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―自室―
っく、く。
くははっ。
[露葉の目の前に、自らの右手を広げてかざす。
視界を遮るように、
言葉を止めるように。
左手の中指で眼鏡をつり上げ、抑えきれないという風に笑う。
楽しげな目。]
なぁ、おい。
お前の言う通りなのが、気に入らねぇがよ。
そんな情報が俺に、どんな関係があるってんだ?
あるとすれば、どうやら俺に戦いの機会があるらしいってことだけじゃねぇか。
他のことをくっちゃべってる時間が勿体無ぇ。
俺はその沖田って男のことなんざ知らねぇが、
きっと穴だらけにしてやるよ。
あの宗冬って男と戦うのは楽しかったぜ?
一撃、一撃に、相手を完膚なきまでに破壊してやるという強い意思を感じたよ。
次は止めを刺してやる。
あのランサーは強かったよ。
ちょっとつまらねぇ戦い方をする奴だったがな。
だからきっともっと力を出させて、その上で体中ぶち抜いてやる。
次は必ず、殺してやる。
[宗冬の言葉に頷く。]
ええ、まったくもって危険なインド人ですわ。
インド人と言えば暗算。
ここだけの話、アタシ、あのインド人の宝具は“暗算”ではないかと思いますの。
全ての動きを暗算で正確に計算して敵を倒すサーヴァント、……恐ろしいですわ。
[怯える表情を浮かべて宗冬の手を握る。]
人類が滅亡したら……、とても静かになりますわね。
アタシは宗冬様さえ居てくだされば、それだけでいいのですけど。
宗冬様が公園に行くならアタシもご一緒しますわっ。
[きゅっと手に力が入った。]
− 樹那森林公園 テント前 −
[敬一郎の見せた光景、言葉…考えたが、彼女の決心は変わらなかった。
むしろその決意は強くなる。]
あいつとランサーを止めてやらなくちゃ…
[注意深くランサーへ流れる魔力の様子を探りながら状況が動くのを待つ。]
他だって同じだ。
キャスターか。
いいじゃねぇか。
是非、銃でもって穴だらけにしてやりてぇよ。
神と魔法の時代と人が決別するべくして生まれたのが「俺」を含む銃達だ。
愛しいだろ?
…俺は、俺の意思で引き金を引く。
それが、銃を愛し、銃に愛される唯一の条件だ。
意志が弱けりゃ、銃を使えねぇ。
他人の意思で引き金を引けば、銃に喰われるのがオチだ。
[人々は「俺達」を嫌悪するが…
嫌悪する前に、使いこなして見せて欲しいもんだ。]
暗算をするサーヴァントとはまた恐ろしい。
ただ暗算ならば桁数の多い計算は難しいはず。算盤を持ってすれば勝利は間違いないであろう。
[宗冬は両手で美貴の手を優しく包み込む。]
たとえ人類が滅亡しても美貴殿だけは守りましょうぞ。
されば美貴殿を守る為、公園に行きましょうぞ。攻めるが勝ちであります。
[こう言うと宗冬も少し、ほんの少し手に力を込めた。その嫋やかなる美しい指が壊れないように、深く感じ合えるように。]
宗冬様……、相手の弱点を即座に見抜いて対策を思い付くなんて、さすがですわ。
[感心しつつ、続く言葉にうっとりと聞き惚れる。]
宗冬様、アタシ嬉しい……。
ええ、参りましょう。
二人の輝かしい未来のために。
[目をキラキラとさせて立ち上がった。]
いやいや、敵の宝具を暗算と見抜いた美貴殿こそが称賛されるべきもの。その知性たるや金剛石の如く煌めいております。
では、算盤を買ってから参りましょう。二人の栄光の未来のために。
[宗冬もあらん限りの輝きをもって立ち上がった。支払いを済ませ美貴の手を引いて店から出ていった。]
宗冬様、こちらですわ。
[宗冬の手を引いて文房具屋に入る。
気分は新婚の家具選び。
――二人で一つの算盤を弾く甘い一時を夢見る。]
−商店街−
[歩きながら、目的の場所がないことに気づく。伝えに着たけれど、どこにいるのかがわからない]
あのマンションに行けば、会えるのだろうか。
[宗冬は算盤を手に入れた。それは美貴の選んだ算盤である。その事実は宗冬にとっては愛そのものである。つまり今の宗冬の歩みを止められるものは何もないということ。こうして宗冬と美貴は公園に向かったのだった。]
だから、何と言おうと、俺は俺がやりたいようにしかやらない。
さぁ、行こうぜ?
公園に行けば、俺は戦えるのか?
俺に撃たせろよ。
それが俺の存在意義だ。
そのために、俺はここにこうしている。
それさえ貫けるなら、結果がどうなろうと、構わねぇ。
「彼」がどうかは、知らんがな。
クハッ。
[笑う。
俺は俺の、意思を貫き通して見せる。]
− 樹那森林公園 テント前 −
[アーチャーかバーサーカーが尋ねてくるのを待ちながら、少し不安になり始めていた。
バーサーカーというクラスは狂化によって戦闘が始まると敵味方区別つかなく暴れ出すだろう。
さらに自分が目にしたアーチャーも戦闘中正気を保っているように見えなかった。]
アーチャーとバーサーカーが同時にこの場に来たらまずいかも…
― 樹那森林公園 ―
[ランサーは公園内に入ると、レイラインを辿りながら、久子の元に歩いてゆく。もう一度だけ話をしてみるつもり、だった。
程なく、見慣れたテントが視界に入った。]
全くだよ。
アーチャーとバーサーカー。
どちらかといえば、バーサーカーの方が理性はあると思えるのが興味深いというか厄介というか……
此処に未だ居たとはね。
さっさと逃げた方が安全だよ、ヒサコ。
[商店街から駅前、噴水付近までを捜して歩く。都合よく見つかる、と言うわけもなく、やがて噴水傍のベンチへと腰を下ろした]
今の時間、マンションにいるとは考えにくい。彼らは情報を欲していた。なら、情報がつかめるように動くだろう。
他のマスターやサーヴァントに接触するか、それとも……。
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