人狼審問

くくくく・・・はーっはっはっは！！
･･･いや失礼。
拙者は東の国よりお仲間の集まる村があると聞いて参上したマンジローと申す。
全員が人狼･･･。なんとも心強いではないか。

ふむ、まだ誰も来ていないのか。
じっくり待つとしよう。

ん……。頭が痛い……。
……昨夜は飲みすぎたかしら。

……月が綺麗な晩に、飲まない人狼なんて居ないけどね……。

……あら？　見かけない顔ね。
……そう、東方からきたの。

お仲間って事は、あなたも……？

おお！やっとこの村の住人らしき人に会えた。
この村でよかったのだよな？
その･･･人狼の集まる村というのは。
その噂を聞き拙者ははるばる東から旅をしてきたのだ。

拙者はマンジローと言う。
東の国ニホンでちと派手にやりすぎてしまってな。
仲間を求めて旅を続けていた。

そう、あなたもお仲間ってことね。
ここまで踏み込んでくる人間はめったに居ないけど。
私たちにとっては、安住の地……だからね。

私はローズマリー。
好きなように呼ぶと良いわ。よろしくね。

はい、ご挨拶。
ワインが飲めない……何てことは無いわよね？

お酒が苦手なら、カクテル用のジュースもあるけど。

おはよう、皆の者。

今日は、わらわはとても気分がよい。

ありがたい。
ここに来る途中で果実酒も飲んだことがあるので大丈夫だ。
･･･うん、旨いな。仲間の･･･しかも美人にもらう酒と言うのは･･･良いものだな。

おはよう、ヘンリエッタ。
昨日は素敵な月夜だったものね。

毛並みを整えるのにも、最適だったわ。

ローズマリー、朝早くからご苦労だな。

わらわもワインを貰おうかの…。

やはりワインは赤に限るのぅ…。
血の色を思い起こさせる赤は、やはり人狼族にこそふさわしい…。
まあ隠れ里であるここではおおっぴらにそういうことはほとんど出来ないがの…。

ふむ・・・お主も･･･なのか？
申し遅れたな。拙者はマンジローと言う。
よければ名前を聞かせてもらえぬか？

極上の人間の血……には劣るけど。
慰めくらいにはなるわね……。

最近、ストックが切れてしまったわ。
また、どこかの村を襲いに行かないと……ね。ふふ。

そうそう、ヘンリエッタ。
マンジローは東方から、わざわざこの村を探してきたらしいわ。

……私たちの、仲間だって。

ふぅ、なんとか辿り着けたか…。

ん、俺も有名になっちまったもんだな。この村にまで、こんなもんが張られてるとはよ。

そうか…。

わらわはヘンリエッタ。こう見えてもそれなりに歳は重ねておる。このほうが皆の受けがいいのでな…ふふ。

マンジローとやら、この村はみての通り人間の手が届かない隠れ里…。
血の匂いは薄いが、同族と暮らしていくならこのうえもなく恵まれた土地じゃ。気のすむまでいるといい…。

って、随分前の手配書だな。
0が二つばかり、足りないぜ。

……手配書に載ってた、あんたは確か……クインジー？

……ただの小悪党だったらこの村からは出て行ったほうが良いよ？
ただの、餌食になるだけだよ。

マンジローに、ヘンリエッタか、暫く厄介になるんで、よろしく頼むぜ。

俺の自己紹介は…こいつを見ればわかるだろ。

だが人間の手が届かない･･･？
来た人間は行方知れずになる、ということだろう？
だがありがたい。その言葉に甘えさせていただこう。
代わりといってはなんだが米で作った酒だ。
皆で飲んでくれ。
血の味はせぬが･･･なかなか乙なものだぞ？

そうね、この村の秘密を知って逃げ出せる人間など居ない。

お米のお酒……ね。
興味あるわ。頂けるかしら……？

二桁ほど、賞金の額が違うが、そこに書いて在る通りさ。

ドジ踏んじまってな。本来の姿を見られた上に、殺人鬼って事で、目を付けられちまってね。

……本来の姿。
……って事は、お仲間って事かしらね？

･･･なるほどな。クインジーと言ったか･･･お主も同類であったか。
賞金の額がこれの2桁は違うと･･･おぬし、少々派手にやりすぎではないか？っと･･･拙者もあまり人のことは言えぬか(苦笑

