見習い看護婦 ニーナ [黄力が抜いたナイフの刃がギラリと輝き、周囲の目を引き付ける。小百合は黄力の姿を見咎めた。] およしなさい !! まだ誰が屍鬼とも分かりませんのに、そのように物騒なものを持ち出すだなんて。女子供相手に凄むだけではなにも解決しますまい。玉児が怯える前に、そのナイフを御仕舞なさい。 さあ、早く !! [黄力は、小百合の言葉に激昂した。] 「日本人風情が気取りやがって、誰が屍鬼だか分からんなら、そいつは他所者のお前かも知れんだろうが !!」 [言うと、黄力はナイフを握り締め、そのままの勢いで小百合に切り付けた。小百合はすんでの所で切先を避けたものの、着物姿でそれ以上逃げることは叶わず。後に転んで尻餅を付き、只々黄の兇刃から逃れようと後じさった。] | |
(4)2006/09/04 23:33:16 |
未亡人 オードリー [しばし考え込む] 今のところ影身候補は二人……。 二人が疑った者は平松様と苑。 お坊様は屍鬼は二人だと言っていたはず。 そして、屍鬼に惹かれたものが一人……。 皆にこの声が聞こえたのなら、屍鬼にも当然伝わっているはず。 惹かれたものが手伝いをするのが確実であれば…… 少なくとも一人はぎりぎりまで隠れるのではないかしら。 媚児と悠迅様のどちらかは屍鬼か惹かれたもののどちらかなのでしょうね……。 その二人が影を見た者二人とも生きている人間。 でもどちらかが嘘をついている可能性がある。それならばお互いが見た相手の影を見て欲しい。 どちらから見ても生きていればその人は信じられる人と言うことだから。 | |
(20)2006/09/05 00:33:49 |
見習い看護婦 ニーナ [悠迅の手で黄力の骸が取り除かれ、小百合の体は漸く自由を得た。しかし、彼女は動けぬ。自ら動こうとせぬ。] 「大丈夫ですか?」 [差し延べられた手をしばしぼんやり眺めていた小百合であったが、やがてその意味に気付き、自らも手を差出して悠迅の手を取った。強かに打ち付けた腰の辺りに鈍い痛みはあるものの、体に大きな傷はない様子。小百合は悠迅の手を借りつつ、のろのろと立ち上がった。 裾からは未だ黄の血が滴り落ち、長い袂の先も裾の末も、そして足袋もその全てが塗り潰され、禍禍しい紅に染め抜かれて居る。その立ち姿は、宛かも血の池にその身を浸した天女の如くであった。] | |
(78)2006/09/05 15:48:54 |
学生 ラッセル ―中庭 水場― 肖琅さんや范さんに問われてるけどね。順を追って説明したい。 僕が力があることに気づいたのは井戸を覗いた時だったけど、仮にもっと前から自分の力に気づいてたらという地点からしか話ができないから、その前提で話す。 僕は、影見二人から影を見られて、なおかつ名乗り出損ねるという事態を避けたかっただろう。人知れず襲われかねない。 かといって、影を見られた僕が一人だけ霊視と名乗りを挙げると、影縛りの守り手が影見から外れる心配があった。 だから、肖琅嬢の正体を見定めたかった。 影見が誰に決まるか、また影見の真偽を知りたかった。 肖琅嬢がずっと明瞭に力をあらわさず、同時に僕以外の影見になったなら、僕はあと少し隠れることを選んだかもしれない。影見を守るために。 | |
(82)2006/09/05 16:54:33 |
学生 ラッセル 肖琅さんが言う「お坊様と―」というのは、刻が変わる少し前のことかな。記憶を振り返ってみたけど、それより前ではないよね? これ、范さんにも誤解があるけど、この時はさすがに影見より霊視かと思ったよ。影見であって欲しかったという先程までの僕の感慨は、感情の話だ。 でも、肖琅さんは独白めいた口調だったし、問いただしていいものかと。それ以上に、媚児と話し込んでいたから。 この時、媚児と会話中で中座しにくい、喉が嗄れかけてた、でも自分も早く名乗り出る必要がある、そういう状況だったんだ。 肖琅を問いつめて喉を涸らす前に、媚児との会話に目途をつけて席を立ちたかった。 だからね、ずっと前から自分の力に気づいていたとしても、あれ以上早く名乗り出るのは難しかったんだよ。 | |
(83)2006/09/05 16:55:09 |
