人狼審問

［箱は禍々しい赤い光を一瞬強く放つと、その木製の表面に血のような文字が現れ、投票結果を皆に告げた］

まさか…本当に……………？
！！
一番票を集めたのは…ラッセルさん………！！

［ニーナは、悲鳴のような声で叫ぶと、ラッセルの個室へ飛び出して行った］

そんな…嘘よ嘘…

［ニーナは、ラッセルの個室のドアを激しく叩いている］

ラッセルさん！！ラッセルさん、開けて！！
開け…

あ…、ドアが、勝手に…？
ラッセルさん、無事なの……？

・・・・！！ニーナ！
―ルーサーは後を追うように、ラッセルの個室へと急いだ―

［ニーナは開いた扉の向こう、切り取られたような暗闇の中に、それを見た。巨大な手により…雑巾を絞ったかのように絞り上げられ…何かのオブジェのように垂直に置かれている、かつては人体であったであろう、何かを］

あ、あああああ………、

きゃあああああああ！！
いやああああああああああああ！！

［ニーナは、恐怖のあまり意識を手放すことも出来ず、ただ悲鳴を上げ続けている…］

ニーナ！落ち着け！

いやあああああ！

ラッセルさん、ラッセルさん！

―オードリーはその光景に目を見開き固まった―

嘘…嘘よ嘘…そんな…これは夢…夢よ…

―ルーサーは人のかけらとも言うべきものに目を向けた―

・・これが・・あの箱の、力だとでも・・！？

―ニーナがそれを見ることのないように、自分の体でニーナの視界をさえぎるように、ルーサーは移動した―

く・・・神よ・・
どうか、この者ラッセルをあなたの御許へと・・・

―ルーサーは胸で十字を切った―

そして、どうか・・無慈悲な我等をお許しください・・

あ、ああ、牧師様…。

わ、わたし…、私のせいなの…？
私が、あんなことを提案したから…！

い、や…、嫌よ、こんな事……！

二人とも、この部屋からまずは離れよう・・
話したい事がある・・

―ルーサーはニーナを自分の胸にうずませたまま、オードリーの手を取り、その場を後にしようとした―

―オードリーは空ろな目のまま頷き、黙ってルーサーに従った―

いよおお！
効果は、てきめんだな。

死んだのは、ハーヴェイか。

―大広間にて―

さぁ、二人とも座って・・もし具合が悪いようなら、私の話など、休んでもらった後に聞いてもらう事にしてもいい。辛かったら、言ってくれ。

―ケネスは、あごで中庭を指した―

ハーヴェイの、にーちゃんが死んでたぜ。
心おきなくあの、本が読めるってもんだぜ。

ん、何をさわいでんだよ・・・
ココハ、モウ、魔女の鍋の底だぜ・・・。

ケネス、ハーヴェイが死んだとは・・？
まさか、化け物の・・・！？

ハーヴェイ？
ハーヴェイが死んだと言ったの？ケネス…

・・・・もし、そうなら今様子を見に行くのは危険だ・・
やはり、ここにいてもらうのが、一番だろう・・
二人とも辛いだろうが。我慢してくれ。

……はい………。

［ニーナは、ルーサーにぼんやりと答えた］

あん？他に誰か死んだのかよ？
―ケネスは、大広間の机に広げられた票を見た―

ハッハーン。
ラッセルのかくれんぼヤロウが、見つかったのか。
死体になって。

もしくは、もう、来たその時からもう、死体だったのかもな。

・・・しっかし、この騒ぎに顔をださねーヤツが居るな。

嘘…今朝ハーヴェイと話したわ…
飄々として掴み所は無いけれど…
こっ、殺される理由なんて…

…ああ…息が…で　き　な　い　…

―オードリーはショックの余り過呼吸を起こしている―

［ニーナは、オードリーの様子を見て我に返った］

オードリーさん！

オードリーさん、落ち着いて下さい……。
…そう、ゆっくりと息をして……。

［ニーナは、オードリーの背中さすり、落ち着けようとした］

オードリー、ゆっくり、あせらずに呼吸を繰り返すんだ。

―ルーサーはオードリーのそばに行き、自分も同じようにゆっくりとした呼吸で見本を示した―

あ、ありがとう…ニーナ

大丈夫…もう、息ができるわ…大丈夫よ

さすがは看護婦だな、見事だ。

ルーサーさん…、あの…、本当にハーヴェイさんが…？

奥様、大丈夫でございますか!?
これを、これをお飲みになって気を落ち着けてくださいませ!

――ネリーは気付用の薬を差し出した――

オードリーさん、良かった……。

いや、ニーナ、私にはわからない・・
ただ、ハーヴェイが殺されたとケネスが言っているのであれば、今はここを動かない方が得策であろう。

牧師様もネリーもありがとう…
もう…大丈夫よ…大丈夫…

・・・ネリー、そうか、無事だったか。
良かった・・。

―ルーサーは今ここにいない者達の身を案じた―

…ラッセルさんが、本当に、死んでしまったのですか…?

そしてあの陽気なハーヴェイさんも…何故?

…もう嫌ですわ…あたくし…。

――ネリーは顔を覆った――

・・・さて、もし気が落ち着いてきたなら、私は少し長い話をしようと思う・・
良ければ教えてくれ

［ニーナは、ネリーの肩にそっと手をおいた］

牧師様、お話しって……

――顔を覆ったまま――
相変わらず何もわからないまま、2人も死んでしまって…。

それにお医者さまも商人さまもお部屋から出ていらっしゃらない…一体どうなっているの?!
誰か少しでも何かがわかる方はいらっしゃらないのかしら…!

私は…もう、大丈夫よ…牧師様

奥様…取り乱してしまって申し訳ありません…。
お恥ずかしいですわ…奥様をお守りするのがあたくしの役目ですのに…!

おとなしく牧師さまのお話を拝聴いたします。
そうしたら少しは気も落ち着くでしょうか…?

ニーナも…ありがとう、ニーナ…。
牧師さま、お話ってなんですの…?

