人狼審問

月が出ているよ。
あぁ。真っ赤な月がね……。

あのアーヴァインという男は気に入らない。
いつでも正義漢ぶっている腐れ野郎だ。

……見回り？
人狼なんてものがいるなら、あいつから食われればいい。

こんばんは。赤く、丸い月・・・。
何かを思い出しそう。でも、思い出すのが・・・怖い。

それにしても、人狼か……。


……ひっひはは。

密告者がいるという噂がありますね・・・。
用心するに越したことはないでしょう。

人狼…ですか…

トビー……。
あのガキも気に入らない。
ちょっと頭が回ると思って、図に乗っている。
あいつの棺桶なら簡単に作れるだろうよ。

……ふひっ。はは。

あの羽帽子の男……。
どこかで見た覚えがある。
冒険家だって……？

いや、違う。どこかで見た。どこかで見たぞ。
思い出せ、思い出せ、思い出せ……。

ううっ・・・頭が痛い・・・。
僕は本当にトビーって名前だったんでしょうか？
僕は2年前から記憶がないんです。でも・・・
赤い月を見ると何かを思い出しそう・・・。
でも、思い出してはいけない・・・何か・・・？
うううっ・・・・。

少々、気味のよくない月ですが、まあ・・・気にすることもないでしょう。
しばし夜風に当たってまいります。

何か有益な情報が手に入るかもしれませんし、ね。

……シャーロット。



ああ……。
こんな血染めの月明かりの下でも、あなたはキレイだ……。

はてさて……。

やれやれ…

久しぶりに買い付けから戻ってみれば、随分と騒がしいようだが…
一体、何事かね？

カトリックの連中が去ったと思ったら、次は人狼ですか。
なんともせわしないことだ……。

牧師……。

あいつの秘密を、僕は知っているよ。
くっくはははは。

やれやれ……面白い話があるみたいだから来てみたけど、まだあまり集まってないみたいだねぇ。
こんな夜更けに呼び出しておいて、アーヴァイン、仕切り悪いよ。

……やれやれ。

hello

この村も相変わらずだな…

（ふん…こんなうらぶれた南部の田舎とも、もうすぐおさらばさ…。
　次の仕事さえ上手く行けば、俺も晴れてファミリーの一員だ…）

よいしょっと。今日はここら辺でいいかな。

赤銅色に息づく月…

子供の頃、お婆さまによく聞かされたわ。それまで見たこともないような赤い月が出たら… 災いはもうそこにあると。

お婆さま、どうか私達をお守り下さい…

ユージーンの奴は相変わらずだな。
あいつが守ってる墓には死んでも入りたくない、なんてねぇ。どうでもいいけど。

「１２月１８日、今日は晴れだ。
　とうとうこの村にも人狼のうわさが流れ始めた。
　あの日から早５年、今度こそ俺は奴らに止めを刺さね
　ばならない。
　今日は左肩がうずく。奴らは近い。近くまで来ている」

ああ…みんな元気そうだな。

シャーロットは、また一段と綺麗になったんじゃないかな？
後でお宅に伺うから、お父上によろしく言っておいてくれ。

そうそう…「万事順調」だと言い添えておいてくれ…。

ユージーンが月がどうのってブツブツ言いながら通り過ぎて行ったけど、一体なんなの？
あたし、もうそろそろ舞台に戻らないといけないのよ。
赤い月がなんだか知らないけど、人狼ですって？
実際に人が死んだら信じてあげるわ。
シカゴでそんな話したら笑われるわよ！

「今までどれだけの村が目の前で滅ぼされてきた事か。
　もう俺みたいな不幸な人間は出さない。
　今度こそすくってみせる。

　・・・誰をだ？皆をか？それとも。俺をか？
　今日も答えはでなそうだ
　そろそろきっと雪が降る。真っ赤な雪が」

・・・よしと。ていうかさみーなあ。

おう、随分みんな集まってきたなあ。
ってこらラッセル！煙草は吸うなって。

そういうのは大人の特権だぞ。

赤い闇・・・血・・・？
僕は・・・ボクはぼくは・・・ううっ・・・。
頭が痛む・・・。
この月はなんだろう・・・？
とても怖くて・・・つらくて・・・でも懐かしい気持ちになるんだ・・・。
僕は一体どうしてしまったんだろう？