ごくつぶし ミッキー 悠迅さん、あなたから見ればユァンは人だ。霊視を名乗るのは驚いたかもしれないが、俺はユァンが屍鬼ならば、霊視を名乗って影身を避けようとする可能性も考えておりました。 そして、その方法を残したいが故に、事態に前向きながら己の力の有無をはっきりさせたくなかったとも疑っていたのは、昨日述べたとおりです。 そしてユァンが屍鬼で霊視を名乗るならば、霊視は2人となり、潜む屍鬼は1が濃厚。そして影見はほかの物に使えばよい。 そうなるならば、ごたごたする前になって欲しいと言う希望を含めての言動です。これはユァンが本物の場合でもそうして欲しい気持ちはありました。 まあ、結果的にはごたごたでしたがね。 | |
(96)2006/09/05 19:56:28 |
学生 ラッセル 范さん。 あなたは色眼鏡をかけてるんじゃないですか? それともやはり屍鬼なんですか? 僕を力の有無をはっきりさせなかったと言いますが、なぜ一旦何らかの能力があるとほのめかして影見を避けた肖琅さんには言及しないんでしょう。 僕が屍鬼だったなら、どうしてボーイとしての仕事で走り回って目立たなければならなかったのでしょう。 僕は、それがこの館にいる人たちやお客様をもてなすことだと考えてました。 ごたごたしたくなかったのは僕も同じです。そのために、ずっと前から皆に働きかけてきました。 肖琅さんや皆の責を置いて、僕だけに咎を負わせたい理由があるなら是非もないことですけどね。 | |
(98)2006/09/05 20:03:35 |
学生 メイ [サロンへと走る途中、范に声を掛けられ立ち止まった] ──理由にならないかもしれないけれど。 あの時、水盆に呼ばれた気がしたんだ。早く視なきゃ間に合わないって。 何故かそう感じたんだ。 それに、あの時のあたしには黄さん……結果的に人だったわけだけれど……と、彼を人と思った苑が気にかかった。誰にも本当のことはわからない状況で、そう思えるのは何故だろうって。 "影見"と名乗った文士さんや、"霊視"だと言う肖琅姐姐は最初から考えから外していたし──確かに、他に意識を向けられなかったことは事実だね。 [ぎゅう、と手を握り締め目を伏せた] ……黄さんが言った通りだ。知ってる人を疑いたくなくて、結果的に人である黄さんを殺してしまうことになってしまった。 生き残る為には、甘い考えは捨てなきゃいけない……んだよね。大兄。 | |
(101)2006/09/05 20:07:52 |
踊り子 キャロル 私は影見の相手をお互いに交換するとほぼ決まった段階で、都合良く、自分は霊視が出来るのだと…言った苑を疑ったの。 その気持ちから、媚児に苑を見て欲しいと思ったし。それに刻が過ぎて行く中で、皆が慌てて、影見の先が曖昧になるのを避けたかっただけだわ。 貴方と同時に影見に映された平松さんの事を、私はあまり屍鬼だと思えなかった。他も人も口にしていた様な気がするけども、誰かを殺そうと武器をガチャガチャと手にして、中国人をチャンコロと言って噛み付く。そんな態度では、いつ誰に逆恨みされて殺されてしまうか分からないわ。 そんな無防備な人が業の深い屍鬼には見えなかった。 逆に、いつも通り忙しくしていると言うのは、ただの常かもしれないけども、変質してしまった自分を誤摩化そう、隠そうとする心理かもしれないでしょう。 | |
(106)2006/09/05 20:23:02 |
ごくつぶし ミッキー ただな、ユァン、俺にも恐れはある。それは今疑っているお前が本物で肖琅が偽だった場合への恐れさ。 俺が今考えている事、それは人非人と思われても仕方のないことだ。だが、店を守るために自身も鬼にならなければならない必要性も感じているぜ。 俺はなユァン、今日から霊視を名乗るもの2人共葬り、その間に影見2人に残る者の影見をさせると言う方法を考えているのさ。 御坊の声によると、影縛りって屍鬼の動きを封じる奴がいるらしいからな。少なくともその間はそいつに手をかけなくてすむだろ? 結局最後は誰と何を信じるかというと言う事になるんだろうが、判断すべき材料は増えそうだ。 [そこまで言って、ハンはふと視線を落とす。] ……俺もこの狭間で何かを失いかけてるのかもしれないな…… 遠慮なく罵ってくれていいぜ。 | |
(117)2006/09/05 20:35:59 |
見習い看護婦 ニーナ 皆、同じなのです。此処に勤める人達は、私が裴妹さんを知るよりずっと深くお互いの事を知っているはず。それなのに… 異界に墮ちた途端、誰もが右往左往して、誰が屍鬼なのか、誰が影見なのかも分からない。彼等にすら分からぬなら、私にも分からぬが道理。元々言葉すら交したことのない者達ばかりなのですから。 そうして、彼等にすら判断が付かないのだとすれば… 此処に居る裴妹さんが本当に私の知る裴妹さんなのか、玉児ちゃんが本当に玉児ちゃんなのか、それすら分からないことになってしまう… 一体、私は何を信じたら良いのでしょうか… [彼女の目には涙が溢れ、それは綺麗な弧を描きつつ彼女の白い頬を流れ落ちていった。] | |
