人狼審問

ふーっ。
あのお墓、けっこう重いね…
（力仕事にこった肩をごきごき鳴らして、あの場所に向かう。
廊下の角を曲がった途端──）

うわあっ
（ぱたぱたと駆ける少女をかろうじて避けると、金のポニーテールが駆け抜けて、音楽室にはいっていった。）
…びっくりした。
ちょっとかわいかったな。先輩かな？
あー雄二に頼んでたこええＢＧＭ、受け取らないと。いけねっこんな時間じゃないか！

（不意の朝日が窓から目を射て、取り落としたコインがころころ、階段を転がっていく。掴もうとする指をすり抜け、一段、一段ところがる５００円）

うぁ。朝日が…

ぁあー！
おれの焼きそばパンがぁ。

あ。

あ。

*あ。*

[…コロコロコロ。
階下を歩く葵の前に500円玉が転がり落ちてきた。]

おっ、ラッキー。何か今日はツイてるな。
１人真面目に朝練に取り組んでいた俺へ神からのご褒美に違いない。
早起きは三文の得って言うがそれ以上だな。
今日の昼飯は、焼きそばパンとコロッケパンに決定〜♪

…二つもなんて…贅沢だな、これは。

[葵は即座にそそくさとその場を立ち去った。]

ん…あそこにいるのは…？

おぃ、陸〜。早起きじゃねえか。
何、お前、真面目にお化け屋敷手伝ってんの？へー。

そんな事よりお前、一緒にバスケやらねえか？時代はお前を求めてるんだよ。ってなんか自衛官の募集みてえだな。

ま、それは置いておいて…だな。
ほらほら、今なら…俺の身を引き裂くような思いで…今日の昼飯の焼きそばパン分けてやるからよ。
考えておいてくれよな。

『みなさん、おはようございます。
　本日は私立白桜高校第10回慰霊祭当日です。
　今までの準備を無駄にしないように、また高校生としての節度をもって悔いのない慰霊祭にしましょう』

[朝の放送を終えマイクをオフにするとブースの中から出てきた]

ふー…、朝の放送お疲れさま。
仕方ないことだけど、相変わらずセンスのないアナウンス原稿よねー…
まあ文化祭じゃなくて慰霊祭だからはしゃぎすぎるなってことがいいたいんだろうけど。
校長先生自らアナウンス原稿まで口をだすなんて珍しいよね。

あれかな？
亡くなった生徒の当時の担任の先生は校長先生だったって噂本当なのかな。

でも、まるっきり文化祭よねー
お化け屋敷とか、タコ焼きの屋台とかさー
うちのクラスなんてダーツ喫茶だよ。慰霊となにも関係ないよねー

えー、斉藤くんのクラスはお化け屋敷なんだ。
うん、わかった。後でみにいくよ。

[隣の2-Cのクラスの部員に誘われ、後で遊びにいく約束をした]

さてっと。そろそろ朝錬に行ってくるね。
OK、OK、昼には一度顔だしするから打ち合わせはどのときにね。

[ひらひらと手を振るとフルートの入った鞄を持ち放送室を後にした]

─１年生の教室付近・階段─

（ぁあー！おれの焼きそばパンがぁ。）

[悲痛な声がしたほうを向くと茶髪の下級生が大げさに肩を落としている]

ねえ…、君、どうしたの？
…えっ？　お金落としちゃったの？　可哀想に。

[暫く一緒に500円玉を捜すが見つからなかった]

んんー…別の階まで転がっていっちゃったのかなあ？
そんなに気を落とさないでよー

あ、そうだ。これあげる。
…ううん、気にしないでいいよ。元気だしてねー

…ああっ　もうこんな時間！！？
急がないと！！じゃあね！！

[鞄の中をゴソゴソと探り、カロリーメイト（チョコ味）の箱を渡すと走って音楽室に向かった]

─音楽室─

おはよっ。昨日は遅くまでお疲れ様！
みんなが来るまで軽く音あわせしようか。

[窓側の席に座ると簡単に調律をしてお気に入りの曲を*吹きはじめた*]

【慰霊祭前日、午前/体育館】

[早朝の体育館には誰もいなかった。伸びをする。
隅に転がるバスケットボールを手に取り、軽めのウォームアップを始めた。]

…ふっ。
[ザシュッ、という音を立てて、ボールがバスケットに入る。
その時、リックの後ろから声がした。]