トビー、どうした？気分が悪いのか？
ほら、俺の薬だ。ちっとは楽になるぞ。
・・・って、あんま人にあげるもんじゃないんだがな。

ふむ、赤い月…だと？

何を騒いでいるのかと思えば…明日あたり雨が降るという、ただの前触れじゃないか。そんな迷信じみた事ばかり言っていると、都会の進歩からは取り残されるばかりだぞ？

キャロル……。

あの女はキライだ。
ダンサーだかなんだかしらないが、ちょっと顔がきれいだと思って調子に乗っている。シカゴだって？　笑わせる。あのアバズレには、この寂れた村がお似合いだよ……。ふひひひひ。

すまんねギル。すっかり手放せなくてさ。
でもこんな晩は煙草が吸いたくなるだろう？　……な？

へっ、まあ俺も似たモノ同士ってことさ。

どうだ、少しは気が楽になったか？

ヒューバートに同意だね。僕も、人狼どうのより、噂程度で大の大人が雁首揃えて話し合うとかいうことの方が、危惧すべき事態なんじゃないかとか思ってたところさ。
ま、楽しいからいいけど。

ったく、この村はろくな大人がいないんだな、ガキをほっぽりだし過ぎだぜ。

・・・まあしゃーねえ、一本だけだぞラッセル。
俺も付き合うか。へっ、悪い大人がここにも一人ってか。

…あふ、皆さん、ごきげんよう。

お父様が今夜はやたらに「今夜は戸締まりをしっかりして」「はやく寝なさい」って言うものだから、わざと抜け出してきてみたら……、やっぱり集会がはじまろうとしていたのね。

・・・あいつ、確かユージーンて言ったな・・・

なんとなくだが、左肩がうずくぜ。

ふん……。あの片腕の男には注意だ……。

シャーロットを持っていかれでもしたら、たまったもんじゃない。シャーロットは僕のだ。僕の。僕の。

あ・・・ありがとう。
ギルバートさんでしたよね。
月が明るい晩、僕はいつもより不安定になるらしいんですが、こんなことは初めてです。
昔何があったのか、思い出すこともできなくて・・・。

（この中に・・・一体何匹いやがるんだ・・・？
　　　　　　　　　　　必ず見つけ出してやるぜ、狼め）

あら、村長さんのところのシャーロットさんも…。

ヘンリエッタか。
怪しい大人どものパーティに、お嬢様が何の用かなぁ。

へっ、ちっとは良くなったか。
まあここに座れよトビー。

・・・これからここで行われる話はきついぞ。話を聞くなら、何があっても泣くなよ。まあ、何かあったら俺が何とかしてやるけどな。

ヘンリエッタちゃん、私は父の代理ですわ…

夜に出歩いてるなんてばれたら、後で大目玉ですわよ、きっと。気を付けて戻らないと…

色んな人がいるみたいね……。

赤い月が出たからどうしたっていうの？
お散歩には、なかなかの夜だったわよ……？

ラッセル…いい加減、その安っぽい紙巻は止めたらどうだ？

ほら…土産だ。
最近中央じゃ、こんなもんが流行らしいぞ。

えっと・・・。自己紹介が遅れました。
みなさんこんばんは。僕はトビーと言います。
僕は牛の世話をしてるんです。
良かったら一度遊びに来てくださいね。何もおもてなしはできないかもしれませんが、うちのお爺ちゃんの焼くベーコンは評判のようです。（ぺこり）

