくないが、化け物にでもやられない限りこうはならねぇ。
人狼プロジェクト……本当なのか……。

[ウェンディは、村はずれの農家の納屋に飛び込むと、そこにあるスコップを持ち上げた]

あった、これで良いよね……なに？この変な臭い？
昨日はこんな臭いはしなかったのに…………え？なに……あれ？
うそ、でしょ…………。

[ウェンディが納屋を見回すと、奥に何かが転がっているのが見えた。それの正体―アーヴァインの死体―に気がつくと、声も立てずに卒倒した]

他の箱を取りに行こう・・・何か、僕らの身を守る物が入っているかもしれない・・・。[口をキッと結んで、ホールを後にした。]

[テレビ画面が突然切り替わった。軍人と思しき無表情な男性が、淡々と原稿を読み上げている。]

「これは、人間と人狼との生き残りを賭けたゲームです。人狼は、一日に人間を一人襲撃します。これに合わせ、人間も毎日誰か一人を処刑します。処刑対象は合議によって決定し、次の日の夜明けまでに参加者の中の誰かがその対象を処刑する必要があります。処刑方法は特に規定されません。」

「他の参加者を攻撃することは認められていますが、合議によらず殺害することは許可されません。これを行った場合、殺害を行った参加者は自動的に翌日の処刑対象となります。」

「ゲーム終了前に離島することは禁じられています。そのような行為が確認された場合、それを画策した参加者は島内に潜伏する狙撃手により速やかに射殺されます。」

「勝利の条件は、人狼を全て処刑することです。その時点で生き残っている参加者は無事に自宅に戻れることを保証します。」

「尚、毎日18時に補給物資の投下が行われます。従って、参加者はこの時間までに集会場に集まって下さい。集合に間に合わなかったものはゲームから除かれ、速やかに射殺されます。お気を付け下さい。」

「では、皆さんのご健闘をお祈りします。」

[放送が終わるとともに軽快なビッグバンドジャスが流れ、画面に『未来はあなた方の手に』というテロップが表示された。]

[いやな夢を見ていた。体を起こすと、血から抜けた体から気だるさが落ちていくのと同じように開いたばかりの目から涙がポロポロと落ちた。]

……愚か、ですわね。
わたくしも。……まだ、お母様とお父様が恋しいなんて……。

……自分が全てを壊してしまったのに……。

[ステラは赤い目を手の甲でごしごしとこすると、集会所へ歩いていった。]

みなさんおはようござい……

[言いかけた瞬間、テレビが映し出す無残という表現が一番似合うような、死体が目に映る。もはやそれは人ではなく物に成り下がり、物はぼろぼろとなって原型をとどめていなかったが、まわりの大量の血と、それを知らせる声が耐え難い事実を脳に送り込む]

……！！！

ほ、ほんとに･･･シャーロットの言ったとおりに･･･殺し合いをすることに･･･なるの？
メイたちの中に･･･あんな殺し方をするじ、人狼･･･が･･･いるの？
そんな･･･。

[ミッキーは、重たい箱の一つを引きずるようにして持ってきた。集会所に入ると、テレビに釘付けになっている人垣の後ろからテレビを覗き込んだ。]

クソ、い、一体、な、なにが起きてるんだ・・。

[ミッキーは、状況が全く把握出来ずにオロオロとしている。]

[テレビは、アーヴァインの画像をバックにゲームの説明を繰り返し流している。]

[カミーラは、拳が真っ白になるくらい拳を握り締めている。]

…バカにしやがって…！

[カミーラは木箱の蓋を、力の限り殴りつけた。]

[最後の箱をホールに運び入れ、その箱の上に座り込む。繰り返し聞こえるテレビの声は、どこか現実離れしているようにしか聞こえないが、アーヴァインの死体が映るたびに現実に引き戻されてしまう。」

なに…これ…。

[ウェンディがいないことに気づき、辺りを見回す。]

[ミッキーは、テレビの内容を見た後に、顔を醜く歪めて激昂し、叫ぶような声で怯乱した。]

ゲ、ゲームだと！？
フ、フザケるな！ぼ、僕がそんなものになんで参加しなくちゃならないんだ！
こ、殺されてタマるか・・。ほ、本当に人狼がいてソイツをこ、殺せばいいなら、こ、殺してやる！

[テレビからは説明と悲惨な映像が無機質に繰り返されているが、リックはまだ、状況が飲み込めない。]

[頭を振ると、立ち上がる。]

それよりオレ、ウェンディ探してきます！
どこ行ったか、誰か知りませんか！？

[カミーラが「村のほうに行ったきりだよ。探しておいで！」とドアを指差す。リックは無言で頷くと、慌てて集会所を飛び出して行った。]

やぁ、リック、おはよう。よく眠れたかい？体調はどうだい？[笑顔を作ってみるが、どこかぎこちない]

