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夜桜さん。
なにも心配する必要など、ないよ。
夜明けは近い。
私が求めているのは、“屍鬼”じゃない。
人を喰らう鬼ではないんだ。
私が求めているのはただ――
その不死性の秘密なのだから。
[心の奥底まで見通しそうな夜桜の目から、視線をそらせた。
天賀谷の、藤峰青年の、由良の、コルネールの、そして碧子の――
その無惨な破壊を思い浮かべる。
人は、あのように損なわれてはいけない。]
……。
先程、枚坂さまはあたしに問いました。
「残りの屍鬼は――誰だい。」と──。
喩え知っていたとしたって。
あなたさまには教えられない。
けれど、これだけは。
大河原さまとご親密であらせられた雲井さまは違います──。
[信じる信じないは、あなたさまの勝手ですが]
[そう付け加えて]
西堂芳人という方は、探し人です──。
[衿元を寄せるように、手を胸元へ置く]
[決然とした態度だった]
教えられない――
[その言葉に、眉をしかめた。]
酷いな、夜桜さん。
私がこれほど頼んでいるのに。
一体、なぜだい。
[夜桜ににじりよる。]
協力しあった方が佳いに決まっているじゃないか。
あなたさまは、理を違えております。
[す、と一歩足を後ろに引き、身構えるような格好をとった]
屍鬼に、あなたさまは
本当は魅せられているだけなのではないですか?
そして、不死性の秘密なンて。
[凝っと見詰めたままだ]
魅入られている!?
私が――
[夜桜の言葉を打ち消すだけの力はなかった。絶句したまま、息を呑む。
――鴉の濡れ羽
絶望の果て。
その瞳に嗚呼、私は確かに*魅入られていたのだ*。]
─遠い過去、古びた家屋の中─
[人の気配に閉じていた目を開ける]
[高熱に浮かされて、奇妙に歪んだ視界]
[覗き込む人影は、黒い影に覆われてぼやけている]
[夫、だろうか]
[その影から発せられる声の、あまりの必死さと悲痛さに][宥めようと、少しでも安心させようと]
[話し掛けようとして、]
[かさついた唇を震わせた]
─遠い過去、海を臨む山の斜面─
[切り立った山がぐっと海の側まで迫り出し、人々は海と山との僅かな隙間に村を築いて生活している]
[細長い浜]
[海に突き出した岬の上]
[其処には彼女が今日まで夫と共に暮らしていた家が在る]
[そして、その突端には]
[海より寄り来るものを祀る社が]
[彼女は涙を流す、]
[其処へ戻る事はもう出来ない]
[暗い夜明け前の山中を]
[彼女は泣きながら走っていく、]
[疲れ切った女の身に出来うる限りの速さで]
[掌を、着物の裾から覗く脛を、掻き傷だらけにしながら]
─遠い過去、何処かの山中─
[膚を鮮赤に染めて]
[彼女は泣いて泣いて泣いた]
[見も知らぬ男の骸のその前で]
[暗い暗い森の中、]
[地面に座り込み、泥だらけの手で白い貌を擦る]
[やがて]
[彼女は泣きながら]
[それでも男の持ち物を探る、]
[生きる為に]
[男の手にしていた刀が、薄闇の中で切り取られた様に鮮やかに目に映った]
─遠い過去、荒れ果てた都大路─
[戦の大火が全てを焼き尽くした]
[骸は巷に放置され、弔うものとて無い]
[野辺へと運ばれて打ち捨てられる、常のそれさえも追い付かない、]
[それは、現世がそのまま地獄であり、生者がさながら幽鬼であるような、そんな世であったから]
[が、それでも人は生きている、]
[不安を押し隠した面持ちで彼女は歩く、]
[焼け残った町の、生き残った人々が行き交うその通を、]
[男の装束に身を包み、白い貌を汚れで匿して]
─遠い過去、何れかの夜─
[夜の内側で彼女は微笑んだ]
[問い掛ける男の唇に白い指が触れ]
[──赫い闇が染み出して、男の頭上に拡がり始めた]
─遠い過去、何れかの夜─
[玄い闇の中でその女は囁いた]
「飛頭蛮──…と云うのだと、」
[その声に軋む様な残響が加わり、白い炎が散った]
─遠い過去、何れかの昼─
[河原に座らされた男の首に白刃が食い込み]
「…………!……!」
[叫んだのかそうでないのか、その言葉も覚えては居ない、]
[ただ、]
[転がった首と、]
[赤く濡れた石の色が、]
[瞳に焼き付いている]
[過去の断片。]
[砲撃の轟音に彼女は眉を顰めた。戦場の叫喚は此処までも聞こえてくる。閉め切った家の座敷で、怯える年若の娘を抱き寄せて、その背を撫でた。]
[バッスルで強調された腰を飾る、大きなリボンが揺れる。陽光の下、彼女は目を細めて見守る情人に向かって、パラソルをくるくると回して見せた。]
[顔を縁取るように切り揃えられた黒髪が揺れる。ジャズバンドの演奏が流れるなか、フォックス・トロットのステップを軽やかに踏んだ。]
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