「おぃ、陸〜。早起きじゃねえか。」

[振り返ると北里が体育館の入り口に立って笑いかけていた。逆光がまぶしい。]

早起きっつぅか、徹夜だよ…墓、墓。

「何、お前、真面目にお化け屋敷手伝ってんの？へー。」

うっせぇ。いいよな、葵は。何で伊藤に何も言われないんだよ！

「へっへー。
そんな事よりお前、一緒にバスケやらねえか？時代はお前を求めてるんだよ。」

[北里は同じクラスで、バスケ部のキャプテンを務める男だ。
頭ひとつ大きな身長、細い体のどこから溢れるかと思うジャンプ力。
加えて、誰に対しても物怖じせずに物事が言え、それなのにうらまれない性格。キャプテンにふさわしい男であった。]

うーん。どうだろなぁ。

「ほらほら、今なら…俺の身を引き裂くような思いで…今日の昼飯の焼きそばパン分けてやるからよ。
考えておいてくれよな。」

[まだ人とバスケットをする気になれないリックの手からバスケットボールを奪い、
代わりに焼きそばパンを手に置いて北里は去っていった。]

あの…俺、焼きそばパンよりメロンパン派なんだがなぁ。

[独りごちたその時、体育館に伊藤の姿が見えた。]

…はいはい。じゃあ作業しますか。

[伊藤の目を避けるように荷物をどかし、お化け屋敷のエリアに入る。
京子もやってきた。]

京子おはよ。…頬、痕ついてるぜ？

「えっ……！！」

[真っ赤になった京子にニヤリと微笑み、リックは作業をはじめた。]

【慰霊祭前日、夕方/体育館】

[ふと、宮崎に聞いた話が気になった。
―――慰霊祭。
何の慰霊をすると言うのかは詳しく聞いていなかったが、
学校規模で慰霊するほどの理由とは何なのか。
…偉業で死んだ、とも思えないし。]

「…ッくん、ねぇ、聞いてる…？」

あっ、ごめんごめん。
昨日、宮崎に聞いた話を思い出してね。
この学園祭の由来ってやつ…

お化け屋敷に霊が現れたら、大盛況だろうな。
リアルお化け屋敷だぜ。

[リックの言葉に京子は苦笑した。
だが、リックは京子を見ずに考え事をしていた。]

【慰霊祭当日/深夜】

「間に合わないわね…今日も徹夜よ〜！」

[伊藤の声が響く。皆のブーイングが飛ぶ。]

「こんちは〜、藤原さまお待たせしました〜」

[その時、体育館の入り口から声がした。
振り返るとピザ屋のあんちゃんが大量のピザを手にしている。
作業をしていた面々から歓声が飛んだ。]

藤原先生も、たまにはいいことすんのな。

[その日はさすがの北里も加わり、作業は大詰めを迎えていた。
通路仕切り代わりのロッカーを男子が運び込み、オブジェを配置する。女子は布関係を整える。小道具のこんにゃくや線香も、着々と準備されていた。
そして――]

【慰霊祭当日朝/体育館】

『みなさん、おはようございます。
　本日は私立白桜高校第10回慰霊祭当日です。
　今までの準備を無駄にしないように、また高校生としての節度をもって
　悔いのない慰霊祭にしましょう』

[角度のついた日差しが眩しくなった頃、放送が入った。]

ふあー！なんとか終わったぜ！
寝る！俺は寝る！

[宣言して隅の運動マットに倒れこむ。
横では、お化け役に扮する京子や北里がメイクし始めていた。]

[体育館の空気窓からコンピュータルームが見える。
ぐったりしながらリックが顔を上げると、黒髪の生徒が突っ伏していた。]
女性か…あの部屋に居るのは男性かもな。

皆、同じようにして寝てるんじゃねぇの…

[リックは夢の世界へ*落ちていった*]

【慰霊祭当日朝〜昼/体育館】

[校庭で夜風にあたった後、京子は体育館へ戻り、作業を再開した。京子のクラス――2年C組は、お化け屋敷をする事となっており、大道具の作成以外にも、京子はお化け役を任されていた。]

あー、疲れた…
何とか出来たね。

成功、するといいなぁ。

成功か。
それなら……これくらい、派手にメイクしないとな。

[俺はニヤニヤしながら、京子の顔に白粉と真っ赤な口紅を塗り始めた。]

