人狼審問

僕の考えを述べます。
アーヴァインは赤い雀の任務として、なんらかの実験を行うため、人狼騒動の伝説を持ち出した。僕は新米の部下だから、真の情報は伝えられなかった。
僕ら以外の村人を追い出し、監視装置をとりつけ、村を孤立させる。ここまでが彼の任務であり、後はつつがなくその実験が行われる予定だった。

ところが、ここで誰かが、この「人狼騒動」を利用しようと考えた。人狼の仕業に見せかけ、アーヴァインを抹殺した……。

ふ、ふ……。

赤い雀が本当に赤く染まりそうだな。

村人達はどうなる？　人狼の仕業だと思い、混乱する。その中で「呪い」の提案をし、無法状態で人間を殺していく。それが犯人の計略……。
……いや、初めに私刑の提案を出したのは僕だ。その尻馬に乗るように、「呪い」の提案が提出された。
僕がその提案を言い出すのは偶然……。
いや違う、赤い雀のマニュアル通りの行動だった。

とすると、その「尻馬に乗る」準備ができていた人間が一人だけいる。
……ルーサーだ。

なるほど……確かに私にとって都合の悪い人間ばかり死んでいるように見えるな……。

ルーサーは「呪い」の存在を信じるような発言をしていた。牧師たる彼がそんなことを言えば、皆も信じやすくなることは明白だ。
……ということは、「呪い」を使って公開殺人を実行しようとしていたのは、ルーサーなのか？　そのためにアーヴァインを抹殺した。
……ところが次の日には、自分もまた、誰かに抹殺された。アーヴァインを利用していたルーサーもまた、誰かに利用されていた……。

政府の実験を行おうと、偽の人狼騒動を起こしたアーヴァイン。それを利用し、呪いによる殺人を起こそうとしたルーサー。
そのルーサーと結託していた何者かが、彼をも裏切り、村の中から邪魔な人間を消そうとしている。
一晩に二人。人狼と呪い、の二つを隠れ蓑に、狂気の殺人を続けている……。

こんなところですよ。

ふむ……。

ラッセルさん、本当に赤い雀は･･･そんなことまでやれる組織なんですか？
いえ、でも･･･人狼についてだけは、実在します。
昨日、とても大事なことを･･･思い出したんです。

くっくくくくく。

ねぇ、ラッセル。
羽帽子が何故弁護士だと知ってるの？

ラッセル……では、その『盗聴器』と『監視カメラ』を物的証拠として探し出す事だな。

それがないことには話しにならん。もっとも、それを見せられたところで、信用する気にもなれんが。

それと、石板のトリックも暴いてほしいところだが、まあ良かろう。皆、集会場に戻らないか？　さすがに冷え込んできた。

2年前の記憶はまだところどころ抜けてますが･･･。
僕の父さん・母さんは2年前に死んでいます。これは村の皆が知っている事実です。
でも･･･二人とも、今回のような人狼の騒ぎで殺されたんです。
父さんは人狼に･･･そう、牧師さんのように襲われました。
母さんは･･･呪いによって死んだのですが、キャロルさんと同じような力を持つ方が･･･人間だと言ってくれました。ですから、僕はキャロルさんを信じます。
人狼も、死んだ人間の正体を判断できる人間は実在するんです。

やってもおかしくない組織だよトビー。
人狼は本当、か。僕は……自分の目で見ないと、なかなか信じきることができないんだ。ごめん。

了解しました、村長。石版に関しては、僕ももっと調べてみますよ。

なるほどね…。
それは良いとして、何故アーノルドの顧問だと知ったの？

悪いけど、そんな事してるのはアンタ一人っていう方がシックリくるわね。

集会場に行きましょうか。

（誰が人狼で、そうでないかは僕も全然わからないんです･･･。でもラッセルさんが思ってるような、カミーラさんが人狼、ってことはないと思う･･･。ユージーン･･･僕は彼が怖い。人狼じゃなかったとしても、誰かを殺してしまいそうな危険な人間だから。）

……おお、ロッテ。無事だったようだね。心配したよ。

ヘンリエッタちゃん、ちょっと足を見せて…

【村長の娘 シャーロットはお嬢様 ヘンリエッタの靴下を脱がせた。】

酷い靴ずれ… ちょっと待ってて。水とタオルを取ってくるわね。

やっと帰ってきたのね…。余りに遅いので心配してたのよ…。

【村長の娘 シャーロットは、村長 アーノルドの顔を見て微笑んだが、その後入ってきた踊り子 キャロルを見て表情を曇らせた。】

シャーロットさん、ありがとう……。
踵の靴で走ったりしたから、こんなになっちゃったのね。
なんだか痛いなあと思ったけど、全然気がつかなかったよ。

……後ここに居ないは、ギルバートとカーミラ？
（ユージーンは…、どうなんだろう……。）

【横目でロッテを見やりながら、少し冷めたお湯割を皆に薦めた】
…寒かったでしょうに、少し冷えてしまったけど…。温まると思うわ。
トビーはロッテの紅茶を貰いなさい…。

