墓守 ユージーン 人狼。人狼。人狼だって……? あぁ、そんなものがいるのなら、この村の全員を食い尽くせばいい。シャーロットと僕だけが残ればいい。他はいらない。全員、この棺桶に詰めて、6フィート下の冷たい地中に埋めてやるよ。 ……あぁ、そうともさ。穴を掘って死体を埋めるのが、僕の仕事、役割、生きる目的だ。それだけだ。それだけ。あとにはシャーロットがいればいい。そうだ、それが僕の本心だ。何の邪念もない。……おお。なんて純粋な! こうして僕が毎晩暗い穴を深く深く掘り続けているのは、シャーロット。あなたのためだ。あなたの。わかってほしい。あなたは聡明で心のやさしい人だ。だから、僕のこともわかってくれる。そうに決まっている。……だろう? だというのに、……あぁ! どうして、神よ。僕とシャーロットの間に壁を作るんだ? この、目に見えない、厚さ一メートルもある鉄板みたいな、壁を。爆弾でだって吹き飛ばせない。どうしろっていうんだ、この僕に。 | |
(247)2005/03/26 05:48:57 |
墓守 ユージーン 月が……。血染めの月が笑っているよ。あぁ。まったく、きっと僕を笑っているんだ。笑えばいいさ。誰でも、好きなように僕を指差して笑えばいい。愚鈍で醜悪な墓守だってね。 ……そうさ。僕はスガメでチビだ。おまけにカネもない。何もない。他人より得意なのは、穴を掘ることだけだ。だから、こうして毎日穴を掘っているんだ。他に、なにも、することが、ない。そう、ないんだ。なにも。 いっそ、死んだらいい。あぁ、何度もためしたさ。首を吊ったり、川に飛び込んだりね。けれど、いつでも敵に回るクソったれな神は、なぜか僕を死なせることだけはしないんだ。遊ばれているんだろう、たぶん。あぁ、たぶんね。そうして、神は、暗く凍てついた墓所をさまよえと僕に命じるのさ。……なんて哀れな。くっくふふふふふふ。 | |
(248)2005/03/26 05:49:24 |