人狼審問

ふむ。奇妙な感じだ。
可笑しな声が聞こえてくる。

其方は、知らぬのだな。

くくっ。
俺は狂うておるのよ。
酒のみ喰ろうて生きておる故、のう──

狂ってなど……居らぬさ。
只、正気に帰りきれて居らぬだけだ。

此れも酒の齎す幻よ･･･
尤も俺は幻でも構わぬ。
最期は賑やかな方が良い。

あっははは。
そうだな。
……最後くらい、賑やかな方がいい。

さ あ 。

愉 し も う ぜ 。

愉しんで来るといい。
やがて殺す為に生まれて来る死者も絶える。
……その前に。
それが、其方の望みならば。

斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬り捲くるのさ！！！！！！！！

ふふふ……。
叶い易い望みでよかったな。

断ち割れれた胴体から溢れる臓物の匂い。
血の甘い味わい。
断末魔の、妙なる響き。
えも言われぬ血の色のうつくしさ。

……可哀想に。

否。
それが美しいと思えるのは、それもまた一つの救済か。

なァに。
仮令地獄の閻魔獄卒であろうと憐れまれる筋合いは無い。
俺ァ剣鬼で良い──
死ぬまで、否、死んでも一匹の剣鬼で良いのさ──

何度生まれ変わろうとも、一本の剣で在りたい。

……そう言ったのは、其方だったか。
ならば、それが幸福なのだろうな。

────そう。
俺ァ幸福さ。死ぬ程な。

･･･いやァもう死んでいるのか？

……忘却と憎しみが救済ならば、吾には……。
吾には、遂にその救いの日は訪れぬのだろうか。

否。
其方は、死んでは……居らぬ。
未だ。

次の死の後には、最早魂の往くべき先がないだろうがな。

ほう･･･
ならば。悔いの無い様今生を生きるまでよ。


其方と長い輪廻の何処かで会うたならば･･･
契りを交わす事も有ったのだろうか。

ははは……。
そう。記憶して置けぬことは、確かに一つの救いだ。

吾のことなど、忘れておくといい。
そしてこの滅びを……愉しむのだな。