ひょお。ヒューバートいい仕事してるねぇ。
「高級煙草」、どうもありがとう。

ヘンリエッタ……。

あのガキもナマイキだ。
金持ちぶりやがって……。

ヒューバートさんって相変わらず、あやしいわね……。
うちに来て、お母様とお話ししてる時とは、全然態度が違うんだもの。

シャーロットさんも気をつけた方がいいかもね。
ラッセルも、私にかまうより、他にする事があるんじゃないのかしら？

…風が出てきたな。
今のうちに、荷物を運び入れておくとするか…

おい、ユージーン！
お前、どうせ暇なんだろう？こっちに来て荷物を運ぶのを手伝え！

ほら、こっちだ！グズグズするんじゃない…この「うすのろ」め！

そうですねぇ。お嬢様の言う通りでございますよ。

……やれやれ。皆知ってるだろうが、一応自己紹介とかしておいた方がいいのか？　皆揃うまで待つ？

……ひっ。

は、はい。
なんでもやります。
この荷物ですか。ヒューバート様。

っておい！その煙草はやめておけ！ラッセル！

なんつう村だ。参ったなあ・・・
おうトビー、よろしくな。俺は最近来たばっかだから友達が少ないんだ。よろしくな。

くそ……。
ヒューバート……。

いつか殺す。絶対に殺す。
ただで済まさない。

ギルバートさん、こちらこそよろしくお願いします。
ヒューバートさんは････前にお爺ちゃんに何か話しかけていたようですが、お爺ちゃんがものすごい剣幕で怒り出して銃を・・・。
それ以来、家に来ていないんですが、何があったんでしょうか？

…全く気持ちの悪い月…ね。
こんな夜こそ、『オレンジジュース』や『グレープフルーツジュース』が必要だと思うのだけどね…。

あら…もうだいぶ集まってるのね、こんばんは。

ふう、戻ってまいりました。
見ようによっては美しいと言えない事もない月夜ですね。

特にこれと言った収穫はありませんでしたが・・・。

そういえば・・・。
『見分けるには靴を見るといい』
と、二つ先の街頭の下で耳にしました。
どのような意味を持つのかはわかりかねますが。

……まぁいいじゃないかギル。
吸ってよし売ってよしのいい煙草だぜ。
こんな村じゃ、たいした娯楽もないからな。
息抜きにはピッタリさ。

こんばんは、ローズマリー。
ふふ。その「オレンジジュース」あたしも飲みたいわ。
あら、辛気臭い墓守の隻眼も戻ってきてるのね。気味が悪いからいなくてもいいのに…。

へえ、なんかずいぶん羽振りがよさそうじゃないか。
あんまり俺が好きなタイプじゃないな。

では皆さん、また後ほど。
ヘンリエッタお嬢様、今回は品の良い風景画が何枚か手に入りましたので、あとでお屋敷のほうにお持ちしてご覧に入れますよ。
きっと奥様も気に入ってくださる逸品ですとも。

…おいユージーン！その箱は乱暴に扱うんじゃない！
ちっ…まったく使えない男だな、お前は。

ユージーンは、相変わらずね……。
墓守をやってると、ああ言う性格になっちゃうものなのかしら。

自己紹介なんて必要あるの？
私は、このさびれた村で一番の金持ちの娘、ヘンリエッタ。
お父様は、蒸留酒成金。お母様は世間知らずの貴族の末裔だかなんだか。
そんなこと誰でも知ってるじゃない。

…見慣れない顔の人もずいぶん居るのね…。
まぁ、私には関係ないけど…ね。

キャロル。特別美味しく作ってあげるわ。
ラッセルも、おはよ。あんたも飲む？

まったく、教育がなってないな・・・

よう、そこの美しいお嬢さん。
そのお酒、子供になんてもったいないぜ。
俺にもらえないかい？

あら、でもそこのトビーとか言う子、はじめて見たわ。
普段はお家に閉じ込められっぱなしで、歳の近い子供なんて滅多に会わないんだもの……。

…ふうん。

もらうよローズ。
煙草ばかりで喉がいがらっぽいんだ。

……ヒューバートは裏表ありすぎだな。本当に人狼なんているんだったら、きっとあいつだぜ。

おや、フューバートさん、もうご就寝ですか。
港町でもあなたのご高名は知られているようですので、この機会になにか交えたいと考えておりましたのに・・・。
あなたにもご事情もおありでしょうし、致し方ありませんね。

ローズくん、私にも何か飲み物をいただけますか。
夜風で冷えた体を暖められそうなものがいいのですが。

ローズマリーさんこんばんは。
僕にもオレンジジュースを頂けませんか？

（・・・なんだろう。夕日を見てもなんともないのに、
赤い月を見ると・・・心がかき乱される・・・。何か、良くないことが起こったんだ・・・。また・・・起こる前触れ・・・？）