(125)2006/09/05 20:43:22 |
未亡人 オードリー 私は、肖琅がはっきりとさせなかったことに疑惑は持ったわ。 黄様を「霊視」したときも実はすぐに気付かなかったのよねえ……。 ただ、もっと気にかかったことは、苑は肖琅に力があることに気がついていた事。 周りの方々は肖琅に力があるという話をしていたし、影見ももう二人でている。 肖琅はその二人の影見には何も言わなかったわ。 それなら、早い段階で能力のある者は霊視しか残っていないことに気がついている。 でもあなたの肖琅への態度は自分が霊視だとわかった後も変わってないように見えたわ。 霊視だと言い始めたのは、影見がお互いに相手が見た者を見るような流れになってから。 霊視を名乗らずに影見に見られたら、影見と霊視がはっきりと皆にわかってしまう。名乗るしか無かったのではないかと思ったわ。 | |
(137)2006/09/05 20:59:54 |
学生 メイ 視るべきは──誰か。 胡大人が何も言わないのは気になる。けれど、それだけだといえばそれだけで。 ……屍鬼は目立つことを嫌う。だったら他の人と同じ様に黄さんを疑うことで隠れようとするかもしれない。 けれど屍鬼である苑は『黄に殺意を向けたは誰か』と言った。そんなことをわざわざ言うのは、なんか変。 ああでも。そう思わせることでもう一匹に向かう視線を逸らすことが出来るかもしれない。 ……二姐。苑の口から二姐の名前が出たことは……無かったように思う。 おっちゃんは人。それは証明されている。 そして、苑が同列に置き疑っているというオードリー姐姐。あたしと文士さんは、まあ別として。 あたしは、二姐を視たいと──思う。 | |
(147)2006/09/05 21:12:10 |
踊り子 キャロル 私も一緒に行くわ、媚児。 二階にいる小百合さんにお茶を運んであげたいから。 私も随分長い間、自分でお茶を煎れていない。 [と行きかけて、振り返る。] オードリー。 確かに苑と主半が同時に屍鬼であるとは見えないわね。 私もそう思う…。 けれど、私が引いて話してみえるのは、何故にか苑が私に言葉を柔らかく選んで話す所為ではないかしら。別に影見の対象に成る事自体はどうと言う訳では無いけども、そこら辺を思い返してみてね。 苑は今、強く疑われている。 苑が屍鬼に成り果てているのなら……疑われるついでに、無実の人を、1人でも多く黄泉へと道連れにしようとするはずだから。 | |
(162)2006/09/05 21:35:47 |
見習い看護婦 ニーナ [小百合はシャワー室に入った。そこは浅い洋風の浴槽とカーテン、それに真鍮の小さな洗面台があるだけの、酷く簡素なものであった。彼女は手早く帯を外し、脱いだ着物と一緒にカーテンレールに掛ける。血に汚れた裾を目の前にして、小百合は再び暗澹たる心持ちとなった。] 酷い染みね。きっと、もう落ちないわ… [例え血の染みを落とせても、血の記憶まで落とせはせぬ。真青と白のグラデーションは既に失われ、白を別の色に塗り込められた青は、最早息絶えている。 小百合は山吹色の半襟と臙脂の襦袢もレールに掛けると、着物の一切合切を部屋の隅に押し遣り、血に固まった足袋を足から無理矢理引き剥がして部屋の屑入れに放り込んだ。] | |
(174)2006/09/05 22:16:24 |
学生 ラッセル [僕は、肖琅と僅かの別れをし、使用人部屋の文机に向かった。刻が変わるまで、あまり時間がない。急ぎ、文をしたためる] ―― 悠迅さん。 貴方は、僕にとって真の影見。どうか、この館の皆を救って欲しい。 ここには、僕にとって大切な人が幾人もいます。 例え貴方が真の影見だと受け入れない者がいたとしても、貴方が屍鬼に魅入られた者であれ、人であると―― 皆も、そのことだけは受けとめてくれるでしょう。 貴方はきっと人なのだと。 だから、必ず無事にここから出て欲しいと願っています。 日本へ帰れる日があることを―― 僕も、できればいつか、四国を訪れてみたかった。 左様なら。 ―― | |
(189)2006/09/05 22:51:59 |