人狼審問

ソフィーは最初は普通のお嬢さんって感じていたな。
日が経つにつれ少しずつ解き解れていったのかもしれないが、徐々に饒舌となったような印象を受けている。
見た目や言葉のおとなしさから言動が弱いイメージがあるのかもしれないが、疑いのある３人の中で様子見をしているように見えるのは誰か、と問われれば俺はソフィーと答えるだろう。

ただ、状況としてはニーナを今殺害しようとした理由がわからない。
ニーナが生存し皆が真実の眼であるとして考えるなら自身を危うきに置くことにはなるだろうが、あの時点でそう考えられる者はどれだけいただろうかね。本物であってほしいとは考えても確信までは至れなかった筈だ。

もしニーナが告発をすれば駄目で元々服毒を……という流れになるかもしれないが告発されていない者が即服毒をする状況下に陥るとは思えない。

とすると、疑う余地としては本物か信者か見分けがまだつかないためオードリーさんに疑惑を被せつつ、以後自身が見極められる事を恐れた、ということになるな。

俺が前に言ったが、ニーナがオードリーさんを人間だと主張した場合、ニーナからは俺とソフィーしか残らない。
すると、ニーナが生存していた場合にどちらを見てもニーナからの告発は明日確定する。
それを恐れたのかもしれない。

オードリーさんに関しては、一番偽物であっては欲しくない気持ちでいるな。
最初にベンを庇った事は、仲間を守るためではなく眼を村から処刑して確定の情報を失ってしまう事を恐れたように俺には見えた。

発言としては怪しきといえる箇所はほぼ見あたらず、落ち着いた発言が目立つように見受けられる。

が、当初からの立場として元々服毒されづらい立場であったことがその落ち着きに繋がっているのかもしれず、心理的に全員が候補に挙げる事をしづらかっただろうからこそ、安定した立場を築いてきたのかもしれないと邪推することもできる。
何が怪しいと具体性を挙げられない為、こじつけがましいな。
あえていえばニーナの殺害。だが、これはあまりにもらしすぎてひっかかる。

ただ、心情としてはケネスよりはオードリーさんが本物である事を信じることができず、ソフィーよりも状況として怪しく思える為、相対的にオードリーさんへの疑いを深めざるをえない。

狼側が、取った行動で判断基準は、「目」を襲うことだと思いますの。ケネスが見極められる時に、襲われた。あの時、ケネスを襲い、「目」を減らさない事のほうが、狼にとって有利だったとわたくしは思ってますわ。それをあえて、「目」を減らし、ベンジャミンの服毒を進めることをした。自分にそのまま帰ってくる言葉だと自覚してますのよ。それでも、ケネスを襲い判定を出すことを先延ばしにしなかった、これが気にかかりますの。

わたくしが、見極められる時｢目」が襲われた。
今回のニーナが教われる事により、わたくしが一番疑われますわ。ニーナが真実の｢目」かどうか、狼側も判断してなかったのかも知れませんわね。そう考えると、ケネスが人間となりますわ。ケネスが狼であるなら、ニーナの真偽はわかっている。襲撃することも無かったのかも知れませんわね

考えるほど、わからなくなりますわ。
毒杯は２杯。それだけは、よくわかってますの・・・
考えないといけませんわね

ニーナが狼だった時、ケネスをもう一匹と考え、ベンジャミンが狼なら、ソフィーを狼と、ニーナが襲われるまで、考えていましたのよ。一人、一人を考えた時は、判断できないことも、組み合わせを考えることで糸口が見つからないかと、思いましたの。ベンジャミンが狼。これは事実。
ベンジャミンとのかかわりかたを考えると、わたくしとクインジーがベンジャミンを擁護していた事になりますわね。そして、ケネスは毒杯を進めていた。
そのまま取れば、わたくしとクインジーが狼側。ケネスは、人側。裏を読むと、狼を庇う、狼は居ない。とも、取れますわね。ベンジャミンが手負いで、信用を取れないから、そうそうと切り捨て、自分の立場を築く、とも取れますわ。

自分が人である。これを声高に言っても信用は得られ無いことは、わかってます。
クインジーのわたくしに怪しい発言がなく、落ち着いているとの評価は正直驚いてますわ。
心情的にニーナを妄信し、村を破滅に追いやる話を聞いて、自分の発言を抑え、そしてニーナを信じきれない。落ち着いてなど居ませんわ。わたくしが、人の話をきちんと読み取る力があればと、口惜しく思ってますのよ。

ケネスを疑い、ニーナを信じられなくなったのに、自分で話していて、ケネス人間？と、また疑問に思いだした・・・。ニーナが襲われた事、この事で考えを進めると、ケネスを人間と考えるのよね・・・。ケネスが狼であるなら、偽者であるニーナより、ヒューバートを襲う。こう考えても可笑しくは無いわ。でも、それも裏を考えてしまう。
結局、わたくしは堂々巡りしているわね・・・

――つぶやき……

守る者について、どう考えてるかって
ちょっと知りたかったんだけどな…
糸口として…

マダムはもうそれすら耳に入らないみたい……

――ソフィーの呟きに気が付き・・・

あら・・・いやだわ、ごめんなさいね。
守るものが名乗ること、反対しませんわ。
今日名乗っても、ネリーやヒューバートの安全性には変わりは無いと思いますの。
名乗りがあれば、考えなければいけない者が狭められますわ。名乗りを上げたものを判断する。思考が簡略化できますものね。状況が少しでも、わかりやすくなるなら、賛成ですわ。