…ねぇ、そこのお兄さん。
お酒なんて、誰が言ったのかしら？

へっ、嫌われちまったみたいだな。
まあ、気が強い女は嫌いじゃないけどな。

ヒューバートさんは、肖像画家の手配の件もよろしくね。
家族の肖像がなんて、私にしたら馬鹿みたいだけど……。

ローズマリーさん、私も頂けますか。…その、できればグレープフルーツジュースがいいのですが…

あら。ヒューバート、あなたなの？
シカゴであたしのボス相手に商売していたでしょ？
あなたがボスに売った、真実が見えるとかいう60カラットのダイアモンド。「天使の涙」だったかしら？
あれはボスがあたしの為に買ってくれたのよ。ほら。

へ？

・・・はっはっは！そうか、俺の早合点だ！
こりゃ失礼したよレディ。ついつい、な。許してくれ。

ヒューバート……。

ファミリーに目をかけられていると思って、どこまで調子に乗るつもりだ。あの男……。

ふん。どうせヘマをやらかしてマシンガンで蜂の巣にされるのがオチだろうさ。今のうちに棺桶のサイズを決めておくことだな……。ひひひひひ。

お詫びといっちゃ何だが、レディの一番のお勧めのバーボンをもらえないかい？
もちろんお金は払うぜ。とびきり美味いのを頼む。

ローズ、私はいつもの『ピーチジュース』がいいな。

ヘンリエッタさん、こんばんは。
･･･いえ、初めましてでしたね。
ハワード家のお嬢様でしたね。
よろしくお願いします
（なんか･･･緊張するな。でも･･･なんだろう？初めて会った気が･･･しない？）

ありがとう、ローズマリー。
この村はシケてるけど、あなたが作るオレンジジュースは最高だわ。

自己紹介？
あたしはシカゴから流れてきた、ダンサーよ。この身体が売り物。
今夜は村長さんと「深夜の相談」があるから、そろそろ失礼しなくちゃいけないけど、本当に人狼についてなんて話し合うつもり？

