双子 リック [目を覚ましたのは、自然に、ではあった。――ただしそれを起こしたのは、異臭だった。 翳む瞳を擦る。 不自然に倒れていた体を起こし……直後にソレを見なかったことは、まだ、幸せなことだったろうか。 ソレは、最初は、特別なものには見えなかった。ただ、何かがおかしい気がすると、近づいた。 近づくにつれ、はっきりとしてくる。 ソレは。] ……ぅ、あ [ソレは、昨日まで――寝る前までは、人であったはずだったと、思う。 あたりに散らばる液体。赤や濁った黄色のような。 視界の端に光る――というか、硬質な透明なものが、それだけが色がなくて。異質。 叫ぶことすらできず、ただその場で凍りついたように、動くこともできない] | |
(8)2006/08/26 12:35:10 |
酒場の看板娘 ローズマリー [微かな頭痛を感じながら、目を覚ます。眠りに落ちたのはいつだったか。強制的な睡眠からの目覚めは、酷く身体が重い。起き抜けの感覚に突き刺さるように、吐き気を催すような異臭がする。怪訝そうに口元を押さえて、匂いの方向へ目を向けては、暫し言葉を失った。] ……、あれは [絞り出すように掠れた声を漏らして、亡骸――最早肉塊と言った方が相応しいか、赤黒く染まった場所を見つめ、壁に手をつきながら立ち上がる。どこか覚束ない足取りで、確認するために近づくと、それが元は人間であったことが認識出来た。実験に失敗しても、此処まで酷い状態にはならない。明らかに人間とは異なる存在の作り上げた惨状を目にし、少しの眩暈にこめかみへ手を当てた] | |
(12)2006/08/26 19:13:32 |