まぁ、そう言う事だ。

ほとぼりが冷めて、捜査の手がゆるむまで、この村に居させて貰うぜ。

木の葉、隠すにゃ森の中ってな、構わないだろ？

ふむ…賞金首か…。

まぁよい、今や数少ない同族だ。村に不利益になることをしないなら好きにするがいい。

それにわらわも、昔はそれなりに名前が売れていたしの…たいしたことではあるまい。

お仲間なら、歓迎さ。
ここは、人間はめったに来ない隠れ里。

ほとぼりが冷めるまでゆっくりしていくと良いよ。

私は、ローズマリー。好きに呼んで頂戴。

今日はやたら、見知らぬお仲間が集まるわね……。

俺としては、結構控えめに殺ってたつもりなんだがな。目の前に美味そうな女が居たら、あんただって味見したくなるだろ、東方の。

って、嬢ちゃんは赤ワインの嗜み中かい。俺にもいただけるかな？

ほぅ、仲間が集まるねぇ。月の所為じゃないのかい？
昨夜の月は、嫌に赤かったからな。

そうかもしれないね。
ま、お仲間なら歓迎さ。

人間なら……。久々のご馳走って所だけどね。ふふ……。

私はマンジローから貰った米の酒を……。
……独特の風味だね、嫌いじゃない味よ。

美人の酌とは、有り難いな。
酒を美味くする最後の行程だって、俺は思うぜ。

あんたが人なら、是非喰って見たいね。おっと、同族を喰う気は無いからな。俺なりの賛辞だと思ってくれ。

月の綺麗な夜は確かに気が高ぶるな。
昔は刀で斬っていたのだが･･･。
今は素手で引き裂くことが愉しみに変わった。
拙者は女よりも子供の方が食欲をそそられるがな。

お世辞の好きな男が多い事。
嫌な気分はしないけど……ね。

ヘンリエッタもおかわりはいかが？

マンジローも手酌なんてしてないで。
ほら、それかして。注いであげるわ。

旦那も良い趣味してるねぇ。子供は柔らかくて美味いとは思うが、ちょっと喰いでがないだろ。それとも、もう牙が耄碌しちまったとか。

なんだか今夜は、お酒の出が早そうだね。
酒の補充をしてこないと。

一回私は、家に戻るよ。
また後で顔を出すね。

ワインは、ここにおいて置くから好きに飲んで頂戴。

俺としちゃあ、事の最後に女が歓喜の声を上げた瞬間に、がぶっとやるのが一番美味いと思うがな。

はい！はい！はいはいはい！わぉ！あるある狼隊！いるいる狼隊！
家まで送るの拒否されるー。

はい！はい！はいはいはい！わぉ！わぉ！わおーん♪

ふむ、もっと貰いたいのは山々じゃが、今日はちょっと野暮用があるのでな。
まあ、ここで綺麗どころ二人が抜けるのは残念かもしれんが、暫く２人で楽しんでいてくれ…ふふ。

おいどん、送り狼失敗しましたからぁー！！残念っ！！

クインジーが羨ましい斬りーっ！

あんたに、気を付けてなんて言うのはナンセンスだが、気を付けてな、マリーさんよ。

って、美人の代わりに騒がしいのが来たな。

俺も奥で、静かに飲ませて貰うぜ。

折角の味が、台無しだな。

…おいどんは一人寂しくネタの仕込みをするッス。
こないだのお笑いライブではお客さんからおひねりをいただいたッス。紙の中に包んであったのは石だったッス。この謎は未だに解明されてないッス。