アーヴァインが戻ってくる前にいただくとするよ。
見つかると面倒だ。

…お兄さん、なんて名前なの？

私はローズマリーよ。好きに呼べば良いわ。
バーボンよりも、素敵なジャズが聴きたいのだけど。
レコードはそこの端にあるから、あんたのセンスでかけて頂戴。

ヘンリエッタも、お母様とお父様に怒られない程度にしなさいよ？

あんまり人狼をなめないほうがいいぜ、美しい踊り子さん。
今までにその噂が出た後で滅んだ村がいくつもあるんだ。

・・・ああ、俺の名前はギルバートって言うんだ。
よろしくな。

ジャズか、おやすい御用だ。

ふむ…人狼とな。
久しゅう聞く名じゃ…。

ありがと、ローズ。
ローズは、今日も綺麗で良い匂いだね……。
でも、お父様とお母様のことは、もう良いの。

キャロル、深夜の相談に行くならもう少し飲んでいきなさいな。

僕も一応、自己紹介しておくかな。
……といっても、シケた村のシケた大学に通ってる、単なる医学生、ってだけだけどね。

大人の曲だろ、ローズ？

あら…ロッテのお口には合わなかったかしら？
それなら、ミルクでもいれて差し上げましょうか？

ふーん、ギルバート…ね。
あんたはじめてみる顔ね。

ヘンリエッタ、お世辞の上手いおちびさんね。
あんたのほうが素敵なレディになれるわよ…。

さて、私はそろそろ帰って仕事をしますよ。
アーヴァイン。自警団長の肩書きが飾りでないなら、このつまらない事態をなんとかしてください。

ありがとう、ローズ。
あなた……、私が本当は……。
いえ、何でもないわ。ローズくらいの美貌と気立ての良さがあったら都会で何をやっても成功するのに。勿体無いわ。

ありがとう、頂くわね。

ユージーン、あんたもそんな所にいないでこっちおいでよ。
飲みたいものがあったら、いれてあげるよ？何が良いのさ？

んで、ルーサーはこれから仕事…ねぇ。
いつも飲んでる、グレープフルーツジュースは、今日はいらないわけ？

少しは興味を盛ってくれたのかい？
嬉しいよ、ローズみたいな美しい女性に気にかけてもらえてさ。

友達が少ないんだ、仲良くしてね。な〜んてな。

トビーと私って、身長が一緒くらいね。
……なんだか、変な感じ。ウフフ

怖がりじゃないなら、今度、ユージーンがお墓を掘ってるところを見にくいと面白いわよ。町外れの教会の傍で、あの調子でぶつぶつ言いながら、真っ黒な墓穴を掘ってるの。

…もちろん真夜中よ？

私はここの、この町じゃないと生きていけないのよ…。

ぼ、僕は……酒は飲まない。
ジュースもいらない。

僕に声をかけるな……っ。

ローズマリーさん… このジュース、ちょっと変わった味ですね…

でも、美味しいです。

…人狼。

昼は人の顔を持ち、夜は狼となり、人を食らうと言われる…忌まわしき者達…。
赤い月が夜を照らす時に現れるという…。

ババが若い頃、よく聞かされた話じゃて…。

おやぁ。ユージーンも一緒に飲もうぜぇ？
ほら、ローズがつくってくれた酒だ。

ヘンリエッタさん･･･。本当ですね。
少しおかしいかも。ふふふ。

ユージーンさんは真夜中に墓穴を掘っているんですか･･･。
あ、あれ？でも、ここ2週間ほどこの村で死んだ人は居ないような･･･。誰の墓穴を掘っているんでしょうね？

ギルバートも口が上手いのね。軽い口叩く男は好みじゃないわ。
でも、話し相手くらいにはなるわよ。

ユージーン、遠慮なんてしないの。ほら…。

ロッテ、あんた顔真っ赤だよ…大丈夫？
あぁ、ちょっと待ってな。

・・・なんか色々あるみたいだね、ローズ。
まあ飲んで忘れよう。全てを知っているのはあの月だけさ。

さ、さわるな。ラッセル。
僕は酒なんか飲まない。あぁ、飲まないんだ。

じゃあ、そろそろ行こうかしら。

あら、村長の娘さんもいたのね…っ。くす。
ごめんなさいね、会話聞こえちゃったかしら。別にヘンな相談じゃないのよ。あははははは！

それじゃ、ジュースありがとう、ロース。他のみんなもくだらない噂に振り回されないでね。
軽薄そうで、臆病者のギルバートもね！
それじゃ、またね。

デボラは生き字引みたいな人だもんね…。
何でも知ってるでしょうよ。
…それこそ、知らなくても良い事まで知ってそうだけど。

へっ、どうやら好みにはなれなかったみたいだな。
まあよろしくな、ローズ。

あら、ヒューバート入れ違いになったわね。
今度はあたしサファイアが欲しいわ。またボスに売りつけに行ってちょうだい。おねだりしておくわ。

ふっ、臆病者か・・・そうかもな。

あぁ、キャロル気をつけるのよ…
赤い月夜は化け物が出る…何ていうんだからさ。


本当に怖いのは、人間の方かもしれないけどね。

…おかしいな。

ああ、ローズ。俺にも何か一杯作ってくれないか？
それと、変な事を聞くようだが…俺が留守の間に、誰かギャラリーに出入りした奴を見かけなかったか？

どうも、物が動かされた形跡があるんだが…

じゃあねキャロル。
今度僕も、「深夜の相談」に混ぜてくれると嬉しいな。

ユージーンは、人が死ななくても穴を掘るような変人だよ？
トビー。

ああ、キャロル。また後でな…
って、お前！その首飾りは一体どこで！？

あ…いや、何でもない…。
とても君に似合っているよ…

って、ピーチジュース、ピーチジュース♪

でも、私はレディになんてなりたくないもん……。
そういうのは、シャーロットさんにお任せ。
私はお父様が何をやってるかも知ってるし、レディになったってお母様みたいに、つまんない人生が待ってるだけだわ。

ローズみたいな優しい人がお母様だったらまた違ったのに……ね。

（まずいな…ボスも面倒な事をしてくれたものだ…。
　あれは盗品だぞ？
　ひょんな事から足が付きでもしたら、どうするつもりなんだ、まったく…。）

ええ！？
そ、そうなの？
墓穴ばかり掘って･･･埋めるものもないのに何をやってるんだろう・・・？

こんな時間に、いったいどんな相談事かしら。お父さまも遅くまで大変ですわね…

赤い月…何事も起きねば良いがのぅ。

ロースマリーや…このババにも何か飲み物をくれぬかね？

へっ、ずいぶん羽振りが良いな、ヒューバートさんよ。
ちょっとくらいは分けてもらいたいもんだ。

……ふうん。

あんなの見せびらかしてて、あのお姉さんって大丈夫なのかしら？　

…本物なら随分不用心よね。

ふふ、なかなか個性的な方がお揃いのようですね。
自己紹介をする流れなのでしょうか。
私は見た通りの者です。迷いながらただ一つの真実を追い求めている・・・。なんて、誰もそうかもしれませんね。

