人狼審問

［頬に触れられ、言われた言葉に少し瞳が揺らぐだろうか。
理解したのかゆっくりと一つ頷き］

……成る程、ね。
……。
平気、よ。慣れてる、から。

……ん。
他意はないから。

[ライラに弱く微笑んで頷いた後、彼女の後ろ髪にするり指先を滑らせて、そっと唇を近づけ、重ねた。其れは恋人同士が行うものではなく。唯潤いを与える為のもの。合わせた唇から、とろり、唾液を流し込む]

分かってるわよ。

［悪戯に笑みを浮かべれば重ねられた唇から流れ込む唾液に目を眇め。
唇が離れると指先で己の唇についた雫を拭う。］

……ごちそうさま、かしら。
確かに、少しは、マシ、かしら。

［いつまで持つか分からないけれど、と呟いて。］

……お粗末様。

[どこか冗談めかして返してはそっと身体を離し、自らも軽く唇をなぞった。確かに此れで少しはマシにはなるはず、だけれど、おそらく求めている量と、この応急処置だけではとても足りない]

…………やっぱり本物の血が、欲しいわね。

[何処か視線を移ろわせ、呟いた]

本物の血……

でも……

［少しは癒された渇きも、結局は気休め程度で。
時間を追うごとに強くなる衝動にゆっくりと首を振った。

それでも人を殺すことだけは、理性が赦さない。］

[...はレインとライラの"応急処置"をぼんやりと見ていたが、ベッドに頭を乗せて]

…２人とも…マシになった？
それだけで凌げればいいのに。


本物の血か。

[ゆっくりと瞬きする。脳裏に浮かぶのは表向きは愛想良く付き合っているが、憎くて仕方のない自警団のあの男の姿。]

―――サクリファイス…アーヴァイン…。

……そうね。これだけで凌げればいいけど……

［頷きかけてからはたと首を振って。］

今はレインがいるからいいけど、一人に戻ったらどうしようもなくなるわね。

［苦笑して、瞼を伏せる。
――独りになったら、どうなるのだろう、と］

……ひとり、か。

[ライラの言葉を小さく復唱して。独りになってもこの衝動は続くのだろうか。独りで何を奪い、何を得るのだろうか。――それはとても、とても怖い。

何故今更。今まではずっと独りでそうしてきたのに。仲間を得たことは純粋に嬉しいはずなのに。嗚呼、失うことを思えば其れはどこかで、悲しいことだ]

……今は。
今は先のことは考えない。失うなんて考えたくない。
それよりも今は――

[サクリファイス。ライトの言葉に同調するように、す、と見据えるように細めた瞳、武装した自警団長を探して遷ろう]

…独り。

に、ならなければいいんだね。要は。

[何か間違ったことを言っているだろうか？と首を傾げて]

２人とも、生き残るって約束した。
それを邪魔する奴は排除すればいい。

[冷えた目で呟くと、目眩が酷くなったのか眉を顰めて目を閉じた。]

失うんじゃなくて……

だって、この騒ぎが終わったら、皆元の生活に戻るでしょう？
私は旅に出るし、ライトは学校に。レインもお店が。

……だから、独りになる。

［違うの？と少し首を傾げて。
ライトの様子に少し心配そうに見つめれば］

……大丈夫？ライトも渇いてるんじゃ……？

……そう、ね。
そうだけど、でもライラ――

[店に。学校に。確かにこの騒動さえ終わってしまえば三人はばらばらになるのだろうか。――厭だ]

ライラとは……ライトとも……分かれたくないよ。
折角仲間を見つけたのに。折角気持ちを共有出来るのに。
この村に居て欲しい……

[我侭かしら。そう呟いて、困惑がちの笑みを浮かべながら俯いた]

……居場所、あるのかしら。

［ゆっくりと目を伏せる。
小さい頃から一所にいた記憶がない。
家の無い子供はどこにいっても疎まれるものだから。］

……もし、あったとしても……

［この血を欲する衝動をどうにかしなければ、人の輪の中にはいられないのではないか。
そんな疑問は、口にすることなく胸の中に沈む。］

そっか。この騒ぎが終わったら…。

[どうなるんだろう…？首を傾げた。]

ちゃんと元の生活に戻れる、よね…騒ぎが終わったら。
………？

[何か引っかかるモノがある気がして。
でもそれが何なのかはわからずに首を傾げた。
ライラに弱く笑みを返せば]

…大丈夫。
でも、目眩が酷いんだ…２人と話せるようになってから。
ピントが合わない…今話してる最中も。
ライラとレインがぼやけてよく見えない…２人は平気なの？

……。

[ライラは何を思っているのだろう。集会場では明るく振舞う彼女が。此処でだけ見せる、どこか弱い表情。何に怯え、何を求めているのだろう。――初めての仲間という存在に対して、生まれる戸惑いに、言葉が出ず]

……私も独りは厭。

[唯、それだけ呟いて、ライラの手をそっと握った]

目眩……？
私たちと話してるから、かな？

［話さない方がいいのかと首を傾げ］

……私は今は平気、かしら。

［意識が朦朧としていたときは実の視界すらぼやけていたからよくわからないが］

ライトは眩暈が……？
何かしら――人狼でも其々が違う――

……私は、渇きが。酷い。
喉がからからで、声が出なくなり、そう。

…血が欲しい。

[囁くように呟いては空を仰ぐ。嗚呼、いつものような蒼穹ではない、今宵は暗い、とても暗くて、――人を殺しても安易には見つかりそうにない、そんな気がした]

そっか。２人が平気ならそれでいいや。
声はハッキリ聞こえてるから、目が慣れてないだけだと思う。

[目を閉じた方が楽なのか、目を閉じながら言葉を返して。
…ふと、自問する。
目眩が酷くなったのは２人に会ってからだっただろうか？
少し、違うような気もする…。
そうだ、目眩が酷くなったのは―――ライラの血を舐めてからだ。
しかしそれを口にするのが怖くて、緩く首を横に振った。]

うん、独りは嫌だね。

［握られた手に少し驚いて瞬くと微笑み。］

……先のことは、先に考えましょうか。
今考えても仕方なさそうだわ。

［この渇きをどうにかする方法も思いつかないし、と内心で呟き。
人に戻る道はもうないのかと。］