…そういえば…ギルとカミーラ…遅いわね…。
【不安そうな表情で窓の外を見つめる】

遅くなってごめんなさい。
シャーロットさん、紅茶･･･頂きます。

ありがとう、ローズ……。
少しは落ち着いたみたいね……。

【キャロルは寂しそうに微笑みながらローズからグラスを受け取った】

カミーラさんとギルバートさんが･･･居ないんですね。
･･･なんとなく･･･不安です。

【寂しげに微笑み返すと、キャロルを抱きしめ耳元で小声で囁いた】
…私は、未だにグレンが人狼かどうかは…信じきれない。
…だけどキャロル、私は…あんたって人間を信じてるよ。
…私を心配してくれて、ありがとう。

ヒューのことは聞いたよ…あんたも知ってる？
【そっと離れると、ほんの少し涙を浮かべ心配そうに見つめた】

……すまないね。遅くなった。

ギルバートも、もうすぐ来るだろう。

今日の犠牲者は……ナサニエル？　ナサニエルなのか？

・・・・・・

日記には「キャロルとトビーが狼」って書いてあるのか。
それに昨日の夜の記憶もある。

カミーラのぬくもりも覚えている。

ずいぶん寝ていたみたいだが・・・・・・今日は大丈夫だ。

【キャロルは涙を浮かべながら静かに答えた】

ええ……。あたしが発見したの。
本当の事を言うわ。あたしも最初はローズを疑ったわ。だけど……。もし、あなたが人狼だったとしても……。
あたしは絶対にあなたの名前を刻めない。
あたしがこの村に来てから、唯一優しくしてくれた人だもの。
ありがとう、ローズ。あたしが死んでしまう前に言えて良かった。

【キャロルは静かに微笑んだ】

（だが、今の時点ではまだ村人を説得できない。
　それに、石版の呪いを同時に解かなければ、いつか俺も
　カミーラも死んでしまう。
　どうすればいい？）

……なんてことだ。あたしは、ナサニエルに、投票した……

呪い、なのか？

そして、キャロル……ヒューバートも、やられた、のか？

誰だ？

・・・・・・ユージーンか？

ファング。

……意識はあるか？
お前の仲間はトビーだろう？

ええ……。
アイツ……。あんな風にしか物を言えないけど……。イイヤツだったのよ……。本当に……。

【キャロルは大粒の涙をはらりとこぼし、カミーラに答えた】

カミーラさん･･･。
ヒューバートさんは･･･他の方よりも酷いことに･･･。
多分人狼に襲われたんですが、その後、ユージーンさんに切り刻まれたんです。
村長さん家の庭で･･･。
彼は狂ってる。僕はユージーンが怖い･･･怖いんです。

お父さま… ナサニエルさんは… どんな風でした?

【キャロルにだけ聞えるような小声でそっと囁く】
…キャロル…。
…あんたまで死ぬだなんて言わないでよ…。
あんたは、長生きしないとだめ…。
この村で、死んじゃだめだ、あんたにはまだ未来がある…。
【寂しげに微笑み返すと、もう一度キャロルを抱きしめた】

キャロル……

【カミーラは、キャロルの頬に右手を沿え、親指でその涙を軽くぬぐった。】

ヒューバート……あいつが、本当に、やられるなんて……

【キャロルは黙って大粒の涙をこぼした】

（ローズ……。優しくしないで……。あたしは強がらないと上手く生きていけないのよ……）

【ただただ、静かに泣いた】

・　・　・　・　・　・　

イ　エ　ナ　イ　　　ナ　カ　マ　ハ　コ　ロ　サ　セ　ナ　イ

トビー。

ユージーンが、人狼に襲われたヒューバートを切り刻んでいた……？

それは、本当か？

【キャロルの背中を撫ぜながら、村長に視線を向けた】

みんな、聞いて欲しい。

【アーノルドは、屋敷で見た光景と、川での出来事を一部始終話した】

……ふん。
使えない。

ファング。忠告してやるよ。
おまえ「仲間を売らないと」石板の呪いに落とされるぞ。

・・・・・・

お父さま… そう、やっぱりナサニエルさんも…

ところでお父さま、その… キャロルさんは、ナサニエルさんのことについてなにか口になさいませんでした?

ま、好きにしろ。
人狼だか何だか知らんが、もう終わりだぞ。
よく考えとけ。

ト　ビ　ー　　ダ

ロッテ、だから、キャロルはナサニエルのことを人間と認めたと言っただろうに。

【アーノルドの言葉を静かに聞いて、小さくため息をついた】

ス　マ　ナ　イ　・　・　・

トビー。

あんたの年で、人間のこんな面を見ることになるなんてね……
すまない。ほんとうに、すまないね。

大丈夫か？

【カミーラは、トビーの頭に手を乗せて、まっすぐにその目を見ている。】

あの、ユージーンさん… 少しお話があるんですけど…

【村長の娘 シャーロットは、墓守 ユージーンに、牧童 トビーから聞いたことを伝えた。】

本当に、あなたがそんなことを…?

