人狼審問

―執務室―

クラヴィス様とルヴァ様も呼ばれちゃうなんて…。
守護聖半分になっちゃったよ。

そんなに大変なことが起きてるのかな。
何が起きてるのかわからないのってもどかしい。

[フェリシアの花の鉢植えに水をやりながら唸っている。]

公園の花は薬をちゃんと与えたし、
温室の花の世話も終わってるし、
今日は森でも行こうかな。

チュピもお友達と遊びたいよね。

[パンくずを袋につめたものを持って、森に出かけていった。]

[執務室を出ると、ランディは外へと向かった]

ルヴァ様とクラヴィス様も行かれたみたいだし……
やっぱりジュリアス様に様子を聞いてみた方がいいのかもしれないな。
昨日は結局逃げられてしまったし。

…そういや昨日のジュリアス様、様子が変だったっけ。やっぱり守護聖も少なくなって色々手一杯なんだろうな。

あ、パンなくなっちゃった…。

[マルセルの周りにいた動物たちは礼を言うように
ある方向へと導こうとする。]

え？
そっちになにかあるの？

[案内に誘われた先には真っ赤な木苺が生っていた。]

わあ。すごい。みんな、ありがとう。

[動物たちに微笑みかけ、一粒口に入れる。]

ふふっ、甘くておいしい。

いっぱいとっていって、アンジェやロザリアにも分けてあげよう。

[マルセルは楽しそうに木苺を*摘んでいる*]

―私邸―

［御付きの者から、ルヴァとクラヴィスが聖地に戻るよう指示された話を聞いた。］

………そう。ありがと。
なんだかんだで、ゼフェルもクラヴィスも、オスカーも、みんなちゃーんと守護聖の仕事してんだしね。

［オリヴィエは、昨日のロザリアの様子を思い出していた。］

………………。

昨日のロザリアの、思い詰めた表情……いったい何を言いたかったんだろうね……

…………………。

[ランディはランニングのコースを変えて森の中を走っている

さすがに、公園と違って森の中は走りづらいな。

…

[しばらく走ったところで、マルセルの姿を見つけた]

マルセルじゃないか。何やってるんだ…?

[足踏みをしたままでマルセルの後姿を見ている]

マルセルーー!

[呼んでみたが、どうやら何かに夢中で気付かないようだった]

…まあいっか。ここはあいつの庭みたいなものだしな。

………ま、ウジウジ考えても仕方ないか。

外に出て、なんか考えれば分かるかもしれないし。

［何かを思い詰めたような表情に変わる］

【ロザリアに合わなくちゃ。そして……】

［オリヴィエは、執務室を後にした］

─森の湖─
今日はルヴァ様とクラヴィス様が旅立たれたのね…
急を要する事態とはいえ、段々と守護聖様のお姿が見れなくなるのは寂しいわ。

………

[茜色に染まる空の下森の湖でひとり佇んでいる]

いいえ、本当はそんなことではない…
私の心に影を落とすのは…


あの方と逢えなくなってしまうことだわ。
いつ陛下のお召しがあるかわからず、一旦お出掛けになればいつ戻るともわからず…
二度と会えなくなってしまうかもしれない…

[清らかな水を湛えた泉は神秘的な輝きに満ちている]

恋人達の泉。…ここはそう呼ばれている…
ここで想う人を求めれば、その方が現れるかもしれないと…

少し前までの私だったらそんな話莫迦げていると一蹴したでしょうね…
でも…今は…

{何かを願うように水面を見詰めている]

［オリヴィエは、外を歩いている］

………どうしたモンかねぇ………
私としたことが、オスカーじゃあるまいし、ひとりの女の子に入れ込んでるだなんて……

［オリヴィエは、静かな所を求めて、森の湖へと向かった］

―森の湖―

［爽やかな風が微かに頬をかすめ、髪を揺らす。それを感じながらも、あまりそれを気に留める余裕が見当たらないようだ…］

相変わらず静かな場所だねぇ、ここは……
ここにくれば少しは……
何故ならここは………

［そして、先ほどまで頭の中で名前を何度も呼んでいた少女を見つけた。］

ロザリア…………！
どうしたんだい、こんなところで………

オリヴィエ様…！！！

[想いを込め願った人物が現れ、驚いている]

