双子 リック [轟音は響かない。 届くのはプスンというある種情けない音と薬莢の落ちる音だけ。 消音装置など付けられたその銃で父が何をしてきたか、 ...ははっきりとは知らない。それでも] …当てられる。 [自分にもできないことじゃない。 三階、灰色でただ広い部屋の中、小さな的を狙う自分の手] 異形種はきっと、おれを馬鹿にしてる。 …武器を持ってることも知らないだろう。 だとしたら… もし襲われるようなことがあったなら、 隙をつけばおれにだって… 殺せなくても…一矢報いることくらい。 [強張った腕と肩が痛くても、練習を止めることをしない。 ...は夢を見ている。あまりに無謀な*夢だ*] | |
(31)2006/08/23 13:46:21 |
見習い看護婦 ニーナ 〜二枚目〜 「To.リックくん。 突然のお手紙、ごめんなさい。 ちょっとこれから用事があって、貴方に直接お話をしている時間がなさそうなので、お手紙にします。 リックくんは覚えていないだろうけど、何度か怪我したのを手当てしたんだよ? よくハーヴェイさんとお話してても名前出てたし。 それに何か私の弟達の中にも同じように怪我ばかりの子がいるから、放っておけなかった。ついこの間はそれで叩いちゃった。本当にごめんなさい。次に会えるのは……いつになるのかわからないから、先に謝っておきます。 もし、また会える時があるなら、逆に文句は色々聞いてあげるから、それで勘弁してね。 それじゃ、用事足しに行って来ます。 Fromニーナ」 うん。リックくんにはこんなもんでいいよね。 [そうして、手紙を封筒に入れた] | |
(50)2006/08/23 15:50:18 |
見習い看護婦 ニーナ 〜三枚目〜 「To.ケネスさん おそらく、これが貴方の目に留まる時、私はシスターの手でこの世に居ないでしょう。 いえ、居ても仲間になってるのかな? 屋上で貴方方を見ていた時、二人が異形なのだと思いましたがどうやら違ったみたいですね。ソフィーさんからシャルさんの名前を聞きましたから。 だから貴方は異形に手を貸している。と、いうのだと思います。 私の予想では、これだけの設備に、これだけの人数を集めて、そして闘わせるのは実験みたいな意味合いもあるんじゃないかなって思います。 前にヴィンセント先生……。あ、私の勤め先の先生ですが。その先生に連れて行ってもらった大学病院の研究室で似たような実験を見た事があります。やっぱり、あの時に感じた感想通り、実際に自分がやらせられると頭にきますね! | |
(53)2006/08/23 16:01:00 |
見習い看護婦 ニーナ -下町・ヴィンセント医院- ああ! そうだ! ニーナとハーヴェイを戻せって言って……。 できない? ふざけるな! 俺はお前らが手出ししないと約束するから……。 実験? いいかげんにしろよ? そんなもんのために人の家族に手を出しやがって。上のジジイ共に言っておけ! この仕返しは必ずしてやるってな! [電話を叩き壊すように切り、ヴィンセントは椅子に深々と腰を降ろした] 『……だが、ハーヴェイも一緒なのは不幸中の幸いか。まかり間違ってもあいつはSクラス。今は衰えているとはいえ、Aクラスの力は最低限行使できる筈だ。 そうなると、問題はニーナか。あいつはどうも思い込んだら一直線の性格をしているからな。ヘタな事をしなければいいが……』 [そうして彼は遠く収容所にいる二人を思い、無事を心から祈った] | |
(78)2006/08/23 20:50:40 |
見習い看護婦 ニーナ [距離が取れたのと、袋を手にしたことにニーナは似合わないにやりとした笑顔を顔に貼り付けた] それ、とっちゃいましたね。 その粉の説明を少ししましょう。 それはThalictrum minusというそこいらに生えている草なんですけど、その効果は神経毒。シスター粉を少し口に含んだようですけど、大丈夫ですか? [手短に説明を終えると、ニーナの背後にある木の密集地帯に脱兎の如く駆け出した] 『まだ……こんなところで捕まっちゃ意味がない! あそこまで……昨日のあの場所まで……。そして……』 [ポケットの中にある御守を強く強く握り締めながら、ニーナは木々の陰に姿を消した] | |
(94)2006/08/23 22:11:17 |