・・話の内容は他でもない、死んだ者の検査だ。
この村では、差別が激しく肌や身分で医者が患者を選ぶのは皆が知っている事実だと思う。
そんな中で私は、せめて神学校で学んだ医療術で医者の診断を受けられないもの達を診断してきた経歴がある。中には重病人もいた。その手術も私のつたない腕でこなしてきたつもりだ。だからとは、言わないが、それでも人間の体の構造に関しては熟知しているつもりだ。今回、ラッセルの亡骸には人として異物だと思えるような部位は無かったように思える。あのような、状態になってしまい、まだしっかり確認したわけではないが・・

そこで私はここに一つの仮説を考えた。
化け物であるならば、そこには人ではありえない異物が体内にあるのではないかという事だ。それは、ケネスの体のが示すように外部にも現れるものとしても考えていいと思う。ならば、その箱が化け物を討った時その判別がこの私にでもできるのではないかと思っているのだ。
この方法は、もしかしたら意味が無いかもしれない・・
しかし、何もせずに彼らの数の状況が分からないよりはましだろう・・
やるだけの事はやってみるつもりだ。

―ルーサーは、少し疲れたのか、そのまま黙って皆の反応を待った―

まぁ…だとしたらあたくしたちは何と罪深いことをしてしまったのでしょう…。
罪もないラッセルさんを呪いの犠牲にしてしまったのですか…?!

……ラッセルが最初から部屋で死んでたので無く…
呪いの箱が本物だったとしたら…

私達、人を…呪い殺したのね…

牧師様…、それが本当なら…私は…私はなんと言う事を……！！

私の、せいで、ラッセルさんが………！！！

ネリー、私は…許されない…罪を…！

［ニーナは両手に顔を埋めると啜り泣いた］

仕方がなかったのだと思いたい…!
あたくしたちには何の確信も手段もなかったのですもの、いえ、今もあるとは言えないんですもの…!

でも…次も罪のない方を犠牲にしてしまったら?その次も?その次も…?どうしたらいいの…?

ニーナ…あなたのせいではないわ…罪があるのなら皆の罪なのよ…。
皆でこのむごい事実を受け入れましょう…。

・・いや、みんなもう少し冷静に聞いてくれ。
まだ、私にはラッセルが人間だったか化け物だったかの判断ができていない。ただ、化け物を無事討てた時に、その
死体を調べた時にもしかしたら、人とは違う部位が見つかるかもしれないという、仮説だ。
だから・・すまないな・・中途半端な私の発言でますます混乱させてしまった。ただ、ラッセルは人であったように思える。幸いというべきかどうかは分からないが、箱に呪い殺された時、その亡骸のすべての部位はその場に残ってるようだ。ならば、なにか異物があれば必ず分かると思う。だから、これからは私以外のものに亡骸に触れて欲しくないと思う。別に皆が見てる前で検査を行っても良いが、それは各々に任せる。

――牧師に向き直り――
牧師さま。牧師さまのおっしゃりたいことはわかりました…。
けれど、牧師さまの能力は死んだ者を判定なさる、言わば惨い能力なのですね…。

それにケネスさんは牧師さまと対立していらっしゃる…?
牧師さまはケネスさんをどう思っていらっしゃるのですか?
あるいはケネスさんは牧師さまをどう?
あたくしたちはどうしたらいいのでしょう?

よくわかりませんわ…牧師さまはラッセルさんをディープワンだとは疑っていらっしゃらなかった、という事と、死体をよく調べればディープワンかどうかわかるはずだ、という事をおっしゃっているんですかしら…?
どうして牧師さま以外の方が死体を見てはいけませんの…?あたくしは惨すぎて見てはいられないと思いますけれど…。

莫迦なネリーの理解力が足らないのですけれど…。

牧師様…そういう意味だったのですね…。
分かりました…。私は、検査は牧師様に任せます…。

辛い事を押し付けてごめんなさい…、でも、もう見たくないんです。次は…耐えられるか分からないから…。

私がケネスと・・そうか、そう見えるのか。
感情が出すぎていたようだな・・

―ルーサーは小さく、首を横に振った―

確かに私はケネスの腕に嫌悪感を持っている。あれは、化け物である証拠と言ってよいだろう。しかし、真の化け物がああやって、自らの証拠を私達に突きつけるだろうか？
・・もしかしたら、ケネスはまだ人の心を持っているのかもしれない。しかし、それでも、化け物として確固たる動きを見せたその時は・・この箱に頼らずとも・・・

―ルーサーは、鋭い目をそのまま、ネリーに向けた―

！・・すまない・・疲れているようだ・・

牧師様がお一人で検査をなさる事に異論はないわ…

ヴィンセント先生やあるいはベンジャミンが
検査に同行を求めたりするかしら…

――牧師を脅えた目で見つめる――
…牧師さま。どうなさったのですか?
異教徒の像を大事に取っておくほど慈悲深い方が…?!

…そうですわね、お疲れなのですわ、きっと…。
あたくしも少し考えなくては…そうでなくてはきっとあたくしたちは皆…。

――ネリーは虚ろな目でつぶやき続けた――

きっと、みんな疲れているのよ…みんな…。
今日は…沢山の事がありすぎて、長い一日だったから…。

すまないな、ネリー少し分かりにくかったか。
つまり私以外の者にその亡骸に触れられた場合、その証拠の部位を破壊、もしくは持ち去られる恐れがあるかもしれないという前提で言わせてもらったんだ。

ラッセルについては、人かどうかなんて別に考えた事もなかった。ただ、話がしたかったくらいか・・。
　そして、君は別に馬鹿ではない。ちゃんと理解している。君の言うとおり化け物の死体を調べた時に、何か異常を見つけることが出来たなら、化け物の死体と、犠牲者の亡骸を比較する事ができる。その方法を使って私は、化け物か人かの選別を行いたいと思っている。
ただ、まだ、化け物である証拠を見ていないからな・・
なんとも言えない部分があるのも確かだ。すまない。

牧師さま、わかりましたわ。
証拠が隠滅されることを恐れていらっしゃるのですね…ご説明くださってありがとうございます。
でも、本当にあたくしたちはのっぴきならない状況なのですわね…?
証拠隠滅まで心配しなくてはならないなんて…あたくしたちの敵はそんなにも手強く抜け目がないのですね…。
あたくしたちに勝ち目は…あるのでしょうか…?