一人前になって早くおいしい肉が食べたいッス…。

あんな変な髪型してる奴に笑われたくないッス！
見た目で笑いをとろうなんてヘッポコッス！
おいどんの顔の方がずっと面白いッス！

いつか自分のお笑いライブを観に来たお客さんを全員おいしくいただ…夢は口に出さないのが男ッス！
さぁ頑張るゾウ！ゾウ！ぱおーん！

近くの隠れ村も人間どもの手に落ちたか…。
この村に来るのも時間の問題か。
対策を考えねばならんな…

さて、そろそろ夜が近づいてきたようね…。

今晩は。こんな時間にどうしたのかしら。
まだ本が読みかけなのに…ふぅ…。

グルルルルルルルルルルルルルルッ！

知らねェヤツらがいるぞ…ッ。

くくくっ。
やはり刀で斬るよりも素手で引き裂くのはいいな。
狩りの手ごたえがあるのは拙者と同じくらいの男だが･･･食うのは子供がいいな。実に美味だ。

おなか、すいたよう……

きゃぁ、知らないにおいが一杯……

いい夜ですねぇ。
今晩はどこの村を襲撃しましょうか？
くくく…。

肉の取り分けでしたら私にお任せあれ。

ふぅ･･最近人間も手ごわくなったわね。

皆さんが集まるまで隣村にでも行って来ますね。

…今日の獲物はどうしようかなぁ。
若い肉がいいな。

…くくく……。

んー。

仲間達が集まりつつあるようだな。
この中に人間がいるなどと思いたくないんだが…
もう少しで仕事も終わる。
終わったら今日は飲みに行くか…。

隣のにんじん村から１人さらって来ましたよ。
ペーター君って言うらしいです。
とっても元気で可愛い男の子。…でしたよ、くくく。

さあ、解剖しましょうねぇ。

ああ…、いいですねぇ。
とってもとっても柔らかい。

やっぱり肉は若い子に限りますねぇ。

ほっぺにちゅってしたくなる♪だけど今は解剖ちゅっう♪

…いけないいけない。取り乱してしまいましたね。

さて、私は食事にします。
また、あとで来ますね。

ネリー、仕事は終わったのか？
毎日助かってるよ。
先ほど届いた連絡で隠れ村がまた一つやられたそうだ。
今、アーヴァインが調べてくれているが明日から忙しくなりそうだ。
今日はゆっくりと英気を養ってくれ。
私はこれからマリーの店に飲みに行くが君も来るか？

…ごちそうさまでした。

やっぱり若い子供の舌とほっぺは最高ですよ。
明日は誰を食べようかなぁ。


皆さんまだいらっしゃっていないようですねぇ。
人間がこの村に入り込んだ噂もあるみたいですし、
少し心配です。

ただいま。
とても、綺麗な月夜だったわよ。

隣町まで酒の買出しに行ってきたのだけど、遅くなってしまったわね……。
ふふふ……。
女の一人歩きだからって、ついてくる人間の男がいてね。

わざわざ物陰に連れて行かずとも、ついて来てくれるんだもの。
そんなに、私に食べて欲しかったのかしら……。ふふふ……。

ローズ。（抱き寄せ

どうしてオレにも持ってきてくれなかったんだ？

ま、自業自得だな。
その人間には自分の甘さを後悔してもらおう。
後悔すらできないがな（苦笑）

マリー、夜道の一人歩きはそろそろ危ない、誰かについていってもらうのがいいかもしれんな。
近くの隠れ村が人間共にやられたらしい…。

グレン、ごめんなさいね。美味しそうな部分は少し、うちの冷蔵庫にしまってあるわ。
明日にでも、何か調理して持ってくるから。ごめんね？

はぁい、アーノルド、ヴィンセント先生、こんばんは。
マンジローもいるのね。綺麗な月だったわよ？

うちの常連さんがここに集まってたわけね。
簡易ショットバーでも開きましょうか？　お客様。
くすくす……。

……そういえば、アーヴァインがなんだか慌しく走り回っていたわね……。
……って、人間がまた……隠れ里を……？

そういえば初めて見る顔が何人かいるな。
私はこの村の村長のアーノルドだ。
出来れば皆、名乗ってくれないか？

なんだよ、冷てェな。

オレが血のしたたるのが好きだってのは知ってるだろ？

オレが付いていかなかったのを怒ってるのか？

アーノルドさん、僕の顔は知ってますよね？
村医者のヴィンセントです。
はじめましての方はよろしく。

まあ、狼が病気になるなんて滅多にないでしょうけど、暇な方は診療所に遊びに来てくださいよ。

あら、グレンが居たらあの獲物は引っかからなかったわよ？

怒ってなんて、いないわ。ほんの少ししか……。なんてね。
今日は、このワインで我慢して頂戴。ね？

夜道が危ないか…確かに危なそうだな、人間の男に取ってよぉ。

って、結構いるんだな、居る場所には…。

酒の追加貰うぜ！

ああ、隠れ村の村長から連絡があった、なんでも３人の人間が入り込んで人狼を襲うらしい。
アーヴァインはがんばってくれているんだが、最悪な場合も覚悟しなければいけないかもしれんな。
ここは店じゃないからな、マリーものんびりとしたまえ。

