書生 ハーヴェイ ―― 二階 部屋 ―― [……遠くで誰かが呼んでいる。誰が呼んでいるんだろう。 気が付くと目の前で笑うシャーロットが随分小さい。その後ろには、あどけない顔をしたメイとラッセルが駆け回っていた。大人たちに混じっていたネリーが何かしたのだろうか、まだしわの少ないヒューバートが苦笑している。デボラは相変わらずだな……久しぶりに帰ってきたナサニエルをこき使って、サボっているノーマンを蹴飛ばしている。そいうえばヘンリエッタは今年も祭りに参加していないようだ。素直ないい子なんだけどな。時折見せる笑顔は、まるで雲の切れ間からのぞく太陽のようなのに。 誰が泣いているんだろう……目を閉じ耳を澄ませてみる。近い。後ろか。 振り返ると折り重なるようにして人々が倒れ、若草の草原が真っ赤に染まっていた。 声も出せずに頭を抱えようとした自分の手まで……。 その場から逃げ出そうとするがピクリとも動けずにいると、湿った風が頬を通り抜けた。] うわぁあああ!!!!!!! | |
(30)2006/04/13 00:40:05 |
修道女 ステラ [メイの最新日記の後半部分。それを読んでステラは何とも言い難い気持ちになり、日記帳を机の上に戻した。] 『……このままだと皆お互いに殺しあう。 私は誰も殺せない。だから最初にコロサレル。 最近、よく夢を見るようになった。 顔の無い人たちに連れられて、私が首吊りの台上に上げられる。 首にかかる縄の感触を思い出すとぞっとする・・・ そして吊り上げられたときに初めて気づく。 下から見上げている顔の無い人たちが、私のよく知っている人たちだと。 そのときに気がつく。私は所詮余所者なんだと 皆がそれに気がつくと、きっと私が最初に皆の手で殺される。 だから私は小賢しくも生き残るための努力をしよう。』 | |
(68)2006/04/13 22:19:24 |
語り部 デボラ [両手からは鈍い痛みが伝わってくる。昨日、何もできなかったその証として、手が腫れていた。しかし、痛覚があるということは、生きていることそのものだった。] あんた、墓参りには今日も行けそうもない。そうだね、この悪夢から救われれば、もしかしたら行けるのかもしれないのじゃがな。天は、わしに全てを見届けよと言っているのじゃろうか? [亡き夫の元に行けるのかもしれない。そんな淡い期待は裏切られた。居たたまれない現実が目の前に続いていた。] それとも… [誰も聞いていないのに、自然とそこで言葉に詰まる。対決しなければならないのは確かだ。だが…。] 【処刑、か】 [ヒューバートの苦しみぬいた表情が思い出された。だが、そのヒューバートはもういない。可哀想な娘が両親を共に殺され、ひとりぼっちに置き去りにされた。] | |
(78)2006/04/13 22:56:11 |
修道女 ステラ [ステラは自分がハーヴェイにナイフを突きつけて脅した事を思い出し、どう話し掛けていいのかわからなかった。] ……あの、私……えっと。 【ギルバートさんを殺しました。】 [そうハーヴェイに告げれば、今この場で工具で殴り殺されるかもしれない。ステラは迷った末に、] 昨夜、地下室でギルバートさんが死にました。ナサニエルさんに化けた人狼が負わせた傷と、刺し傷が原因で。ヘンリエッタさんを人質に立て篭っていたのです。……ギルバートさんの遺体を見て、私にもナサニエルさんが人狼だった事が、認めたく無くても、よくやく理解できました。 現実を受け入れる為に、人狼に殺されであろう本物の見分ける力のあったヒューバートさんの死亡現場を確認していました。 | |
(86)2006/04/13 23:07:43 |
修道女 ステラ [ステラは質問をしておきながら、改めてニーナに向かって口を開いた。] ニーナさんも遺体を確認されたかもしれませんが、ギルバートさんは人間でした。私が彼を刺す以前にあった傷口が、ナイフ以上に大きく鋭利な物を使った深い傷で……。おそらく、それで随分弱っていたのです。 ヒューバートさんが人狼に殺された事と、今考えれば、ナサニエルさんの遺体の傍から続いた血痕と合わせても。人間……なのですね。とっくに皆さんはそうおっしゃっていた様な気もしますが、頭に血が上っていたので、恐ろしく、そして恥ずかしい事ですが、あまり憶えてはいません。 私は、最初はギルバートさんに「何故ナサニエルさんを殺したか」を聞きたかった。ナサニエルさんが人狼であっては欲しく無かったから。話を聞く事が出来なくて、苛立ちと、彼を失った苦痛が堪え難くて、何も考えたくなくて、ギルバートさんを刺した。 ……嗚呼。 [ステラは苦悩するように右手を強く握りしめた。] | |
(155)2006/04/14 01:01:04 |