え？ウェンデイが？！待つんだリック。一人で行動するのは危険だ。[慌ててホールを飛び出し、リックの後を追いかけた]

え・・・？ウェンディちゃん、居ないの？
[メイは放心状態から我に返った。]
リック、メイも探すの手伝うよ！
ラッセルも手伝おう！

[ラッセルとメイを振り向き、申し訳無さそうに頷く]

ごめんなさい。お願いします！

[ミッキーは恐慌状態のまま椅子に座って何度も繰り返されるテレビを見ながら、頭を手で押さえてブツブツと呟いている。]

冗談じゃない･･･あ、あの双子のガキが人狼かもしれないじゃないか！
死にたくない、死にたくない、死にたくない、恐いよ･･･ママ･･･。

･･･僕は、一体なんで、こんなイカれた島に連れて来られたんだ・・。クソ、兄貴が僕を疎んでたから？それとも、いつも僕を嫌っていたパパが僕を？
なら、僕じゃなくて良いじゃないか・・・僕にしか出来ない、特殊なことでも、あるっていうのか・・。

[ミッキーは、テレビから再度繰り返される放送の中、人狼を処刑する・・・自宅に戻れる・・・という部分に敏感に反応し、そして震えながら何度も同じ言葉を床を呪うように呟いている。]

[民家が並ぶ通りに出た。辺りは閑散としている。風の吹き抜ける音だけが、麻痺した頭に響き渡る] はぁはぁ。ウェンデイー！ウェンデイー！！

[メイは村の建物のある辺りでウェンディを呼んでいる]
ウェンディちゃん！
どこー？

くそっ！日暮れまで時間がないっ。手分けして探した方が早いかもしれない。何かあったら大声をあげてくれれば、聴こえるはずだ。僕はこっちの方を探してくる。暗くなってきたら、いったんここに集まろう。[民家の一つに駆け出していった]

分かったよ。ラッセル。
メイはこっちを探すよっ！
ウェンディちゃーん！
[メイはラッセルとは別の民家の方へ駈けていった。]

[マンジローは蒼ざめた顔でテレビの映像を見つめていたが、足元に置かれた木箱に足をとられそうになってよろめく。揺れる視界の中で、ふと自分の名が目に付いた。]

…この木箱…なぜ俺の名が…？

[良く見ると、他の木箱にもそれぞれ、個人名が書かれているようだ]

[島の役場をすっかり引っくり返して、ヴィンセントは毒づいた。]

こうまで空振りだと、逆に愉快だね。
何もわからんとは……。あれだけの人間が、普通に生活していたというのに、どうやって揃って姿を消せるっていうんだ！

[ヴィンセントは皮肉っぽく歪んだ口元を、指で抑えてかぶりを振り、無言で集会場へ向かった。]

[中には先ほどの箱と同じようなリュックと、布に包まれた1mほどの長い棒のようなものが収まっている。マンジローはそれが何であるのかに気が付いて、恐る恐る手を伸ばし、包布を取り去った…]

…日本刀だ。
この重さ…まさか…真剣…か？

[メイは農家の納屋の辺りまで来た]
ウェンディちゃーん！？

[メイは血の匂いを嗅いだような気がして眉をひそめた。]
何？この匂い。
！
ウェンディちゃん！？
ウェンディちゃん！？
ラッセル！！ウェンディちゃん見つけたよ！！
こっちー！！

九字きり…和泉守兼定か…名刀だが…本物なのか？

[マンジローは一瞬今の状況も全て忘れ、名前のみ知る逸品に目を奪われている…]

あ･･･あ･･･
さ、さっき映ってた死体･･･？
[メイは腰が抜けてへたり込んだ。]

[メイの声に気付き、駆けつける] はぁはぁ、ウェンデイちゃんは無事か。・・・っ！！！

[ウェンディは自分を呼ぶ声で目を覚ました]

メイ、さん？
あれ、私、ここにスコップ取りに来て……それで…………。

[ウェンディが何気なく目をやった先には、気を失う前に見たアーヴァインの死体があった]

……ひっ！や、やだやだやだ。助けて……助けてお兄ちゃんっ！！

[ウェンデイに駆け寄り、そっと首に手をあてる。] ・・・意識を失っているだけだと思う。メイ、リックを連れて集会場に戻ろう。[ウェンデイを抱き抱える]

[メイはウェンディの悲鳴で我に返った。]
ウェンディちゃん！
とりあえず･･･外に出よう。リック君もウェンディちゃんを探してたから。すぐくるよ。
[メイはラッセルにウェンディのことをお願いすると壁に手をつきながらどうにか立ち上がった。]

［トビーは悪夢にうなされて目を覚ました］

［そのとたん、テレビが延々と流す『ゲーム』の解説が、暴力的に耳から頭に侵入してくる］

[ミッキーは、椅子に座ったままボーっとしながらマンジローの行動を見ていた。]