もちろん、４名の中に守るものが居たときですけどね

　……誰も手を上げなかったり、とか。

　ヒューの「分析」の通りなら、狼の夜食はあたしかしらね？
　まともに料理しないだけならともかく、食い散らすのが気に食わないわね。
　……じっくりコトコト煮込まれるのもぞっとしないけど。

お兄ちゃんは、出るなら明日が良いって言うし、あたしは、もし出てくるなら今日がいいと思ってるし…
マダムはどっちがいいと思う？
ネリーはきっと、出てくるなら今日がいいわよね（笑

今日でいいと思いますわ。

判断材料が増えるなら、早いほうがいいと思いますもの。

名乗り出るか出ないかではなく、出るとしたら、という話なら今日出てくる方が良いと思いますな。
名乗り出ず、その生業に専念してもらうのも良いと思いますが（クインジーが言っているのはそういう事でしょう）それなら、明日も名乗りでない方が良いと思いますよ。

疑い、疑われ、この状況に降参ですわ。
早く、狼を見つけ出して、終わりにしたいものですわね・・・。
奪ってしまった者の為に、あきらめる事はしませんわ。

ん〜ン、後はケネスの意見だけかぁ…
あたしは、この話題を一からは振れないから…
出たついでにすごく聞いてみたかったの。
ありがとう

　利点と欠点それぞれあるので、生きているにせよ、その当人の考えに沿って、必ずしも多数決に従う必要はないと思うわ。
　言いだしっぺが言うのも奇妙な話だけどね。

まぁ、護り手についてはあまりどうこういうつもりはないな。

皆さん、聞いて頂きたい。

まだ考えがまとまっている訳ではございませんが、皆さんの意見を考慮しつつ出した結論としては、マダムに杯を勧めようと思っております。
クインジーは皆の信頼が厚く、ケネスは状況から人狼と考えにくく、ソフィ殿は疑う点が見つけにくいと考えております。まだ迷っておりますが、夜明けまでさほど時間もありませんし、話すべき事は全て話し尽くしたとも思っております。
皆さんの意見をお伺いしたいですな。

おっとすまねぇ、うとうとしてた。

「護り手」だが、表へ出ない方がいいと思う。
すでに護り手が死んじまってる可能性もある。
本物の名乗りでないのを観察し確認した人狼が遅れて「護り手」を騙る恐れも有る。
なにかと問題おおいんじゃないかね？

俺の述べた意見は上ので全てだ。
ヒューの旦那の決定が妥当な線だろうと思う。
特に不満はない。決定に従う。

――部屋のドアを少し開けて

マダムとあたしは……分類すればきっとタイプは同じだから
うなずくのがとても難しいですね……
決定には従いますが…

護り手については、本日も、また翌日も名乗りでない方が良い、という事でよろしいでしょうかな。

わたくしは、自分の思うところ、考える事、すべて述べましたわ。それで信頼が得られないのは、わたくしの責任ですわ。
信じてもらえなかった事は辛いですわね。

残りの毒杯で狼を仕留められる事を願ってますわ

――窓の外を見やって――
少し雨足も落ち着いて参りましたか。明日か明後日には雨もあがりそうですな。

……マダム、もし私の見当違いであれば、本当に申し訳なく思います。どうかお許し下さいますよう。

ヒューバート・・・
わたくしは、人ですの・・・ただの愚かな人ですわ
でも、わたくしには、皆を説得するだけの、力はありませんの・・・
最終決定を、お願いしますわ・・・

………ケネス、薬を取り出してもらえませんか。

――ケネスから薬瓶を受け取ると、盆の上に置き、ブランデーを注いだグラスを横に並べるとオードリーの前にそっと置いた――

………マダム。どうぞ。

――ヒューバートはオードリーから視線を逸らしうつむいた――

ヒューバート、気になさらないで・・・
わたくしは、最愛の夫と娘の所へ行くだけですの・・・
先に行った者達に、謝りに一足お先に行くだけですもの・・・。生きていたのに、狼を探し出す役に立てませんでしたもの・・・

あの……マダム　これ

――っと、ポケットから煙草を取りだし

ニーナに……持っていってあげて

――半分に減った煙草を、オードリーに手渡す

あら・・・ニーナも、無くて口寂しかったでしょうね・・・
もっていきましょうね
――ソフィーに寂しげに微笑んだ――

マダム…おそらく私もご一緒する事になりましょうな。
先に行った方々に、詫びて回らねばなりませんな。

……オードリーさん。

あら、ヒューバート、エスコートしてくださるの？
わかりませんわよ？
狼の好みは女性みたいですわ
――オードリーは妖艶に微笑んだ――

毒杯は、まだあります・・・
最後まで、狼を仕留められる事、信じてますわ。
わたくしは、自室でいただきますわ
みなさま、ごきげんよう

――耐え切れなくなったケネスは、寝転がった姿勢のまま呟いた――
マダム、すまない…
――ケネスの頬に一筋涙が伝った――

――オードリー自室――

ニーナ、最後まで信じられなくてごめんなさいね・・・
いまから、謝りにいくから・・・

――オードリーは、一気に毒杯を飲み干した・・・

これで、もしオードリーさんが偽物でなけりゃ、ケネスかソフィーか。
……空々しいもんだぜ。