キャロルさん、今夜のあなたのルージュ、とてもお似合いです。
軽やかなステップ、いつか披露して下さいね。

ローズくん、グラスが空になってしまいました。お替りをいただけますか。
どうか心持、濃い目で。

…君は？

ここらでは見かけない顔だが…

ギル、臆病者なんていうのは、自分の口にしたらおしまいよ。

ヒューにもグレープフルーツジュースね。
ギャラリー？私もさっき来たばかりだから分からないわ。
気のせいなんじゃないの？

…ほら、ユージーンそんな影にいないで…。
普通のリンゴジュースだよ。これならいけるでしょ？

ヘンリエッタ…つまらない人生なんて言葉どこで覚えたのさ。
…幸せって言うのはね…失ってはじめて気付くんだよ。
平凡な人生ほど、幸せなものは無いんだけどね…。

…見たとおりの者何ていわれてもね…
あんたの名前は、ないのかい？
心持、濃い目のおかわりね…。

デボラもオレンジジュースで良い？

僕に構うな、ローズマリー。

僕にさわっていいのは、さわっていいのは、シャーロットだけだ……。

あ、いやあ気にしないでくれ。
ちょいと気になっただけさ。

俺はギルバート。まあ今日の飲み代も怪しい流れ者さ。

おやぁ、人狼騒ぎかと思いきや、泥棒騒動かね。
いいねぇ。好きだよそういうの。楽しいし。

（嫌なガキだ…本物だから余計にタチが悪いんじゃないか…。）

あら。連れないのねユージーン。

ああ、かまわぬ…この老いぼれに優しくしてくれるのはローズマリーだけじゃ…。

しかし、春はもうすぐだと言うのに…この寒さは年寄りには堪えるのぅ…。

なんかだか、面白そうね…。

ふふ、ギルバートさんですね。
頼もしそうな方だ。面白そうな噂話があったらひとつ、お願いしますね。

私の名はナサニエルと申します。お見知りおきを。
この地方では少々発音しにくいかと存じます。
よろしければ、ナッシュとでもお呼び下さい。

嫌な噂が楽しいなんて言えるのは、平和な証拠よ…ね。

そうか…俺はヒューバートだ。よろしく。
この村で、ささやかな美術商を営んでる…

まぁ、一年のほとんどを買い付けであちこち廻っているから、留守にする事が多いがね…。

あぁ……。
今日もシャーロットは、一回さえも僕と目を合わせてくれなかった。そうだ、これはいつものことだ。シャーロットがまだ子供のころから、僕はただの一度もシャーロットに見つめてもらったことがない。