･･･そういえば、あの箱は一体なんだ？ぼ、僕の箱もあるのか？
そ、そういえば何度もこの放送で出てくる補給物資ってヤツが、も、もしかしてコレが？
アレに武器が、入ってるのか・・？

[ミッキーは、先ほど自分が持ってきた引きずって汚くなっている箱のほうへ目をうつした。箱には、他の人の名が書かれており、集会所の端に置いてある重なった箱の方を探してみると自分の名が入った箱があった。さきほどの箱より軽いので椅子の前に持ってきて、テレビの前に無造作に落ちていた棒でこじ開けた。]

ごめん、ラッセル･･･。
メイはすごく気持ちが悪いから･･･ちょっと先に集会所に戻ってるよ。
ごめんね。

気が付いたか。よかった・・・。

……生き残りを賭けた、ゲーム？

［トビーは、テレビに目を向けることが出来ない］

[それでも、落ち着いた男の声が、情報をどんどん頭に叩き込んでくる。酷く論理的に。]

[激しく混乱する気持ちとは逆に、頭は否応無く状況をクリアに理解しはじめている]

なんでだよっ……なんでっ、なんでこんなことに……。

リックー！ ウェンデイが無事に見つかったぞー！

[リュックの中には、一日分と思われる簡易食料と水の入った水筒、そしてコンパスや島の概略図、懐中電灯などが無造作につっこんであった。]

[ラッセル、メイとはぐれた後、手当たり次第に民家にあたっていたリックは、水平線にぼんやり輝いている光に目を奪われた。]

さっきから見えていたあれは…船？
なんで動かないんだよ…。

………！！

[海辺の方向へと足を進めかけたが、ウェンディの悲鳴が聞こえたような気がして、すぐにリックは引き返した。]

[中を覗き込むと、黒いリュックサックと一緒に、少し大きめな食事用の金色なナイフとフォークが入っていた。]

クソ･･･これで、人狼を処刑、するんだ・・。殺してやる、殺してやる、殺してやる・・。人狼を殺して、そして家に帰ってパパを殺して、兄貴を殺してやるんだ・・・。

そうすれば、ずっとママと一緒に居れば、良いんだ･･･。

[ミッキーはテーブルにかけてあった鉄の棒が横に倒れて大きな音を立てたのにも気にした様子を全く見せず、木箱の中を覗き込んだままナイフを握ってブツブツと殺してやると呟き続けている。]

今度はヘリコか……。
どうやら、本気でこの島を大陸と断絶したいようだな。

人狼プロジェクトか。

ふん……。何だろうと、私は死ぬわけにいかない。
大侯爵ケンプの家の名を再び取り戻すまでは。

[マンジローは傍らにいるカミーラの拳から血が滲んでいるのに気が付いた。]

…手を出せ。

[昨夜、自分の治療に使われて余った包帯を手に取ると、カミーラの手に不器用に巻きつけた。]

…下手糞ですまんな。後で医者に見てもらうといい。
ショックなのは分かるが…今は自分を強く持たなければ駄目だ…しっかりしろ。

[ラッセルに手を振り返しながら、二人の元へと駆け寄る。]

ラッセルさん！…良かった！

[だが、ウェンディのどんよりした目に一瞬言葉を失った。]

……ウェンディ、大丈夫か！？何か…あったのか？

[…だが、ウェンディの反応は鈍く、ぼんやりしている。ラッセルにたしなめられる。]

うん…とりあえず、戻りましょう。暗くなってきた。

[セシリアはホールの隅で、この一連の騒ぎをただ黙って眺めていた。
エンドレスで流れ続けるテレビ画面の死体画像から顔をそむけて、誰に言うでもなく呟く。]

…もう…たくさんっ。
神経が磨り減りそう…。

やれやれ。人が一人死んだ程度で、大騒ぎだな。
家族が殺されたわけでもあるまいに。

……で、私の箱はどれだ？

[目を逸らしても、脳裏に焼きついた惨殺死体がチラつく。]

[あれが…人狼の殺し方？
あんな風に殺されるのは嫌っ…！]

これか。

中身は……と。
携行糧食と水か……。最前線の歩兵並みだな。

この棒切れは何だ……？

【ヘンリエッタが油紙を解くと、その下から黒光りする金属の鞘が覗いた。鞘全体に、裸身の女神像が象嵌されている。ヒルト全体にも複雑な彫刻が施され、実用面よりは美術的な面で価値が高そうだ。】

剣か……。
それも、こういう状況では頼りになりそうもない類の。

【ブラックフィニッシュされたブレードには、蛇腹のような亀裂が規則正しく並んでいる。ストレートな両刃の刀身には樋がなく、比較的シンプルな作りだった。】

[クインジーは数個の箱の中から自分の名前が書いてある箱を見つけ、こじ開けた]

