人狼審問

アーヴァインさんに呼ばれてきたのですが……。
……人狼がでたとか何とか。

そんなの、ただの噂よね……。

影の見えぬ化け物に怯えていてもしょうがないわね。
とりあえず、紅茶でも用意して皆様が見えるのを待つことにしましょう。

一人で考え込んでも、良い事はないもの……。

人狼か。
さて……と。

人狼……？

何…？

人狼…人を喰らう、人の姿に化けた狼…。
深夜になると…狼の姿になって…人を襲う……。


本の中の話じゃないの…？

数十年来の大事件と聞いたのだが？
来て見れば噂が流れ始めただけとは、なんだかしっくり来ないな。

この香りは……紅茶でも入れているのか、シャル？

序に俺にも一杯頼む。

あら、もう何人かお集まりになってましたのね。
何だか嫌な噂が流れてますね……。ただの噂だと良いのですけど。

アーヴァインさんが見回りに行って下さってるようですし、とりあえずアーヴァインさんがお戻りになるまで、紅茶でもいかがですか？
最近すっかり寒くなっていますし、温まりますわ。

人狼？
そんなもの噂話に決まってるじゃないの。
自警団が騒ぐような事でもないと思うけどね。

今日はローズヒップを淹れたのよ、ラッセル。
匂いが、とても素敵でしょ？

シャーロット、私もお茶をもらう。
最近朝晩寒いからな。風邪でも引いたら困る。

い、イヤだわ、私ったら……。
セシリアとネリーを見間違うなんて、どうかしてる。

[顔を赤らめ俯き、恥ずかしそうにセシリアに微笑んだ]

ごめんなさいね、セシリア。
えーと……。そのまま座り込んでは身体を冷やすわよ、セシリア。

うん……なかなか美味しい。シャーロット、お茶入れるのがうまいんだな。
とりあえず……人が集まらないと話にならないのか？

［と、集会場の隅にあるピアノに気がついた］

ピアノでも弾いて時間を潰すとしよう。

シャロちゃん…ひどい…

ネリーちゃんはまだ来ていないのに…っ

ローズヒップ？　ほう、確かに……。

忙しいところを自衛団に呼び出されたのはあれだが、この紅茶を頂けた事のは幸いだな。

エッタの言うように、私も噂だとは思うのだけれど……。
アーヴァインさんが戻られないと、安心も出来ないわ。
ただの噂でも、用心するに越した事は無いものね。

何にしても、今必要な事は、身体を温める事だわ。
人狼騒ぎがただの噂だとしても、それが解った後に、皆が風邪をひいて寝込んでしまっては大変ですもの。ね。

ん〜、セシとネリーは……見まちがうほど似ているとは思えないが……。

友人の家が眼鏡屋をしていたな、良ければ紹介するが？

［１曲弾き終わると、みんなの方を向いた］

何かリクエストとか、あるか？
大体の曲なら要望に応えられるけど。

[シャーロットの視線に気付いた]

――シャロちゃん…？　何？

本当、ごめんね、セシリア……。

[頬を染め申し訳無さそうに見つめ、小さく頭を下げた。
顔を上げるとラッセルの声に振り返り、照れたように微笑んだ]

ラッセル。私目は悪くないわよ……。
解っているくせに酷いわ。

[床から立ち上がると、近くの空いた椅子を引きながら…]

――シャロちゃん…あたしもお茶、貰っていい？

希望を聞いてもらえるなら、ベートーヴェンの月光を……。
母が、とても好きな曲なの。

そうだな、では……ラフマニノフを……。

――ラッセルくん、目が悪いのはあたしだよ…。

その眼鏡屋さん、紹介してもらおうかな…

ええ、セシリア！　嬉しいわ。どうぞどうぞ。

[シャーロットに微笑を向けながらお茶を淹れる手を見つめている]


