踊り子 キャロル 小百合さん。 お手紙を見ていらしてくださったのね。 [と言い掛けて、差し出された祝儀袋に戸惑う。 それでも素直に、丁寧な仕草でお辞儀をして受け取り、小百合に頬笑む。] …有り難うございます。 若輩者ですが、以後娼館を背負って行くのは、ご主人様にお世話になった私の仕事だと思って、精一杯頑張って行くつもり。 小百合さんに、こちらに来ていただくのは、…仕事中の私の姿をお見せするのはよく考えたらはじめてじゃないかしら。 [くすぐったそうな微笑みを見せて、再び座る様に促す。 女中に頼んで幾つかの菓子を運ばせた。 …それと、と思い出したように、] 今は辻切りだとか、屍が起き出して人を襲っただとか。 只でさえも、騒がしい地域なのに不穏なのよ。 小百合さんも色々な場所にお出掛けすると思うのだけど、気をつけなくちゃ駄目よ……? | |
(400)2006/09/02 00:08:26 |
踊り子 キャロル [裴妹も同様に椅子に、今は脚を揃えて上品な仕草で腰掛ける。道の真中を本当に歩いて来たのだろう小百合に、] …そうでしょうねえ。 小百合さんは、良い家のお嬢様なのでしょうに。 ああ、不穏と言えば。 友人の貴女だから打ち明けるのだけど、昨夜、奇妙なお坊様がこちらに来られたの。気が付けば中庭にいらしたのだけど。 あの世とこの世の狭間に落ちた屍鬼を追って──此処へ辿り着いたとおっしゃるの。水盆の事は話した事があるわね。影見によって暴かれるであろう屍鬼が、寧ろその水に惹かれて此処に来るかもしれないと、お坊様──阿瑪韵と名乗った裸足で縮毛の僧──は、おっしゃられて。 屍鬼の退治の為に此処に留まりたいとおっしゃったわ。そしてまた、見回りに行くとふらりとまた出て行かれてしまったのだけど。 ええ、苑と主干にだけは、時勢が時勢だから用心を厳しくしてねとは言ったものの、まだ店の者には誰も話してしない…。小百合さんはどう思う? | |
(412)2006/09/02 00:31:57 |
未亡人 オードリー ウォン様、ですね。 少し痛むと思いますけれど、耐えて下さいませ。 [ドレスの袖をまくり上げて紐で固定する。白く細い腕があらわになる。血がにじみ出る脇腹に気にする風もなく手を当てる] 骨には異常はないようですわね。薬を付けて包帯で止血するだけで大丈夫かと。 [白い指先を赤く染めながら、怪しげな緑色の軟膏を塗りつける] 先代様が愛用されていた薬師が作ったそうですが、切り傷などにはよく効きますのよ。 かなりしみますけれど。 [ウォンがうめき声を上げるが、無視して手早く包帯を巻き、目の方を確認し始める。頬を両手で挟み、唇の側で甘く囁くように話しかける] もう少しだけ、辛抱なさって下さいませ。 [目の方はかなり酷いようだった。薬が効くかはわからない。だがほおって置くわけにもいかない。 少し考え、目には触れずに周りにのみ薬を塗り込んで包帯を巻いた] | |
(413)2006/09/02 00:37:07 |
踊り子 キャロル お坊様は、西本願寺の方ではなかったのよ。 それがまた…気掛りで。 屍鬼には実は操り手が居て…それは軍が黒幕だとか、屍鬼を操り租界を占領しようとしている新興集団があるだとか──。流石に、それは流言に過ぎないのではないかと思うわ。得体の知れぬ、人死が増えたのは事実として。 [今日、キャロルとして1人の中国人を海に沈める判断を下した事をふと思い出し、でも…それにしても多すぎるのだものと、嘆息しつつ。] 影見は見る者が見れば、真実の姿を映し出すと先代は申しておりましたわね。水盆の元の持ち主は旧家の納屋から錆びかけた盆を運び出す時に、其の様に。ご主人様も同様におっしゃられていた。 けれど。 今までは、そのようなこの世ならざる何かを見た者は無かった。 [貴女には、不安を簡単に打ち明けてしまえるものなのね。いけないと、微笑。楽しいお話をしましょう、と首を傾ける。 ──その頃の中庭。 先刻、黄力が倒れたと思しき血の跡の傍に、また一つ誰にも知られずにひっそりと蹲る影が有る。阿瑪韵、それがその僧の名だ────。中庭には新しく微かな血の匂い、それは何処か腐臭を帯びた。] | |
(426)2006/09/02 01:03:46 |
見習い看護婦 ニーナ その様な流言はいつの世もあるものでしょうが… そうですわね、屍鬼のお話よりはお茶の香りを楽しみたいものですわ。 [小百合は鈴の音の様にコロコロと笑った後、ふと王裴妹の髪に目を遣って、あっと小さな声を上げた。] すっかり忘れていましたわ。これは御祝儀ではありませんが… [小百合は右の袂から市松文様の小さな紙袋を取り出だし、袋の中身を右の掌に載せた。それは琥珀色の簪(かんざし)であった。] 随分前に、古物商の軒先で見付けた洋髪用の簪ですわ。鼈甲に真珠鈴蘭文様の彫りで… 裴妹さんの御髪に合いそうだと思い買ったものの、なかなかお渡しする機会もなく手元に置いたままになっていたもの。お気に召すか分かりませんけれど… [小百合は王裴妹に簪を手渡すと、目を細め、その整った顔に柔らかな笑みを*浮かべた*。] | |
(431)2006/09/02 01:15:44 |