うあっ。何するんだよー。やめてってばぁ。
葵、今まで全然準備してなかったのに、何でこういうのだけやるんだよぉ。

[京子はキッとした瞳で、葵を睨み付けた。
そして、葵が持っている白粉と口紅を奪うと、葵の顔にも自分と同じように塗り始めた。]

怖いっていうより…笑っちゃう顔だね。

ねぇ、リッくん。見てよ、葵の顔……
あれ…？リッくん、寝ちゃった…？

……ねぇ、葵。
リッくんの顔にも…いたずらしちゃおうか。

ん…？
こいつ、そーいうのマジで怒りそうだけどな…

まぁお祭りだ。やっちまえ！

[葵は陸の顔にも濃い〜化粧を施した。]

【朝/2-Bの教室】

うちのクラスもダーツ喫茶なんて渋すぎだろ
川崎だっけ？道具持ってくるからダーツやろうぜって言ったの
準備も店番も楽だからいいけどさ

『みなさん、おはようございます。
　本日は私立白桜高校第10回慰霊祭当日です。
　今までの準備を無駄にしないように、また高校生としての節度をもって悔いのない慰霊祭にしましょう』

そういや去年も思ったけど悔いのない慰霊祭って意味分かんねーよな、祝い事じゃあるまいし
死んで10年もお祝いってどんだけ嫌われもんだよって話だろ

[河野は数人のクラスメイトと雑談をしながらダーツで*遊んでいる。*]

本当に、この顔…誰も怖がらないよ。

[京子は溜まった涙を拭いながら、必死に言葉を発した。]

さて、と…
そろそろ出番じゃない…？

リッくん、起きてっ！

[京子は、陸の体を揺さぶって*起こした。*]

ちくしょー。見つからないよ…。

うん、おれの昼飯。
くそぅ。

え、くれるの？ありがとう。
あの！ほんと、ありがとう！

…いっちゃった。
（こりっ。ぽりぽり。）
[カロリーメイトのチョコは、ほんのり涙の味がした。]

【コンピュータルーム/早朝】

『……のない慰霊祭にしましょう。みなさん、おはようござ……』

ぐーぐー…むにゃ…ふぁーあ…眠いな…寝てていい？

『……本日は私立白……今までの準備を無駄にしないよう……』

[雄二は、目を覚ました。]

ふわあ…もう日が明けているじゃんか。いつの間にか寝ちゃってたみたいだ…やばいな。
んーと、慰霊祭は…今日だっけ？

【慰霊祭当日朝〜体育館】
[濛々とおしろいのたちこめる準備室。白と赤で塗りたくられた先輩たちの形相がどたばた暴れ回っていた。
その形相の凄まじさに、語る言葉はなかった。]

おはよーございまっす！
て葵センパイに、京子センパイ…。

あー。うん。芸術はバクハツだって言いますよね。うん。

…うん。

[おもむろに、テープをカセットデッキにかけると、おどろおどろしくもどこかユーモラスな曲が、深く静かに響き渡った。]
えーと。そう、そうだ。
ＢＧＭもってきました。こいつは…なかなかのものですよ？

ひゅ〜〜どろどろどろどろどろ…

　ぽわわ〜どろどろゆるさないどろどろ〜〜

　　ひゅるるる〜どろどろどろ〜〜

[かち。テープを止めて巻き戻すと、巻き取り音ばかり響く準備室。]

…ね？けっこう、背筋にクるものがあるでしょう。

[雄二が部屋の窓から下を覗くと、直前の準備に追われる生徒たちがせわしなく動き回っているのが見える。]

そうか、今日が慰霊祭か…。昨日は結局顔を出せなかったし、きっとみんな怒っているんだろうなあ…。


[雄二は窓から空を見上げた。朝日は雲に隠れている。]

まあ、まだ朝早いし、また後で顔を出したんでも間に合うだろ。もう少しここで遊んでいても大丈夫だよな。レアアイテムもゲットしなきゃいけないしな。うん。

[ふと、遠くの校舎の屋上で女生徒が佇んでいるのが視界に入った。]

…ん？　誰だろう、あんなところにいるのは…。

[雄二は立ち上がり、屋上にいる女生徒を目を凝らして見ようとした。]