シャロちゃん、上手だよね…。
いいなぁ……

冗談はさておき、眼鏡を掛けたシャルも悪くないかもしれないぞ。

逆にセシは、眼鏡が無い方が……と言っても無いと不便か。ん〜、別のデザインの物に変えて、前髪を上げて見たらどうだい？

え、なんだ？俺も似たような物だって？

私は、紅茶を淹れる事と、お菓子を作る事くらいしか特技は無いもの。
セシリアみたいに、たくさんの本を読んで、物事を良く知っている人には憧れるのよ。

あぁ、今度つれて来てやるよ。
思いっきり値切ってやれ。

ん、リクエストが重なってしまったか、月光は俺も嫌いじゃない。エッタ、シャルのリクエスト曲を頼もう。

リクエスト、受け付けたわ。
先にシャロからのリクエストを弾かせてもらおうかしらね。

［ピアノに向かい、深呼吸した。］

月光か……しばらく弾いてないな。

［弾きながら］

次にラッセルの希望の曲を弾くから遠慮しなくていい。
ラフマニノフの何が聴きたい？

メガネかぁ……。どうだろう？　似合うかしら？

[シャーロットの差し出したカップを手に取り、香りを楽しんでいる…]

――そんなこと無いよ、シャロちゃん。
あたし…そんなにいろんなこと知ってるわけじゃないから。

よっぽどハーヴェイくんやラッセルくんの方がいろんなこと知ってそうだよ…。

眼鏡のデザインを変える、か。

そんなこと考えもしなかったな。
いいのがあったらそうしよっと。

ラッセルくん、この騒ぎが終わったらよろしくね。
……って値切れってなにー！？

セシリアが謙遜する必要はないわ。
セシリアも、色々な事をよく知ってると思うもの。

ハーヴェイさんやラッセルも色々知ってるでしょうね。

[紅茶のカップを口から離し、やや思いを巡らせた後、エッタに振り向き……]

アンダンティーノを……。

値切るって言葉が聞えたけれど。
セシリアが掛け合う姿何て想像もつかないわ……。

[シャルに向き直り、まじめな顔をして……]

そうだなセシではないが、知的に見えるかもしれないぞ。
（中身はどうあれな。）

[と、最後は小声で付けたした]

酷いわ、ラッセル。あんまりよ。
確かに私は余り頭は良くないけれど……。

それに、見せ掛けだけ賢くなっても意味が無いじゃない？

あぁ、シャルも言ってるが、謙遜する必要は無いと思うぞ。俺は考える方は好きだが、知識ではセシに叶わん。
何かの時には、色々と教えてくれ。

今回の噂も、もしも本当だった時には、頼りにしているぞ。

(あたしは本を読んでるだけだから……役には立たないと思うけど)

[小声でぽそっと…]

本で得た知識も、知識は知識よ。
そういえば、セシリア。
人狼に関する書物って何か持ってる？

もしあるのならば、借りたいのだけど。

さぁ、それはどうかは、判らないぞ。

名……特に渾名や外見など、自ら名乗る、自ら変えられる部分は、他者に自分をどう呼んで欲しいか、どう見て欲しいかの現れとも言える。

そう在りたいと、願い、思いつづける事は、それに何時しか近付いていたりする事も、まま在る事だからな。

で、今のシャルは、そう言う顔に思われたいのかな？

[そう言って、シャルの膨らませた頬を突付いた。]

そうね、ラッセル。
いつも膨れてるだなんて思われたくないわ。

知識か……。
私には何もないな。
家庭教師はついているが、机上の空論と実際に社会に出たときの知識は全く別物だから。

……世間知らずと言われても無理ないな。
まぁ、それは置いておいて、ラッセルのリクエストに応えようか。アンダンティーノね。

［再び鍵盤に向かい、音色を奏ではじめた。］

うん、アーヴァインさんが呼びにきた時に、ふとそんな本を読んだ記憶があって…。


持って来てる。


人狼を退治した村、人狼に滅ぼされた村…いくつか話が載ってたんだけど……。

滅ぼされかけた村から逃げた人の話も載ってるよ。

でも…退治した村って……ちょっと残酷なんだよね。

[ヘンリエッタに拍手を送りつつ、抱え込んでいた本をシャーロットに差し出した]


