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夜桜くん、どうしたんだ。
大丈夫か?
[夜桜に問いかけた言葉はしかし、ややそぞろであった。
雲井と碧子の一挙手一投足も見逃さぬよう、凝視している。]
[流石に少し驚いた様に、碧子は眼を見開いた。
それから、艶然とした微笑を浮かべて、雲井に寄り添った。
階段にいる人々を、まるで忘れ去った様に、二人は階段に背を向け、歩き始めた。
碧子の肩に手を掛けようとする様子に、腕を滑らせた。
碧子の背が、こんな時にも昂然と、そんな気配に慣れた女らしい、わずかな期待と色香のようなものを含んだ震えを見せる。]
あたしが行きます。
せんせえは、行っちゃあいけない──。
[枚坂の薄くなった影は、階段の下──もしも、後ろを振り返る事があれば、夜桜の影と対比され解り易く*なっているだろう。*]
何処へ……
決まっているじゃないか。
私がずっと行きたかった処へだ。
――夜桜さん
“あれ”がどれだけ医学の発展と人類の成長にとって大事なものか――
そして、その成果を得るために、どれだけの命が犠牲になってきたことか……
[医学の発展に進歩的な未来、輝かしい言葉は金鍍金のように薄っぺらに響いた。]
「行く……」
[夜桜の言葉にはどこか凄絶な響きさえあった。]
私は……
[しばし呆然と佇む。現在という時を見失ったかのように。
夜桜に先程指摘された後は、影に眼差しを落とそうとしたことすらなかった。
それは他に目を背け続けたものと同様に、私の足下に重く横たわっていた。]
[こんな時にも、綺麗に結い上げられた髪から、わずかに首にかかる後れ毛に指を延ばす様にして……。
袖から引き出した極細のナイフの切先を、ぼんのくぼにに突き立てた。
崩れるように倒れかかる碧子を、抱き抱える。]
―廊下―
[階段での攻防が微かに見える。さすがに、事態を把握せざるをえなかった]
おまえさんは、その刀で何をする気だ?
[首を静かに横に振る]
あの場所へ出て行って何かをする気か。
夜桜さん。
私たちは一度たどり着いたんだよ。
その場所に。
でも、慌てて蓋をした。
恐ろしくなって、
絶えられなくなって、
なにもかもを破壊して
逃げ帰ってきたんだ。
この日本に。
手放してしまってはいけない……。
[満州の平房にあったロ号棟が崩れゆく光景を思い出していた。]
[雲井に抱かれる黒衣の碧子。
其れは銀幕のシネマの一場面の様に見えた。
四つ這いの獣の様に地を這って生きて来た、仁科の人生とは、全く異なる。相容れないと言っても良い程。
例えば、長い間不死者で有った異形の碧子の孤独を、仁科が想像する事も出来ない程。仁科はひたすらに足掻く者で有った。]
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