確か…あの校舎の屋上って…立ち入り禁止じゃなかったっけかな。あんなところに1人で、一体何をしているんだ…？

[雲間から日差しが射し、雄二の目に入った。目をゴシゴシこすってもう一度その屋上を見ると、既に女生徒の姿は消えていた。]

……あれれ……？いなくなってる……。
おかしいな、僕の気のせいだったのか…？

[雄二は首をひねったが、席に戻り再びPCのスイッチを*入れた*]

ふぁ〜、寝ちまってたのか。
えっと、ここは何処だよ。

あぁ、そうだった。カマキリの野郎から隠れるのに言いと思って来たんだったな。

しっかし、ここの図書館もよくもまぁつまらない本ばかり集めたもんだぜ。睡眠薬代わりにはなるがな…。

[三ページ程の所で伏せられた本を拾い上げつつ起き上がる]

さて、どこか暇つぶしに廻ってきてみるか…。

[図書館を後にし、展示などをしている教室のある本校舎へと歩き出した]

今回もあるな お化け屋敷──か

さてさて 今年の出来はどうかな──

[目に入ったお化け屋敷と化した一つの教室に入っていった──]

【慰霊祭当日朝/音楽室】

ラーララーラララー

「今日の朝練はここまでにしましょう。今日が本番です。鎮魂歌の合唱は慰霊祭に欠かせない行事です。みなさんいい合唱をしましょうね。」

はい、おつかれさまでしたー。

【屋上】

ふぁぁぁぁあ、ん？もう朝か？学校の屋上で一番過ごしちまったのか…。
うーん、でもまだ寝足りないからもうちょいねるとしようかねぇ…。

[横に転がり再び眠りに付く]

なんだ 作り物だけ置いて 後は無人なのか？

こんなじゃ 誰も怖がりゃしねぇぞ。

[最初こそ歩調が緩やかだったが 次第にのしのしと奥へと進み始めた]

【慰霊祭当日・午後/2-C教室】

しーっ。
誰か入ってきたよ。

[教室に戻った京子は、クラスメートと一緒に墓のオブジェの後ろに隠れていた。]

ふふふ。
余裕なのは…今だけだぞ。

【家庭科室】

[慰霊祭当日、沖浦はみたびの慰霊祭を迎えることとなった。いつものように彼女は家庭科室に向かう。]

『あっ沖浦先輩、お久しぶりです！　なんてったって今日は慰霊祭ですものね。』

あら小川さんおはよう。私は３度目だけど…みんなも慣れてきたわね。今年はうちの部としてはどんなものにするの？

『ええ、今年は…』

[京子は、丈次がこれから進んでくる道を先回りすると、床の上へうつ伏せになった。]

（死んでるフリして、驚かせてやるんだ…）

[クラスメートが、克則が準備した効果音を流している――]

（おっ、いい感じ。
早く、来ないかな……）

これも作り物か？ よく出来てるな？

[軽くつま先でわき腹を突付いた後、その死体の作り物を仰向けにしようとした]

ひゃ…っ！！

（し、しまった……）

[何者かの手で仰向けにされた京子は、思わず声を漏らした。]

うゎ！？

[一瞬声を出してしまってから 慌てて平静を装った]

くすぐるなんて、酷いですよ……

[京子は、ゆっくりと立ち上がると、丈次の方へと向いた。]

もーっ。
どっちがお化けか、分からないじゃないですかっ。

悪かったな こんな顔で──

[内心、むちゃ驚いたのは──ぜってぇに秘密だ──]

大体 そこで寝てて 俺が来たってのに何してたんだ

脅かすのは 俺が遠巻きに去った後背後から とかだったんかい？

（こんな顔って……
丈次先輩、かっこいいって人気あるの、知らないのかな…？）

こんな顔って……
先輩、かっこいいって評判ですよ？

あれ…？
そういえば、今日は恵先輩と一緒じゃないの…？
いっつも一緒に居るじゃないですか。

そうそう。
先輩が去ってから、追いかけようとしてたんですよーっ。

もー、台無しですよー。

[京子は、ぷくっと頬を膨らませた。]

【回想/午前/音楽室】

んんー…こんなものだよね。
後は本番の演奏会を頑張らないとね。

[最後の合同練習を終え、楽器を片しながら大きくのびをする]