これ、参考になればいいんだけど……。

ありがとう、セシリア。
供えあれば憂い無し、何て言葉があるから……。
後で読ませてもらうわね。

ところで――退治した村が、残酷なの？

ふと思ったが……人狼に滅ぼされた村の記録は……誰が書いたんだろうな。

確かに……。
ラッセルの言うように、誰が残したのかしら……？


……生き残った、人狼？
でも、それならば何のために……？

人狼が、己が力を誇示する為に書いたのか……さもなければ、読んだ者を惑わせる為……。

少々警戒が過ぎるとは思うが、その村の記録は、注意して読んだ方が良いかもしれないな。

退治した村…うん、残酷だよ…。

小さい子供でも、老人でも、…人狼の疑いがある人を片っ端から処刑して…村人の犠牲もたくさんあって…人狼が退治できたんだって。


あ、ラッセルくんの言う滅ぼされた村の記録は…その村の、村長さんの日記だったよ。
その村長さんも人狼に襲われちゃったみたい。
村長さんを訪ねた別の村の人が見つけたってあったから…。

……難しい話はよくわからないが……。

とりあえず、これからレッスンに行かなきゃいけないんだ。
また夕方戻ってくるから、そのときに人狼についての話は聞いておこうと思うよ。

……じゃあ、いってくる。

どうしたエッタ？

[曲を弾き終えたエッタに拍手をしていた手を止め、怪訝そうな顔をするエッタに尋ねた。]

エッタ、素晴らしい音色だったわ。

[賞賛の言葉を告げると手を叩き、その言葉に頷くと手を振り背中を見送った]

でも、…それ以外のはわからない。
滅ぼされた村の記録、結構たくさん載ってたから……。


[だんだん声が小さくなり、そのまま俯いた…]

なるほど、村長の日記か。

[セシから、エッタに振り返り]

エッタ、気を付けてな。心地よい演奏、有難うな。

[と、外へと向かうエッタを見送った。]

……処刑？　――そんな恐ろしい。
それ以外の手は、無いのかしら……。

そもそも、人狼は人を襲わずには生きていけないのでしょうか……。

今流れている噂が、本当だったとして……シャルやセシ、エッタの首に手を掛けたくは無いな……。

そこに寝こけている、ハーヴなら……先日、約束の時間に送れて来た時、締めたばかりだし……もう一度するにも抵抗は無いが。

――共存をしようとした村の記録もあったよ。

でも、……今までの記録だと、結局人狼が出ていっちゃったか、襲う前に殺して欲しいって言われて処刑したかのどっちかなんだって。

共存って言いながら、村を滅ぼしていった人狼もいるんだって……

[喋る声が今にも消え入りそう…]

人狼に傷を負わされたものは、次の満月の夜、狼に姿を変える……なんて、記述もあるぞ。

眉唾臭いが、全員狼になってしまえば、共存とはちょっと違うが、結果は同じだな。

まぁ、人狼になど、成りたいとは思わないがな。

共存は叶えられない願いなのかしら……。
まだ人狼が居るとも決まっていないのに、何だか嫌な話ね。

――でも、私も、この村の誰も死んで欲しくないわ。

さて……人を呼び出して置いて、自警団長殿は一向に戻ってくる気配が無いな。エッタの曲に、シャルの紅茶も頂いた事だし、また夕方にくるとするか。

学校の研究室に行って来る。何か用が在ったら、メイかハーヴでも寄越してくれ。紅茶、ご馳走様な。

[ ラッセルの言葉に驚いたように顔を上げ、じっと見つめた ]

それならば、人狼に傷を負わされたもの、人狼だと思われるものを地下牢にでも閉じ込めておけばどうかしら？
誰も傷つかなくなる日まで――。
そうしてその後に、ワクチンの研究をして貰うとか。
――だめ、かしら？　楽観的過ぎる？

[ 出口に向いかけて足を止めたラッセルを見つめた ]

紅茶で体が温まったのなら嬉しいわ。気をつけて。
出かけに、変な事言ってごめんなさいね。

楽観的とは言えないだろうな。

その前に、その記述が正しいかどうかと、ワクチンを作る事が出来るか、どれだけ難しいものか……その辺りが判らないからな。

縛めて置けば済むと言うのは……まぁ、可能かもしれないな。

別に構わないさ。

紅茶、美味しかったよ。ありがとな。
では、行って来る。

行ってらっしゃい、ラッセルくん。


人狼…本当にいるのかな…？




(――――ただの噂であって欲しいな。)
[セシリアは俯きながら小声で呟いた]