俺のには何が入ってんのかねぇ。

[中には、他者と変わりないリュックと、長方形をした木箱が入っていた]

これは……？

【ヘンリエッタは、グリップにスイッチのようなものがあることに気付いた。スイッチを切り替えてみると、黒い刀身が亀裂に沿ってバラリとほどけた。刀身の中心にワイヤーが通されて、バラバラになったブレードの一つ一つを繋いでいる。】

これは……どういう武器だ？
よほど悪趣味なソードスミスが作ったに違いないな。

ただいま。ウェンディは無事だったよ。

ウェンディ。気分が悪いなら、休んでいるといい。

ん？みんなは何をしているんだ？
[それぞれが箱を漁っているのを不思議そうに見ている]

[ヴィンセントが、集会場の様子を見て状況を悟るまで、そう時間はかからなかった。ヴィンセントは、自分の名を書いた箱を見て、ため息をついた。]

……私も彼らと同様、ここに集められたのか。何かの目的で残されたとは、思いたくないな……。

[ヴィンセントは、箱をこじ開けて中身を確認し、大きくため息をついて目頭を抑えた。]

くそ。なんだってこんなものが……。ベアトリス。

[木箱の中にはパイナップルを小さくしたような金属物が３つ、横一列に収まっている]

これは……手榴弾ってやつか? 実際に見るのは初めてだ。

[ふと、箱の隅に折りたたまれた紙が挟まっているのに気付く。紙を広げると、上部に「使い方」と大きく題書かれ、その下にイラスト付きで手榴弾の使用法が書かれていた]

は、はは。ご丁寧なこった……。

[ウェンディは部屋の隅で震えながら、何かつぶやいている]

やだよ……死にたくない、あんなふうに殺されたくないよ……。
どうすればいいの？どうすればいいんだろう。
誰か教えてよ、お願いだから…………。

[ヴィンセントは、荒々しく箱を蹴り飛ばした。手には婦人用の小さな銃が握られている。ヴィンセントは、無言で集会場の外に出ると、空に向けて引き金を引いた。小さな銃声が二発、連続して響く。力の限りの言葉にならない叫び声を上げたヴィンセントは、銃を両の掌で挟む様に、銃身ごと握りしめ、そのまま祈る様な形で額に添えてその場に跪き、そのまま暫く動かなかった。]

[テレビの前で呆然と佇んでいたシャーロットは、外から聞こえてきた銃声に、はっと我に返った。]

銃声……？

どうやら、こんなものよりよほど物騒な武器が配布されたようだな。

[ウェンディは、銃声を聞いて、何か思いついたように顔を上げた]

……あ、そっか。
先に人狼を殺しちゃえば、殺されることはないよね……。

[そうつぶやくと、虚ろな表情のまま、自分の名前が書かれた箱を開け始めた]

[カミーラは、自分の名前が書かれた木箱を開けると、中から黒いリュックサックと紫のビロードで作られた大きめの袋を取り出した。]

ふむ、リュックにはサバイバル用品一式か。じゃぁ、この布袋は…

[自分の名前の書かれた箱の前に立ち、ため息をついてから棒でこじあける] ・・・防弾チョッキ？それに・・・これはなんだ？ [鉄の板がつづら折りになっていて、片側で束ねられて握れるようになっている] ・・・バット？

[カミーラは、袋の中身を見て絶句した。]

な、なんだい、これ…

[ビロードの袋の中から出てきたのは、黒地に赤のエナメルの柄を持つ、長さ1mほどの鞭だった。柄の先には無数の条が黒く光り、怪しい雰囲気を醸し出している。]

[クインジーは銃声を聞いて、口の端で笑った]
はっ！ 早速やる気満々か。
この狂気に中てられて気でも狂ったかね。

[口に出してはそう言ったが、彼の手には汗が握られていた]

[ヴィンセントは立ち上がり、無言のまま集会場の中に戻る。銃を上着のポケットに放り込み、かわりに島の役場でせしめた缶入りのミントキャンディーを取り出して、口にひとつ放り込んで、ソファーに腰を下ろした。青ざめた顔。暗い表情のまま、掌を開いたり閉じたりしている。]

クインジー、ちょっと訊いていいかい?

あのさ、あんたの箱には何が入ってた…?