あ…合唱部さんもう来たのかー…
お互い音楽室が縄張りだからたいへんだよね。
鎮魂歌って去年も聴いたけど、いまいち歌詞がわかんないよねー…
せめて英語ならいいのにさ。

[英語だってあやふやなことを棚に上げて言った]

さてっと、そろそろお客さんが入ってくる頃かな？
急いでゴハン食べて…体育館でアナウンスの打ち合わせかー…

あ、その前にクラスに顔出しといたほうがいよねー。
どうなってるのかな？ダーツ喫茶。

んで、斉藤くんとこのお化け屋敷も行かないと。
忙しい忙しい♪

[時計をちらっと見ると2-Bの教室に向かった]

[家庭科室では部員達とお料理に花を咲かせ続けていた。]

栗のタルトにチョコレートのシフォンケーキ、松の実のチーズケーキね。
夏じゃないんだから、これぐらい彩りがあってもいいわ。

大丈夫よ小川さん、花岡さん。きっとみんな喜んでくれるはずよ。

（んー、どうすっかな。どうやっておどかしてやるか…）

[葵は丈次の背後に忍び寄り、肩をとんとんと叩いた。]

まぁ 次の奴が来たら 脅かしてやってくれ

精精踏まれないように 気をつけてな

低い鼻が それ以上低くなっても知らないぜ

[ちぃ ちょっと侮ったな　来年はお化け屋敷に来るのは止めよう──]

って 恵ってなんだよ　ここ数日会ってもないぞ

[うゎ！！]

！！

[何とか声を押し殺した瞬間 無意識に繰り出した左拳が葵の肩の上 頬の直左をすり抜け その耳に風切り音を──]

きっと食いしんぼさんがお腹を空かせてくるでしょうから、足りなくならないように余らないように目分量には気を配るのよ。　だいたいこのぐらいの…そうね。

さて、私は他のところをまわってこようかしら。

どわっ！

おっと、先輩それは無しだぜ。

[避けたのか当たらなかっただけなのか分からない丈二の拳にヒヤリとした。]

行き成り俺の背後に立つな

[って 無茶言ってるな俺も]

こんな所で脅かすんじゃねよ

[まぁ お化け屋敷なんだが──]

うゎ…っ！！
葵、驚かさないでよーっ！！

（もう、私が驚いてばかりじゃん。）

丈次先輩…？
誰の鼻が低いって…？

[京子は、丈次の鼻を軽くつまみ上げた。]

あれ…？
恵先輩と、会ってないんだぁ…

（恵先輩とケンカでもしたのかな…？）

【午後/2-B教室】

あーっ　もう準備完了って感じ？
役立たずでごめんねー…

それにしても…何だか謎なメニューだよねー…
とりあえず、苺ミルク１コ…　

あ、ううん自分で作るよー

[カキ氷器をゴリゴリと回し始めた]

なんか ここは寒──いや暑いな

ちょいとこの先に在った喫茶店でも行ってくるか

まぁ その怖くない仮想で頑張って脅かしてやってくれ

[脅かし役に作り物じゃない人間が居るのは販促だよな──もう来ねぇ 絶対ぇに──]

先輩…おどかすなって、また無茶なことを。

京子、お前ちゃんとおどかせよな。笑われてるじゃねーか。
ってゆーか、更にお前が俺に驚いてどーする。

（怖くない仮装って……）

相変わらず、酷いなぁ、先輩…
そんなんじゃ、恵先輩に嫌われちゃうよ…？

[京子は、教室から出て行こうとする丈次に手を振った。]

[丈次が出て行った後、京子はむすっとした表情で葵にを見た。]

驚かそうとしたもん。
でも、先輩くすぐるんだもーん。

何か、私がやっても皆…驚いてくれないや。
準備頑張ったし…もう自由時間貰っていいかな…？

ん…良いんじゃねえか？

俺もそろそろどっか遊びに行くか。
京子と違ってちゃんと驚かす役割は果たしたからな。

隣は…カキ氷？ちっと食ってくるか。

それにしても、この喫茶店流行ってないよねえ？
ちょっとー、男子達、遊んでばっかりいないでお客さん連れてきてよー

えぇーっ？私が呼んでくるの？
じゃあこのアナウンスで鍛えた喉で呼んで来るよー

[カキ氷を食べ終えると立ち上がり教室の外にでた]

