書生 ハーヴェイ メイ……。 お茶会で見かけた時の貴方の印象の事を思うと……。 「死者の祭典」に現れた事も、ナサニエルをトリムルティだと告げた事も、そして遂に「私をトリムルティだ」と言い出した事も、驚きの連続でした。私の事に話が及ぶまでは、貴方が本当に【見える者】でナサニエルがトリムルティなのだろうかと迷った……。勿論、今もナサニエルの事は分からない訳ですが。 [メイの質問とその後の言葉に対して、] 其の主観的なストレートさがメイの魅力なのかもしれませんが、残念ながら私には意味を持たない言葉です。 メイは二重人格や虚言癖でもなれば、嘘はついていないと思います。私の眼から見ても。……しかし、貴方が何かを見ているのは事実かもしれませんが、其れを果たして真実だと断言する事は出来るでしょうか。 | |
(217)2006/01/22 01:32:28 |
牧師 ルーサー [周囲がざわめいているのに気付き、跪いた体勢からゆっくりと立ち上がり、周囲を見渡した] ……今度はハーヴェイさんがトリムルティだと仰いましたか? ……まあ、私はハーヴェイについては主にお伺いしていませんが……正直、こうもすんなりと反逆者を見つけたと言えてしまうのも、何となく違和感がございますね……。 メイさんはこのような血生臭い場所に来られるのは初めてのようです。恐慌のあまりに混乱してらっしゃるのでは?……正直、先程からあまりにおびえていらっしゃるので心配です。 ……少なくとも、気を強くお持ちなさい。貴方は何の為に此処にいらっしゃったか、そしてこれから何の為に行動するのか、それを考えれば……自ずから、答えを出せる方だと信じていますよ。 [と、ここまでメイに対して諭すように言うと、ナサニエルの異変を横目で見やった] | |
(231)2006/01/22 01:57:25 |
牧師 ルーサー [ナサニエルがよろよろと立ち去っていくのを興味なさげに眺めた後、メイに向かって] ……私は怖くありません。 私が生きているべきならば、主は必ずや御守りくださいます。 信仰を貫いたまま命をまた落としたとしても、それは信仰の上の死……「殉教」です。 主はそのような者を神の国へと導いて下さいます。私はもうそれを経験しました。故に、死すらも怖くありません。そもそも封印が即ち死を意味するのかすら解りませんが……。 ですが、無為な闘争は主の御心に反します。故に、トリムルティの行為を主はお許しにならないでしょう。 貴女がそのように信じるのならば、自ら見た物を信じなさい。貴女が私と違う物を見ることがあるならば、その時にまた考えましょう。 その憐れみの心を忘れずに…… [そう言うと、笑顔でくしゃくしゃと頭をなでた] | |
(240)2006/01/22 02:24:14 |
書生 ハーヴェイ [ナサニエルからは眼を逸らさずに、セシリアに向けて話す。] 何故彼が私の恩人かと言うと……、セシリアにもネリーにも見せなかった私の戦闘形態を偶然彼が知り、助けれくれた過去が有るからです。 [あの日の木漏れ日を思い返す様に瞬間的に眼を閉じる。ナサニエルが蹴りを放つのが気配で分かった。] 醜い姿です……。 ………貴方には、お見せしたくなかったのですが。 [そう言って微笑したハーヴェイの背中の肩甲骨のあたりから、暗赤色に濡れた腕が2本、唐突に生えた。1本は腹部の傷を庇う様に身体を抱き、もう1本は掌を広げナサニエルの蹴りを受け止める。 ハーヴェイはその隙に本来の右手を床に付き、蹴りを受け止めた反動で素早く回転する様にして、ナサニエルと距離を開けた。] | |
(264)2006/01/22 03:19:50 |
書生 ハーヴェイ [まるで理性を失ったかの様な姿で、ナサニエルの身体能力は極まっている様に見える。ハーヴェイの叫びはナサニエルに届く事は無く、投げ飛ばされたハーヴェイは、階段に背中を強かに打ち付け、ナサニエルに切り裂かれながらもなんとか傷口を庇っていた手がぐにゃりと嫌な角度に折れ曲がり、離れた。] [その時、セシリアが栞を放ち、ナサニエルの南京錠に阻まれるのが、昏倒し斜めになった視界に映った。] 駄目だ、セシリア!! 貴方が危ない……っ。 ……ナサニエル!! [ハーヴェイの感情は絶望のボルテージが上がり、軋み、頬には何時しか一筋の涙が流れている。ハーヴェイは体が次第に熱を帯び、或る変化を始めた事を自覚した。警鐘の様に心臓の音が聞こえた。] | |
(279)2006/01/22 05:10:05 |