うう、頭がガンガンする。風邪をひいてしまったかも。。
何やら昼間から外が騒がしいが、何があったんだろう？

[ベッドからのっそりと起きて、上着を羽織る。]

[爆破された船。爆撃機。無人の村。見知らぬ自警団の死体映像。殺し合え、と繰り返すテレビ。人狼。武器を手にする人々。そして…]

ウェンディ…なのか、今のは…？

[人狼。人狼。人狼。

頭の中で幾多の歯車がカチカチと噛み合い、回転を始める音が聞こえてきた。]

嘘だ…こんな…。

[自分のリュックを箱から取り出すと、顔を歪めてホールの隅にうずくまった。]

[流れ者 ギルバートは、ズボンのポケットに入れておいた例の便箋を取り出し、何となしに眺める。
しかしその顔は一瞬にして青くなった。]

あれ？1枚足りない…どこかで落としたのか？
あれを見られるとまずいかもしれない。誰かに見られる前に見つけ出さなければ。

[慌てて部屋から飛び出し、集会所に向かう。]

[流れ者 ギルバートは、集会所に駆け込んだが、皆の取り乱した姿に戸惑った。]

何だ一体、何の騒ぎなんだ…？

[ウェンディは、寝室で支給された武器を説明書を読みながら確認している]

結構重い……これを取り付けてこうすれば……うん、安定するね。
弾は……こうやって入れてくんだ……。

みんなの様子を見ると、銃を持ってた人は少なかった……あたり、なのかな？

お兄ちゃんはどうだったんだろう？もし、良いのじゃなかったら……私が守ってあげないと。

何ですか、この騒ぎは？只事とは思えない。
それに、このテレビ。。これは本物の映像ですか…？

皆の様子から察するに、遂に人狼が現われたのですか？

……ただ事ではないさ。とはいえ、慌ててもなんにもならない。ハッカの飴でもどうだい？

[ヴィンセントは声をかけて来た青年に、ミントキャンディーの缶を差し出した。]

あ、ありがとうございます。

[口に頬張ると、大きく深呼吸する。]

事態が全く把握できないな。皆が漁ってるあれら箱は何だろう？

[もう一度大きく息を吸い込むと、所狭しと並べられた箱の一つに近寄る。

[箱の一つには、ギルバートの名が書かれている。
ギルバートは、迷う事なく箱を開けて中の品々を取り出した。]

ん、これは救援物資か？俺達は助かったんだろうか。。いや、そんなはずはない。。
助けなんて来るはずはないんだ。ではこれは何のために…

それに、これは何だ？

[そう言って、布にくるまれた細長い物体を手に取る。]

[布を取り去ると、長い針のような剣が光沢を放っていた。]

これは、フェンシングの…。武器？これで人狼を殺せというのか？それとも殺されるのか…？

うう…

[ギルバートは苦しげに呻き、セシリアに歩み寄った。]

ただいま･･･。
ううっ･･･。まだ気持ち悪いよ。
[メイは周囲の異様な雰囲気に気付いて表情を強張らせた。]

[シャーロットは何かをひとつ決意したような表情で、自分の名前の刻まれた木箱を集会所の隅に持って行くと、無駄の無い動きで開けた。]

ご丁寧にリュックにまで、私の名前が刺繍してあるなんて。
簡易地図、懐中電灯……。これは……？

セシリア、何があったのか教えてくれないか？

[セシリアはギルバートに、今日起こった出来事を簡潔に話した。]

もう･･･軍のいう「ゲーム」に参加しないとメイたちは出られないんだ･･･。
[メイは悲しそうに呟くと、自分の名前が書かれた箱を探し出して開けた。]

…やはり人狼プロジェクトは実在したんだね。

俺達は人狼に食われるのか、それとも人狼と化して人間達を食い散らかすのか…。。くそっ！！

[そう呟くと、舐めていた飴玉を噛み砕いた。]

[ステラはニュースを見た後気分が悪くなったために、集会所を抜け出し、集会所のすぐ傍の丘まで来ていた。]

……「ゲーム」……だなんて……。
何故、人の命をそんな風に扱えるのでしょうか？

だけど……、だけど。……怖いわ、とても。

人を信じることが、こんなにも難しいだなんて……。

[風が凪ぐ、潮の匂いを乗せて。
上を見れば黒い海に金色に光る小船が揺れもせず、ただそこにじっと在った。
足元の少し伸びた緑は風と戯れ、ザワザワという音を奏でる。
ステラにはそれが心地よく、頬に触れるひんやりとした風も、自分をこのままどこかへ運んで言ってくれるような気がして、そっと目を閉じた。]

[リックはぼんやりと、幾重にも巻かれた一本の縄を見つめた。オイルでなめされた麻縄は、彼が大好きな西部劇にお馴染みの処刑シーンを連想させ、リックを不快にさせた。]

[ミッキーは、簡易食料を全て食べ終えてしまったが腹が膨れなかったので、厨房をあさっている。]

クソ･･･あんなもので足りるわけが無いじゃないか･･ッ。
大体、人狼を処刑するのにこんな食器で一体どうしろって言うんだ・・。クソ、クソ・・ッ。

[ミッキーはイライラとしながら厨房をあさっていると、冷めて痛んだ小さな焼き魚のようなものが二匹、無造作にゴミ箱に入っているのを見つけた。]