！！？きゃっ　ったあい…

[派手に転ぶと自分がぶつかった男を見上げた]

あいてて…

カキ氷…一つ。
この血みたいに真っ赤ないちご味で。

[流血のメイクを落としてないことに気づき、わざと流血している傷口（メイク）を押さえるようにして美兎に注文した。]

！！？

───って、北里くんか。びっくりしたぁ。
ちょっと、その血糊本物みたいで気持ち悪いわね。

おっと、お客様ゲット♪
さすが私だね♪　うんうん♪

みんなー。お客さん、捕まえてきたよー♪
カキ氷１コ。苺シロップたっくさんね♪

[痛みを忘れて上機嫌で教室の中に声をかけた]

「ん…良いんじゃねえか？」

…っと待ってよ。
私、葵より頑張ったもん。

[京子はタオルで顔を拭き、メイクを落とした。]

葵はカキ氷食べに行くのかぁ…
私は、焼きそば食べに行きたいなぁ。
桜の木の下で焼きそばって、ちょっと良くない…？

[京子はそう言うと、教室から出て、*外へと向かった。*]

[お化け屋敷教室から離れ 人気の無いのを確認してから 大きなため息を付いた──]

いや…ノリで言っただけでそんなにあほみたいにイチゴシロップ沢山は…

あーあー…

[イチゴシロップたっぷりのカキ氷を見てちょっとブルーになった。]

【午後/廊下】

[合唱部の子と歩き回っていた。]

「……人がごみごみしてるよねー。どこにこんなに人がいたのよ。」

だよねー。
どこも盛況だけど、うちのクラスはどうかしら。
ちょっといってくるわね。またあとでー。

[2-Bの教室に向かった。]

【2-B教室】

やっほ。準備手伝えなくてごめんねー。お客さん入ってる？

ステラ、お疲れさまー
合唱部のほうは落ち着いた？

お客さんの入り、いまいちなのよねー
カキ氷食べたら一緒に呼び込みしよーよ？

【2-B教室】
各務ぃ〜、張り切るのはいいけど仕事増やすなよ
慰霊祭だよ？慰霊祭
もっとこう、粛々とダーツでもしながらまったりしててもいいんじゃないかな？

[河野はしぶしぶといった様子でカキ氷の大量生産を始めた]

【2-B教室】

下級生のクラスもなかなかいろんなものを出しているみたいね。行ってみようかしら。
おなかが減ってきたわ・・・

[恵は結局家庭科室で少しだけだがいろんなものを口にしていたが、美味しいものにはやっぱり手を出さずにはいられない性格だった。]

あ、美兎ー。苺ミルクひとつちょうだい。

部は本番まで自由時間よ。
まだ時間あるからお店手伝うね。

河野くん、男子はダーツばかりしてるんじゃないのー？

ぶーぅ、なんでさー

瑞樹、散々ダーツで遊んでたじゃんかー
少しくらいは働こうよぅ

儲けたお金で打ち上げ打ち上げ♪

それにしてもさぁ、瑞樹ってダーツ上手いよね。
後で教えてくれない？

[元気よく呼び込みを続けながら瑞樹に話しかけた]

[葵はひとさじすくってカキ氷を食べたが、あまりの甘さに閉口している。]

ちっ…こりゃあ甘すぎだぜ。

ん…なんだ、ありゃ？

[屋上のフェンスの外側に人影が見えた…ような気がしたが一瞬後には掻き消えていた。]

気のせい…か。

[にっこりと微笑むと苺ミルクをかけた氷をステラに渡した]

さっすがぁ、ステラは話わかるよねー
せっかくの慰霊祭だもん。部活ばっかじゃつまんないよねー

ステラに憧れてる後輩男子とかいっぱいくるよー♪
繁盛繁盛♪♪

ぇー、私にあこがれてるとか…ないない！

[手を振り振り]

そう言うなよ日下、準備が大変だったんだって
ダーツの的が遠すぎやしないかと確かめたりね
あ！て言うか、今も準備中って事でどう？

[客引きをしている各務に廊下から話しかけられ]

遊びじゃねーよ、準備だよ。準備
おっけ、ダーツは後で教えてやるよ

嘘ぉ。気づいてないだけだってば！！
ステラさんとお話してみたいですって後輩いっぱいいるみたいよ？

ほら…あの柱の影にも…！！　ってお客さんか。

いらっしゃーい、どうぞ♪

[廊下の隅にいた沖浦恵に気がつくと手を引いてつれてきた]

