人狼審問

意識を失わなければ、まだ側にいたんだろうか。
側にいれたんだろうか。

どのみち…

ステラさんをここに置いて、僕は出て行こうとしたのにね。
今更、だ。

大丈夫…

口の中で呟く。

繰り返し呟く。

死んだ子供と

[エルの追憶　→side：T→]

振るわれるナイフ。恐怖で目を閉じてしまう。

しかし、一向に痛みは襲ってこない。何故？

目を開くと其処には

「！？」

ナイフに腹を食い破られたウェンと。

それを呆然と見ている……父さん？


「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ！！」

なんで。なんでなんでなんで。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで…

　

気が付くと　　　　僕の服は　　　　深紅に染まり　　　　体の下には　　　　涙を流した　　　　滅多刺しの　　　　父さんだったもの。


背後から苦しそうなウェンの声。慌てて駆け寄り手を握る。
嗚呼、何て冷たい手。焦点を得ない眼にはきっと僕は映ってないのだろう。
でもウェンは僕が手を握ると、苦しそうに笑いかけてくる。

「…兄さん」

何で何で何で。

「私は」

嫌だ嫌だ嫌だ。

「兄さんを」

死ぬな死ぬな死ぬな。

「愛して……」

重みが増す手。生気を感じられない肌。ウェンの最期の顔は……笑顔だった。


僕は泣き喚いた。泣き喚いたところでウェンが帰ってこないのは解っていたけれど。


僕は……ウェンに何もしてやれなかった。


父さんとウェンの関係も……実は知っていた。
でも、怖くて。父さんが…父さんのあの『眼』が怖くて。
結局、ベッドの中で震えていることしか……できなかった。

今だってそうだ。
あの『眼』に睨まれた僕は動くことが出来なかった。
そんな僕を庇ってウェンは死んでしまった。

怯え続けて、助けることが出来なかった僕なんかの代わりに。
　

そう…。
　　　　　　・・・・・・・・・・・・・・・・
死ぬべきは、エルリック・ティーフロットだったのだ。

ならば、この命。代わりにウェンに渡してもいい。


父さんの書斎。父さんは僕に少しだけだが魔術を教えてくれていた。

ここなら、きっとウェンを生き返らせる方法がある筈。

僕は教わった僅かな知識を基に、必死に探した。


そして「死者」「魂」「巻き戻し」という単語が読み取れる魔法陣を見つけた。

きっと。きっとこれならウェンを生き返らせれる。

魔法陣を描き、ウェンを其処へ横たえる。
　

↑ちょっちミスった。

やり直し。

魔法陣を描き、ウェンを其処へ横たえる。


魔力を通し、魔方陣を起動させる。


仄かに輝きだす魔方陣。それに照らされるウェン。


代償は僕の命。たとえ等価交換でも十分だろう。


……目覚めたウェンはどう思うだろうか。

今更ながら、そんなことを考え



僕の意識は其処で潰えた。
　

[エルの追憶　→side：T→]　終幕




All episode is talked .











.........really ??

机に向っていた手をとめ、
明けようとする空に目を細めた。

手にした紙をたたみ、部屋を出ようとすれば廊下で話し声。

どうしようか、暫くその場で逡巡した。

迷っていたが、自室の壁に貼る。
折りたたんで名前を書いておけば、職員もむりにはがさないだろうと願いを込めて。

紅イ　波ガ　押シ寄セル

[エルの追憶　→side：Extra→]

しかし彼は理解していなかった。

死者を甦らせる事など、いかに魔法であろうと『不可能』であると。

そこに記されていたのは、『魂の器の変換』。



目を覚ました彼は、自らがウェンディ・ティーフロットとなってしまったことに気付く。



こうして　　彼　　エルリック・ティーフロットは


完全に　　コワレテ　　しまった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......The End.