クソ･･･。こんなのでも食べるしかないじゃないか。

[ミッキーは厨房にあった水が使えなくて洗われていない皿の上に、殆ど生ゴミとすら言える魚を乗せると、金のナイフと対になっている銀のフォークを使って一人厨房のテーブルの上で魚を喰べ始めた･･。]

[マンジローは、既に中身の持ち出された木箱を片付け始めたが、その途中テーブルの下に一枚の便箋が落ちているのに気が付き、何気なく拾って読み始めた。]

『　そしてこのプロジェクトには、極一部の者に知られるもう一つの顔がある。もしこの宴に、純粋な人間が巻き込まれたらどうなると思う？自分の手を汚さずに邪魔な人間を始末するのには、うってつけだと思わんか？』

…なんだこれは？

メイの荷物は･･･リュックと･･･これは？
[メイの手には片手で握れるほどの棒状のものが握られている。]
･･･ナイフやノコギリ、錐なんかがついてるんだ。
アーミーナイフって言う奴？

［ルーサーはＴＶを見た後、アーヴァインを埋葬するために必要なものを準備していた］
…アーヴァインさんを埋葬してあげないといけませんね…。
ＴＶの画像から大体の位置は把握できましたし。
その前に私の名前の書いてある箱を探さないと…
［残ってる箱から自分の名前の書いてある箱を見つけ、こじ開けた。］
リュックなどは他の人と代わりが無いようですね。
これが私の武器ですか…一度部屋に戻ったほうがよいようですね。
［リュックに荷物を入れて部屋に引き上げて行った］

く……。
なんて使いにくい剣だ。
それに、私には重すぎる……。

[マンジローは、突然口笛を吹き始めたギルバートに苦々しげな視線を送った。]

このような時に、口笛を吹くなど…感心しないな。

しかし、本当に生き伸びるには……。
何でも利用しなければならない。

武器だろうと、人間だろうと。

[流れ者 ギルバートは、何かを思い出し、辺りをキョロキョロと見回した。]

む、ここにもない…。
もしかしたら、トイレか。。今日は外には出ていないしなあ。

［部屋に戻るとリュックの中から布包みを取り出し中身をあらためた］
…皮肉、ですかね。昔使っていた銃ですか…。
［そうつぶやくとコートを脱ぎショルダーホルスターをつけ、コートを着込んだ。
そして弾丸を机の上に置き、慣れた様子で銃の動作チェックや抜き打ちの練習をし、弾丸を装填して、身につけた］
一度どこかで試射をする必要があるかもしれませんね。
これを用意した人たちは私に若者達を撃てとでも言う気ですか…。
それはさておき、アーヴァインさんを埋葬してあげなければ…。

[リュックの中で、シャーロットの手に触れたのは、ライフルと弓が合体したような形状の武器…いわゆるクロスボウと、金属製の矢のセット。
トリガーの動きの鋭さ、全体重量の軽さという点は違っていたものの、それは、以前ふるさとでシャーロットが狩猟をたしなんでいた際に使っていた道具と酷似していた。]

替弦とオイルまで入ってる……。

[シャーロットは、無言で矢を装填し、一度目標物を定めようとしたが、視界にヴィンセントの存在をみとめ、クロスボウを下ろした。]

[マンジローは視線を手元の便箋に戻すと、改めてその内容をチェックした。]

これは…主催者側の人間が書いたもの…か？
文章の流れからして、他にも前後のページがありそうだが…

[他にも同じ便箋が落ちていないか、床を見回した。]

････？
マンジローさん。どうかしたの？
？
その便箋は何？

ふっ、吐き気がする。
私達がこの島で何をするか、観察する気か？
一向に進まない所を見ると、本気で監視しているようだな。

そういえばさっき軍用機が飛んでいたが、何かあったのだろうか。

何か面白い事が起きているかもしれないな。一度集会場に戻るか。

[マンジローは、メイに便箋を手渡した。]

…床に落ちていた。
他にもないか探しているんだが…

ヴィンセント先生？

…アーヴァインさんを埋葬に行ってきます。
クインジー、カーミラ、すみませんが付き合ってくださいませんか？
血を見ても倒れない人の手助けが欲しいのですがいかがですか？
さすがに夜道を一人歩き、というのはね…。
埋葬するのは私がしますから、明かりなどが欲しいのですよ。
［スコップを持ったままルーサーは二人に話しかけた］

[メイは便箋の中身を読んだ。顔色がさらに青くなっていった。]
こ、これって･･･。今回の「ゲーム」にかこつけて誰か無実の人を殺してしまうつもりの人が居るってこと･･･？
化け物を倒さないといけないのに、こんなことを考えている人が居るなんて･･･。