ネリー、ネリー、そうなの…！
孤児を助ける慈悲深い牧師様と…、
ケネスを慈悲なく化け物と突き放す牧師様…、

まるで牧師様の心が、二つある様…。

牧師よ、んな事いったら、あんたが狙われるぜ？
あんたが、人間でないんなら、話は別だがな。

フン・・・死なない自信があるみたいだなあ・・・

…ええ…そうねニーナ…牧師さまがまるで2人いらっしゃるよう…。
でもあたくしたちも同じだわ…脅え、震えながら既に一人、皆でこの手にかけた人がいるのよ…それが現実なの…。

ふふ、ディープワンとあたくしたちと、どちらが罪深いのかしら…?
そしてあたくしたちの罪は許されるものなのかしら…?

>>61
良いか悪いか。善か悪か。
じゃない。

お前らなら、解るだろ？
そう、あの、深海に広がる美しくも、神々しい・・・
ルルイエが・・・

今すぐ送ってやるぜ・・・。

―ニーナの言葉がルーサーの心に、ずしりとした重みを感じさせる―

・・・・・っ
（それでも・・私は・・）

・・ケネス、確かに君の言うとおりだ、それでもこれが出来るのは、私くらいにしかいないと判断した。
例え、私の命がどんな宿命にさらされようとも、その時は・・君達の身代わりになれた事として、喜んで受け入れる気だ。

―ルーサーはケネスの言葉に返答したあと、自分に言い聞かせるように小さくうなづいた―

――ネリーは激しく首を振った――

嫌です、嫌です!
あたくしそんな場所には行きたくはありません!
ええ、死んでも嫌ですわ…!

(ああ、でもルルイエ…なんと甘美な響きなのでしょう…ああ、自分が恐ろしいわ、あたくしは…)

いいえ、私は…深海になど行きたくないわ…。

行きたいのは…ケネス、貴方なのじゃなくて？
あぁ、でも、貴方は行きたくても行けないのね…。

>>60
貴方だって…狙われるのを承知でディープワンが解ると皆に告白したのでは無いの？
そうやって曖昧な言葉で牧師様を疑うけれど…
他にはっきり言える事は何もないの？

>>66
ねえよ。
俺にだって解らない事くらいあるんだよ。

それに、勘違いするな
俺は、狙われるのを承知じゃない
狙われてたんだよ。

最初からヤツラにな・・・。

―ルーサーは誰に言うわけでもなく言い放った―

私達が真に恐れるべきは、この場所に潜む化け物をここから解き放ってしまう事だ。例え、自らの魂が死を迎えようとも、例え無慈悲な行為で、罪無き人を葬ったとしても、それだけは防がなければならない。私達は、例え最後の一人になったとしても、彼の悪辣者を打ち滅ぼさなくてはならない。それが、ここにいる者の役目なのだろう・・
ならば、私はするべき事をしよう・・

>>69

同意だ。
何れヤツラは、この地球を覆い尽くす時が来るだろう。
だが、それを遅らせる事くらいはきっと出来る筈だ。
今は手段を選ばず、闘って道を切り開くしか道は無いぜ。

―ルーサーは大きく深呼吸をした―

ネリー、すまないが君は台所に詳しかったね？
なら、空いた瓶をいくつか用意してもらいたいのだ。

ニーナ、君はもしかしたら医療道具をもってきていないか？ピンセットやメスがあればありがたいのだが・・

もし、二人ともそれが用意できたらこの机の上にでも置いといてもらいたい。無理だったら、それでも良い。ラッセルを調べるのに使おうと思っているんだ。

それじゃあ、私は部屋に戻るとするよ。考えたい事が出来た。

>>67>>68
そう…だったら私、勘違いしてたのね…
又混乱してきたわ…

そうだな、ケネス。
君が一体どういう状態で苦しんでいるかは、理解できないが・・君がその人生をまっとうするまで、人である事を祈っておこう。

それじゃあ、私は失礼するよ。

―ルーサーはその場を後にした―

・・・所でハーヴェイは何で、ルーサーに票を入れたんだろうなあ？

…判断の材料が少ない状況では確かなことは申せませんけども…。

ケネスさんのその、ルルイエの都への傾倒ぶり、うわ言のような振る舞い…ケネスさんは夢と現実の狭間でさまよっていらっしゃるのではないかしら…?

お医者さま、早くいらっしゃってケネスさんを診察なさってくださらないかしら…?
それに商人さまも…ケネスさんや牧師さまについて、何かお話してくださるかも知れませんわ…。

>>71
承知いたしましたわ、牧師さま。
朝までにご用意いたします…。このテーブルの上に置いておきますわ。

>>74
…どうしてかしら…
もっと色々話せば良かったわ…ハーヴェイ…

〔申し訳ない、皆さんやはり参加は厳しいようです〕

まぁ、お医者さま…!
今までよくご無事で…!
お忙しいのですかしら?少しでもお話くださることがあればお願いしたいのですけれど…?

>>71
牧師様、分かりました。
先生の道具を持って来ているから、朝までに用意しておきますね。

ああ…とても…疲れたわ…
ここに来てまだ2晩しか経っていないのに…
もう何日も閉じ込められている気がするの

ゴメンなさい…もう部屋に戻るわ…

―オードリーはふらふらと広間を出て行った―

私も…もう、駄目………。
今日は休ませてもらいますね。

［ニーナは一礼すると、静かに個室へ戻って行った］

あたくしも…ケネスさん、お一人ににして申し訳ありません…。
商人さまがいらっしゃるとよろしいですわね…?

