人狼審問

・・・。

[・・・休憩室から銃声が聞こえた。
...の姿はいつの間にやら消えており、メイの喉元に銀色の毛色をした狼が牙を剥いていた。]

・・・ウガガガ・・・・。

[狼は返り血を浴びて身体を赤く濡らしている。]

［銃声で目が覚めた］

いつも聞こえるの…
聞こえると…人が少なくなるの…

[銀色狼は体を震わす。そして、広間にいるリックを見つめる。]

・・・グルルルル・・・

[リックを威嚇し、じりじりと近寄った。]

[シェークスピアの本に目を落とし・・・]

最悪の瞬間ね・・・最悪の瞬間・・・

僕らにはもう・・・関係ないことかもね・・・

もう・・・・関係ないさ・・・

人への疑い・・・死への恐怖・・・

もう・・・どうでもいい・・・どうでも・・・・

[・・・狼は途端に悲しそうな表情に変え、目から涙が溢れる。]

・・・ナゼ・・・ナゼ、ワタシヲココニトジコメタ・・・
・・・ナゼ、オサナキコドモニマデ、キバヲムカナクテハイケナイノデスカ・・・？

[・・・狼はみるみるうちに元の...に姿を変えた。]

・・・。後はあなた達だけです。

・・・なにか言うことはないのですか？
・・・最後ですし・・・聞きますが。

[...は目を閉じると、リックの言葉を待つ。]

・・・・なるほど。

・・・・そうか・・・

君が僕を死へといざなう・・・天使なんだね・・・

［ホテルの中を、メイの姿を探して歩き回っている］

メイちゃん……どこ？
誰も居ないの、リックもどこに居るか解らないの…

ふふふ・・・

あははは・・・・はははははーはっは！・・・

・・・天使、ですか。

[...は溜め息をつくと]

・・・どちらかと言うと・・・死神でしょうけどね。
・・・あなたは恐くないのですか。死ぬことが。

くくく・・・・

一つだけ聞かせてくれるかい？

コーネリアス・・・僕を生かしておいた理由をね。

・・・。

理由ですか。
・・・なに、至極簡単なことです。

ウェンディが悲しむからですよ、あなたが居ないと。

・・・・。

なるほどね。

人狼も皮肉を言えるのかい？・・・勉強になったよ。

・・・メイさんを襲ったのも・・・。ケネスと共に逝って欲しかったから。

・・・ハーヴェイさんを襲った時は・・・あの時狂気に飲まれてましたが・・・
ローズさんを襲ったのはハーヴェイさんの下へ逝かせるためです。

引き裂かれる痛み、私は存分に味わいましたから。

・・・シャーロットはもう居ない。

[...は表情を崩さずに涙を流した。]

[...はリックに]

・・・覚えておいて下さい。
狼は決して仲間を裏切らない。

[...はそう言って引き金を引き・・・銃声が広間に響いた。]

僕が疑っていたものが、真実を語り、僕が信じていたものが嘘をついて、こうして僕の命を絶ちにきたというわけだ・・・

・・・ははは！

ずいぶんとよくできた皮肉だね！

［遠くで、声がしている］

リックぅ〜、ケネスちゃん、コーネさん……

メイちゃん

［座り込んで泣き出してしまった］

（ウェンディ・・・にげて・・・）

［聞こえないリックの声が聞こえる］

リック？
リック！！

・・・。ウェンディ・・・

[...は穏やかな表情のままウェンディに近寄る。]

どうしましたか。そんなに涙を流して。
リック君がどうかなさいましたか？

［体の半分を引き裂かれるような痛みを感じ］

………リック？どこ？
リック、リック、リック、リック

リックは？
リックが居ないの
何処にも居ないの

いつも、心の半分に居たはずのリックが居ないの

［手にしたラピスラズリが割れている］

………リック…

[...はウェンディの状態を見て、ふと微笑んだ。]

・・・大丈夫です。

[...はウェンディの目を手で覆い銃口をこめかみ辺りに当てた。]

今なら、急げば追いつきますから。

[にっこりと微笑むと、ためらわず引き金を引いた。]

・・・。

[銃声が鳴り響く。・・・そしてウェンディが息を引き取るのを確認すると、]

・・・これで・・・良かったんでしょうか。
・・・。

[...は溜め息をつくと拳銃をベルトに戻す。]

・・・旅行の続きです。

[...は決心したように言うと、銀色狼の姿で宿を出て行った・・・]