自警団長 アーヴァイン
ふむ……まだ集まっていないようだな。 今のうちに、もう一度見回りに行ってくるとしよう。
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村長 アーノルド ─第3隊隊長アーノルド・ウィンスロップの日記─ [薄汚れた革表紙の手帳。一度水を吸ってまた乾かしたものらしく、頁は撚れ、あちこちが泥と血で汚れている。 クリーム色の紙面には流麗な文字が並ぶが、後半へいくに従い、殴り書きに近いものへと変わっていく。] ・・・・・この森からの脱出が可能であるかどうか不明である現状、私が思い出せる限り詳細な記録を、この事件について記すのが私の努めであると考える。 もし万一、いつかこの手帳が人の目に触れ、真実が明らかになることを私は願ってやまない。 (中略) 2XXX年X月XX日。 その日私たち第3隊に非常召集が掛けられた。第3隊は本来は非番であり、約2週間ぶりの休暇となる筈であった。 魔界の悪魔が、世界を隔てる壁を突きぬけこちら側に侵入したとの報告を受けて、待機中であった第4隊が既に出動しており、第3隊の出撃は第4隊の増援要請に基づくものであった。 「夜の騎士団」はこのかつてない非常事態にいささか浮き足立っていたと言わざるを得ない。 悪魔の侵入自体は前例があっても、ここ二百年以上は全く見られなかったと言えば、生まれて百年以下の比較的若い死神で構成されている騎士団首脳部が如何に慌てたか想像もつくだろう。 とりあえずアーヴァイン率いる第4隊が偵察に向かった後、緊急にリリムに指示を仰いだ私たちは、その対策会議中に第4隊からの通信を受け取ったのであった・・・。 | |
(0)2006/09/15 21:53:23 |
村長 アーノルド ─冥界の辺境・「迷夢の森」付近の森─ [大気は湿っていて冷たく、辺りは薄暗い。 捩れた冥界の樹木が黒々と繁茂して空を覆い隠し、月明かりも朧にしか届かない。 鳥魔と思しき甲高い鳴き声が尾を引いて、鋭い羽ばたきの音と共に遠ざかる。 ・・・遠くでかすかに、木の倒れる響きが聞こえる。 アーノルドは、ここよりは徒歩にて前進することを隊員たちに告げ、騎乗していた妖魔馬(それは四足獣であると言うことを除けば、馬と言うよりは鳥に似ていたが)を降りた。 乗用妖魔達を一箇所に集めて待機させると、集まった隊員たちを前に何時に無く真面目な表情で、突入前の最後のブリーフィングを始めた。] | |
(2)2006/09/15 21:59:14 |
墓守 ユージーン 『戦闘前だってェのにこのだらけた空気は何とかならないもンかねェ。性質が全然違いやす。チャームンダー様の隊とは思えやせん。他の隊から馬鹿にされるわけだ。』 〔聞こえるか聞こえないかくらいで呟き、出撃前に思いを馳せる〕 ─回想─ 〔冥界に朝はない。 あてがわれた宿舎の一室で、傍らを探る筋張った無骨な手。〕 ....................。 〔仮面の下の口を吊り上げて笑えば、宿舎の部屋を出て魂の木へと向かった。 キュポンと黒塗り瓢箪の蓋を外せば、前日に刈ってきた魂が青白い燐光を纏い1つ2つ3つと戯れながら枝へと漂っていく。血のように赤く筋が幾つも入った月は、ねじくれた冥界の木々をあてらかに照らしていた。〕 っとと。 〔懐から紙袋を取り出し、鎌(紛れもない鋏の形だ)で切り裂くと、饅頭に齧りつく。本部が騒がしくなったのはその頃だが、のんびりとしていた。〕 | |
(63)2006/09/16 08:06:40 |
墓守 ユージーン ─回想─ 〔アーヴァイン率いる第4隊が妖魔馬で駆け出そうとも、ふわぁぁと魂の木の辺りで大きく伸びをし、膝に肘をつけ肘に顔を乗せ眺めるだけ。〕 .........で、何があったんで? 〔本部に帰ると、死神の一人を捕まえて事情を尋ねた。 首を掻いている間に聞けば、悪魔が侵入したとの事。酷薄さと期待が入り混じった哂いが洩れた。〕 なるほどそうでしたカい。 〔軽く礼を告げ、顎部分の毛を撫で繕っていれば、しばらくして第3隊の面々へと出撃命令が下されたのだった。〕 慌しい事この上ありやせんね。 『ネヴァンの隊なら一個小隊でケリをつけて欲しいもンさ。やってられやせんね、アーヴァインの野郎。』 | |
(64)2006/09/16 08:09:57 |