[やや柱の後ろの影で成り行きを眺めていたが、自分よりやや背の高い、おそらくは下級生であろうか--女性とに不意に手をつかまれ、ずるずると引き込まれた。]

あの、私・・・！

[特に断る理由もなく、何かを言おうとするも適切な言葉が見つからずそのまま扉の内に連れ込まれていった。]

.。○（ああ、やっぱり背の高い人って何でもお得だと思うわ・・・）

ちょ、ちょっと美兎、照れちゃうじゃないのー！

あ、お客さんいらっしゃいませー♪
苺ミルクになさいます？

[美兎に連れ込まれた恵に声をかけた。]

[恵は清楚な女性を見上げて答えた。クラスメイトだろうか。]

は、はい。苺ミルクにします。

.。○（と言っちゃったけど、苺ミルクだけなのかしら。）

【校庭・校門の傍】

うわぁ。綺麗……

[校門の傍にある、幾本もの桜の木――。
その中でも、目だって背丈の高い桜の木を、京子は一人で見つめていた。]

慰霊祭が終わると、卒業式かぁ。
恵先輩や、丈次先輩が居なくなっちゃう。
やっぱり、淋しいよ……

[僅かに潤う瞳を拭うと、京子は2人の事を考え、ある事を思いついた。]

（この桜の木のジンクス、2人に教えてあげよう。
ここで結ばれた恋人達は、幸せになれるんだって…）

【屋上】
[横になった体制から目を覚まし体を起こし左右にひねったり伸ばしたりしている]

ふぁあ、良く寝たな。
さぁってと、腹減ったからなんか買いに行くかねぇ…。
ついでにクラスの様子を見るって可否やかしにでも行くとしようか。

[京子は、校庭の中心に在る焼きそばの屋台に向かった。
――その途中、いつもは開放されている校門が、閉まっている事に気づいた。]

（何で、閉まってるんだろう……）

ふふふ。ダーツダーツ♪
瑞樹、楽しみにしてるね。

そして、苺ミルク一丁！

[威勢よく恵にカキ氷を渡した]

[各務に引き込まれた女子生徒を見ながら]

oO（強引すぎだろ、まるでキャッチセールスだな）
苺ミルクね。はいはい、少々お待ちくださいね

[作っておいた氷にシロップと練乳を掛け各務に手渡した。]

【2-B】
[客の間を通りながら、厨房へと向かう]

んー？うちのクラスかき氷なんてやってたんだっけか？
もっと腹にたまるもんねーのか？

【慰霊祭当日・午後/校庭の中心】

[校庭に出された屋台を一通り回った後、京子は焼きそばを持って校舎の中へと入っていった。]

ふふふ。
やっぱり、焼きそば食べないと、お祭りって感じがしないよね。

あれ…？
2-Bの教室が騒がしいなぁ…

[京子は焼きそばを頬張りながら、2-Bの教室へと向かった。]

[あれよあれよと恵の前に苺ミルクかき氷（さじ付き）が目の前に差し出された。恵は誘われるままにかき氷を口に運んだ。]

甘くて美味しいー。寒い時に冷たいものを食べるのも、また味よね。
あっ思ったことをすらすら言ってしまったわ、ごめんなさい。

『皆さん、こんにちは。
慰霊祭も、残り僅かとなりました。

16時より、校長先生のお話があります。
体育館にお集まりください。』

[――校庭に居ても、聞こえるだろう、大きな放送。]

校長先生の話かぁ。
長いんだろうなぁ……

[京子は少しうんざりしながら、その放送を*聞いていた。*]

あ、士郎。またサボってたのー？
せっかく混んできたんだから手伝ってよー

腹に溜まるもん…？
売店から横流しのサンドイッチくらいしかないよ？

[後半部分はお客に聞こえないように小声で言った]

いや、寝てただけだよ。
手伝うのはいいけど俺にかき氷なんか作らせたらどうなるかしらんぞ？
シロップに氷が浮いてるかもな〜。

お、いいもんあるじゃん、とりあえず話はそれを食ってからだ。

[士郎は悪びれた様子も見せずに笑いながら厨房へとあるいていった]