[ウェンディは肩にホルスターを取り付けると、一人つぶやいた」

出来れば、一回撃っておきたいんだけど……でも、これだけしか弾がないみたいだし……止めておいた方が良いよね。

これからは、お兄ちゃん以外の人を信用しちゃいけない……。
絶対に、あんなふうになりたくない……。

[丘は静まり、その場に座り込むと酷くのどかで、自分が今いる状況が非現実的のように感じてしまう。]

……神よ。……どうか、わたくしを……お見守りください。

[何かを決心したように、ステラの顔は凛々しく引き締まっていた。]

……ヴィンセント先生とお話がしたかったのですが、またどこかに姿を隠されてしまったようですね。
ルーサーさんにも、お聞きしたい事があるのですが……。

［シャーロットのほうに向き直る］
私に答えられることでしたらどうぞ？

[クインジーはリュックを持って立ち上がった。カミーラもそれに続く。クインジーが口を開く。]
さすがは牧師様だな。まったくの他人のために、よくもまあ、そんなことしようって気になるもんだ。
まあ、ここで不快な放送を聴き続けるよりはマシだな。ついてくぜ。

[ヴィンセントが集会場に戻ってきた。皿に昨日の残りや魚を盛っている。]

[ミッキーは厨房から戻ると、そのままいつも座っている端の椅子に座り、壊れたおもちゃのように同じ内容を流すテレビをまた見つめ始めた。]

・・・クソ、何が、ゲームだ･･ッ。

[周りではヒソヒソと話し出す者、武器を見ている者、そして、テレビが延々と同じ内容を繰り返している・・。そして、「これに合わせ、人間も毎日一人処刑する･･･」と言うところでミッキーはビクッと体を震わせた。]

そうだ･･･誰かを、処刑するんだ・・。
誰かを、一人、処刑するんだ・・。

　誰が、　誰を、　一人、　処刑、　する？

[ミッキーは無意識の内に独り言を区切るように言いながら、食い入るようにテレビを見つめている。]

[流れ者ギルバートは、マンジローが物陰を調べているのに気がついた。]

マンジロー、探し物かい？
俺も探してる物があるんだけど、このくらいの大きさの便箋を見なかったかい？

[と、人差し指で小さく長方形を描いた。]

[ルーサーさん…と、シャーロットは躊躇いがちに口を開いた。]

……私は、ここに来る少し前に、人狼プロジェクトついて調べていました。調べると言ってもたいした事が出来るわけではなくて、人狼プロジェクトであろう事件の新聞記事から共通項を探る…程度の事しか出来なかったのですが。
見つけた共通項というのは、このプロジェクトで集められているのは、13歳から18歳までの少年少女であるということでした。

今、この場に、武器を支給されて、大人であるルーサーさんとヴィンセントさんがいらっしゃることを不可思議に思います。しかも、昨日からルーサーさんは落ち着いていらっしゃる。

……なにか、人狼プロジェクトについて、より詳しい情報をご存知なのではないですか？

ギルバートさん。探しものってこれ？
これは・・・あなたのなの？
[メイは便箋をギルバートに見せた。]

[流れ者 ギルバートは、メイの差し出した便箋を見ると、笑顔で頷いた。]

そう、それそれ。探してたんだよ。君が見つけてくれたのかい？ありがとう。

[そう言って手を差し出す。]

[誰にも聞こえないくらい小さな声で呟く]

各自に荷物が届くなんて…。
全てが念入りに計画されて用意されていたって事なのね。
中に入っている武器は、ランダムのように見せているけれど、恐らくそれも計算づくのもの…。

私の…私の武器は…何だろう？

ステラさん？

こんな所でどうしました？気分でも悪いんですか？

[カミーラは、ルーサーの言葉に頷くと、リュックの中にビロードの袋を無理矢理押し込んだ。]

まったく… 馬鹿にしてるよ、まったく!

[珍しく慌てた様子で、リュックの中をかきまわしている]

…これは…

[セシリアは他から見えないように背を向けて、自分に支給された物をそっと引っ張り出した]

……双眼鏡……。

[後ろから声をかけられびくっとするが、すぐに笑顔になってハーヴェイを振り返った。]
あ……、ハーヴェイさん……。
……えぇ。ちょっと……怖く、なってしまって。

なるほどね。情報量、と言う点ではシャーロット、あなたと変わりませんよ。
私がここにいる理由も私にはわかりません。
私が落ち着いて見えるのは戦争で最前線で従軍していたせいでしょうね。

人狼、という存在が人を殺すのならまだマシですよ。
何故ならそれは明確な敵ですから。
一番残酷なのはね、人が人を殺すことですよ。
何故殺すのか、何故殺されるかもわからずにただひたすらに殺しあうのですよ。
ある日突然友人だと思っていた人間に銃を向けられるなど日常茶飯事ですから。
私が一番怖いのは人狼ではなく、疑心暗鬼にかられた人間ですよ。
だから私は自分自身に平静であれ、と念じているわけです。
これでいいですか？