――ネリーはしょんぼりしている…――

あたくしたち、このまま静かに亡びを待つだけの運命なのかしら…

――ケネスは寝ころびながら――

何、そうならないための投票だろ？
時期が来れば・・・何れ全員・・・。

――ケネスはちゃっちゃと自分の名前と共に、投票箱に入れた――

しかし・・・あの、ラッセルとか言うガキの死に様は凄まじかったな。
五臓六腑や汚物をまき散らして・・・・ま、ヤツには当然の報いだがな。

ハーヴェイの遺体はみたか？

あっちも、凄惨なものだったがな・・・。

――ネリーはケネスの酷い描写も耳に入っていないのだろうか、虚ろな目をしている――

ハーヴさんは、苦しんだかしら…？
あたしもあんな風に死ぬのかしら？

…ケネスさんは、死ぬのが怖くないのですか？

［ニーナは、大広間へ静かに入って来た］

ネリー、ケネス、おはよう。

あたくしはこのまま、何もわからないままに死ぬのは嫌なのです…でも…死ぬ覚悟をしていらっしゃる方もいるのかしら…？

なぁに、…二人で、陰惨な話をしているの？

……楽しい話なんて、ないか。

［ニーナは、自嘲するようにクスリと笑った］

ニーナ！
寂しかったわ！
あたくしにディープワンがわかる能力があればいいのに…！
このまま死ぬのは嫌なのよ…！

ネリー、私も…淋しかった…！

［ニーナは、ネリーを抱きしめた］

温かい…、少し、安心するわ…。

なるようにしか、ならんよ。
ま、俺は、積極的にこの大広間に出てるヤツの中にディープワンが居るだろうなと思ってる。
ヤツラは大胆だ。

ニーナ・ネリーどっちかか、両方じゃねえか。
ふふ・・・ディープワンに殺されるのと
アレで殺されるのと、どっちがマシなんだろうな・・・。

ケネス…！

［ニーナはケネスをきつく睨みつけた］

酷い事を言わないで。
私は普通の人間よ。ネリーだって…信じているわ。

――オードリーは自分の悲鳴で目を覚ました――


○×△□！！！！！


……夢…
確か…眠れないまま朝を迎えて…それから…
考え事をしているうちに眠ってしまったのね…

―オードリーは周囲を見渡した―

…目が覚めても悪夢ね…
もうどこからどこまでが悪夢だったのかすら区別が付かないわ…

―服と髪を整えて部屋を出、広間に向った―

ふふ…
［ベンジャミンは陰鬱な顔に薄ら笑いを浮かべて現れた］
ふふふ。
……一晩ぐっすり眠れば、あの香しい醸造菌の匂いが立ちこめる事務所で目覚めると思いきや……
この狂気が現実とはな。

遅くなってすまないねぇ。

まぁ、ベンジャミンさん
生きていらっしゃったのね…

オードリーさん、ベンジャミンさん、おはようございます。

［ニーナは、疲れた顔に精一杯の笑みを浮かべた］

よう、ベンジャミン！
昨日は、ハーヴェイを解体するのに忙しそうだったな！
俺を呼んでくれれば、手伝ってやったのによ！

ははは、忙しくてラッセルに気が回らなかったんだろ！

いやあ、奥さん。
顔色が悪いんじゃないかね？ま、悪いことは他にもいくらでもあるがね。良いことを探す方が難しいぐらいさ。

おやおや、おそろいで。
ケネスくん、ハーヴェイを解体とは、また穏やかでない…
また得意の幻かね？
残念だが、ワシはぐっすりと眠っておったよ。

ケネスはそんな事ばかり言って…。
ベンジャミンさん、彼の言う事は気にしないで下さいね。

［ニーナは、ベンジャミンに居なかった時のことをかいつまんで説明した…］

みなさん、よければ暖かいお茶でもどうですか？

>>103
…あの昨夜の大騒ぎに気付かずにずっと眠っていらっしゃったの？
本当なら呆れた方ね…
それとも良く効く睡眠薬でもお持ちなのかしら？

そうなら分けていただきたいくらい…

ネリー程上手には、いれられないけど…

［ニーナはぎこちない手つきで紅茶の準備をした］

［ニーナは全員に温かい紅茶を配った］

酷い事ばかりだけれど…、人が集まっているだけで、少し気分が安らぎますね。

アレを見なかったのか？コレが妄想だと？
は　は　は　は　は　は・・・・
信じようとも、信じまいともう、ヤツラは動いてるんだぞー・・・

―言ってしまってからオードリーは眉を潜めた―
>>105
ん…
いいえ…薬は止すわ

もしお持ちでも分けてくださらなくて結構よ…

この中で、人間の振りして、深淵へ引きづりこんでるディープワンが居ると思うと、もう、笑いが止まらないぜ！

惨めだなあ・・・不老不死のお前らが、こんな風に人間の振りして、こそこそ殺し回らなくちゃならない何てよ・・・
は　は　は　は　は・・・

ケネスは、怖くないの？
化け物に人が殺される事が…嬉しいの？

もう・・・おわりなんだよ・・・
座して愕然として、ただ、怯える事しか俺達には・・・道が無いんだよ・・・・

あああああ、助けてくれ。
何故、何故、オレが・・・死なない存在になれたのに・・
今、このときも、オレは・・・ああ、どうして・・・どうして・・・

ハーヴェイは、どうして、ルーサーに、ひょうを　いれたんだろうな　？

ケネスさんだってやっぱり怖がっているのじゃないですか？
それなのになぜ、皆で協力せずに何かをほのめかすだけですの？
それとも…ケネスさんはやっぱりディープワンを裏切れないの…？

……ねぇ、ケネス…貴方に聞きたいわ…

以前の貴方はどんな人だったの？家族は？愛する人は？
そんな姿になるまでの貴方は？
自分の運命を知る前の貴方は？

貴方はどちらに助けを求めてるの？
こちら（私達）側に？あちら（化け物）側に？

昔政府の役人の仕事してた・・・
家族は居ない・・・皆、皮膚病にやられた。
好きな奴なんて、居ない・・・
他人から、蔑まされた人生だったぜ・・・ロクな事が無かった・・・
あの、港町に行って・・・気づいたときは・・・手遅れさ。
オレには、何処にも居場所なんて・・・

