学生 ラッセル ["仕事"が楽しくなる事はなかったが、それでも本能はその生活 に慣れる事を選択した。 そして、諦めの中でこのままずっと続くかと思われた生活は、 ある日突然終焉を迎える事となる。 両親が彼を迎えに来たのは、彼が町を訪れた三年後の秋だった。 少年時代をあの町で育った父は――おそらくいろいろと察して いたのだろう――ラッセルを抱きしめ、ただ一言、『済まない』 と言った。 ラッセルは、そんな父を無感情に見詰める事しか出来なかった。 皮肉な事に、生まれた街に戻った彼は、それまでが夢か幻かと 思う程に丈夫になっていた。 三年振りに戻ってきた故郷は何ひとつ変わっていなかったが、 彼は深呼吸をして、心から『空気が美味しい』と思ったのだった。] | |
(45)2006/07/20 23:51:23 |
流れ者 ギルバート [ギルバートはトビーの行動に付き添おうと考えはせずに、トビーに任せれば自分の身の安全を保てると考えていた。] 【トビーに任せればいい。 何かを作動させちまって… ………ソフィーみたいな死に様だけは御免だ。】 [一瞬、脳裏へと、ギラつく銀の糸に捕えられたソフィーの姿が浮かび上がる。金髪も白い肌も、柔らかそうな膨らみも全てが血に染まったあの姿が。ぶるっと震えが走った。] ああ、キャロちゃん。 トビーに任せておこう。何、ここにいる誰よりも、一番頭がいいんだ。俺達が手出ししない方が、あいつも安全に中を調べられる。 [尤もらしい事を言って、キャロルを落ち着かせる。] | |
(49)2006/07/21 00:07:25 |
流れ者 ギルバート ──回想・二階、寝室(15帖)── 『私は彼の吸血鬼を思い出す度に今も震えが走る。』 『彼らの力は強大であり、 私に連なる血脈の力を持ってしても滅ぼす事は出来なかった。』 『そう、"アイツ"を弱らせ封印する事しか出来なかった。』 『彼の仲間となったものは時が経つにつれ、吸血鬼としての本性に目覚めてゆく。そうなっては既に手遅れ…その前に、────‥──‥を──しなければならない。』 『後生のものが封印を解かぬように願い、ここに記す。 そして、吸血鬼が再び目覚めたとしても素質あるものが再び封印を施す事を───…‥』 [筆者が吸血鬼と対峙した時の様子が長々と書かれているが、ところどころ判別出来ない所がある。古びた文字だ。時折、感情的になっているのか震えた文字や酷く強い筆跡で書かれた文字等がある。] | |
(69)2006/07/21 01:20:57 |