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―三階/碧子の客室―
[ひと際豪奢な寝台に、碧子の躰を横たえる。
苦悶、というよりは驚くように、碧子の眼は瞠かれていた。
何に対する驚愕なのか、最早窺い知る術はない。
首筋を襲った衝撃にか、突然の死にか。
或いは翠に迄屍鬼と宣告された事にか。
そっと瞼を撫でる様に閉ざすと、その掌の下で、血の気のない貌は酷くあどけないものに変わった。]
まるで生きてる様だな。
いや。屍鬼なんだから、これでも眠っている様なものなのかな。
碧子さん。
貴女、如何して……天賀谷を殺したんだ、とは訊く積もりもないが。
如何して……あの時、諦めてしまったんだ。
一時の仮初めの死なんぞ、貴女には意味が無いとでも謂うのか。
それとも、本当に……諦めたくなったのか?
[碧子の唇は、艶やかな紅色を湛え、かすかに開いている。
だが、いらえがある筈もない。]
やれやれ。
そう悠長に構えても、居られないなぁ。
[そう呟きながらも、碧子の髪のほつれを整えるように、なぞる。
その上に、ひらりとひと片のほの紅い花弁が舞い落ちた。
カーテンを引き絞って開かれたままの張り出し窓から、風に乗って吹き込んだのだろう。
窓に寄ると、枝ぶりも美事な櫻が見て取れた。
枝を揺らす強い風に、吹雪の様に花弁が吹き散らされて行く。
風に舞い上がる花弁の向こう、埋もれる様に横たわる人影。
そんな幻の様な光景を、一瞬見た様に思った。]
あれ……は。
人間、か?
[風に舞い上がる花弁の向こう、埋もれる様に横たわる姿。
そんな幻の様な光景を、一瞬見た様に思った。
だが、それが幻では無い事を、何故か確信していた。]
―三階客室>地上―
[大きな旅行用革鞄、そしてスーツケースを、窓から投げ落とす。
碧子の躰を再びそっと、抱き上げた。
眠った子供を扱うように、そっと。
廊下の様子を窺う。
そこは未だ無人だった。
表の階段の方向からは、興奮した板坂の声が聞こえる。
それを避けて、裏手の使用人専用の区域へ続く扉をくぐった。
勝手は判らないながらも、地上への階段が何処かに在る事は知っている。]
―裏庭―
この櫻を見せびらかさないとは、随分贅沢をしたもんだ。
[呟きながら、薄紅色の褥の上に、黒いドレスを纏った躰を、ふわりと下ろした。]
少しだけ、そこで待って居てくれ。
[まるで我侭な子供に語り掛ける様に言った。]
[その亡骸は、殆んど花弁に埋もれる様にして在った。
彼女の死者の静謐をたたえた青白い貌は、これから自らが受ける仕打ちを知ってか知らずか、安らかだった。]
[客室から落とした落とした荷物、そして車庫からブリキのタンクと、二度母屋近くまでを往復して運んで来ると、その亡骸は花弁に埋もれかけて居た。
トランクから引き出した豪奢な衣装を、次々と亡骸の上に投げかけて行く。
重い絹にとりどりの鮮やかな色を染めたその襲の色目は、亡骸を飾る様に華やかだった。
絹が亡骸を覆い尽くした。
その上に、タンクの中身を溢す。
つんと鼻をつく揮発臭が、花と、そして死臭を圧して立ち上った。]
逃亡者 カミーラが「時間を進める」を選択しました
逃亡者 カミーラは、書生 ハーヴェイ を能力(占う)の対象に選びました。
[上着の内側から取り出したマッチを擦り、投げる。
ごおっ、という音と共に、炎は一気にその絹の山に広がった。
ガソリンを燃やす、野蛮な臭いと共に、黒い煙が風に煽り立てられる。
祈る様に、一瞬眼を閉じた]
『誰だか知らないが、済まんね。
生き返る筈だったんなら、だが。
まあここで死んだのが運のつきだと、思ってくれ。
それとも、この亡骸まで……用意していたのか? 貴女は』
[ほとんど空になったトランクに、一枚の振袖、それは翠に着せるために持って来られた物だろうか、美しいオリーブ色の波濤が砕ける着物を敷いて、碧子の躰を納めた。
膝を折った姿勢が、なるべく楽になるように、蓋を閉める。]
死んで居るんだから、息苦しいって事は、無いといいんだが。
まあ。一先ずは、此処で眠って居て貰うよりありませんよ。
貴女が、それを本当に望んで居るのかどうかは……。
いや。いい。それは、その時の事だ。
─回想・異界化した3階・階段上─
[白い貌は宙に踊り、一杯に見開いた目で影見と称する女を凝視する。
その視線に人を殺す力が有るのならば、夜桜は当に凍りついた氷柱となっていただろう。憤怒は今は炎でなく、凍て付かせる冷たさに変わった。
うねる黒髪の周りを雪片が舞う。]
おのれ……おのれ。
[歯をガチガチと噛み鳴らす度に結晶が生まれ、黒髪をレェスの様に飾る。]
天賀谷よ、これほどまでしてわたしを此処に葬りたかったのか。
わざわざ異能を持つ者を、屍鬼を知る者を呼び集めて。
集った人々の生命を人柱として。
わたしを封じ込める檻を……
天賀谷ィィィィ!!
[白い貌は凍て付いた怒りのままに“あちら”への道筋を開き、夜桜を“こちら”に引き込もうとして、]
──『もう、止めましょう。』
[突如掛けられた聲に、激しい驚愕の色を浮かべて、自分の真下を見下ろした。]
[其処には、現実と同じ、夜桜に銃を向けた碧子が、薄黒い陰の姿で立っている。
聲は、その碧子から発せられているのだった。
見下ろす白い貌の、自分と瓜二つの面は見ずに、視線を階下に据えたまま、唇を動かさず碧子は囁いた。]
『もう私は、十分に長く生きました。……長過ぎたくらい。』
『見るべきものはもう、見尽くしました。
──逝きましょう、皆のところへ。』
[毅然として囁くその聲に、白い貌は虚を突かれた表情でおのれの依り代である影を見ていたが、]
……常世のものは常世へ還る。
そう、そうであったなあ……
[憤怒は消え失せて、夢見る様な懐かしむ色が白い面を覆う。
赫い闇に浮かんだ、白い華が、莞爾とした微笑を紅い蘂に刻んだ。]
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