グレン、そのやり方では女は口説けんぞ、もっと余裕を持ちたまえ。
どうも君は焦りすぎるようだな(苦笑

一応自己紹介は軽く済ませたけれど。

……私は、ローズマリー。
ここから程遠くない小さな店にいるわ。
お酒が飲みたくなったら、いつでもどうぞ。歓迎するわ。

最近では、ここにお酒を持ち込むことが増えたけどね。

まぁ、診療所も形ばかりに近いからな。
我々は元々高い治癒能力を持っているからなぁ。
ところでヴィンセント、君の所のニーナはどうだ？
そろそろ薬を取り違えるようなことはなくなったか？

クインジーだ、世間じゃ変な方でちょっと有名になっちまってな。

暫く厄介になるぜ、村長さんよ。

い治癒能力ねぇ。まぁ、ぜいぜい変な病気持った奴を食わない様にな。

そこの薮医者に掛かったら、やばそうだぜ。

ククッ。アーノルド。オレはこうさぁ。
男の魅力は、いかに人間を残酷に嬲り殺すか。
オレはその魅力を持ってるぜェ。ヒャハっ。

オマエさんのはもう使い物になんねェんじゃねェか？

……という事で。
普通のワインと、この特別なワイン。
好きな方を飲むといいわ……。

特別なワインはストックが余り無いから、味わって頂戴ね？

あら、クインジーもいたのね。おはよう。

ふふふ、アーノルド、グレンはいつもの冗談でしょ。
気にしてないから、大丈夫よ……。

ニーナは頑張ってくれてますよ。

おっちょこちょいな所も彼女の魅力ですし。
応援してあげてください。
あ、でも、私がいないときは薬を出されても受け取らないようにしてくださいね。

グレンだ。表向きのナマエだけどな。
ニンゲンを嬲り殺すのが最ッ高に愉しいんだ。

知らねェヤツが群れに混ざり込んでるのが気に入らねェ。
余所者ってのは大抵の場合、群れに何ももたらさねェよ。

クインジー、か。察するところ、イイ女でも見つけて思わず喰ってしまった、って所か？
若いうちはついついやってしまうな。
ほとぼりが冷めるまでゆっくりしてくれ。
何もない所だが、マリーのおかげで美味い酒が飲めるからな。

三人組の人間？

あぁ、そうさせて貰うぜ。

いい酒に、いい女、それだけ在れば、十分さ。喰えない女ってのは、ちょっと残念だが、まぁ贅沢は言わねぇよ。

あいや申し訳ない。村長殿か。
拙者はマンジローと申す。
母国で少々派手にやりすぎてな。仲間が集まり隠れ住むというこの村を探していたのだ。
しばらく厄介になるが宜しく頼む。

簡単に喰ってもらっても困るよ。ふふふ……。

残念ながら私は無意味に力をひけらかす必要を感じないだけだな。
力は必要なときに必要なだけ出せばいいからな。
確かに悲鳴も上げさせることなく一撃で終わらせて喰うようになったんだが…。

特別なワインは他の者に振舞ってくれ、私は普通のワインをもらうよ。

余所者が群れに何ももたらさねぇってのは、間違いだと思うぜ。

厄介事を持ち込む可能性だって在るさ。って、冗談だよ、冗談。そういきり立ちなさんな、グレンさんよ。

ローズマリーさん、私も頂いていいかな？

ああ、本当に月が綺麗だね。
こんな夜は血が騒ぐ…。

私にもよくわからんのだが、村にこっそりと３人の人間が入り込んでくるらしい。
そして我々の仲間を一人ひきこんで内部崩壊を狙ってくるそうだ。
なんでも恐ろしく変わり身が上手く昔からいる人狼ともすり替われる、とも書いてあったな。
正直、断片的な話ばかりでよくわからん。
外部から来た、と言うことで風当たりが強いかもしれんがマンジローもクインジーも羽を伸ばしてくれ。
仲間を排斥したりはしない。

ほぅ、こんな片田舎で、ロマネ・コンティが出てくるとはな。

いい趣味してるな、マリー。ありがたく頂くぜ。

いやねぇ、グレン。そんな不満な顔をしないで頂戴？
少し鮮度は落ちてるだろうけど。
……一緒に来れば、良かっただろうに。


……あんなに非力な人間に、私たちが狩られるとは思い辛いけど……。
隣村が、やられたなんて……ね。

っと、アーノルド。悲鳴をあげさせずに殺す？せっかくの玩具をあっさりとラクにしてやるのか？理解できねェな。嬲り、泣き叫ばせて、悲鳴をあげさせるのが愉しいんじゃねェか。堪らないぜ。カンタンに壊れやがるのがツマらねェけどよ。血ィぶちまいて転げまわらせるんだ。笑えるぜ？ヒャハっ。