どちらにも、拒否されてるんだ・・・オレは・・・。

俺の話なんて・・・いいだろ。
それより、ベンジャミン。
あんたの話が今はオレは、聞きたいな。

おまえさ。
黄金の蜂蜜酒なんてのを、作ってるんだってな。
あの、港町でも、お前の名前はきいたぜ。

ケネスには、確か弟さんが居るのよね？
アーヴァインの資料に書いてあったわ。

…何故、家族はいない、なんて言うの？

アレは・・・オレとは・・血が繋がってない。
だから、無関係だよ。
『今』のオレとは。

［ベンジャミンはニーナの言葉を顔をしかめながら聞いていた］

………全く………
何もかもが狂っとるね。ケネスくん、君の水かきも現実だったのかね？ディープワンとか何とか…君は人類の敵なのかね？……ふふふ……最近流行の怪奇小説の読み過ぎか……

オードリーは眠れないのかね？確かにワシはよく効く睡眠薬を持っておるよ。上質のスコッチさ。欲しけりゃ、どうぞ。
［ベンジャミンは、そういうと一冊の分厚い本を投げてよこした。中を開けると、ポケット瓶が入っている］

ふう…しかし、一体誰が３人も殺したのやら…
ネクロノミコンやらディープワンやら、一朝一夕には信じられんよ。

早い段階から、この村から逃げさせた。
もう、アイツとは、関係無いよ・・・。

今頃どうしてるか、だなんて、オレにはもう、関係ない・・・。

……『今』の？無関係？
変わってしまうと絆は無くなるの？

…そう、無くなるのね…

黄金の蜂蜜酒…ふふふ…くっくっく。
どこで聞いたのやら。あんなものには、触れん方が良いな。
その名を口にするのも禍々しい、呪われた酒さ。
もっとも、ワシも実物にはお目にかかったことが無いがね。くっくっく。あんなものには。

>>121
……！
お酒はもっと結構よ…止めたの…止めたのよ…

ケネス…そうだったの…。
お話してくれて、ありがとう…。

オレを、何とかして、人間に・・・って考えてたみたいだが・・・

こっちが、本当のオレなんだ。
もう、どうしようもないぜ・・・。
人間には、理解出来ない現実があるんだ。
ベンジャミンの旦那は、正しいぜ。
己に理解出来ない物は、否定すべきだった・・・。

ホント・・・否定・・・・したかった・・・よなあ。

奥様…代わりにお茶をお入れしますわ…だからもうお酒はお止めになってくださいまし…！

［ベンジャミンは、真っ青になってケネスを突き飛ばした］
うひい！！この、化け物！寄るな！！
［手近にあったモップを手にとり、身構えた］

…かわいそうな弟さん…今はどうしていらっしゃるの…?

>>128
大丈夫よ、ネリー…お茶を戴くわ

奥さん、無理することはないさ。
体が暖まるし、忘れたいことがある時にはこれほど効果的な薬はないね。

――ネリーは全員分のお茶を入れた――

商人さま、奥様を苦しめるのはお止めになってくださいまし…!
商人さまもディープワンの心当たりはないのですか…?

座して、人間失格になれる、素晴らしい良薬だぜ。
どうせ、後先無いんだ、飲むだけ飲むのが幸せってモンだぜ。

しっかし・・・イテテ・・・
何処行ってもこれだぜ・・・

ベンジャミンさん…、そのスコッチを、数適このカップにもらってもいいかしら？

［ニーナは、自分の飲みかけの紅茶を軽く揺すって見せた］

>>132
これ以上誘惑しないで頂戴！

…ごめんなさい…私ったら…
ご親切にありがとう…ベンジャミンさん
でも、もう忘れたくないのよ…
すぐ溺れてしまうから…

ニーナ!そんなことをしたら捕まるわ!
…ああそうね、もう捕まっていたんだったわ…。

…そう、どうせもう、捕まってるのだもの…。
それに、知らない？
お酒は飲む分には罪にならないのよ…。

せっかくだから、ネリーが入れてくれた新しいお茶で頂くわね。

［ニーナは、新しい紅茶にスコッチを注ぎ込んだ］

―オードリーはスコッチ入り紅茶を飲むニーナを
羨望の眼差しで見てから、慌てて目を逸らした―

（ダメ…一滴でも飲んだらきっと止まらないわ…）

―オードリーは黙ってお茶を飲んだ―

…仕事で、随分『医療用アルコール証明書』を発行したものだわ。
ふ、ふふ。

…美味しい。

…ニーナ、節制が効くならいいけれど…でもあなたまでディープワンを探すことを放棄しないで欲しいのよ…。
お医者様がいらっしゃらない今、あなたが一番頼りなの…。

やーねえ、自棄になんてならないわよ。

［ニーナは、アルコールが回って来たのか明るくそう言うと、ネリーにの肩にもたれ掛かった］

（ネリー…相談があるの）

［ニーナは、ネリーに、ためらいつつ小声で話をした］

（ネリー、こんな事を言うと、怒られてしまうかもしれないけれど…。
ネリーは、オードリーさんの側に、長いこといるのよね？

オードリーさんって、この近郊にある名家の出身なのでしょう？
その家系に…失踪した人、奇病に掛かってしまった人、精神を病んでしまった人など…いるのかしら？
そしてオードリーさん自身も…、以前と何か変わった点とか…ないかしら）

（アーヴァインさんがオードリーさんに疑問を抱いたのは…その家系なのでしょう？
だから…、ついこんな事を考えてしまったの。
…ごめんなさい、凄く失礼なお話よね。

でも…、先生が…急にお部屋から出てこなくなってしまって…、私、不安なの…。
…今まで身近にいた人でも…もしかして…って……。
ネリーは、オードリーさんのことに一番詳しいでしょう？）

(…奥様は、孤児だったあたくしを哀れにお思い下さって引き取ってくださったのよ…。

あの資料を見るまでは、こちらの地方のご出身だったなんて知らなかったし、反応を見る限りでは奥様自身も知らなかったんではないかしら、と思っているの…。
ただ…。)

(ただ、最近の奥様は少しおかしいの…。
だんな様が亡くなられてから、ぼんやりしていらっしゃることが多いし…あまり打ち解けてくださらなくなってしまって…。

こんなことを言ってはいけないのはわかっているけれど、以前の奥様はもっと陽気で、周りがパッと華やぐような方だったのに、まるで別人のようなの…。)

（そう、別人のよう…か。教えてくれて、ありがとう…。）

［ニーナは、ネリーから身体を離すと、ゆっくり伸びをした］

ちょっと酔っちゃったみたい。さっぱりしに、シャワーを浴びてくるわ。

仲良し二人で内緒話？

･･･牧師様はまだお部屋かしら？
それともラッセルの遺体を調べてるのかしら…

――ネリーはお茶を入れなおしている――
牧師さまが出ていらっしゃいませんわね…?