牧童 トビー ―壁龕― [闇の中でささやく。] 「女神」よ。母の母なる方。 僕はあなたの不可視の大鎌の刃、あなたの月光の紅の一滴です。 どうか僕の裡にある悪夢を鎮め、死の平穏へと導いてください。 安らかな消滅を与える者であるに、相応しくあるようにと。 僕はまだ死ぬべき刻の至っていない者を殺しました。 彼の憎しみが許せなかった……。 人間はいつもずるい。 護るべきものがあれば、殺していいのだというなら……。 アルバが殺した死神たちはどうなるのですか。 その死に異議を唱える資格さえ、彼らにはないのですか……。 僕は……、彼らの記憶をあなたのもとへ還すことさえできなかった。 僕は……、僕は……彼らのために戦うべきじゃない。 そんなことは解っている……。 もしそれがあなたのご意思なら、僕らは皆ここで死ぬべきです。 そんなことは解っている……。 | |
(307)2006/01/22 20:58:07 |
書生 ハーヴェイ ─壁龕─ [ハーヴェイの生前の記憶が蘇る。 ……未だ、姉が生きていた頃の記憶。 ───油絵の具とシンナーの匂いのする部屋。 引き裂かれたキャンバスが何枚も転がる、其の隙間にフローリングの床が見える。 ハーヴェイは、愛する姉の悲痛な叫び声と、何度も何度もペインティングナイフを突き立てられる痛みに耐えている。 『姉さん……。』 ハーヴェイは呟きながらも、姉を見ない。 何故なら、ハーヴェイによく似た色の姉の瞳には、彼の姿が映らない事を知っていたから。……もう何年も、狂気に飲み込まれていた彼女の瞳には、彼女が愛し、裏切られ、傷つけられた一人の男しか映っていなかった。 | |
(312)2006/01/22 21:53:30 |
書生 ハーヴェイ 男は世紀に名を残す天才画家で、ハーヴェイの姉も其の男と関われなければ、その男を愛さなければ……、或いは女性で無ければ、男よりも才能を発揮する事が出来ただろう。 彼女を裏切っては、追い詰める男。 身を引こうとすれば、 雪の中何時間でも彼女の名を叫び続け。 彼女の芸術の魂に激しい炎を灯し、 そして其れを根刮ぎ奪う。 男の才能は確かに誰の目にも明らかだったが。 男と関わる事で、社会的な信用を失い、発表の場を失い、作品内容の同化…とも言える類似、裏切りと報復、悲鳴をあげ歪んで行く精神、発揮出来ない才能、入退院と自殺未遂、殺人未遂……。 『彼女が、私に何かを望めば』 また違っていたかもしれない。 だが、姉が求めていたのは、その男だけだった。 ハーヴェイは姉が追い詰められて行くのを、只、傍で見守り続けた……。] | |
(314)2006/01/22 21:56:29 |
書生 ハーヴェイ [嵐の様な毎日は唐突に幕を下ろした。 突然道に飛び出した姉は、ハーヴェイの目の前で事故死したのだ。 男が好んで着ていたのと似たコートを着た人影が見えた……。姉は男の幻影を追いかけて勝手に死んだ。 ハーヴェイに、唐突に空虚が訪れた。 等に両親を始め親類とは縁が切れていた。嘗て華やかだったサロンからも遠離っていた。ハーヴェイは姉と暮らした家で独り、酒に浸りながら小説を書いた。] [只一人ハーヴェイを支えてくれたのは、当時新米記者だったソフィ。執筆を静かな情熱で支えながら、立ち直る事を願ってくれて居た。] 私は彼女の好意を知っていた。 とても感謝していた。 今でも、私の最後の小説が出版されているのを見る事が出来るのは、 | |
(315)2006/01/22 21:57:39 |
冒険家 ナサニエル [「…ナサニエル」 エミリーの声が聞こえる。 ヘンリエッタに似た赤い髪の女の子だ。 ナサニエルが血の騎士になった切欠… 思えばエミリーも救えなかった。 両手を赤く染めて、エミリーはあの時床に座り込んでいた。 それまでもナサニエルは、人が些細な理由で迫害を受け、理解の齟齬から争いが始まり、血は血を呼び死は死を呼ぶ事を見つめてきた。何故こうも、人は理解を容易く手放してしまうのだろうか。 その結果が弱き者が数多く死に強き者が跋扈する世界。…しかし、その強き者もまた苦しんでいる] [私はどんなに命を取り落としてきた事なのだろうか] [嘆きに満ち諦念に覆われた世界を見てきた。 私が出来る事は何なのだろうか。彼らに少しでも希望を与える事は出来るのだろうか。それとも何も出来ないまま、死神としての生を終えるのだろうか] | |
(332)2006/01/22 22:27:08 |