人間だと？ヤツらに何ができる？ゴミ同然のヤツらじゃねェか。

そ、そうなのかい。まぁ、気を付けて置くぜ。

それは別として、その言葉には甘えさせて貰うよ。
たまには、息抜きもしなけりゃあな。

あぁ、ローズ。不満なのはそこじゃない。ワインは最高さ。

オマエと二人きりで飲めたらイイんだがな。

いいワインだ…マリー、いつもすまないな。
人間は確かに非力だ、だが人間達には気をつけねばならん。
奴らの知恵はバカにできんからな。他人を利用することに関しては我々よりも上かもしれん。
気をつけるに越したことはない。

拙者も普通のワインを頂きたいな。
しかし今宵の月もまた見惚れそうなほど綺麗ではないか。

……ね？　本当に綺麗な月夜なのよ……。

なるほどな。普通のロマネ・コンティより、こいつの方が俺には合ってる様だぜ。

ニーナ遅いなぁ…。

アーノルドさんの所のネリーさんはどうしました？
ネリーさんはおっちょこちょいじゃなかったと思ったのですが…。
ちょっと心配ですね。

なるほど、確かにいい月夜だな。
こういう夜に飲む酒は実に美味だ。
ところでマンジロー、君の側に立てかけてあるその長物はいったいなんだね？
私は見たことがないものなのだが、よければ教えてくれないか？

ネリーは一緒に飲みに行くか？と誘ってみたんだが用事がある、といわれたよ。
ネリーの仕事は特にミスはないんだがまだ堅さが取れないな。
もう一息で一皮めくれていい仕事ができるようになると思うんだがな。

にしても、彼方さんには、随分と嫌われたらしいな。まぁ、理由はわかるがね。
［グレンから目を離し窓の外の月を…］

今日の月も…この酒みたいに朱い月だな…。
［グラス越しに月を眺めた後、ワインをもう一口…］

これか？
これは刀と言って拙者の国の剣だ。
ものを斬ることに長けていて、刃がまた美しいのだ。
この刀の銘は村正という。

今では己の腕で切り裂くことが普通であまり使わないのだがな(苦笑

ニーナとネリーはもう寝てしまったのかもしれないわね？

ヘンリエッタも、出かけるといったままだし。
月が綺麗だから、何も無いとは思うけれど。

[ギルの眼前に現れた景色。そして同属と思われる仲間達の姿。
一人、己の居場所を求めて旅を続けてきたギルは、
この地に今まで感じた事のない、懐かしさを感じていた。]

もしかして…ここ…か…？ここなのか…？
俺がずっと…探していた…。
俺の存在を受け入れてくれる…その場所は…。

…俺がまだガキの頃、俺が暮らしていた村は…
…人間達の手により、滅んだ…。
俺の父親も、母親も、大切な仲間達も、みんな…死んでいった。
俺の目の前で…死んでいったんだ…。

俺はまだ仔狼で、ひたすら逃げ惑うしかできなかった…。
…いや。
俺を皆、何故か必死に逃がそうとしてたんだ…。

ほう…確かに美しいな。
何と言えばいいのかな、女性の持つ淫靡な魅力に近いものを感じるな。
君が持ち歩くのもわかる気がするよ。

「ギル、早く逃げろ！」
「イヤだ！僕だって…戦う！戦える！」
「ヒヨっ子のお前に何ができる！早く逃げろ！これは命令だ！逆らうと喰うぞ！！」
「…！！」
「早く行け！行くんだ！」

(「…頼む。行ってくれ。お前なら…生き残れるはずだ…。
俺たちの血を絶やさないでくれ。
誇り高き狼として、何があっても生き延びるんだ…
…お前はまだ気が付いていないのだろう。
お前が一番、俺たちの未来を任せられる。
そう、思った。そう、感じた。そう、月が教えてくれた。
それだけだ。俺はお前を、月を、そして俺の心を信じる。だから…行ってくれ。
未来を…頼んだぞ…」)

…俺は、気が付くと逃げ出していた。
何処に逃げたのかすら、それすら覚えていない。
そのくらい、必死だった。

なんで、俺だけを皆…逃がそうとしたんだろう。
その答えは、俺は今でも…わからない。

それからの俺は、一人生きていく術を覚えるのに必死だった。
狩だってやった事もなかった。
それでも、生きていくには狩をしなければならなかった。
全て…独学で覚えてきたさ。