おひとりでまだラッセルさんをご検分ですかしら…?
ニーナも…確かお湯が出ないはずですのに、風邪を引いてしまいますわ。

牧師様にお会いしたかった…

…今朝何年か振りにお祈りしたのよ
私の醜い猜疑心を懺悔したくて…

きゃ…！

［ニーナは、シャワーの冷たさに思わず声を上げた］

覚悟はしていたけど、やっぱり、水浴びにはまだ早いわ…。
でも、頭がすっきりする…。

ネリーの考えは聞けたし、後は直接本人に聞いてみようかしら…？

［ニーナは、手早くシャワーを終えると、温かい紅茶をいれて自室へと戻った］

いつまでも逃げていてはダメね…
いつかは決心しなければならない事よ…

それが今日でも…明日でも…

…牧師様の正式な結果が知りたいわ…
ラッセルは間違いなく人間だったの…かしら

いいえ…どちらにせよ……決めたわ……

―オードリーはメモを書いた―

牧師様、ラッセルの遺体の正式な検査結果が出たら
どうか私の懺悔を聞いて下さい
二人きりでなくて結構です…皆の前で

そして皆それまで…箱に名前を入れないで　オードリー

――ネリーはオードリーのメモを目に留めた――

奥様…お苦しみになっていらっしゃるよう…なのにあたくしは何の力にもなれないなんて…。

…あら…?
奥様の、「箱に名前を入れないで」というのはどういう意味なのかしら…?
もしかしたら呪法以外の方法に心当たりをお持ちなのかしら?

――ケネスは椅子に坐ってるネリーに話しかけた――

・・・適当じゃなく、ちゃんと考えた上で入れろって事じゃないか？
もしくは・・・
全員で入れる相手を統一するとかな。

［ニーナは、個室のベッドの上で膝をかかえて座り込んでいる］

ラッセルが人間なら…、ベンジャミン・ケネス・ルーサー・オードリー・ネリー・…先生、の中に、ディープワンが二人もいるというの…？未だに信じられないわ…。
でも………呪いは…本物だったし、人がまた殺された。…考えなきゃ。
私、死にたくない…。

ベンジャミンさんは…確か、密造酒の中身と行方について、嫌疑が懸けられていたのよね。
黄金の蜂蜜種って、ケネスは言っていたけれど…、どんなお酒なのかしら？ベンジャミンさんは見た事がないと言っていたけれど…少し、態度が変だったわ……。

ケネス…彼は、一体どちらの味方なのかしら…。
彼は仲間を裏切り、アーヴァインさんに協力をしていたと言っていたわ…政府にも…。でも…彼はディープワンは狡猾だとも言っていたわ…。つまり…彼自身も狡猾だということよね…？
彼は私達に全て本当の事を言っているのかしら…本当に私たちの味方なの……？

牧師様は…昨夜、私やオードリーさんを必死に守ってくださった姿からは”化け物”だなんて想像もできないわ…。
でも、時々違う一面が見えてしまって…そう言う時の牧師様は、とても恐ろしく感じる…。孤児を保護していたと言う牧師様を…信じたい…でも…。

オードリーさんは…この状況に、怯えきっているように見える…。
ただ、資料にあった彼女の血統にまつわる疑惑ってなにかしら？ファミリーネームをペンで、丸く何重にも囲ってあったけれど、文字が汚れてしまっていて上手く読みとれなかった…。
それに、一番彼女に近いネリーも、少し不審を感じているようだったわ…。

ネリーは…考えてみると、不思議な子。
まだ、出会ってからほんの三日なのに、まるでずっと一緒にいたかのように慕わしい…。とてもじゃないけど、彼女を疑うなんて出来そうにないわ。
…それが、敵の罠などと言う事は…、駄目、やっぱり…考えられない。

先生は…信じているわ。誰よりも信じている。
……でも、どうしてお部屋から出て来てくれないのかしら？それでも、昨日まではノックをすればお返事をくれていたのに、今日は……。

［ニーナは、ヴィンセントの個室の前に立つと、恐る恐る扉をノックした］

先生…そこに居るのでしょう？返事をして…お願い……。

［ニーナは扉に額をあて耳を澄ませたが、中からの返事はなかった］

［ニーナは、不安を心に押し隠すようにドアから目を逸らすと、覚つかない足取りで大広間へ向かった］

これは…、オードリーさんのメモ…？箱に名前を入れないで、か……。
そうね、入れないでおくわ。…どうせ、誰の名前も入れたくなんかないのだもの。
でも、お話って…何を……？

>>155
あたくしもニーナと同じで、できれば誰の名前も入れたくはないんですわ…。
けれど、そう、どちらにしても罪を犯すなら、誰かに迎合するのではなく、自分の意思でそれぞれ決定をした方がいいと思いますの…。
所詮自己満足に過ぎない行為ですけれども…お綺麗なことを言うとケネスさんはお笑いになりそうだわ…ふふ。

・・・ちなみに、オレはルーサーには入れてないぜ。
ふふ・・・だってよ。
隠れて居れば良い話だからな・・・
基本的にヤツラは・・・。
だのに、わざわざ疑われる行動には、でやしないだろー・・・

だから、あんまり顔を出さないヤツ。
つまり、オレは、【ベンジャミンがディープワン】だと思ってる。
スゲー単純だがな。
あん、医者も顔出さないって？
んじゃ、【ヴィンセントもディープワン】かもな。

――ケネスは自分の憶測をメモに書いた――

・・・腹が減ったな・・・。
何か喰ってくるか・・・。

昨日はあたしやニーナが良く顔を出すからディープワンだとおっしゃってましたのに…ころころ意見が変わるんですのね…?