あれ、葛城？
今日は来ないと思ってたよー。

せっかくだから手伝っていきなさいよー。

そいつはできない相談だな、悪いがサンドイッチが俺を待っているんだ。

[恵は立ち上がってそばの２年生に話しかけた。]

ここって苺ミルクだけなのかしら？　レモンや抹茶もあるともっと素敵になるわ。

[恵を驚いた顔でみた]

レモン…？　抹茶…？

……あるよ？

でも、一番のお勧めは苺ミルクなの。
ええと…もう１コ食べる…？

[恐る恐るシロップの掛かっていない氷を持ってきいた]

[これ以上は明らかに頭痛のもととなるだけ出し、せっかくの申し出なので少しだけお受けすることにした。]

えっと・・・じゃあ一口ぶんだけお願いします。

レモン…　抹茶…　苺ミルク…

なんだかひらめきそう。

えーと
えーと

抹茶ミルク！

うん…オーダー間違えちゃったのかな。
ごめんなさい、先輩。

抹茶とレモンどっちがお好みですかー？

はい、抹茶ミルクですね。
（うーん、メニューにないけどいいよね？）

[小さめのカキ氷で抹茶ミルクを作ると恵に渡した]

食べ終えたらダーツもやってってくださいね♪

あ、抹茶がいいわ。できるかしら？

.。○（と言っちゃったけど、抹茶じゃなさそうなものが出てきそうな気がするわ・・・）

oO（…レモンは見た気がするけど、抹茶あったっけ？各務があるって言うんだからあるんだろうな、俺は買出し係じゃないし）

『皆さん、こんにちは。
慰霊祭も、残り僅かとなりました。

16時より、校長先生のお話があります。
体育館にお集まりください。』

[そのときアナウンスが入った]

んんー…！！？
やっばい。私もスタンバイしないとっ
お客さんいっぱい来てくれたから嬉しくて約束忘れてたよ！

ステラもそろそろ合唱部のスタンバイの時間じゃない？大丈夫？

16時より、校長先生のお話があります。
体育館にお集まりください。』

「ステラもそろそろ合唱部のスタンバイの時間じゃない？大丈夫？」

あ、いかなきゃ！

音楽室に集合だから、一足先に行くわね。
じゃあまたあとでー。

oO(さっきのって抹茶だよね？）

[士郎は厨房でサンドイッチを食べながらアナウンスを聞いてメンドクサそう顔をしている]

あ、俺、そういうのパスだわ！
校長の話聞いても得な事ないし、ここでボーっとしてる方がましだわ〜。

[恵の近くをダーツが飛ぶ。抹茶ミルクかき氷をおなかにおさめると、ダーツをひとつだけ投射してみた。]

プルズアイアウト・・・25点ですって。ちょっと運がいいのかも。

あ、わたしも戻らないといけないわ。みなさん、ありがとう。家庭部にも負けない素晴らしい味よ。

じゃ、じゃあ、先輩。ごゆっくりどうぞっ
瑞樹、士郎、あとはまかせたっ

あっ、瑞樹。
ダーツはちゃんと後で教えてね♪

[少し焦ったようにいうとステラとその場を*後にした*]

.。○（たぶん抹茶だと思います、私が食べたの。）

【音楽室】

はぁはぁ、すいませんー遅れました…。

「日下さん、はやく準備しないと遅れますよ。」

はい、ごめんなさい…。

[合唱用の衣装を受け取り、急いで着替えた。]

「校長先生のお話のあと、みなさんの合唱です。みなさんがんばりましょうね。」

はーい。

じゃー、瑞樹君、後はよろしく！
俺はちょっくら用事を思いだした。

[士郎は残っていたサンドイッチを手にとって教室から外へと飛び出していった]

【コンピュータルーム/午後】

[雄二は朝からずっとPCの前に座り込んでいる。校内放送が流れ出した。]

『皆さん、こんにちは。
慰霊祭も、残り僅かとなりました。

16時より、校長先生のお話があります。
体育館にお集まりください。』

んー、いいところなのになあ。別に強制じゃないよな。16時までにあと1つレベルが上がったら、聴きに行ってみようかな…。

[めんどくさそうな表情を隠そうともせず]

はぁ？
客も減ったし別にやること無いだろ
俺はダーツしすぎて腱鞘炎ってことにしといて

[河野は教室から出ると*保健室へ向かった。*]