ムラサマ ブレードとか言う奴だな。噂は来た事があるぜ。

余りの切れ味に、人を斬る味が忘れられず、持ち主を殺人鬼にさせちまうなんて…そんな話をな。

まぁ、元々殺人鬼みないな、俺たちには、意味のない話だろうけどよ。

あの頃は、毎晩月を見ながら…泣いていたさ。
恥ずかしい話だがな…。辛くて、寂しくて、泣いてたさ。

一人で生きていく事が辛かったのかもしれない。
一人を感じるのが、辛かったのかもしれない。

でも、今…
この地は、俺が…ずっと、探し続けていた場所…

そんな気がする…。

ふふ･･･。
誉めてもらえるとまんざらでもないな。
この刀はわが国の中でも魔剣・妖刀と呼ばれる類のものでな･･･。国に祟り人を狂わせるそうだ。
常人では確かにそうであろうな。拙者もこの刀に出会い、人狼の血が目覚めたのだから。

ん？誰か来るようだな、一つ席を用意しておくか。
マンジロー、ありがとう。いいものを見せてもらったよ。

よぉ、同類さん。

あんたもか…。
あの朱い月は、今日此処への道標なのかもしれねぇな。

美味い酒が在るぜ、一緒にやるかい？

[ギルは同属と思われる者達へと近づいていった。
そして、その仲間達の姿を見て、自分の思いが確信へと変わっていった…」

…率直に聞いてしまうが…。
ここは…俺の存在が許される場所なのか？

なるほどな。確かに眠っていた血ぐらい目覚めさせてしまいそうだな。

俺の時は…。


まぁ、そんな下らない話は、止めておくか…折角の月夜だしな。

子供の血を掬い取って溜めておいたものだ。
日持ちはせんが保存食代わりにはなるな。

私は村長だよ。アーノルドと言う。
無論歓迎するよ。ゆっくりと体を休めてくれたまえ。
疲れているのだろう、まずはそこの椅子にかけるといい。
話はそれからでも十分だろう。

まぁ、そう唸りなさんな。
弱い犬ほど、良く吠えるもんだぜ。

処で、一つ聞きたいんだが、この村で何を育ててるんだい。まさか人間みたいに、小麦やジャガイモなんて作ってる訳じゃないんだろ？

[ローズのその視線を受け、緊張が解けるギル。]

俺はギル。
一人各地を旅しながら…気が付くと…ここにたどり着いていた。

どうやら…皆、俺と同じ同属のようだな。
この村では余所者になってしまうが…
どうか、宜しく頼む…。

ギルバートさんとお呼びしていいですか？
お疲れ様です。ここは安全ですからどうぞくつろいでくださいね。
私たちはあなたを歓迎しますよ。

ん、変わってるな…水袋じゃないみたいだが…。

貴方がこの村の村長か。
俺は見ての通り、流れ流れてこの地にたどり着いた旅人だ。
俺を受け入れてくれて…感謝する。ありがとう。

吠えるなよ余所者が…！
人間からコソコソと逃げ回っているヤツが何をほざく。
てめェこそ、何をしてお尋ね者になったんだ？スリでもしたのか？

ん？
ああ、徳利か。これは酒瓶のようなものだ。
瓢箪徳利だがな。
水物を詰めるのに使っている。

スリやこそ泥なら、こんな賞金は掛からねぇさ。

ちょっと貴族のご令嬢を…な。あっちの方も良かったが、血と肉の味は、格別だったぜ。

ギルバート、気にするな。グレンは少し感情的になってるだけだよ。
とりあえず乾杯でもしようじゃないか。

まあまあグレンさん。
私たちだって他の村に行けば迫害されるかも知れませんよ？
なにせ昼間の私たちは普通の人間とほぼ同じなのですから。
とりあえず、今夜は飲みませんか？

中々便利そうだな。

牛の膀胱で作った水袋じゃ、掬い取った血なんて入れといても飲めたもんじゃねぇしよ。

[グレンを見つめながら、語りかけるギル。]
俺は…お尋ね者になどなっていない。
生き延びる事だけで、精一杯だったさ…。

グレン、とやら。
俺は…お前がうらやましい…。

俺はお前の目を真っ直ぐに見ている。
お前も、そんな俺から目をそらさずに話してくれる。

俺は…
たとえお前に嫌われたとしても。
それだけで…嬉しいさ。

綺麗な月夜、ね……。