どうしてこちらへ…？　

［ロザリアを見て一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにふと笑みを見せた。］

ふふっ。
………何でだろうねぇ。

なんだか静かな所で……いろいろ考えてみたかっただけさ。

ロザリア……もしかしたらアンタに、呼ばれたのかもしれないね。

ロザリア………
隣…座っても、いいかな……？

［オリヴィエは、ロザリアの隣に座って*静かに微笑んだ*］

[オリヴィエの言葉を聞きはにかむように微笑んだ]

ええ…確かに。
オリヴィエ様にお逢いしたいと…願いました。

その願いが届いたと…思ってしまってもいいのでしょうか。

[ランディはまた走り出すと湖のほうへ向かった。水面が見えてきたころ、湖の畔の人影に気がつく]

あれはロザリアと…オリヴィエ様。

[ただならぬ雰囲気を感じ取り、ランディは木の陰に隠れた]

…俺なんで隠れてるんだろ。

ロザリアとオリヴィエ様は仲が良かったんだな。けどロザリアの表情が……

[ロザリアの表情の中に、普段とは違うものを見つけて少し驚いた]

−　木陰　−

[ランディが木陰にかくれると、ロザリアとオリヴィエの二人を見守る先客がいた。

ジュリアスである。]

おお、ランディ。

どうしたのだ、こんなところで。

[自分のことは棚にあげて尋ねる]

【げ、ジュリアス様が何故ここに…】

[内心驚きながらも、平静を装ってジュリアスに答える。ロザリアとオリヴィエに見つからないように小声で]

お、俺はランニングの途中で…途中で涼もうと湖に向かってきたら二人がいたんです。
でもジュリアス様こそどうしてここに。

偶然通りかかったのだ。

しかし、ロザリア。
女王候補は、世界全体のことを考えなければならない立場にある。
よき女王候補となる資質を備えていると思っていたのだが。
その資格を放棄するというのか。

【…相変わらずジュリアス様は堅いなぁ…でも、ただロザリアの女王としての素質に文句言ってるわけではないみたいだけど…】

女王は、この宇宙全体の幸福を祈らねばならない。
そのためにその身を捧げる存在なのだ。

自ら望んで女王になり、そうするのであればよい。
だが、宇宙全体の幸せよりも、より自分自身の幸せを求めるのであれば、女王にならぬほうがよい。

運命に流され、自分を含まぬ世界の幸福だけしか祈れぬような女王になるならそれは不幸なことだ。

…あの、ジュリアス様？

[しばらく反応の薄いジュリアスを見ていたが、聞くことを思い出してはっとした]

その、ジュリアス様、今日もルヴァ様とクラヴィス様がここを発たれました。
宇宙は…女王陛下は大丈夫なんでしょうか。
守護聖が何人も行くような大事になっているのかと思うと俺は……！

しかし、誰かが女王にならねばならないのだ。
そのことだけはロザリア、お前も知っておくがいい。

誰かが守護聖にならねばならぬのと同じにな。

女王陛下のことについては、心配せずともよい。
この神鳥の宇宙は女王と守護聖に守られている。

女王陛下に招集された守護聖たちは、大いなる使命を与えられたのだ。
必ず彼らはその務めを果たすであろう。

…そうですよね。

すみません、つい心配になっちゃって。
問題を解決するために、皆が行ってるんですから…解決しない筈がない。

と、汗かいたら腹が減ってきたな…

ジュリアス様、それじゃ俺はこの辺で。
その、あんまりロザリアとオリヴィエ様のこと、追及しないほうが…。俺が言うことじゃないかもしれませんけど。

[ランディはそれだけ言うと、走ってその場から*去っていった*]

[ジュリアスは、しばらくロザリアの姿を見つめていたが、いつのまにか姿を消した。]

−　私邸　−

[夜空を見上げ、呟いている]

ロザリア……。

いつしか、お前のことを思うたびに、私の心に暖かい光が生まれた。
お前がほほえむたびに、私の心に課せられていた思い何かが溶けていくような気がした。
こんなことは初めてだった。

しかし、私は何より、この世界の安定のため、守護聖としての務めに忠実であろうと考えた。
ロザリア、お前が女王としてふさわしいとおもったからこそ、私はあえて、自分は守護聖でお前が女王候補だという立場を、いつも自分にいいきかせていたのだ。