人狼審問

[方々探し回ったが、どこにもユージーンの姿はなく。歩き疲れて木の根元に腰を下ろす]

ジーン…

どこ、行っちゃったんだろう…

[服に付いた泥を払いながら立ち上がり]

一度、みんなの所に戻った方がいいのかな…
真っ暗で、ちょっと怖いし。

それに、お腹も空いてきちゃったし…

うん、そうしようっと。
ジーンだって、もしかしたら帰ってるかもしれないし！

[微笑し、歩き出そうとするが]

……

ここ、どこ………？

[集会場の扉を開けてヴィンセントが顔を出した]
診療所の後片付けをすませて来ました。
といっても、次のお医者さんが見つかればいつでも再開出来るようにしてありますがね。
皆さんの顔をもう一度見たくてやって来ました。
本当はこんなところに顔を出せる身じゃないことはわかっているんですけどね。

うん？ステラさん、どうしましたか？

[妙に疲れた顔で]

……礼儀作法というのはかくも煩わしいものか……。
まあいい。
此れも学ぶ事の1つ、糧になろう……。

[集会場の扉を開け、
挨拶しようとするも其の雰囲気に口を噤み]

…………
どうしたのだ……？

ナサニエルさんが・・・
ナサ・・・・・

―それ以上言葉は続かなかった―

……ナサニエルが……？

[早足に歩み寄り傍に跪く]

……ナサニエル？
おい、ナサニエル……！

[誰とも視線を合わせず、静かにテーブルの端の席に着く]

人狼が駆逐される喜ばしい最後の集まり、と、聞いていたのだが。…ひょっとして場所を間違えたかな。

［ヘンリエッタの後ろで、大きな肉の塊二つを抱えたままどうして良いか解らないでたたずんでいる］

…ナサニエル殿がどうしたのだ？

彼なら、また落ち着いたら冒険先の話を聞かせてくれると、言っていたのだが…。

……。

…………。

ナサニエルさんが？
どれ。
ダニエルさんに足を見てくれと頼まれてましたが、そんなに悪いようには見えなかったのですが。
[聴診器を胸にあてて診る]
うーむ。かすかですが鼓動が聞こえますよ。仮死状態のようですね。
一応カンフルを射ってみましょう。ひょっとすると。
[カンフル剤を注射した]

―ヴィンセントを縋るように見つめ―

先生！！ほんとう？
お願い先生・・・お願い！！

そんな……昨日は「まだまだ話し足りないことがある…」と言っていたのだぞ……！

……あ。

[言葉の意味に気づき]

そ、それはまさか……！


医師殿、何とかならぬのか！

……ヘンリエッタ、ネリー……

[ナサニエルのそばに跪いたまま]

ヴィンセント、頼む……。

一体、どうして。
こんな……楽しそうに話していたではないか。
ゴクラクチョウの絵だって……まだ、渡していないのではないのか……

ほら、ナサニエルさんの頬に少し赤みがさして来ましたよ。
心臓の鼓動も力強くなってきました。
このあともずっと大丈夫とは言い切れませんが当面の危機は脱っしたようです。
あとで詳しく診察して本格的な治療をすることにしましょう。

って、もう私はこの村を出なければならない身でしたね。
村長さんが早く後任を見つけてくれるといいのですが。

[暗い森の中を当て所無く彷徨い歩き、時折聞こえる低い風の音や梟の声に身を竦め]

や、やだ…どうしよう……

…まさか…体が悪いのに、人狼騒ぎなどで無理をしたからか…

容疑者になった状況で、自分だけ特別扱いをしてくれなんて言えなかったのだろう…
こんな冷たい集会場ではなく、村の医院ででも安静にしておれば良かった…やせ我慢などしなければ良かったのに…！

[きつく拳を握り締めて]

人狼探しばかり考え…我らは隣人の何を観察していたと言うのだ…この程度のことに気づけなかったのか…っ

―不安げにナサニエルを見つめ―

さっきもいつも道理だったの・・・顔色も・・・
このまま安心できないの・・・

分からないの・・・・不安と悲しみでおかしくなりそうよ

また、…まだ話し足りぬ…。世界のことも、人生のことも、あなたのことも…

もっと未熟な私に教えて欲しかった…

兄様のように、賢くて、勇気があって、冒険が好きだったナサ殿から…あまりに、勝手すぎるぞ…！

[ゆっくりと集会場に入ってきて]
何だ、この騒ぎは

！！

ナサニエル？

……すまん、ありがとう、先生……
くそ、どうして。

顔色が悪かったのも、
殆ど酒しか飲まなかったのも、
まさ、か……

[はっと顔を上げ]