なぜだ、なぜだ、なぜだ……。
僕が悪いのか？　僕の片目がないせいか？　教えてくれ、誰か。誰か、誰か……。

そうか、どうりで派手にふるまっているわけだ。こちらこそよろしく頼むぜヒューバートさんよ。

ナッシュ？
どこかで聞いたことがあるような・・・気のせいか。
まあよろしく頼むぜ。

平和すぎて黴が生えそうな毎日だからねぇ。
何か変わった話が聞けるなら、人狼でも泥棒でもなんでもいいよ。

ナサニエル、だっけ？　何か旅先で面白い話とか、ない？

はは、気にしないでくれ。

きゃ！

ああ…すまない、気が付かなかった…。

…その腕は、この前の戦争でかね？

ナッシュね…。
ギルもナッシュもどこから来たのか知らないけど。

…なんでわざわざこの村に来たわけ…？

これ、ラッセル。
そう不謹慎なことを言うでない。

…とはいえ、あのアーノルドが皆を集めたとなると…
いやいや…人狼なぞ…。

今夜も僕は、シャーロット。あなたのために墓を掘るよ……。
僕にできるのは、墓を掘ることと埋めることだけだ……。

いつか、あなたと同じ墓に入ることができたら……。くっ、うふふふふ……。

いや、俺は戦争になんざ行った事がねえ。
だが、まあ訳ありって奴さ。

あん、何だローズ。何故この村に来たかって？

そりゃ・・・

・・・・・・

き、君に会いに来たのさ。ばっかだなあ。

デボラは、心配性ね…
楽しむ人たちよりはよっぽど人間らしいけど。

ラッセル、平和すぎて黴生えちゃう位が、人生としては丁度良いと思うんだけどね…

そうか…いや、すまないな。
つまらない事を訊いたようだ…

お詫びに一杯…どうかな？

ふふ、さて相談事の前に軽く腹ごしらえとしませんか。
ミックスナッツとライ麦ブレッドを持ち合わせておりますので。

ご婦人・・・、デボラさんですね。このブレッドにはチェリージャムの酸味が合いますよ。おひとついかがですか。一息つけましょう。

じん・・・・ろう・・・？
なんだろう。胸騒ぎがする。
あの月を見た頭痛とは・・・違う。
何かが起こりそう・・・。でも・・・・わからない。

…ギル、私とは初対面のはずだけど？
まぁ、言いたくない事があるってわけね。
人に知られたくない話の1つや2つ皆持ってるもんだし、無理に聞き出そうなんて思わないから、安心しなよ。

……ローズはいつもながら、妙に達観したことを言うね。
やっぱりジュースなんて売ってると、人生いろいろ見えてくるものもあるのかねぇ。

はは、こりゃ有難い。遠慮なく頂くぜ。

…トビー大丈夫？
顔色が悪いわ…ジュースの飲みすぎ？

ローズマリーさん… あの、オレンジジュースも頂けますか?

どうもさっきから喉が乾いて…

まあいいじゃねえか。

全てを知ってるのは月だけ、って奴さ。

ロッテ、あんまり飲み過ぎないようにね。

ギルの言う通り､全てを知ってるのは月だけ…で十分だわ。

何事も用心が一番じゃて。
人間、いつ何処で命を落とすか分からぬからのぅ…。

こんな月の夜じゃ、何が起きてもおかしゅうないじゃろうて…。

平和で黴がはえそうなのは、多分ラッセルだけだから……。
ま、ある意味、羨ましいわね。

月が赤いからって何かが起こるとも思えないけど。

ふう。まさかまた、この村に戻ってくる事になるとはね。なんてこった。あたしの人生、どこまでツイてないんだ。

追っ手から逃げて、赤い雀を追いかけて、赤い雀から逃げて……ふう。疲れたね。

月… 月は、全てを知ってるのでしょうか… 今まで起きたことも、これから起こることも…

………！

カ、カミーラ…孫娘のカミーラか！？

ああ…そうそう。ローズ。
来週辺り、また追加の「オレンジジュース」が届くそうだ。「農園主」がよろしく伝えておいてくれと言ってたよ。

…アチラも相当締め付けが厳しいらしくて、顧客が減る一方なんだとさ。

この村を出たのは……あいつが死んだ夜。もう15年になるか。なんにも変わっていやしない。相変わらずシケた村だ。

ふん、逃げてみせるさ。追っ手からも、赤い雀からも。

ロッテ、そうね…少なくても人間よりは知ってるでしょう。

…誰か来たみたいだけど…

ヒューありがと、いつも悪いわね。
人間には、オレンジジュースは必要なんだけどね。
偉い人には、分かってないのさ。

邪魔するよ。
ああ、ばーさん。まだ生きてるのかい。なかなかやるじゃないか？
久しぶりだね、とでも言っておくか。

……人狼だって？　ばかげた話じゃないか。あんたたち、本当にそんなもんを信じてるってのかい？

……どうやら、また変なのが来たみたいだな。
これだけ村に異分子が混じってきてるんじゃ、人狼騒ぎも案外本当なのかも、ね？

全てを知っているのは月だけ、ふふ、いい言葉ですね。

・・・お嬢さん、・・・不用意に赤い雀のことを口に出さないほうがよろしいのでは・・・？

…カミーラ…
…久しぶり…ね。

へっ、またべっぴんさんの登場かい？
どれどれ、どんな・・・

！？　ぐっ！！！！

そう言えば…さっきから人狼、人狼、と騒いでいるが…
一体、何の事だ？

（一体何が起きた？　あの・・・カミーラって
　　　　　　　　女性を見ただけで、頭が痛い・・・）

・・・いや、幻聴、かな。
ダンデライオンのようなお嬢さん、少し息が荒いようですが、大丈夫ですか。
疲れていらっしゃるようならそちらのソファーのほうが休まるかもしれませんよ。