それに昨日は、ケネスさんはまるでルーサーさんをディープワンだとわかっていらっしゃるような口振りでしたわ。
お話を混乱させるのがお好きな方ね…。

――ネリーはにやりと笑ったケネスの口から垣間見える歯に怯えた――

だ、台所に少し食べ物がございますわ…どうぞご自由に…!

――オードリーは独り祈っている――

…ハーヴェイが殺された…何故？
何かを知っている様に見えた？
好奇心の強い人だった…何かを見たと思われたの？

ケネスは何者なの？
･･･…私にはもう解らない…

私達は…どうなってしまうの…神様…
明日が怖い…せめて…救いが欲しい…

―ルーサーはタオルで手を拭きながら、ラッセルの結果を伝えた―

・・彼の亡骸に一切の異常、および異物はなかった。
それが、ラッセルについての報告だ。
ただし、私は化け物との差異もわかっていない。
ただ、ラッセルの身体には生物学てきに人となんら変わりはなかった事という事だ。

―オードリーのメモを見て―

・・・・私には、もうその資格は・・・
いや、このような事態だからこそ、私のような人間が必要なのか・・

オードリーへ
心得た、出来る限りの事をさせてもらおうと思う
何でも言ってくれ

―メモにそう書くと、近くの壁にもたれた―

・・やはり、あのような場所にいると流石に辛いな・・
一度冷水でも、浴びてくるか・・
血の匂いがこびりついたようだ・・・・！

―あまりの疲労感のせいか、力が体に入らなかった―

・・私も年老いたという事か・・

―　一人、自嘲的に笑みを浮かべると、言うことの聞かない体に喝を入れ、壁から離れる―

さぁ、気を引き締める事にしよう・・

牧師さま…おいでくださってありがとうございますわ…。
奥様が何かお話があるそうですの…。

―オードリーは広間に戻り、ルーサーのメモを読んだ―

…ああ、ありがとうございます…牧師様

――オードリーはルーサーに歩み寄った―
牧師様…
何年も信仰を忘れていました…
こんな状況になるまで名前を呼ばなかった…
でも神に見放されたまま…死にたくないの…

そんな身勝手な私を…お許しくださいますか？
そんな私の懺悔を聞いていただけますか？

――オードリーはルーサー牧師の前に跪いた――
神様…私の猜疑心と醜い心をお許し下さい

ひとつは昨日、自分が助かるなら
見ず知らずの男が部屋で変死体で見付かっても構わない…
そう本心で思って名前を書きました

もうひとつ、ここに来た最初の日…ケネスを外見だけで疑いました
…いいえ本当は、
夫を亡くしお酒に溺れて自分を見失った私の醜態を見られていたから…彼の姿を見るとその自分の姿を思い出すから…
苦しかったのです…それで…彼が本当に化け物なら良いと…

そしてもうひとつ…私に信頼を寄せてくれていたネリーを…
彼女は若くて可愛くて…以前から私の嫉妬の対象でした…
ずっと夫の心変わりを恐れていたのです…
夫を亡くしてもまだ私は…彼女と夫の繋がりを恐れていました…
同じ…化け物だったら、と…

…【全て間違い】でした
私の醜い猜疑心を…お許し下さい…どうか神様…

―オードリーは、言い終えるとほっと一息尽いてから皆を見た―
…もう全て話すわ…
私への疑惑の証拠…あの家系図は殆ど夫の物よ…

私はね…犯人を見たから連れて来られたの…
夫の事件の時、私現場に居たの…
そして見たのよ…【何か】を…

でも、余りのショックで記憶が混乱して…
思い出せないの…何を…誰を見たのか…
アーヴァインは、私に全て思い出せと言ったわ
証言できないなら…共犯と同じだと…

……でも思い出せない！思い出せないの！！！

―オードリーは怯えたように周囲を見渡した―
……連れて来られた日、アーヴァインに
ここで全員の顔を見て誰が居たか思い出せと言われたのよ…
思い出せば助けてやるって…

最初の夜…ケネスについて記憶を辿ったわ…
あの日広間に集まっていた人で、疑うべき…
姿をしていたのはケネスしか居なかったから…

でも、思い出せたのは闇酒場で酔って口説いた私の醜態だけ
…少なくともケネスは私の見た【何か】じゃない…

そしてアーヴァインは死んでしまった…

昨日…私は醜い私の胸の内を明かしたわ…
…そうネリー…貴女の事を考えたの…
だけど、当然よ…貴女は心優しいただの女の子…
夫との仲を疑ったり…醜い心を抱いたのは私の方…

――オードリーは、そう言うと泣き崩れた――
何も思い出せないまま死ぬのは嫌！！
でも、このまま明日が続くのがもっと怖い…

ラッセルもハーヴェイも無実の人間で…
ここにまだ化け物が二匹も蠢いているなら…
…明日私達はどうなってしまうの…

【何か】を思い出すまで
息を潜めていたかった…死にたくない…
でも、このまま疑心暗鬼に明日を迎えて…
何もかも手遅れだった時が怖い…

私を信じてくれるなら…
そしてルーサー牧師を信じるなら…

【ニーナ】【ヴィンセント先生】【ベンジャミンさん】

この中に…私のみた【何か】
アーヴァインとハーヴェイを殺した化け物が二人居るわ…

>>173
奥様…そんなことでお悩みだったなんて…だから奥様はあたくしに余所余所しいそぶりを…?
誓ってあたくしは奥様を裏切る行為はしておりませんし、恐ろしい化け物などでもありませんわ…!
ええ、命を懸けて誓いますわ…!!

>>178
ええ…ネリー…
貴女を疑ったのは…気の迷い…私の醜い心のせいよ…

私を…許して頂戴

>>177
…まぁ、なんと言う…。
奥様はまだはっきりと思い出せないのですね?
…無理もありませんわ…今すぐ思い出さなくても…きっと時間が立てばだんだん思い出せることもあるのではないかしら…?

>>179
いいえ、ネリーはそのようなことを少しも気にしていませんわ。却って奥様にそのような物思いをさせてしまったことを悔いております…。

でも、どうしたらいいのかしら…?