ダニエル……！

［ダニエルの声に振り向き、目に涙を溜めたまま姿を追う］

ナサニエル・・・先生何としてでも、何をしてでも助けてやってください。お願いします。

・・・逆縁の不幸をされるのはニーナでたくさんだ。

―ナサニエルを抱きしめたままダニエルの声に振り返ると―

ナサニエルさんが！！

おじ…いちゃん…いた…。
ウェン、もっと早くみつけなきゃって…

[涙顔のまま肩で息をし、ふらふらとダニエルに近寄ると腕にしがみついた]

神は与え、奪いたもう・・・だがまだ早い、早すぎる・・・

―虫の息のナサニエルに―

ナサニエルさん・・・お願い・・・目をあけて？
お願いだから・・・嘘だよって・・・

このまま天に召されないで・・・お願い・・・

―ぽろぽろと泣きながら呼びかけている―

[手探りで、木の根に足を取られそうになりながらフラフラ彷徨い]

ね…ねぇ…
お願い、誰か返事して……？

ナサニエルさん…。

[ユージーンとシャーロットの状況は気になる。でも、セシリアは離れられなかった]

いたた、あれからまた寝てしまったのか。私はお酒は飲まない方が良さそうですね・・・体に合わないことがよくわかりましたよ。

ああ、集会場にゆかなければ。
[ふらふらと歩き、ふと森を見る]

・・・？

（なんだろう、あっちに・・・行かなければならない気がする）

[墓地を抜け、森の中へ歩いてゆく]

ん、これは、シャーロットさん、かな？
[森の中に混じる匂いを追って、奥へ奥へと歩いてゆく]

シャーロットさん、居りますか？

[声をかけながらさくさくと、森の奥へ進む]

（ああ、昔もこんなことがあった気がする・・・シャーロットさんのおばあさんが亡くなったとき、だった）

[遠くから微かに聞こえてきた声に、ふと顔を上げ]

…誰？

それとも、空耳…？

ううん、違う…誰か、いる…！

[すぅっと息を吸い込み、大きな声で]
私はここよーーっ！

[声に気づき、暗い森を駆けた]

シャーロットさん・・・！
何でこんな森に？

…ジーン？

ジーンいるの…！？
私、あなたを探しに……きゃっ！

[声の方へ走り出す、が、途中で木の根に足を取られ転倒する]

ああ、こんなところに居た。
一人で出歩いてはいけないと言われたはずですよ・・・只でさえ人狼がまだ居るのですから。

[木の根元に蹲る姿を見つけ、ほっとしたように声をかけた]

あ…やっぱりジーンだ…

[抱き締められてホッとしたのか、ボロボロと涙をこぼし出す]

[戻りますよ、とシャーロットを立たせ歩き出そうとし、涙を流すのを見て慌てた]

・・・な、シャーロットさん？

[しかし、その顔が、ふと思い詰めたような表情に変わり]

あのね…おばあちゃんが教えてくれた…
ルターは人狼だったって…

それでね…

ネリーがね……

……え？

[慌てて涙を拭き]

あっ、なんでもないの！
そうだね、みんなの所に行こうっ！

[ユージーンの手を引いた]

・・・はい。

[おとなしく手を引かれて歩き出す]

[森を抜け、集会場へと続く道の途中。銃を持った自警団員達と出くわす]

あ、こんばんは…
あの…今から集会場に戻って…

え…？

…ユージーンとシャーロットを探し出さなければ。
スコットたち、自警団員は大丈夫だろうか。

[その手には一丁の銃が握られていた]

[団員達はユージーンへと銃を向け、彼を「人狼だ」と罵り、シャーロットを彼から引き離そうとする]

やめて！
ジーンはそんなんじゃない！

[一人の自警団員がセシリアの元へやってきて、彼から事情を聞いて頷く]
何！？見つかったのか！
場所へ案内してくれ、今すぐだ！！

[自警団員の一人が、ユージーンを狙って放った銃弾が、彼女の胸元へとあたり]

あっ……

[ガクリと膝をつき]

ジー……ン………