ヒューバートさん… 人の中に、人の姿をした狼が潜んでいるという噂のことですわ。いくつもの村がその人狼に滅ぼされたとか。

…本当だとしたら、恐しい話ですわね。

はあ、はあ・・・

な、何だヒューバートさんよ、人狼の噂も知らないのか？

…とりあえず、グレープフルーツジュースでもどお？カミーラ。

へっ、そこのお嬢さん、よく知ってるじゃないか。
だが一つ間違っている。噂じゃない。

・・・事実だ。

カミーラや…まだ赤い雀のことを…。
もう危険なことはよしておくれ、娘にも、娘婿にも先立たれ、この老いぼれにはおぬししかいないのじゃ…。

……あんた。そこの帽子を被ったあんただ。

赤い雀を、知っているのか？　

赤い雀……この村に居れば、何かがわかるかもしれないと思っていたが……ふん。戻ってきたのは案外正解だったのかもしれないね？　じっくり調べさせてもらうさ。

人の姿をした…狼…？
（プッ…クックック…）ああ、いや失礼、失礼。

まったく…何を深刻そうに話しているのかと思ったら…
この科学の発達したご時世に、そんな馬鹿げた噂を真に受けるなんて、どうかしてますぞ？

あらあら。べっぴんマリーちゃんじゃないか。あははっは。元気そうだねえ？　相変わらず、男どもをたくさん従えているのかい？

あたしは貧しく、あんたは豊か。あたしは醜く、あんたはべっぴん。あたしが日陰なら、あんたは日向。

あたしたちの関係も、あいかわらずのようだね？

……なんだか変なの。
みんな、真剣に人狼なんて信じてるの？
後でルーサーさんが聞いたらお説教されちゃいそう。

そうそう、ギルバートって訳ありで面白そうだから、今夜の飲み代は私がおごってあげるね。
（腕がない人くらい……こわくなんかないわ）

……こんな時間か。
僕はそろそろ休むことにするよ。
アーヴァインの奴、何処ほっつきあるいてるのかねぇ。それこそ襲われてなきゃいいもんだけどね。

…ギル、なんで断言出来るのよ…。
まるで見てきたかのように話すじゃない…。

まあ、普通はそうだろうな。この村に出ている噂も、それで済めばいいと思っている。

人狼の話は単なる御伽噺じゃ。
…そこの若者、それ以上言うのはよしなされ。

事実、とやらに興味がなくはないわ。

でも、…あふ。
なんだか眠くなってきたから、私は今日はいい……。
『ピーチジュース』酔ったわけじゃないわよ？

…カミーラ嫌味はやめて頂戴…。

・・・じゃあお二人さん。この左腕、どうして失ったと思う？

ふう。

ばーさん。そうさ。あたしはこの人生ずっと、赤い雀に振り回されっぱなしだった。だからこそあたしは、その正体を見極めたいんだ。それが、どんなに危険な事であってもね。

もう、正体も分からないものに振り回されるのはまっぴらさ。それが敵なら、戦いたい。刺し違える前に、顔だけでも拝んでやるさ。まともな話だろ？

僕も・・・今日はおやすみなさい。
また変わらぬ明日が続いて居ますように･･･。

おおっと、ばあさんから叱られちまったから、この話はおしまい！ ってね。

おいおい、ギルバート君…
まさか、その「人狼」とやらにやられた…とでも言うつもりかね？

ははは…馬鹿馬鹿しい…

ヘンリエッタ、トビー、ゆっくりお休み。

……

ギルバートの分の代金も、ここにおいておくわね、ローズ。
おつかれさま。

よう、カミーラとか言ったね。どうぞよろしく。

あ、お母さま…

……そこの、片腕のあんた。何者だ？　記憶に無い顔だが……

はは、お嬢ちゃんに奢られるようじゃ、俺もやきが回ったってもんだ。