>>180
できる事なら今すぐ思い出したい…
でも、記憶に霞がかかったよう…

ニーナがあの事件の夜現場に？
…解らない…
ネリーと本当の姉妹のように見えるあの子を
私は疑えない…

ヴィンセント先生は？
色々相談に乗ってもらったわ…でも…
私の記憶の混乱が直らなかったのは…
先生の処方してくれた薬のせいだったら？

ベンジャミンは？
彼の売る粗悪な密造酒…
今朝の大騒ぎが聞こえずにぐっすり眠っていたと…
本当なの？
いいえ、解らない…解らないわ…

奥様…奥様は今までこのことを心に秘めて、逡巡していらっしゃったのですか?

アーヴァインさんが死ぬ前におっしゃっていれば、奥様だけでも助かったかも知れませんのに…。

[ニーナは、予想もしなかったオードリーの言葉に酷くショックを受けた]

オードリーさん…それ…本気なの？
私と先生のどちらかが化け物ですって…？
…なんて…酷い…！

［ニーナは、嗚咽が出そうになるのを堪えた］

そして奥様がためらっていらした間に、ケネスさんが誰彼にも絶望と猜疑をまきちらしています…。
彼自身も恐れで我を失って、自分の言っていることがわからないのでしょうか?

(ニーナ、ニーナ、落ち着いて…。
もしかしたら奥様が記憶違いをなさっているかも知れませんわ。

けれどひとつだけ聞かせて…あたくしニーナは信用しているのですけれど、お医者様のことはわからないの…ニーナはお医者様がディープワンでない確信が持てて?
…むごいようだけど、確信が持てないなら用心しなくてはいけないわ…。)

>>184
私も信じられないわ…
でもニーナ…先生は部屋から出て何も答えてくれない
それでも信じてるの？

私も…夫のチャールズを疑えなかった…
いいえ、変わってしまったと解っていたのに…
目を逸らして…見えない振りをしたのよ…
認めたくなかったから

そんな、先生は……！

［ニーナは、狼狽えた目つきで、ネリーとオードリーを交互に見た］

先生は………、人間、よ…。
確かに、今日もお部屋から出て来てくれないでいるけど…、きっとそれには…何か理由があるのよ…。
だって…私が一番、先生をよく知っているはずだもの……！
私が、信じなければ、先生は………。

［ニーナは、堪えきれず嗚咽を漏らし始めた］

・・オードリー、貴女は確かに、人を疑うという罪を犯した。しかし、それすらも覆い隠すほどの勇気があなたにはあった。ならば・・神は貴女をお許しになられる。
そして、私達は貴女の勇気に感謝しなければ、ならない。
ありがとう

―ルーサーはオードリーの手を握り締めた―

ありがとう…牧師様
…その言葉で救われました

今日…誰の名前を書けば…

ケネスの言葉が最後の決断を迷わせる…
彼は何者？
私の見た【何か】じゃない…でも…
私達の味方なの？敵なの？

彼の言葉をどこまで信じていいの…

私…わたし…先生と…話さなくちゃ…。

［ニーナは、ふらついた足取りで、ヴィンセントの個室へ向かった］

先生！先生…！
お願い…出て来て…、皆に人間だと説明して…！！

（気持ちは…痛いほど解る…ニーナ
でも、認めないと…私達は…）

ニーナが落ち着いたら…
今日はもう少し皆で投票する名前に付いて話し合いたい…

先生とベンジャミンさんも来てくれたらいいのだけれど

へへっ。
姿形がおかしくとも、心は純なんていうけど、ありゃウソだぜ。
心がおかしいから、姿形がおかしくなるんだよ。
外見は人を、表すんだしかし・・・

人間じゃないやつなら、例外はあるな。
オレは、まだ、人間だったのか・・・。

>>194
だから聞いたのよ…絆は消えてしまうの？って…
個人的にも聞きたかったから…

変わってしまった私のチャールズ…
…彼に愛は残っていたのかしら…最期の時…

ケネス…
貴方にまだ愛が残っている事を祈ってるわ
貴方に人である事を望んだ弟さんを裏切らないで…

>>196
それは・・・人間の側にたった考えだぜ・・・
裏切るも何も、オレは・・ディープワンなんだから・・・
ディープワンには、ディープワン独自の感情があるんだ・・・

その、愛は・・・
ダゴン、そして、クトゥルーに捧げられるだろうが。

>>197
そう、認めるのね…
心はこちらにもう無いって…
もう、運命に逆らう気は無いね…

あの事件の時…間違いなく貴方は居なかった…
それだけは言える…でも…
皆が明日を間違いなく迎える為なら…
私は貴方と刺し違えるべきなのかも…

だけど…それはただ逃げる事になる…
今日私が…明日は牧師様が命を落としたら？
頼れる者を亡くしたそんな恐ろしい世界に
私はあの子達を置いていけない…

私はもう逃げない…逃げないわ

ニーナを…あの子を信じるなら…

先生もベンジャミンさんも…
記憶を辿るまでもなく化け物の筈…
もう、どちらに投票しても良い筈なのに…
気持ちが固まらない…
（私は何を恐れているの…）

また、今日も誰かを殺さねばならないのか・・

―投票先を書いた紙切れを眺めながらルーサーは呟いた―

ただ・・もう、迷う事はない。誰かが死ぬ事に戸惑う必要も・・。今はここから化け物を外に出さない事が先決なのだからな・・

―そう呟きながらもルーサーは、投票箱に伸びた手を止めた―

・・入れるのはまだ先にしておこう・・寸前で考えが変わるかもしれん・・・

―ルーサーはそのまま、投票箱を離れた―

しばらく待つ事にしよう。もう少しで夜が明ける・・
その時には皆集まるだろう。

奥様、奥様が見たと仰るディープワンの中には、ケネスさんやあたくしと同様、確かに牧師さまはいらっしゃらなかったのでしょうか？
あたくし、奥様の躊躇いのお気持ちは、牧師さまについて確かな事を思い出せないからなのでは、と思っておりますの…。