トビーは本当に、酷い場面をみてしまったのね……。

な……。
シャーロット。
ぼ、僕はそんなことしない。しないよ。

多分、大丈夫･･･です。

ところでカミーラさん、ギルバートさんはどうしたんですか？

でも… 見た人がいるの。私はその人が嘘をついてるとは思えなくて…

ぐうっ！！


・・・・・・俺は、一体どうしたんだ？

日記は？


・・・・・・なんだって？　ユージーンが狼？

私はこの目で見たぞ、ユージーン。

……ぼ、僕を疑っているのかい？　シャーロット。
僕が人狼だと？

ユージーンは人狼だ！！！

俺は昨日の夜、こいつがヒューバートを殺すところを見たぞ！！！！

カミーラも一緒にいた！！！！！！

ギル……さっきまで、一緒に居たんだが……

今、こちらに向かっていると思うよ。恐らく。

なんだって？！

【静かにユージーンとロッテのやり取りを見つめ口を開いた】
…ユージーンはヒューに苛められてたしね…。
…でも、人間としてやっちゃいけない事なんじゃないか？

…って、ギル？！　カミーラ本当なの…？！
【慌てて視線をカミーラに合わせ、じっと見つめた】

ユージーンは、夜、ヒューバートを殺して、昼、またその死体を滅多刺しにしたのか？

流れ者……。

おまえが人狼か。

……あぁ。わかったよ。
僕はヒューバートの死体を刺した。
それが何だっていうんだ？

殺したのは僕じゃない。ギルバート。お前だ。

ユージーン、何のためにそんなことを……？

もう騙されないぞ！！

この人喰いめ！！！！

!?
ギルバートさん本当ですか？
カミーラさん･･･本当に見たんですか？

…………ギル！？

【村長の娘 シャーロットは、事態が上手く飲み込めない。】

ギル、カミーラと2人で、ユージーンがヒューを殺す所を見たって言うんだね？

ユージーン…？

……殺してないのに刺した、か。

カミーラを信用してはいないが、二人揃って目撃したとなると、な。

僕はヒューバートを恨んでいた。
だから、死体を刺した。
それだけだ。

殺してない。

ふむ……。私の庭に入り込むときのユージーンの挙動……死体を見つけたと歓喜に打ち振るえていたように見えた。

アレが芝居だというのか？　観客が居ると知らずに、芝居をする役者が居るのか？

……ギルバート、カミーラ、君達は確かに見たんだな？

…………ああ。

見たよ。あたしは、見た。ギルと、一緒に、居た時だ。

ユージーンが、ヒューを、、、、、

ヒューの遺体を辱めるなんて！！！

【そう叫ぶと集会場を飛び出した。後には硝煙の匂いだけが残った】

キャロル！ やめないか！

貴様、よくその口が言ったもんだ！！

人狼の中には狂気を帯びて人間の死体に興味を持つ奴らもいる！！

墓守と言う立場を利用し、さんざんやってくれたな！！

貴様のような奴は、もう殺すしかない！！

君達はなぜ、二人揃って私の屋敷に居たのだ？

シャーロット。
僕を信じてほしい。

そのペンダントで、ギルバートとトビーの姿を映すんだ。そこに、真実が映る。

キャロルさん！
今外に出たら危ないです！

君達はなぜ、すぐに私に報告に来なかったのだ？

………やだ。怖い…。

あぁ、なんてこと…

【村長の娘 シャーロットは、墓守ユージーンの傷を確かめた。】

…よかった、少し掠っただけだわ…

君達はなぜ、そのような重要な情報を、いままで話さずにいたんだ？

カミーラ。
お前は騙されている。

この流れ者に。

君達が、人狼だから、じゃないのか？

そ、村長。
あなたにだって人狼の疑いがあった。

報告は、できない。

ユージーン･･･さん。
なぜそこで僕の名前を？
シャーロットさんの力が本物なら･･･むしろ僕は彼女に僕の姿を映して欲しいですけれど。
僕とギルバートさんが人狼だとでも言うんですか？

【じっとカミーラを見つめた】

…カミーラ…あんた、私に嘘つかないって言ったのに…。

【誰にも聞えないような小声で、呟いた】

人狼を見つけられる人間がいるなら、絶対に守らなければいけない！

だから、俺もヒューバートさんを助けようと思い直してあんたの屋敷に向かった！
カミーラは俺を追っかけてきただけだ！！

・・・・・・そして、ヒューバートさんはこいつに殺された！！

……ユージーン。

墓下で、待っていてくれ。

あたしも、すぐに、行くから。

トビー… あなたが人狼の訳ないわ…

ユージーンさん、どうしてトビーを…?

気にするなトビー。
誰かに疑いを向けさせようと必死なだけさ。

ギルバートは、トビーが仲間だと言ったよ。
その口でね。

【キャロルは去り際の窓から、シャーロットがユージーンの傷の手当てをしてるのを目撃した。
　いつも、ああやって偽善者ぶって……！
　あの女こそ人狼だわ】

僕は死ぬわけにいかない。
シャーロットを守る。

ギルバート。今日呪いに落ちるのはお前だ。