[ ラッセルの言葉に希望を見出したような微笑を浮かべた ]

そうね、何とかならないものか。
私も後でセシリアから借りた本を読んで考えてみるわ。
気をつけてね、ラッセル。また、後で。

[ 優しく微笑みながら、小さく手を振った ]

そうね、セシリア。
ただの噂で、そうじゃなければ全部夢なら良いのに。

まだ、解らないけれど。
でももしも、人狼が居たとして、そうしたときに慌てふためくよりは何かできないか考える事も大切だと思うの。

――セシリアも、どうすればいいか一緒に考えましょう。

勿論、ただの懸念で終ってくれたら、それほど嬉しい事は無いのだけどね。
今こうして頭を悩ませているのも、後で笑い話の1つにもなるでしょうし。

……うん、シャロちゃん。



――――本当に処刑するしか方法は無いのかな？

それ以外で…平和になった村って無いのかな…？

(でも、本にある通りだったとすると、……人狼は村の中で普通に生活してたっていうんだよね………。)
[俯いたまま、呟き、顔を上げられなくなっている]

……あたし、もっと何かわかる本が無いか探してみる。


家にも読んだ事の無い本がまだまだあるし…書庫を探してみるね。

どうなのかしら？　処刑以外の方法が無いか、考えてみるわ。
とはいっても、私は人狼については詳しくないのだけど……。

……村の中で普通に生活してた、って事は、人狼は人を襲わずにも生きられるって事なのかしら？

[ 小首を傾げながらセシリアを見つめた ]

シャロちゃん、お茶ありがとう。

じゃ、行ってくるね。



―――何か見つかればいいんだけど。

ええ、そうね、私も色々考えたり調べたりしてみるわ。
気をつけてね、セシリア。
寒いから、風邪をひかないように。

[ セシリアの背中に手を振り見送ると小さく息を溢した ]

人狼……ね。
ただの噂だと良いのだけれど……。

[ 小声でそう呟くと、寝息をたてるハーヴェイを思い出し振り返った ]

よく寝てるわ。良い夢をみてるのかしら……。

[ 静にハーヴェイに近寄ると、そっと髪に触れ、ショールをかけなおした ]

風邪をひいてしまわなければ良いのだけど……。
疲れているようだし、起こすのも悪いわね。

[ そのまま暫く、じっとハーヴェイの寝顔を見つめた ]

さてと。私も一度家に戻りましょう。
セシリアから借りた本に目を通して、その後図書館に行ってみるのも悪くないわね。
懸念で終ってくれれば、1つまた知識が増えたと喜べば良い事だし。無駄にはならないわ。

[ セシリアから借りた本を抱え、もう一度ハーヴェイに視線を向けると、小声で良い夢をと祈りを捧げ集会場を後にした ]

よう皆。久しぶりだな。

ってここでも人狼騒ぎなのか……。
物騒なのはどこも一緒だな。

人狼ですって？
先生がぜひサンプルを欲しがっていた気がするわ。
ヴィンセント先生、待っててくださいね！
ニーナが人狼を捕まえてみせます！

おやつおやつー。

[空いている椅子を見つけるとチョコンと座り、にこにこしながら辺りを見回している]

うち、良い子にしてるんよ。

人狼はどこですか〜？
見つけ次第まずは血液採取ですよー。
うふふふふふ……。

人狼は病気なんです。
ヴィンセント先生は血清を作るのに人狼のサンプルを探してたんです。
この村に人狼が居るのなら皆さんぜひ捕獲に協力をお願いします！
大丈夫。痛くしないから♪
でも、血液は６lぐらい必要だけどね♪

お嬢ちゃん、一人なの？
今ね、この村には人狼が出たらしいのよ。
あなたは何か知らない？
あ、ごめんね。あたしはニーナ。見習いだけど看護婦だよ。

・・・にひっ☆

よろしくね♪