ではクインジー、カミーラ、よろしくお願いします。
［集会所からアーヴァインの死体がある場所に向かって歩き出した］

[皿から顔を上げて、ヴィンセントがため息をついた。ポケットから小さな銃を取り出して、明かりに透かして見る様に掲げる。]
私がここに居る理由ですか……。
何も思い当たりませんが、悪い冗談以上の何かであることは確かです。
この銃で、妻は自殺しました。証拠品として持っていかれて……。私は所有権を放棄してるんですがね……。わざわざ箱入りで送り届けてくれた訳ですから……。

[ヴィンセントは、皿の脇に銃を置いた。]

殺しあいのために支給する武器としては、不要なメッセージが多過ぎますね……。

怖くなった、ですか？
まあ一晩経てば冷静になるでしょう。
そうすれば現状に気が付き、恐怖は生まれます。
仕方のない事です。

出来るのは、こうやってお互いに緩和する事だけですよ。

[メイはギルバートを少し睨んでいる。]
ギルバートさん、この便箋の中身を書いたのは･･･あなたなの？
あなたは･･･何をする気なの！？
[集会所にメイの声が響いて少し注目を集めた。]

集会所のホールで、テレビを見ましたの……。
アーヴァインさんが……アーヴァインさんが……。

[言葉につまったステラの頬にハーヴェイの手のぬくもりを感じて、涙が溢れ出す。]

……どうしようもなく、怖いんです、とても。

わたくしもハーヴェイさんも……、みなさんも……。
もしかしたら、あんな風になってしまうのかもしれないと思うと……。
そして……、みんなを信じられない自分が、とても情けなくて、……わたくし……。

[流れ者 ギルバートは、驚いて首を横に振った。]

いや、これを書いたのは俺じゃない。父さんだ。
俺はこの文で言うところの、被害者だ。
信じられないって言うのなら、これを見てくれ。

[そう言って、何枚かの便箋をメイに渡した。]

『父より

　ギルよ。この手紙を読む頃には、人狼プロジェクトという名を既に聞いているだろう。人狼の恐れのある者が集められ、殺し合いをする、狂気の宴だ。
　そしてこのプロジェクトには、極一部の者に知られるもう一つの顔がある。もしこの宴に、純粋な人間が巻き込まれたらどうなると思う？自分の手を汚さずに邪魔な人間を始末するのには、うってつけだと思わんか？』

『　ギルよ。お前は純粋な人間だ。そして巻き込んだのは、他でもないこの私だ。お前は我が家には必要ない。表向きは活発で愛想がいいが、裏は狡猾で怠惰で女にだらしなく、浪費しかしない。つまり、お前は我が家の面汚し。必要ない人間だという事だ。
　お前は間もなく死ぬだろう。その時に自分の愚かさを恨め。もう一人、同じく親に見捨てられた者がいるはずだが(確か名を○○○と言った)、二人で最期の時を惜しむがよい。そして、死んで我が家の誇りとなれ。』

[○○○の部分は破り取られている]

…血臭がつらいと思いますから、風上にいたほうがいいですよ。
［と二人に声をかけると村外れの納屋の近くにスコップで穴を掘り出した］

…とまあ、こんな悲しい内容の手紙が、俺の荷物に入っていたってわけさ。へへっ。

[そう言って微笑んだ瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。]

血の臭いには慣れてるさ。

それにしても、この島には墓場はないのかい? 死体を軒先に埋めるとは思わなかったよ。

・・・・・・何があったんですか？

大丈夫ですよ、僕は貴方の味方です。
詳しく話を聞かせてください。

…遺体は五体満足ですらなく、棺さえない。
この状況で墓地まで運ぶのは不可能ですよ。
さて、残った体だけでも埋めて差し上げよう…
［納屋と墓穴らしきものとの間を往復している］

･･･ごめん。ギルバートさん。
あなたは、人間なのに、人狼疑惑とは別の理由でここに連れてこられたんだ･･･。
メイの早とちりだった見たい。いろんなことがあって･･･上手く考えられなかったよ。ごめんね。
[メイはギルバートに謝ると便箋を返した。]

ん？メイ。どうしたんだい？

い……いや……思い出したくありませんわ……。
[ステラはいやいやをするように首を振った。
目からあふれ出す涙と、僅かに震える唇で、必死に喋ろうとした。]
……アーヴァインさんが、殺害されましたの……。
人狼、によって……。

[ステラは震えながら、さっきテレビで見たアーヴァインのこと、「人間と人狼との生き残りを賭けたゲーム」のことを言葉少なに伝えた。]