見習い看護婦 ニーナ [足音が聞える。 間違いなく追いかけてきているのだろう。当然だ。人でありながら人を超えた力を持つ者。ニーナはそう認識している。それはステラ自らが感情や五感は変わらないと断言した。つまりそれを繋ぐ神経もまた同じと考えたのだが、予測通りだった] それでも……殆ど効いてないと思わないと……。 [伊達に毎日散策していた訳ではない。すでに森は彼女のテリトリーのようなものだ。ヴィンセントが薬がない時の応急手当のために、よく山や海に連れて行かれたから、こんな時に役に立つ] 『何かすっきりしない理由だけど、役に立ってるんだもん! しっかりしないと!』 [そうして今度はChelidonium majus var. asiaticumの草液を塗った枝を数本タイミングを図ってステラの上に落とす] | |
(100)2006/08/23 22:33:28 |
双子 リック …はは。 [ドアを開けられ、入ってきたケネスに この小さな部屋に二人きりと気付かされてから急に 手紙のことで少しぼんやりし過ぎていた自分に驚いた。 何しろ、異形種の可能性があるのはあと三人。 そのうちの一人なのだから。 しかしヌリオをやらせてやるとカバンを上げてみせる男に 思わず笑ってしまう] あんたもたいがい…のんきな奴だよな。 おれのこと、笑えやしないぜ。 こんな時に…こんな状況なのに、仕事だなんて。 ヌリオだなんて…ははっ。 [そして久々の笑いは、あまりに自然に...の心を明るくした。 こんな脳天気な奴が、異形種なわけがない] うん。暇だった。おれにできることなんて…何もないんだもんな。 おっさん、あんたと同じでさ。何なら、一緒に遊んでやる! | |
(101)2006/08/23 22:38:17 |
双子 リック [背は床に押しつけられて、刃はより深くに達する。 悲鳴の代わりに出たのは血だったかもしれない] あくにん…あくにんって… [ケネスが異形種だったのか、異形種ならばこんな殺し方を するものかどうか、どういう理由で自分を殺すのか―― 当然の疑問も...の頭には浮かばない] …ふ…うっ…… [体重差で決して逃れられない重さが二の腕にかかり、 先刻はいい奴だとまで感じた声でケネスは絶望を与えてくる。 ...はズボン裾下の銃さえ取れない。 ヘンリエッタの名前が出されたと言うのに、 夢見た自分がそうしたように睨むこともできない。 ただ悲しい目に涙が溜まり、痛みと恐怖に震える唇で呻いた] | |
(126)2006/08/23 23:18:12 |
見習い看護婦 ニーナ [爪の狙いは首だった。 だが急停止し飛ぶように身を曝け出した所為か、爪はゆっくりと腹部へと吸い込まれた。 本来であれば一秒もかからない出来事なのに、肉の繊維の一本一本が切り裂かれ、血管を流れる熱いモノが弾けていく。 そんな苦痛でしかない刺激にも、ニーナは表情を変える事をせずにステラの頭を優しく抱きしめた] シスター……。 やっぱり貴方は私とおんなじ……。今、私が振り返ったらすっごく驚いていたでしょ? ふふ……。それって私でもケネスさんでも、心配しているのよ……。 嬉しいなぁ……。 あんなに肩肘張ってるように見えたのに、こんなにも人なんだもの。絶対に、諦めなかったら、一緒に居られるよ……。 んーん。 一緒に居よう? ケネスさんやハーヴェイさんのいないところで、パジャマパーティとかして、一緒にお買い物いって……。 あ、そうそう。エッタちゃんとかソフィーさんも一緒に……。 ごほ! ごほ! [口から幾筋もの血が流れる。それでもニーナは言葉を紡いだ] | |
(140)2006/08/24 00:08:39 |
見習い看護婦 ニーナ 本当は……感情に任せて……最後に……Digitalis purpureaとこれを使おうと思ったんだけど……。 [そう言ってポケットからハーヴェイの御守を取り出した] やっぱりダメ……だったよ。 私、シスターの事好きだもん。だから……負けないで……。自分の中に……自分自身に……。 [いつしか涙が声に混じっていた。どんな葛藤はあれど、絶対にステラを信じようとしたニーナは満足げだった] それと、ケネスさんの事は嘘……。そんな事してないから……安心し……て……。 [そこで言葉と力は途切れた。御守が手から落ち、体重がステラに被さる] 『ハーヴェイ――』 [最後に心の中で最愛の人の名を、彼女は呼んだ……] | |
(141)2006/08/24 00:10:32 |