見習い看護婦 ニーナ [オードリーの視線に、朱苑は寂し気な笑顔で応えた。] 「みんな、僕を疑っているんだな。」 [朱苑は今一度肖琅に今生の別れを告げ、二胡を彼女に託した。彼はしばし肖琅の顔を見つめていたが、やがて身を飜すと中庭の中央に歩を進め、立ち止まって辺りを見回した。] 「僕は屍鬼なんかじゃない。僕を殺したところで、この悪夢は終わらないんだ。」 [朱苑は肩を落とすと、皮肉な笑いを浮かべた。] 「だけど、それを知っているのは―― 肖琅だけなんだ。」 [朱苑は顔を上げると、その居ずまいを正した。若さに似合わぬ落ち着いた振舞い。長衫と袴子に身を包んだ彼は、自らの死を受け入れた様であった。] | |
(17)2006/09/07 00:14:31 |
墓守 ユージーン [己がニィアと鳴くと、 頬を涙で濡らし口元を血で汚しているご主人様は儚く笑んだ。 厨房にあった刃物を手に握る。] 私は本当に莫迦だ。 もっと早くに覚悟が出来ていれば。 斯様な事にならなかったのだろう。 私は今日にも死ぬやもしれぬ。 屍鬼ではなく、同じ人間の手に拠って。 猫目。 お前頼まれて呉れないか。 何々、大層な事ではない。 お前は何時もの塒に帰ればよいだけだ。 [すり寄った己を抱えあげると、ご主人様は小さな2cm四方の薄い紙を折り畳み茶色い紙に包んで厳重に封をすると己の口へと呑み込ませようとした。 己は苦しくて仕方がなかったので骨ばった指を思い切り噛んだり、爪を突き立てて抵抗したのだが、あまりにもぐいぐい押し込むものなので己はとうとう呑み込んでしまった。 毛玉を吐き出す要領でゲーゲーしてみたが、己の腹に収まったものは吐き出されそうにもなかった。ご主人様はそんな己を見て、してやったりと普段より儚い顔で笑っている。 人間というものは普段より酷いものだと思っていたが、こうなってはご主人様も同類なのかと己は哀しく感じたのであった。] | |
(36)2006/09/07 17:27:10 |
ごくつぶし ミッキー [ハンは過去の事を思い起こし考え込む。] オードリーさんと小百合さん、この2人は対象的だ。 オードリーさんはユァンと平松さんが影見をされた時、ユァンよって、影見に名をあげられている。 だが、この日は影見が交互になる事が濃く考えられる日、仲間である事ぼかすには都合の良いように思える。 そして翌日もユァンは強く疑われる中、オードリーさんを推している。 メイの目からオードリーさんをそらすためなのか、あるいはそう思わせて人に疑いをかけようとしているユァンの策なのか……この辺は判断が難しいところだ。 逆に小百合さんはユァンからあまり触れられてこなかったような気はする。そして、疑惑先と言うか誰が屍鬼なのかと言うことへの言及がオードリーさんより薄い気はした。 この辺は、屍鬼だからなのかとも考えはしたが、そういった態度を取る事は疑惑を招く要因にもなるはず。 屍鬼なら、もう少し人らしい行動を繕うのではという思いもある。 | |
(41)2006/09/07 18:59:23 |